
日本では、作者が改変を許さないのであれば、状況はどうあれダメなものはダメ。
実は、日本は著作権法の下において、「世界一強い著作者人格権を認めている国」なんだそうです。
これは岩倉先生の恩師で、日本の知的財産権法分野の権威である中山信弘元東京大学教授のお言葉。著作権法の第一人者も認めるほど、日本はある意味特異な著作権法を持っている国だと言います。
その根底にあるのは、著作権法は「考え」ではなく、あくまで「表現」を対象にしている点。「表現」とは、文章・音楽・絵画・写真など形は何であれ、ある人の創造的な思いつきを形にしたもの。頭の奥底から出てくるものだから、これは「天賦の人権」の対象だと考えるフランス革命の影響を強く受けているのだそうです。
いったい、何がどれほど強いのか。著作者人格権の中でももっとも中心になっているのがローマ改定で定められた「同一性の保持」。
これは簡単に言えば、複製を許したとしても、中味を勝手に変えられては困るということです。
岩倉先生は、最近テレビのワイドショーをにぎわせた歌詞をめぐる歌手と作詞家の争いを例に挙げました。これは、ある歌手がオリジナルの歌詞の前に、作詞者に無断で台詞を加えて歌っていたというものです。
法律的にみると、あの争いはどうみても歌手の負けだと、岩倉先生は言います。「同一性の保持」を侵害しているから、いくらファンがあれはいいと言っても、作詞家がダメと言えばダメなのだそうです。
一方、ベルヌ条約では著作権者の評判を落としたり、心情を害するようなことは許されないと規定されています。
この場合、歌手が加えた台詞が“客観的に”著作者の気分を害したり、評判を落としたというわけでなければ、著作権侵害には当たらないというケースも考えられるのです。
こうしてみると、日本の著作権法はベルヌ条約よりもさらに厳しいというのがわかります。