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イベント/コラボ 2008/08/01

【ASIAGRAPH2008】 特別インタビュー/ASIAGRAPH 作家 岸 啓介 ネオジャパンカルチャーを伝道するクリエイター

ASIAGRAPH2008特別インタビュー
作家 岸 啓介 ネオジャパニーズカルチャーを伝道するクリエイター

『ASIAGRAPH2008 in Tokyo』開催記念! 注目作家、岸 啓介氏インタビュー

2007年10月に、アジア最大規模で開催されたCGクリエイティブの祭典『ASIAGRAPH2007 in Tokyo』。日本・アジア地域のCGクリエイティブを、アート、コンテンツ産業、テクノロジー、学術研究といった様々な領域から多角的にアピールし、大成功を収めました。

その中で、日本・アジアの優れたCGアーティストを発掘し、世界に紹介するために開催されたCGアート作品公募「CGアートギャラリー」。ロフトワークでもたくさんの入賞作家が出た本公募が、2008年も7月より作品の募集を開始しました! 今回の公募では、ロフトワークも全面協力。作品を応募する仕組みの部分に、ロフトワークのポートフォリオのシステムを提供しています。

そこで、今回の特集では、『ASIAGRAPH2008 in Tokyo』開催を記念して、ASIAGRAPHの作家であり、今、国内外から注目を集めている岸 啓介氏のインタビューをお伝えします! 岸氏は、日本のアニメ文化を髣髴とさせる精巧なメカニックデザインと、江戸文化や外来文化、レトロ、宗教、生物といった、様々なモチーフが融合した複雑なロボットのフィギュア・CG作品によって、独自の「ネオジャパンカルチャー」の世界観を確立しています。
また、気になる『ASIAGRAPH2008 in Tokyo』の公募についてもお伝えしますので、最後までお見逃しなく。

『ASIAGRAPH2007 in Tokyo』(前回)の公募部門「CGアートギャラリー」入賞作家≫

岸 啓介の創り出す「ふしぎ」な造形世界

▲岸氏の作品世界を堪能することができる。『岸啓介のふしぎフィギュア博物館』(マール社, 2008)
▲岸氏の作品世界を堪能することができる。『岸啓介のふしぎフィギュア博物館』(マール社, 2008)

異形のロボットや、空想上の海洋生物、昆虫の精巧なフィギュアを製作すると同時に、それらの3DCG作品でも高い評価を得ている、岸氏。昨年、新国立美術館で開催された文化庁主催の「日本の表現力」展にも出展し、日本を代表する造形作家として脚光を浴びています。そして実は、「たけしの誰でもピカソ」(テレビ東京。東京近郊に在住でアート・カルチャーに興味のある方なら、一度は見たことがあるはず…)の「勝ち抜きアートバトル」3代目チャンピオンという驚くべき経歴の持ち主。

岸氏の作品で最も印象的なのは、独特の世界観で表現されたロボットたち。複雑で異様な造形に、初めは誰もがぎょっとさせられます。一見すると、異様な造形に仕上がっていますが、一方でこういった表現は日本のリアルなカルチャーを体現しているかのようにもみえます。
また、不思議なことに、これらのロボットは、見ているうちに親しみやすさ、懐かしさといった「人間的」な感情を持っているかのように感じられるのです。

今回は、2008年1月に出版されたばかりの作品集『岸啓介のふしぎフィギュア博物館』(マール社)を元に、独特の世界観や、製作に関する考え方などを伺いました!

日本文化や外来文化、宗教、生物など…さまざまな要素が複合された「カオス」なクリエイティブについて

▲「大天使」。江戸で使われている全てのカラクリ人形の情報を記録するロボット。背には十字架と6枚の羽がついており、表情は弥勒菩薩のようでもあります。
▲「大天使」。江戸で使われている全てのカラクリ人形の情報を記録するロボット。背には十字架と6枚の羽がついており、表情は弥勒菩薩のようでもあります。

ロフトワーク(以下、LW):岸さんのロボットは、1つのロボットに複数の要素が組み込まれることで、独特の雰囲気が出来上がっていますね。
たとえば「大天使」のように、和と洋、仏教とキリスト教といった、対極にあるものの融合や、「ふうりん」のような風鈴の屋台と昆虫のような手足、人の顔といった全く異質の要素を組み合わせるなど、1体のロボットに様々な世界観や要素が含まれています。これらのアイデアは、どうやって生まれてくるのですか?


