久しぶりに、事業計画を確認するためにエクセルを立ち上げた。「当面の収入の柱は、なんだっけ?」
この週末、ロフトワーク香港がオープンした。東京、京都、台北に次いで、4つ目の事業所になる。4回も経験すれば、さぞかし事業立上げは手慣れたものだろうと思われるかもしれない。しかし、そこはどっこい。インスピレーションと情熱を頼りに、詳細は活動を始めてから考えればいいというロフトワークの無謀な文化は、健在だ。メンバーから共有された事業計画の数字は、想像以上にリアリティが薄かった(笑)。それでも、面白い展開が生まれるに違いないっていう感覚に、ブレはない。なぜなら、そういう未来を作ればいいのだし、今までもそうやって歩いてきたからだ。
でも「なぜ、香港なんですか?」という質問にはきちんと答えておきたい。インスピレーションだけで判断したわけではなく(素敵なメンバーに出会ってしまったから、という本音はさておき)、中国という世界で最も影響力をもつ国と、何ができるかを本気で考えたいからだ。自分も含め日本人はつい、欧米を見てしまう。先日参加した経済産業省の委員会でも、市場環境を調べるための調査対象リストには、アップルやIBM、Facebookなど米国企業はずらっと並んでいたが、中国企業の名前はなかった。
でも、中国発のシェア自転車ベンチャー「モバイク」は、世界で450万台の自転車を提供、1日2000万回の利用を支える世界最大のモビリティプラットフォームを構築している。深センは、この30年で世界最大かつ最先端のものづくり都市へと展望を遂げた。最近では、人間関係や購買履歴など複合的な指標から個人の信頼性を評価し、デジタル時代の「与信システム」をいち早く社会実装したのも中国だ。この国の価値観やスピード感を知り、どう共存し、どう差別化するのか。近くて遠い中国を、もっと深く知りたい。だから香港に拠点を構えることにした。中国系スタートアップや大企業とのリアルな会話、商取引を重ねてネットワークを構築し、未来に向けたダイナミックな挑戦を実践したい。
具体的には、世界同時にリリースするサービスや商品の開発をサポートするつもりだ。IoT、金融、ビッグデータなど、これからのサービスにおいて、国境に起因する制約はますます薄まる。日本で開発をしてから、各国に合わせてローカライズなんてしている暇はない。リサーチ・計画段階から、世界を視野に入れてプロジェクトを実行することが重要だ。そんな挑戦を応援するために、ロフトワークはアジアを代表するクリエイティブカンパニーを目指す。また毎月のミートアップでは、デザイナー、エンジニア、起業家、投資家、政府関係者、大学関係者、メディアなどを招き、良質な人の繋がりを育てる。日本、台湾、香港、中国を中心に、互いの価値観を理解し、コラボレーションを促進させるネットワークを提供したい。
空間の大きさも絶妙だ。貸切で「自社サービスの体験をインストールできる場所」として活用してもらえる。だって、もう完成品を展示するだけで売れる時代ではない。プロトタイプを持ち込んでみんなの反応を観察したり、デザイナーや起業家たちを呼んで数日間、集中的に議論をしたり、商談をメインにしたパーティを開催しても構わない。使い手が自由に空間をハックできるようにしておきたい。夏は湿度が100%になるという香港で、空気の循環と、心地よさを実現する空間に仕上がっている。
まずは、中国で友だち100人作るのが目標だ。