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イベント/コラボ 2008/05/15

現代アートの若き才能にチャンスを! 村上 隆氏プロデュース「GEISAI MUSEUM #2」 が復活

「GEISAI MUSEUM #2」の全容やいかに?
「GEISAI MUSEUM #2」の全容やいかに?

現代美術家の村上隆氏がチェアマンを務め、多くの若い現代アーティストたちにアピールとデビューのきっかけを与えた「GEISAI」。全10回の開催の後に2006年に「終了」を宣言されたこのアート・イベントが2008年に復活すると知って、驚いた人も多いはず。
そして、「GEISAI#11」に先駆けるイベントとして先日の5月11日(日)に「GEISAI MUSEUM #2」開催されました。普通の「GEISAI」とは、一体何が違うのか? どんな人たちが出展しているのか? 気になる現場の様子をレポートします!

「GEISAI」との違い

現代アーティストたちにとって、アートのマーケットを作り出すことを目的として開催されてきた「GEISAI」。若いアーティストたちに、比較的安価な出展料で、たくさんのお客様に作品を見てもえる場所として、いわば巨大なアートのフリーマーケットの役割を果たしてきました。
今回開催された「GEISAI MUSEUM」と、通常の「GEISAI」との違いは出展者全員に順位がつけられるというところです。もともと、現代アート界の著名人を審査員に迎え、作家としてのプロデビューを目指す人たちが出展するイベントとしての色合いが強かった前者ですが、後者はそれよりもさらにハードなルールが設定されています。上位者だけではなく、自分も必ず評価の対象となるというだけに、出展者には相応の「覚悟」と「自負」が求められます。

会場の様子。作品を魅力的に見せるための展示の仕方にも、アーティストの創意工夫が見られました。
会場の様子。作品を魅力的に見せるための展示の仕方にも、アーティストの創意工夫が見られました。

森美術館、金沢21世紀美術館など・・・、話題の美術館館長がすべての作品を審査

今回の審査員も非常に豪華な面子。 森美術館 館長・森佳子氏、ピンチュック・アートセンター創設者・ヴィクター・ピンチュック氏 (ウクライナ)、地中美術館 館長代理・北川フラム氏、21_21 design site ディレクター・佐藤卓氏の5名。
いずれも、現代アート界において常に新しい話題を提供し続けている人々が、出展者の作品すべてを見て審査します。

審査も、午前中をかけて607名のアーティストの作品を見るというハードなスケジュールで行われます。その中で、瞬間的に審査員の目を引く作品を作る、というのは至難の業。「自分の作品の前を素通りされた」と肩を落とす出展者もたくさんいたようです。

(左から)蓑豊氏、森佳子氏、ヴィクター・ピンチュック氏、北川フラム氏、佐藤卓氏
(左から)蓑豊氏、森佳子氏、ヴィクター・ピンチュック氏、北川フラム氏、佐藤卓氏

クオリティの高さとエネルギーに、圧倒!

本格的な現代美術作家としてのデビューを目指す人も多く、「この1日にかけています」と情熱は並々ならぬものです。自由に出展できるアートイベントにもかかわらず、作品全体のレベルの高さには目を見張るものがあります。そのせいか、会場の空気は他のアート・フェスやクリエイターイベントとは一味違った緊張感のあるものでした。
また、中には、賞を狙っているわけではなく「高いレベルの作品や展示の中に身をおくことで刺激を得たい」という人や、「作品発表と、自分が行っているアートイベント活動のPRを兼ねて」という、別の目的を持った人々も。
いずれにしても、それぞれ高い目的意識を持った「腕に覚えアリ」のアーティストが集まっていたという印象です。

審査員たちをうならせた、受賞者たち

見事ベスト3に輝いたアーティストたち。左から、藤井邦明(3位)、若杉俊彦(優勝)、大源麻友(2位)
見事ベスト3に輝いたアーティストたち。左から、藤井邦明(3位)、若杉俊彦(優勝)、大源麻友(2位)

実力の高いアーティストが多数集う中で見事入賞を果たした人々は、さらに卓越した作品を出展。特にベスト3のアーティストの出展作は完成度・独創性において抜きん出ていました。
「見て快い・面白い」というだけにとどまらない、鑑賞者を引き込むような深い魅力と完成された世界観を持った作品に、審査員たちが感銘を受けたのも納得です。

(左から)若杉俊彦『脳または月面』、大源麻友『両界曼荼羅』、藤井邦明『最果てに向かう(片道ビッグバン)』
(左から)若杉俊彦『脳または月面』、大源麻友『両界曼荼羅』、藤井邦明『最果てに向かう(片道ビッグバン)』

アーティストに訊いてみました!

今回の取材では、2位受賞者の大源さんと、佐藤卓賞を受賞した渡辺さんにお話を伺いました。また、招待作家として出展していた「駄美術ギャラリー」の現代美術二等兵のお二人も登場!