岸氏:例えば、子どものころ天井の木目を見ながら「あれは動物の形に見える」と考えてみたり、あるいはご飯の上におかずを並べて顔の形にしてみたことはありませんでしたか?創作の原点にはそういった「見立ての面白さ」があると考えています。

1つ1つは馴染みのある事物でも、組み合わせの妙により全く新しいものが生まれる楽しさ。私が異質な要素をごちゃまぜにして使うのも、その辺りに理由があるのかなと思っています。

LW:「新世紀エヴァンゲリオン」や「攻殻機動隊」のようなアニメ文化で育った、多くの20~30代にとっては、岸さんの創り出す複雑で奇妙なロボットたちは、とても魅力的に感じられるような気がします。
このようなアニメやいわゆるオタク文化に対して、岸さん自身はどのように感じていますか?


岸氏:私も両作品とも大好きで、非常に感銘を受けました。一方で、最近私が気を付けないといけないなと思っているのは、物語や世界観が高度化・複雑化すればするほど、「分かる人だけ分かればいい」作品になっていく恐れもあるということです。

「サザエさん」や「鉄腕アトム」に立ち返ろうというわけでもないのですが、「老若男女が誰でもそれなりに理解できて楽しめる」作品の大切さを今さらながら感じる今日このごろです。

▲風鈴の行商ロボット、「ふうりん」。岸氏の創り出すロボットは、いつも人々の生活を身近で支えている、愉快な仲間たちだ。
▲風鈴の行商ロボット、「ふうりん」。岸氏の創り出すロボットは、いつも人々の生活を身近で支えている、愉快な仲間たちだ。

▲かかしロボット「シンプル・スケアクロウ」。
▲かかしロボット「シンプル・スケアクロウ」。

CGとリアル、最新技術と手仕事を駆使した制作スタイルについて

立体出力によってできあがったパーツを組み立てたもの。(一部着色済み)
立体出力によってできあがったパーツを組み立てたもの。(一部着色済み)

LW:リアルとCG、一見違う世界のようにも見えますが、この2つの表現手法を用いるようになったのはなぜですか? また、表現手段としてのそれぞれの役割に、どのような違いを見出していますか?

岸氏:元々は「造形作品を写真と合成したい」と考えたのがCGを使い始めたきっかけでしたが、その過程で3DCGの面白さも知り、今に至っています。

立体造形には実物ならではの存在感や質感がありますし、3DCGにはデジタルならではの緻密さや様式美があると思います。何を表現したいかによって使い分けられればと考えていますが、三次元的思考という点では両者には共通するものがあるのではないでしょうか。

LW:今年出版された作品集では、CGから立体まで、制作の過程が全て公開されていますね。特にフィギュアの作り方は非常に詳細でした。これらの制作工程を公開することに抵抗はありませんでしたか?

岸氏:CGや絵画に比べると、立体造形というのは特殊で難しいマイナーなものという印象が一般的ではないかと思います。ですからこの製作工程を見て「自分も何か作ってみたい!」と思って下さる方が増えればそれはそれでよいことだと思います。

また、製作スタイルは人それぞれでしょうから、これをご覧になった上で、ご自分に合った独自の方法を編み出して頂ければ嬉しいですね。

LW:岸さんの作品集を拝見して、はじめて立体出力というものの存在を知りました。実際に使用してみた感想はいかがでしたか? また、このサービスに関心があるクリエイターの方に、利用する上でのアドバイスなどがありましたら、教えてください。

岸氏:私もASIAGRAPHの紹介ではじめて体験したのですが、モニタの中のCGが実物になるというのは新鮮な驚きでした。従来の手作業による造形表現とは色々と勝手が違うものの、うまく組み合わせて使うことができれば非常に有意義な技術だと思います。
※出力協力:株式会社ツクルス

▲パーツをばらばらにした状態で、機械に読み込ませます。
▲パーツをばらばらにした状態で、機械に読み込ませます。

▲できあがったパーツは、CGを忠実に再現。プラモデルのパーツのように精巧です。
▲できあがったパーツは、CGを忠実に再現。プラモデルのパーツのように精巧です。

ASIAGRAPH2008 in Tokyo に向けて

▲明かりを売る行商ロボット「カネミツ電気」。通称「カネさん」なんて、親しみやすいニックネームですが、全長4mはあろうかとい巨大な体を実際に見たら、卒倒しそう…。
▲明かりを売る行商ロボット「カネミツ電気」。通称「カネさん」なんて、親しみやすいニックネームですが、全長4mはあろうかとい巨大な体を実際に見たら、卒倒しそう…。

