Features

イベント/コラボ 2008/06/13

今、短歌がブーム? 全く新しい短歌イベントがGroundで開催!

みなさんは、「短歌」というと、どんなイメージを持ちますか?
「昔、古典の教科書で読んだなあ・・・」「万葉集って、短歌だっけ?」などなど、「古いもの」「難しいもの」をイメージする方が多いのではないでしょうか。(冒頭の質問で「俵万智の、『サラダ記念日』?」が出てきたあなたはすごい!)

実は今、10~20代の若者の間で短歌がひそかなブームとなっています。携帯電話のメールで投稿するラジオの番組や短歌サイトに、毎回たくさんの若者が投稿しているのです。また、Web上でFlashアニメーションを使った短歌作品が公開されるなど、デジタルで楽しむスタイルの短歌が人気を呼んでいます。果たして、現代の言葉を使い、現代のメディアで展開する現代短歌の魅力とは何なのでしょうか?

この夏、そのブームの担い手となっている2人の若手歌人とクリエイターが、loftwork Ground で短歌のイベント「歌集喫茶 うたたね」を開催します。今回の特集では、イベントを主催する歌人でロフトワーク登録クリエイターの天野慶さんと、高校時代に鮮烈な歌人デビューを果たし、若者から根強い支持を受けている歌人・作家の加藤千恵さんのお2人に、お話を伺いました。

10~20代を中心に、じわじわと高まるケータイ短歌人気

「テノヒラタンカ」:ユーザーが携帯から短歌を投稿し、優秀作品はイラストやFlash と組み合わせて携帯サイト・Webサイト上で紹介される。
「テノヒラタンカ」:ユーザーが携帯から短歌を投稿し、優秀作品はイラストやFlash と組み合わせて携帯サイト・Webサイト上で紹介される。

LW:携帯と短歌組み合わせるという活動はいつから始まったんですか?

天野:携帯で短歌というコンテンツが取り上げられたのは2001年頃からで、実は結構前からなんです。短歌は「その場で作って、投稿できる」という手軽さから、携帯との相性が良かったんでしょうね。また、2001年は短歌とイラストのコラボレーションユニット「テノヒラタンカ」も始まりました。「テノタン」の投稿は10~20代の層がほとんどで、毎回150~200首くらいの応募があります。

LW:短歌もすてきですが、「テノタン」のイラストやFlashもすごくかわいいんですよね。初めて知ったとき、短歌とイラスト・Flashを組み合わせるというのが新鮮でした。

天野:短歌という素材がシンプルで、さまざまなメディアと組み合わせることができるんです。また、31文字という文字数が短いFlashアニメーションにちょうどいいんですよね。「テノタン」はロフトワークに登録しているイラストレーターさんも活躍しているんですよ。

梅四 うだひろえ×天道なおさんによる短歌アニメーション

ラジオのケータイ短歌、その舞台裏

LW:お二人が出演されているNHKのラジオ番組『夜はぷちぷちケータイ短歌』の番組のサイトを見て驚いたのですが、投稿するリスナーの多くが10~30代前半の若い層の人たちなんですね。

加藤:NHK第1放送のリスナーは、主に50代以上の中高年の方が多いんですよ。その中で、これだけ若い層のリスナーを持つ番組は異質な存在のようです。

天野:短歌の投稿数は、毎月6,000通くらいあります。NHKのラジオ番組で、こんなにたくさんの投稿があるものも珍しいそうです。前にNHKスペシャルで特集されたこともありますが、テレビの効果があると投稿数がさらに増えます。毎回目を通すのも、大変な作業ですよ(笑)。

LW:すごいですね! その中で選ばれた数首というのは、相当レベルが高いのではないでしょうか。

天野:そうですね。実は、ラジオの投稿短歌の場合、選考のポイントがあるんです。
「夜はぷちぷちケータイ短歌」では毎回決まったテーマで作品を募集しています。ただ、ひとつの言葉から連想することは重なってしまうことが多いので、同案多数になりがちです。たとえば、今は「時」をテーマに募集をしているのですが、「あの時にもどりたい」という作品が多いです。
その中で選ばれる作品というのは、やはり独自の視点が際立っているもの。この間の投稿作品の中には、「5歳ときにもどりたい、おばあちゃんと水撒きをした」という内容の作品がありました。「おばあちゃんと水撒きをした」という視点が独特で、目を引きますよね。

