飛騨の森でクマは踊る(通称「ヒダクマ」)は、ロフトワーク、トビムシ、飛騨市の間で、新しい官民共同事業として2015年に設立されました。5年目を迎える2019年、取締役を務めてきた岩岡 孝太郎、松本 剛が代表取締役に就任。新しいチャレンジが始まります。

今まで代表取締役を務めた林千晶と、これから代表取締役を務める岩岡孝太郎を迎え、新しいスタートに対する想いや、今までのこととこれからのことをPR尾方が話を聞いてきました。

具体的な問いに答えていくフェーズへ

ヒダクマは、「森林を活用することで、人と自然の関係を健やかにしたい」という想いが込められ、事業を通じて飛騨の森林を健やかにすることで、生態系のバランスを保ち、地域の暮らしも支え、飛騨が目指す明るい未来の象徴として「熊が踊りだすぐらい安心して暮らせる森」のイメージをかかげ2015年にスタートしました。

──代表交代への想いを教えてください。
林 ヒダクマが新しいステージに進むときが来たと感じたんです。ヒダクマを設立した4年前は、「広葉樹を使うことを始めます」ということがニュースでした。当時、飛騨市も林業といえば針葉樹を使った事業。そんな中、新しいチャレンジをしていくには、まずは世の中に「広葉樹って使えるんだ」という認識を作ることが必要でした。

代表取締役を打診されたときは、事業をどうしていくべきか私が教えてもらいたいくらいという気持ちもあったけれど、世の中にメッセージを届け、広葉樹って使えるんだという認識を作っていく部分には、力になれると思って代表を務めてきました。広葉樹って使えるんだという認識が世の中に出来てきて、事業が形になり始めたら、その責任者に代表を渡していきたいなと就任した時からおぼろげながらも思っていました。

これまで、広葉樹を使ったプロダクト事例を発信したり、飛騨の森を訪れ広葉樹に触れる機会を生み出したり、森林調査をしてデータを公開したり、様々な角度で情報発信をしてきました。メディアに取り上げられたり、取り組みを知って一緒に何か出来ないかとお声がけ頂いたりすることも増えてきました。広葉樹を使うことを面白そうと周りが思い始めてくれていると感じます。広葉樹をどう使えるかという具体的な問いがどんどん生まれてきています。その問いに答えていくメンバーが代表になってほしいと思って代表交代を打診しました。

──代表を任される。どんな気持ちだったのでしょうか。
岩岡 
いよいよ代表かという気持ちがそんなに強い訳でもないんです。というのも、今回同時に代表取締役に就任する松本さんと2017年頃から二人三脚でヒダクマを運営してきたという感じがあって。役割分担がうまくできていたし、これからもしっかりやってこうという気持ちです。

ヒダクマが取り組む事業の軸も見えてきました。「地域交流事業」と「森林木材事業」の2つの軸です。
地域と繋がり、魅力を深く理解し、その魅力に飛騨を訪れた人が触れることができる状態を作り、一緒に何かを生み出していける可能性を作り出す「地域交流事業」という軸。そして、地域や木の魅力に触れた人が、何かやってみたいと思った時に、森に行くことができたり、その木を木材として手にすることが出来たり、その木を使ってプロトタイプを作ることもできるような環境を生み出す「森林木材事業」という軸。この2軸で事業に取り組んでいきます。

この2軸での事業が融合し、循環していくことが広葉樹を使ってもらうこと、それが広がっていくことに繋がっていくと思います。木を使う動きがどんどん出来てくると、そこからじゃあこういう木が育つ森にしようとか、森をどう育てるか?ということまで含めて考えられるようになります。木の可能性を形にし、それを広げ、木の新しい流通を生み出し、それが森を育てることに繋がり、そこで育つ木が還元されるという流れを紡いでいきたいと思っています。

木の可能性をヒダクマが示す。「木っていいよね」で終わらせない。

──ヒダクマへの想いや、これまでとこれからの取り組みについて聞かせてください。
岩岡 2015年に事業をスタートしてから4年。広葉樹にはもっと可能性があるんだというメッセージの発信とともに、広葉樹の可能性を「具体的に示す」ことにも取り組んできました。

広葉樹を使う事例を作っていく上で向き合ってきたのが「飛騨の森の多様性を活かすこと」と「小径木を価値あるものに生まれ変わらせる」というテーマ。飛騨の森は7割が広葉樹林。多種多様な木々で構成される森です。木の種類が多い分、森から取り出される木々は少量多種。また広葉樹は、径が小さく大きさもまちまちという状態で切り出されてきます。この多種少量の小径木を活かし、どう価値あるものに生まれ変わらせるかを挑戦してきました。