LW:前回の『ASIAGRAPH2007 in Tokyo』を振り返ってみて、印象的だったことは難ですか? その後の制作活動の展開に結びつくような体験などがありましたら教えてください。

岸氏:先ほども話題に出ましたが、立体出力による作品展示が印象に残っています。私はどちらかというと造形メインの活動が多いため、ASIAGRAPHにおいてもやや門外漢なところがあるのですが、CGと立体出力の組み合わせには何か新しい可能性を感じました。

LW:『ASIAGRAPH2008 in Tokyo』に向けて、どんな新しいことをやろうと考えているのか、もしくはその意気込みなどを教えてください。

岸氏:まだ調整中なので最終的にどうなるかは確定していないのですが、今回の展示用のために新作を複数製作していますので、ご期待いただければと思います。

LW:ロフトワークには、学生の方や若いクリエイターのみなさんもたくさん登録しているのですが、最後に、岸さんから彼らにアドバイスをいただけますか?
岸さんのように、国内外で高い評価を得るためにはどうすればいいのか、これまで自分が心がけていたことなどがあれば、教えてください。


岸氏:作者が創作を楽しんでいる気持ちは、作品を見る人にも伝わるのではないでしょうか。製作作業には色々と面倒なことや大変なこともありますが、あまり根を詰め過ぎず楽しくできればいいのではないでしょうか。

LW:2008年の出展作品も楽しみにしています! 貴重なお話、ありがとうございました!!

▼岸 啓介プロフィール
1975年 横浜生まれ。
    慶應義塾大学法学部卒
1998年 テレビ東京「たけしの誰でもピカソ」アートバトル3代目グランプリ獲得
1999年 第3回文化庁メディア芸術祭デジタルアートノンインタラクティブ部門大賞受賞。 
2000年 第4回同芸術祭同部門優秀賞受賞。
2005年 個展「The Art of Keisuke Kishi」開催。(ロンドン、OXOタワー) 
2007年 「日本の表現力」展出展。(国立新美術館)

ロフトワークのポートフォリオ≫
ホームページ【岸啓介読本】≫

『ASIAGRAPH2008 in Tokyo』CGアートギャラリー 出展作品募集中!!

DIGITAL CONTENT EXPO2008(デジタルコンテンツエキスポ2008)のオフィシャル・イベントのひとつ、『ASIAGRAPH2008 in Tokyo』では「CGアートギャラリー」と「CGアニメーションシアター」に出展する作品を募集いたします。また、今回は応募システムにロフトワークのポートフォリオ機能を採用。loftwork.comにご登録いただいている方は、簡単に応募登録が可能です。世界の舞台に、是非挑戦してみてください!

【応募期間】 2008/9/10(水)まで 応募期間が延長になりました!

CGアートギャラリーについて
ASIAGRAPHでは、アジア地域のCG作家の交流とその作品展示の場として「CGアートギャラリー」を開催し、数多くの優れたCG作家を輩出してきました。今回の公募部門は全部門を国際公募とし、アジア中から集められた優れた作品を一堂に集めることで、新たな創造と産業が生れることを目指します。

 ・第一部門 ASIAGRAPH CGアート作品公募部門 「CGアートギャラリー」
 ・第二部門 ASIAGRAPH 動画作品公募部門 「CGアニメーションシアター」
 ・第三部門 ASEAN+3 学生(28歳以下)アニメーション作品公募部門
 ・第四部門 ASEAN+3 こどもCGコンテスト部門

賞について
受賞者の大きなメリットとして、国際的な展示会でアジアの優れた作品とともに展示・上映されることにより、大きな実績となります。また、入選作品が国際的なアートフェスや、公共のディスプレイなどで展示、上映されることで、作品の露出機会を創出します。

 ▼昨年度の主な入選作品展示実績
 ・埼玉高速鉄道(地下鉄南北線)車内モニター作品上映
 ・東京国際アニメフェアブース展示上映
 ・神奈川国際アニメーション映像祭ブース展示上映
 ・ヨコハマEIZONE2008ブース展示上映

詳しくはこちらをご覧下さい(外部サイトにリンクします)

「ASIAGRAPH」とは
ASIAGRAPHは、日本・アジアにおけるCGクリエイターと研究者が集まり、優れた作品展示や学術発表を行うCGの祭典です。アジアという多様な文化が混在する地域ならではの芸術表現と、世界最高水準のCG技術・研究との融合によって生まれる優れたCGコンテンツを、作品展示やイベントを通じて世界に向けて発信しています。

 過去の展覧会≫
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