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バイオはただのブームではない

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デジタルに次ぐ新たなプラットフォーム

“Bio is the new digital.”

MITメディアラボ創設者ニコラス・ネグロポンテは言う。バイオ技術は、デジタルツールの進化がそうであったように、急速に誰もがアクセスできるものとなり、様々な領域で変革をもたらすであろうという未来像だ。実際、この数年でバイオという言葉を耳にする機会は急増している(ように感じる)。バイオアート、バイオビジネス、バイオテクノロジー。急いでバイオの波に乗らないと取り残されてしまうのではないか、そんな焦りすら感じてしまう勢いだ。

一方、「バイオ」が何を意味しているのかと聞かれて、答えられる人は少ないのではないだろうか。日本が古来から親しんできた発酵文化も「バイオ」だけれど、遺伝子を組換えて新たな生物を生み出す技術も「バイオ」だといわれると、その多面性に戸惑ってしまう。バイオを捉えづらくしている一因だろう。

バイオとは何なのか、それは私たちのどんなことを可能にするのか。私たちは何を議論し、どんな判断をしていけばいいのか。そんなことをじっくり考えるために、「Open Bio Initiative」というプロジェクトを始めることにした。

「バイオのイロハ」についてのコモンズ

プロジェクトでまず目指すのは、今の時代いざバイオについて議論をしようとした時、相手にきちんと正面から対話をすることを可能にするための共通言語(つまり基礎知識)をアーカイブすることだ。勉強会を通じて、「これだけは知っておきたい」というバイオの基礎知識を集め、誰もがアクセスできるようにしたい。

例えば、私が初めてNITE バイオテクノロジーセンターを訪れたとき、こんなことを教えてもらった。生物は大きく分けると古細菌(アーキア)、真正細菌(バクテリア)、真核生物(ユーカリア)の3つに分類されること。

人間を含む動物や植物は、すべて真核生物に属する。一方、地球全体を眺めると驚くほど多様な古細菌や真正細菌が存在していること。

バイオ技術で生み出されるものの多くは、生物多様性を守るための世界的法規制「カルタヘナ法」の範疇となり、世の中にリリースするにはカルタヘナ法に基づいた各国法に準拠する必要があること。

生物に関わる情報のデジタル化が進み、それを出力したり加工したりする能力も急拡大しているため、各国では知的財産の扱いや倫理規範の設計など、従来想像もしていなかった課題に直面していること、など。

たった数時間の会話で、5億年もの時間をかけて進化してきた生物の不思議さに魅了され、そしてこれから出現するであろう新次元のバイオの未来に想像が膨らんだ。

上記はほんの一例に過ぎないが、バイオについて知りたいこと、気になることについての情報や見解を広く集め、誰もがアクセスできるコモンズとして育てていく。それは私たちの考察を深め、前向きな議論をするための土台であり、さまざまなプロジェクトを生み出す豊かなリソースにもなってくれるはずだ。

また、プロジェクト全体に「Open Bio Initiative」という少し大げさなスローガンをつけてみた。これからの国を動かすのは、情熱を持った個であると信じているからだ。(「国・行政のあり方に関する懇談会」「東京のグランドデザイン検討委員会」などを通じて、数十年先の理想の姿を考える機会があった。その時、自然と、でも揺るぎなく描いた未来像は、情熱を持った個が主体となって活動をリードしていくビジョンだった。)

国と企業がリードしてくれる時代は終わりつつある。欲しい未来は、私たち一人一人がつくるもの。誰に依存するでもなく、誰に不満を言うのでもない。自分たちで責任をもって、自分たちの未来をつくる。そんな未来的なプロジェクトの実践も、このプロジェクトの裏テーマである。

だから、活動デザインにおいて徹底的にオープンな設計を心がけている。活動を定義するプロジェクトチャーターはGoogle Docsで編集・加筆を自由にしてある。活動体の目的も、実施内容も、運営主も、キックオフMTGに集う情熱あるメンバーと共に生み出していくつもりだ。

ただそれは、個人だけが重要だということではない。このプロジェクトには省庁も、研究機関も、企業も、大学も参加してくれる予定だ。どこの組織に属しているかは関係なく、個人としてフラットに集まり、それぞれの専門性を活かしながら議論を深め、一緒にビジョンを作る。それが国の政策づくりの新しいフォーマットになるのではないかと夢見ている。

 

金曜日の夜はクラブ集合!

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百聞は一見にしかず。いくら知識を集めても、一回の体験におよばない、ということは多い。バイオ領域でもそれは当てはまる。DNAの抽出、菌の培養、遺伝子の組み替え。どの言葉も響きは怖く、SF映画を彷彿させる。

でも、昨年の夏に参加させてもらった小学生向けバイオワークショップで、果物のDNAを抽出する実験に参加させてもらった。子供たちに交じってキウイを選び、フォークでつぶして洗剤と塩を入れ、いくつかのシンプルな手順を踏んだら、手に持っていた試験管の中に、半透明のゼリー状の物体がユラユラ浮かびあがってきた。「これがキウイのDNAだよ」と言われ、その手軽さにびっくりしたのを覚えている。

なんてことはない、すべては生物に関わる技術なのだ。その身体感覚を大切にしたい。自分たちの手で微生物を培養したり、DNAをデジタル化して再び出力したり、バイオアート的表現に挑戦したり。

だからバイオ実験ができるウェットラボを作ることにした。場所は、FabCafe MTRLの横にある小部屋。これがバイオラボ「BioClub」である。興味のある人たちが幅広く利用できるバイオラボを目指す。金曜日の夜、東京のイケてる若者たちが「今からクラブに行かない?」と会話して、向かう先がFabCafeのバイオクラブだったら最高だ。

始まりは3月3日のキックオフ。そこから月1−2回のペースで議論を重ね、プロジェクトのあり方もデザインしていきたいと考えている。どんな未来になるのか。いつだって、見えないからワクワクするのだ。



Comments 1

  1. バイオプロセスを活用したものづくりをテーマに研究を進めています。
    再生可能な資源としては作物資源(遺伝資源)、未利用バイオマス(水産資源、森林資源)廃棄物系バイオマス(農畜産廃棄物、休耕地)由来の糖質、探索・改変した生物としては微生物、動植物細胞の酵素由来から糖質を発酵、培養、反応、抽出、精製、品質管理の過程を経てバイオ系素材として機能性物質(アミノ酸、ビタミン、オリゴ糖、ペプチド、脂肪酸)、バイオプラスチック、バイオ燃料(エタノール、ブタノール)、有用タンパク質、医薬中間体など。
    なお、現在GMカイコによる物質生産として化粧品原料、研究用試薬、体外診断用医薬品、動物用医薬品、タバコの葉による一過性発現系、スギ花粉症治療米などの開発について情報収集しております。

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