加藤:上手な歌は、物事を切り取る視線が独特でありながら、聞く人に共感を呼びます。また、比喩が絶妙なものや、「いかにも字数あわせ」ではなく自然な表現ができているものがいいですね。

天野 慶さん。2児の母とは思えないほど、はつらつとして元気いっぱいでした。 写真左が新刊、『ウタノタネ』(2008年、ポプラ社)、右が『短歌のキブン』(2003年、ディスカヴァー・トゥエンティワン)
天野 慶さん。2児の母とは思えないほど、はつらつとして元気いっぱいでした。 写真左が新刊、『ウタノタネ』(2008年、ポプラ社)、右が『短歌のキブン』(2003年、ディスカヴァー・トゥエンティワン)

若い人たちと、いっしょに盛り上げたい

LW:主に若い世代に、短歌人気が高まった背景は何でしょうか?

天野:枡野浩一(ますのこういち)さんと穂村弘(ほむらひろし)さんが、若い人たちの間で短歌が浸透するきっかけになったと思います。お二人は、2001年にそれぞれ入門書を出し、そこから若い人たちにも徐々に浸透してきました。
この二人の下地を経て、千恵ちゃん(加藤さん)が16歳のときに(!)歌集「ハッピーアイスクリーム」を出しました。これが10代の短歌ファンをたくさん作ったんです。

LW:16歳でデビュー(驚)! 早いですね~。

加藤:(天野さんに)ご紹介、ありがとうございます(笑)。高校生のときに枡野さんのサイトの掲示板に短歌の書き込みをしていたら、枡野さんご本人に出版のお誘いをいただいたんです。
作品を通じて、自分と同じ世代の人たちが等身大の目線で短歌を詠んでもいいんだっていうことが伝ればいいなと思っています。短歌というと「国語の教科書に載っているもの」というイメージを払拭したいですね。

天野:私の世代でも、短歌をやっているというと「私ももうちょっと年をとったらおしえてください」って言う人が多いんです。「それじゃ、もったいないよ」っていいたい。
「いい短歌」を作る以前に、普段から自分の気持ちを言葉に変えていくことって大切ですよね。特に大人になるほど、自分の考えていることや気持ちを言葉で伝える機会は増えますし。短歌は、言葉を使って自分を表現するための一つの方法なんです。

加藤:小説だと長すぎてなかなか書けないですし、俳句や川柳の長さって普段感じたちょっとしたこととかを言葉で表現するのに、ちょうどいい長さだと思います。

加藤 千恵さん。16歳にして、鮮烈の歌人デビューを果たした彼女は、短歌への熱い思いを、しっかりと語ってくださいました。写真は『短歌写真部 放課後』(2008年、雷鳥社)
加藤 千恵さん。16歳にして、鮮烈の歌人デビューを果たした彼女は、短歌への熱い思いを、しっかりと語ってくださいました。写真は『短歌写真部 放課後』(2008年、雷鳥社)

LW:では、普段の生活の中で短歌を楽しむとしたら、どんな方法があるでしょうか?

加藤:普段の友達へや恋人のメールを短歌にしてみても楽しいんじゃないでしょうか。

天野:写真やイラストを作ったときに、それにつけるための短歌を考えてみるというのも、面白いですね。それと、携帯で写真を取るような気楽さで短歌を詠んでみる。「変な看板発見!」みたいな感覚です(笑)。
「文語で書かなければならないのかな?」と難しく考えている方には、是非、千恵ちゃんの短歌を読んでほしいです。すごくかわいらしいので、身近な感じがするはず。

LW:天野さん、完全にファンですね(笑)。

天野:そうですよ! すごくすてきなんですもの。

加藤:ただ、古い歌にもその「良さ」がありますよね。自分たちはその入り口になれればいいなと思いますね。私たちの作った歌から興味を持ってもらい、いずれは古今和歌集を読んでみたいと感じてもらえたらうれしいです。

LW: では、最後にイベントPR、メッセージをお願いします。

加藤:イベントに来ていただいた方には、本を読むだけではなく、是非、実際に短歌を書いて参加していただければうれしいです。今回のイベントのテーマは「学校」なので、小・中・高校時代を思い出して浸るだけじゃなく、成長した今だからこそ詠める短歌というものを作ってほしいですね。
天野:短歌を眉間にしわを寄せて考えるというのではなく、たくさんおしゃべりしながら、笑いながら作れるということを実感してほしいです。

天野さん、加藤さん、ありがとうございました!