サクラやクリなど好きな木材を選んでつなぎ合わせ、無垢の木の天板を作ることができる「まぜまぜ広葉樹」など、パートナーたちと試行錯誤する中で様々な具体的な事例を作り出してきました。
今ではオフィス空間や、家具、商品など様々なところで広葉樹を使ってもらえる事例を生み出せています。

オフィス事例|株式会社ユーザーベース UZABASE
商品事例|パタゴニア社と開発したカトラリーセット

また国内外から建築家の方、広葉樹の可能性に興味を持ってくれた方々が飛騨を訪れてくれる流れもできてきました。モノができて、それに興味を持ってくれる人が飛騨に来てくれて、そしてまたモノが生まれていく。こういう循環ができ始めています。この動きをしっかり育て、発展させていきたいです。

また、クライアントワークでの事例だけでなく、もっと木の可能性を示していくことが必要だと感じています。その動きを形にすべく、2018年の冬にラボ機能を持たせた「Hidakuma Everyone’s Woodbase」プロジェクトを社内で立ち上げました。誰もが気軽に木の可能性を試せる場所であり、木ってこういう可能性ありそうだよねを具現化する場所です。
すでに素材開発にも取り組んでいます。その素材を誰もが触れられる状態にして、「ここに使えるかも」「こう使えるかも」などインスピレーションが生まれる場所にもしたいと考えています。また、飛騨を訪れたアーティストや建築家の方々も利用し始めてくれています。木の有機的な形状をそのままで繋げられないかな?など今まで思いつかなかったアプローチで木の可能性を見つける取り組みも動き出しています。

想像を超えていく。共創から生まれるまだ見ぬ価値。

──最後に、林さんから岩岡さんへメッセージを。
林 毎年想像を超えるものを生み出していってほしいな。岩岡君が、こんなことまで出来た!とびっくりするようなところまで毎年いってほしい。

──ハードルをあげてしまった気がしますが…岩岡さんいかがでしょう。
岩岡 想像を超えるところまで行きたいというのは、いつも思っています。木の可能性ってこんなにあったんだって自分自身が気づく、周りに気づかせられることってまだまだあると思っていて。
この前のストランドボードなんかもそう。プロジェクトを始める前から、想像超えていきそうだなと感じたし、実際そうなって、とてもいいものが出来上がったと思う。他者との共創だから生み出せたものだと思う。これからも他者とぶつかり合い、共創することで想像もつかなかったところに辿り着けるプロジェクトをどんどん生み出していきたいと思います。

広葉樹ストランドボード開発
岐阜県各務原市で木材の技術開発に取り組むエスウッドが開発した技術、非配向性のストランドボード、Random Strand Board(RSB)。この技術と、家具用材にならない小径木や製材端材だった木々が出会い、新しい素材が誕生。第一弾は新緑色が美しい「ホオノキ」ストランドボード。

それから最近は、木を性能という側面からだけでなく、美しさとかそういった表現力も含めて木の活用を提案できるようになってきました。樹種それぞれが持つ性能・特徴を活かしながら、美しさも表現できる。適材適所と表現が一致する。そういう木の使い方を増やしていきたいとも思っています。

ヒダクマのコーポレートサイトでは、事例紹介だけでなく、広葉樹の種類や、飛騨の伝統技術「組木」についても紹介しています。広葉樹の魅力、可能性を発信中です。

飛騨の森でクマは踊る|Hidakuma

新しい体制になったヒダクマ。木の可能性ってこんなにあったのか、と想像を超えていく取り組みがこれからも楽しみですね。ヒダクマの様子を今後も配信していきたいと思います。どうぞお楽しみに。

尾方 里優

Author尾方 里優(Public Relations)

福岡生まれ福岡育ち。九州大学芸術工学部卒業。人との出会いで人生が大きく変化した原体験から、人の可能性を広げる環境づくりに興味を持つ。大学卒業後、新卒採用支援の会社を立ち上げるも挫折。0からビジネスを学び直そうと、株式会社ゲイトに参画。事業立ち上げや、既存ビジネスの構造改革に取り組む。事業に携わる中、人の可能性をより引き出し、楽しく豊かな事業を作り出していくにはクリエイティブの力が必要だと感じ、ロフトワークに参加。未来教育デザインConfeitoのPRとしても活動中。趣味は読書と旅行とお酒。

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