2位受賞者、大源麻友さん

審査員の蓑豊氏が「大昔に描かれた曼荼羅を、見事現代によみがえらせることに成功している」と絶賛。
審査員の蓑豊氏が「大昔に描かれた曼荼羅を、見事現代によみがえらせることに成功している」と絶賛。

見事なまでに細密な描写で平安時代に描かれた両界曼荼羅を忠実に再現したのは、京都嵯峨芸術大学の大学院生大源麻友さん。通常は数人で描かれる両界曼荼羅を、9ヶ月間をかけて、たった独りで描き上げました。
浄土を思わせる鮮やかな色彩について伺ったところ、「原本の持っている異国情緒が表現できるように意識しました。原本そのままの色で描くことはできなかったのですが・・・」と「原本を忠実に模写すること」に対して、強いこだわりを持っているようです。

曼荼羅のみならず、独創による日本画の小作品も大変人気が高かった大源さん。これらの小作品については「曼荼羅を忠実に模写するために、ひたすら押し殺していた自分の個性が形になったものです」とのことでした。

大学院卒業後は現代作家として活動したい、と希望している彼女は、ゆくゆくは現代美術家と絵仏師の両方を目指したい、と熱意を込めて語ってくださいました。

右の作品は、巨大化するアリスを如来の顕現と重ね合わせるという、仏画の専門家ならではのユニークな発想。
右の作品は、巨大化するアリスを如来の顕現と重ね合わせるという、仏画の専門家ならではのユニークな発想。

審査員賞(佐藤卓賞) 受賞者 渡部 剛さん

佐藤卓賞受賞作品 渡部 剛 『夢の島、あるいは未完の廃墟』
佐藤卓賞受賞作品 渡部 剛 『夢の島、あるいは未完の廃墟』

古い週刊誌から切り抜いた、大量の記事の見出しを四角柱状の金網に貼り付けた造形作品。中から扇風機を回すことで「言葉」の群れを風にたなびかせる、という独創的なアイデアが評価され、佐藤卓賞を受賞しました。

この作品は、職場の近くの古本屋で目に留まった古い週刊誌への強い関心。「雑誌を手にとってめくっているにつれて、見出しを見ているのがすごく面白いと感じたんです。そこで思わず『全部下さい!』って。そのときは、まだ何を作るか全く頭に無かったんですけどね(笑)。」
ひたすら見出しを切り抜くことからはじめ、紙に貼るなどしていくうちに「大きいものを作らなければ、この(見出しの)良さは伝わらない」と感じ、試行錯誤を重ねて展示作品の形態にたどり着いたそうです。
今回の受賞について、まさか自分が受賞者の8人に選ばれるとは思わなかった、と渡部さん。「まぐれでしょう」と謙遜しつつも、予定されている個展の話をしながら今後の活動に意欲を見せていました。

本作が生まれる布石となった過去の作品(左)。実際にみると、風になびいた瞬間に中の電飾が見える。(右)
本作が生まれる布石となった過去の作品(左)。実際にみると、風になびいた瞬間に中の電飾が見える。(右)

招待作家 現代美術二等兵

現代美術二等兵のふじわらかつひとさん(左)、籠谷シェーンさん(右)。
現代美術二等兵のふじわらかつひとさん(左)、籠谷シェーンさん(右)。

出展ブースの中には、あの『駄美術ギャラリー』を出版して話題を呼んだアートユニット「現代美術二等兵」が! 「GEISAI#6」で受賞した、審査員特別賞を受けての招待作家としての出展です。出展作品の中には『駄美術』の収録作品も展示してあり、本を見たことがある人なら「あ、あの作品!」とテンションが上がらずにはいられません。

普段はサラリーマンをしながらも突然思いついた「おもしろい」アイデアを、それぞれが独立して制作しているという二人。家族が寝静まった後や、休日にこつこつと制作するそうです。作品のイメージどおりの「ゆるい雰囲気」をかもし出しながら、作品を解説してくださいました。
中でも面白かったのは、「現実逃避するための枕」。
現実逃避しながらとことん惨めな気分になりたい方は、側溝の写真がプリントされた枕でカラスと共にホームレスの気分でゴロ寝。ポジティブになりたい人用は、小鳥たちが見守る中、お花畑の柄の枕で寝るとのことでした。

本の表紙にも掲載している『こけしアレー』が「商品化」されて、今ノリにノっているお二人は、「また何か商品化したいですね。商品化に乗ってくださる企業を募集しています」と、今後の作品の商品化にも意欲的でした。

『だび術ギャラリー』(左)、現実逃避するための枕(中央)、テディベア×カニの異形の物体(右)。
『だび術ギャラリー』(左)、現実逃避するための枕(中央)、テディベア×カニの異形の物体(右)。

ロフトワークの登録クリエイターの方々も

今回のイベントでは、ロフトワークに登録いただいているクリエイターさんもたくさん活躍していました。
みなさん、お疲れ様でした!

左から、cocomats。さん、nagoさん、Ao houseさん。ほかにも、たくさんの方が出展していました。
左から、cocomats。さん、nagoさん、Ao houseさん。ほかにも、たくさんの方が出展していました。

アーティストの「本気」に刺激を受ける1日

「GEISAI#11」も楽しみです!
「GEISAI#11」も楽しみです!

実に5年ぶりに開催された「GEISAI MUSEUM#2」は、アーティストが全力で「勝負をかけた」という熱意が伝わってくる、非常に見ごたえのある内容でした。
また順位をつけるというルールもあってか「レベルの高さに驚いた」「自信がなくなりそう」という言葉が、会場の中でちらほらと聞こえたのが印象的でした。

アートイベントで自分にない魅力を持つ作品に触れることは、アーティストにとって大きなショックでもありますが、同時にその体験は自分の作品をさらに高めていくきっかけにもなるものです。
「GEISAI MUSEUM」は、出展する側にとって「アートを楽しむ」では済まされないハードなイベントだったようですが、その分得るものも大きいものであったことは、間違いありません。

「GEISAI MUSEUM#2」 オフィシャルウェブサイト≫