天野さん主催 短歌イベント「歌集喫茶 うたたねvol.3」

今回Groundで開催されるイベントでは、なかなか手に入らない歌集がたくさん詰まった、短歌図書館が登場します。天野さんや加藤さんのような短歌の担い手によって「今」まさに息づいている短歌の文化と、伝統的な短歌との両方に触れることができます。また、短歌ワークショップや、イラストと短歌のライブライティング、みのじさんの絵本原画展などなど、内容も盛りだくさんです。
「短歌」魅力を丸ごと体験できる、またとない機会ですので。「短歌、ちょっと気になる」そんなことを感じた方は是非、足を運んでみてください。

・日時:2008年7月5日・6日両日(土・日)
    5日(土) (7・5調の日) 11:00~19:00
    6日(日) (サラダ記念日)11:00~18:00

・場所:loftwork Ground
    http://loftwork.com/support/ground.aspx
    150-0043 東京都渋谷区道玄坂 1-22-7 道玄坂ピア1F
    (井の頭線渋谷駅 アベニュー口より徒歩 5分、JR渋谷駅 玉川口より徒歩10分)

・料金:入場無料
 *トークセッションのみ有料:500円

【イベント内容】
 ◎歌集の読める喫茶店「歌集喫茶うたたね」
 ◎投稿短歌「スクール短歌」の展示
 ◎短歌絵本『おさんぽしましょ』原画展示
 ◎短歌アニメーション上映会
 ◎書籍販売:
   天野慶 『ウタノタネ~だれでも歌人、どこでも短歌』(ポプラ社)
  ≪7/6(日)のみ≫
   加藤千恵 『放課後 写真短歌部』(雷鳥社)、『ゆるいカーブ』(スリーエーネットワーク)
   うだひろえ『夢追い夫婦』(メディアファクトリー)

 ▽ライブイベント
 ・7月5日
  16:00~てこな×天野慶トークセッション『ケータイ短歌から生まれたもの』
     *料金500円(おみやげつき)
 ・7月6日
  13:00~「短歌イラストライブライティング」 うだひろえ×天野慶
  14:00~「短歌ワークショップ」 加藤千恵×天野慶
  16:00~「短歌にまつわるエトセトラ」 加藤千恵×天野慶
     *料金500円(おみやげつき)

「スクール短歌」募集します!

写真短歌『放課後』と10代向けの短歌入門『ウタノタネ』発売記念として「スクール短歌」を募集します。
学校をテーマにしたものならどんな歌でもけっこうです。
イベント当日、天野慶と加藤千恵がそれぞれベストスクール短歌を選びます。
たくさんのご投稿、お待ちしております。

・メールに、作品・ペンネームをお書きの上、
 utatane57577@yahoo.co.jp 宛てにお送りください。
・件名に「スクール短歌応募作品」と明記してください。
・締めきりは6月30日です。
・投稿数の制限はありません。
・イベント当日、会場に張り出し、観客による投票も行います。

*短歌の作り方は『ウタノタネ』スクール短歌の参考作品は『放課後』をぜひご覧ください。
天野慶blog「Mercator」

天野 慶
1979年、東京。三鷹生まれ。
日常における様々な“言葉にならない思い”を言葉にする現代歌人。繊細な感性と力強い表現力で、新しい時代の短歌をつくり続けている。
主な著書に『短歌のキブン』『テノヒラタンカ』。最新刊に短歌絵本『おさんぽしましょ』(冨山房)。
NHKラジオ第1「土曜の夜はケータイ短歌」にも出演中。そのほかイベント「歌集喫茶うたたね」の企画・運営や「親子短歌ワークショップ」などの活動も行っている。
天野慶blog「Mercator」


加藤 千恵
1983年北海道旭川市生まれ。歌人。
立教大学日本文学科卒。高校生のときに処女短歌集『ハッピーアイスクリーム』(発行・マーブルトロン、発売・中央公論新社)で話題を集める。現在、集英社携帯サイト『theどくしょ』で、自身初となる小説連載を行っているほか、ラジオなどにも出演。詩、書評、エッセイなどの執筆活動も行っている。主な著書に『ハッピーアイスクリーム』(中公文庫)、『たぶん絶対』(マーブルトロン)、『ゆるいカーブ』(スリーエーネットワーク)など。最新刊にカメラマン・タクマクニヒロ氏とのものによる『写真短歌集 放課後』(雷鳥社)。
加藤 千恵ブログ 「とぎれた日々の前に立ちどまる」