日記

与古為新

アマルティア・セン(Amartya Sen)『貧困の克服』を読みました。
アマルティア・センは1998年に、アジア人で初めてノーベル経済学賞を受賞した人です。
それまでの経済学は、ゲーム理論やロケット工学など最先端の数式やロジックを活用して、いかにお金を儲けるか?のために活用されていた印象があります。ところが1997年前後のアジア通貨危機などがあり、その経済原理が破綻します。その象徴はロングタームキャピタルマネジメントの破綻。ノーベル経済学者が2人もいて、ドリームチームと呼ばれていた会社でした。当時アメリカにいたので、そのときの驚きは今でも憶えています。
その時に改めて問い直されたのが、「お金って何のためにあるの?」。そしてそれこそが、まさにアマルティア・センの研究テーマだったのです。彼が生涯を通じて取り組んでいるのが「どうやった貧困はなくなるのか?」「経済によってどうやって人の生活を豊かにできるのか?」という課題なのです。


今、30年ぶりとか100年ぶりとかいわれる不況に直面しているので、改めて彼の経済学の基礎を勉強したくて読んでみました。経済学は私には解説できないので、興味がある人はぜひ彼の本を読んでみてください。
でも、その中でとても気に入ったことばがあったのでブログで共有です。
    「古きに与りて、新しきを為す」

セン氏が引用していた司空図という中国の古い詩人のことばです。
日本でも「温故知新」といった似たようなことばがありますが、新しきを単に「知る」のではなく「為す」という、より能動的で成果をあげる動詞になっているのが気に入ってしまいました(笑)
大学時代からの友人で、資生堂でTSUBAKIシャンプーを大成功させたマーケター、高津晶と話したときに、彼も「昔の資生堂の美学にはかなわない!そう思った瞬間にTSUBAKIができた」と言っていました。
高度成長期の資生堂の夏のキャンペーンの華々しさ、そして資生堂の椿マークに掲げられた美学。それらの価値の偉大さを「やっぱりすごい!」と受け入れた瞬間に、TSUBAKIシャンプーのロゴマークやコンセプトが降ってきて、「そうだ、資生堂のつばきでいこう」と思ったそうです。
私が書いたWebプロジェクトマネジメントの書籍も、PMBOKという50年以上前に生まれたある意味で古くて包括的な知識体系に感動し、勉強させてもらったから、最先端のWebプロジェクトにもノウハウを展開することができたのだと思います。
こんな不況の時代ではありますが、クヨクヨ嘆いていても何もはじまらない!
今まで自分たちがやってきたこと、信じてきたことを見つめ直して、改めて新しい一歩を踏み出せたらいいなと思いました。



Comments 10

  1. hiroshimo.myopenid.com

    「古きに与りて、新しきを為す」いい言葉をありがとうございます!

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  2. 温故知新 論語ですね。
    子曰、温故而知新、可以為師矣
    子曰(いは)く、故(ふる)きを温(たず)ね而(しこうし)て新らしきを知れば、以って師と為る可(べ)し
    過去のことを(習熟するまで)知って新しい意味を見つけて行動すれば、師となる事が出来るだろう
    四字熟語や諺って前後が省略されていることが多いので、本当の意味って分からないですね。古いPMBOKを習熟するまで理解したおして、そこにWEBプロジェクトでも通用する新しい利用方法を見つけ、それを書籍として多くの人に学んでもらえるようにしたり、講演をするって正にこの言葉通りですね。
    ちなみに「与」には「共に」「With」という意味があるので、「与古為新」を「古いことと共に新しいことをする」という解釈もあるそうです。ジェームス・W.ヤングの「アイデアの作り方」でも「新しいアイデアというのは既存のものの組み合わせ」という様な言葉があったと記憶しています。デイル ドーテンの「仕事は楽しいかね?」でも今やっていることをリストアップして、それを文節で組み合わせて新しいことを考えるというTIPSが紹介されていました。先人のやったこと、経験は大事ですね。そう言えば、PMBOKでも「過去の類似プロジェクトの記録を調査する」というのがプロジェクトの立ち上げ段階であった様に記憶しています。
    年末ですし、今年やったことの棚卸でもしてみましょうかね?

