「ヒダクマの業績は、前年比235%。黒字化を達成しました」
6月の飛騨市議会で、飛騨市役所の青垣部長から、ヒダクマ第3期の決算内容が報告されました。(32:00から39:40のところがヒダクマの報告です)
設立当時は、正直、どうやって売上を作ればいいのか、考えあぐねていました。創業メンバーの松本さんや諏訪くんと「3年目には、黒字化が視野に入っていてほしいよね」。売上計画というよりは願望に近い形で、飛騨市に3カ年計画を提出したことを覚えています。
でもヒダクマの事業組み立ては、簡単ではありません。仮にコーヒーを1日20人に飲んでもらえたとしても売上は1日1万円。1ヶ月で30万円。つまりコーヒーを頑張って何杯売っても、観光客の少ない飛騨古川では黒字化できない。一方、林業もサプライチェーンが長すぎて、簡単に変化を生み出せる産業ではありません。
そこでヒダクマが注目したのは、飛騨に豊富で、でも使い途がないと思われている「小径木」でした。細くて、樹種もバラバラ。でも、デザインによってそれを強みに変えられたら、タダの木材が価値に変わる。そこに可能性をかけて、多くのクリエイターに飛騨を訪れてもらいました。
フットワークが軽くウイットに富んだバッタネイションの岩沢兄弟。コンピュテーションと無垢材を自由自在に操る建築家の大野友資さん。何度も足を運び、色も木目も異なる広葉樹だからこそのデザインを考案してくれたツバメアーキテクツ千葉さん、建築家 桑原茂さん、アイディアスケッチさん。数々のプロジェクトを共にしてきた建築家 古市淑乃さん。
ブルーボトルを手がける人気建築家の長坂常さんにも、「騙されたと思って無垢材を使ってみて」とお願いしたところ、流石のセンスで、一見、角材を積み重ねただけの洗練されたテーブルやカウンターをデザインしてくれました。そのほか、世界で人気の美しい「キャットツリー」や、フローリングをナナメ貼りした「おしゃれワークデスク」、薄くて硬い新たな木素材の開発など、色々な人たちの助けを借りて、日々進化しています。それも無理難題をいう私たちに、いつも笑顔で品質に妥協のない飛騨の木工プロフェッショナルが、居てくれてこそ。
合宿事業も好調で、昨年は359名の多彩な人たちが訪れてくれました。海外の建築家やデザイナーのレジデンス、IAMASやパーソンズなど国内外の大学と連携した「木工 × IoTプログラム」の開催、企業のオフサイトミーティングや、新規事業のためのグループ合宿の場として。
豊かな森を歩き、自然との共生を体感しながら、サステナブルな未来をデザインする。都内で「SDGs」と声高に叫んでカンファレンスをやるよりも、よっぽどリアルで、地に足のついたエシカルなアイディアが生まれると思いませんか。
4年目となる今年、広葉樹の森を維持し、未来の価値につなげるために、もう一歩踏み込んで、事業成長を図ります。黒字化の維持よりも、今しないといけない投資がある。そう判断して、投資のリスクはロフトワークの増資で補うことを決定しました。
2018年3月の株主総会で無事受理され、6月の議会報告をもって、ヒダクマはロフトワークの子会社となりました。とはいえ、飛騨市・トビムシ・ロフトワークの3社連携で取り組むことも、飛騨の豊かな広葉樹森を活用するというミッションも、一切変わりません。
ヒダクマのメンバー一同、飛騨の森、飛騨の町、飛騨の人たちに真摯に向き合いながら、ワクワクする森の未来づくりに全力で取り組む所存です。これからも、どうぞよろしくお願いします。
ヒダクマ 代表取締役
林千晶