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  3. chiaki

    hiroshimo.myopenid.comさん、気に入ってもらえて良かったです。
    賢太郎さん、いつものように、本文より価値のある、素敵なコメントをありがとうございます。おっしゃるとおり、熟語の意味、わかった気になっていたけど、ニュアンスが違っていたなんてことはよくあります。
    「与り(あずかり)」という言葉は、すごく不思議な言葉ですね。共にという意味もあるんですか、ますます惹かれます。生き方としても「もっとこれが欲しい」「新しい何かをやりたい」よりも、今自分が手にしているもの、すでにまわりにあるものの価値を改めて見いだして、それを融合させながら新しい価値の創造につなげられる方が素敵だなと思う今日この頃です。歳をとったのかな?(笑)

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  4. chiaki

    あ、大切なことをひとつブログし忘れていました。
    セン氏が経済学を学び始めたのは「なぜ母国インドではいつまでも貧困層がなくならないのだろう?」という問題意識だったと。
    そしてノーベル経済学賞を受賞したときのインタビューで「私はその課題について何も解決できていない」と答えていたのを鮮明に憶えています。
    何か「大切なこと」をやり遂げるには、一生かかったり、一生かけても時に実現できなかったりするんだなと思いました。
    ひとつでいいから、自分の人生をかけて挑戦したい課題があるというのは素敵ですよね!

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  5. 「与」には「くみする」という訓じ方もあります。「仲間になる」とか「味方する」といった意味ですね。与党は元々は同じ意見を持った集団という意味です(野党は「よ」党に対して「や」党とや行の反対側をとっただけという説もあります)。ロフトワークスは林さんの「与党」ですね(^^)
    僕のテーマは「人は幾つになっても成長できる」ってことです。昔、IT業界では30までしかスキルを身につけることが出来ないとか、40歳を超えると転職は難しいとかいう様なことが言われていました(今も言われているかも)。でも、人間の可能性って年齢で決まるものかな?という素朴な疑問と若くても挑戦や成長を諦めている人もいるのだから、それって根拠のない妄説なんだと思いました。
    自分が成長に向かって楽しく人生を過ごすように、世界中の人が成長することに希望を見出して生き生きと人生を謳歌して欲しいと思っています。どうやったら、あらゆる人が「今日と違う明日」を生きられるようになるか?
    答えは僕の中にもありません。

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  6. Non

    派遣ビジネスが終り、中抜けビジネス構造が淘汰され、
    本物が残る時代が来ることを切に願います。
    ほんとうに技術の進歩が凄いです。
    ついていくことに必死ですから。
    ちなみに「出来ること、増えてます。」
    年明け、いろいろ落ち着きましたら・・・
    といいつついつもドタバタですよね・・・
    良いお年を!

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  7. chiaki

    賢太郎さん、私も100%同意します。何歳だから無理なんてないよね。今日が今年の仕事納めですが、「今年とは違う来年」がどんなものになるか、今から楽しみです。
    Nonさん、今年も一年本当にお世話になりました。「できること、増えてます」と言えるのがかっこいいですね!年明け、時間つくります。どんなことができるようになったのか、また教えてください。ありがとうございました。みんなにもよろしくお伝えください。

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  8. 今年と違う来年、今月と違う来月、今日と違う明日の自分のために、いつも新しいことにチャレンジしたいと思います。Chiakiさんは会社を経営していれば否応なしに変化を求められるのでしょうが、サラリーマンだとなかなか意識しないと変われないものです。少しばかり今年を振り返って来年のChangeに備えようと思います。Yes! I can!
    仕事納めで京都へGO!
    楽しんできてくださいね(^^)
    観光地は色々とありますが、意外と街中の喫茶店や町家を改装した食べ物やさんが雰囲気があってよいですよ。

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  9. chiaki

    Yes, you can :-)
    京都ではもっぱらお寺を見ています。龍安寺にいったらあまりに観光地化していてがっかりしてしまいました。それに比べると、仁和寺はゆったりしていて、奈良のような悠久な雰囲気があって素敵でした。
    今日は風神雷神をみに、建仁寺に行くつもりです。
    煩悩を捨ててきます(笑)

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  10. 温故知新、大好きな言葉の一つです。
    (座右の銘はブログのタイトル「和顔愛語 先意承問」なのですが^^)
    自分のブログでも何度も書いてますね。ついでに宣伝しておこっと(笑)
    http://www.zkaiblog.com/histaff/archive/612
    http://www.zkaiblog.com/histaff/archive/323
    http://www.zkaiblog.com/histaff/archive/132
    過去を訪ねることと過去を踏襲することは違うんですよね。
    過去を訪ねて、先人を超えよう!という気持ちで新しい価値を創造する。
    それが社会の発展であり、ほんとうの意味で先人に報いることだと思っています。
    …と、口だけは達者な私なんですが、自分の過去を訪ねたときに「あのときどうして○○しなかったんだろう」という後悔がゼロにはならず、精神的にモロい部分がありますんで(苦笑)、もっと成長しなきゃー
    09年はきっと、たくさんご迷惑をおかけすると思いますが(と、今のうちにいっておこっと)よろしくお願いいたします!

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