日記

Mr.セレンディピティ 伊藤穰一

今日、伊藤穣一がMITメディアラボの所長に就任することが発表された。(詳しくは New York Timesの記事MITメディアラボの発表Joiのブログ
震災などで気持ちが落ち込んでブログを放置していた私も、今日こそは、この記念すべき日のことを、喜びにあふれている自分の気持ちをきちんと整理しておこうという気持ちになった。
花とJoiと私
▲MITメディアラボの所長就任をお祝いにいって


日本で初めてのMITメディアラボの所長に就任したジョイ。世界中の名だたる候補者250人の中から選ばれたジョイ。TwitterKickstarterなど世界で愛されているベンチャー企業の個人投資家であるジョイ。Creative CommonsWITNESSMozilla Foundationなど世界のNPO活動も支援しているジョイ。色々な表情があるけれど、ジョイの魅力はどこにあるのか、私なりに考えてみた。
Joichi Ito
ジョイの魅力その1
ジョイのお陰で今の自分があると世界中の人に思われているところ

私もまさにその一人。2000年、アメリカから帰国したばかり。ロフトワークのアイディアに「そんなのお金にならない。お嬢さん、起業なんて諦めて普通に就職しなさい」と多くの人が言う中で、ジョイは初めて会ったその日に笑顔で「僕、出資するよ」と言ってくれた。お金にはならないと思うけど、目指しているものが好きだから、と。その後もロフトワークが正しく成長してこれたのは、株主総会などを通じてジョイがアドバイスをしてくれたから。「オープンのパワーはすごいよ」「日本だけに固執しちゃだめだよ。世界は広いんだから」「何のためにロフトワークを始めたのか忘れないようにね」。今のロフトワークも、今の私も、ジョイがいなかったら絶対になかった。
そしてジョイが本当にすごいのは、私のように思っている人が世界中にいるというところ。私がジョイに可愛がられているというわけではなく、ジョイは会った人の多くに、想像もしていなかったアイディアや出会いを生み出し、みんなにミラクルを起こしてしまう人なのだ。先日も東京で、ジョイのミラクルを経験した人たちが集まって「Thanks Joi」というパーティが開かれた。世界中でそんなパーティが開かれているに違いない。
ジョイの魅力その2
イノベーションを心から愛する

こんなに偉い人なのにジョイは気取ったところがちっともない。偉そうにも振る舞うこともない。会うといつも「ねえねえ、これって面白いと思わない?」と子供みたいに目を輝かせて、ハッカーがつくったガジェットや使い方が想像もできない新しいWebサービスを教えてくれる。今はスキューバーダイビングをこよなく愛していて、先日会った時も仕事の話は早々に切り上げ、「ところでさ、僕こないだサメに餌あげたんだよ!千晶ちゃん、写真見る?」と、金属のウェットスーツを着て海中でサメに餌をあげている映像を見せてくれた。仕事の打ち合わせ20分、サメの話15分。そして「あ、もう次の人がきちゃったから行くね」と去って行ってしまった(笑) ジョイの魅力は他にもたくさんあるけど、あげ始める切りがないからここらへんでとめておく。
ちなみにジョイがメディアラボの所長になるときいて、先週インタビューをさせてもらったのだが、その中でひとつだけ個人的な質問をさせてもらった。
「なぜ政治家にはならず、所長になったの?」

ジョイは小泉さんが首相だった頃、自民党から出馬してくれないかと要請を受けていた。その時ジョイは私に「政治家にならないかって言われているんだよね〜」と冗談ぽく話していた。でも最終的に出馬しなかった。
昨年の秋、ご飯を食べている時にやはりジョイは「MITメディアラボの所長のポストが空いていて立候補してみないかって言われているんだよね〜」と笑いながら言っていた。前と同じような口調だった。でも今回は所長に就任した。
政治家も大変だけど、メディアラボの所長だって大変なはず。なぜ政治家にはならずメディアラボを選んだの?と聞いたら、とてもシンプルな答えが戻ってきた。
「政治家になったら、担っている役割は大きくても、毎日僕が好きじゃないタイプの人たちに囲まれてつまらない時間を過ごさないといけない。MITメディアラボの仕事はすごく大変だろうけど、周りにいる教授も学生も最高に面白いんだよ。こんなワクワクすることってないよね。
僕は自分の人生をどれだけ面白い人たちと過ごせるか、を大切に考えている。だって僕は優等生タイプじゃない。楽しさでしか自分を動かせないタイプの人間(interest-driven person)だから」と笑顔で答えてくれた。
生きている時間は限られている。その人生を、どれだけ好きな人たちとの時間に費やせるか。そんなシンプルだけどハピネスに溢れている価値観で生きているジョイだから、私たちはますます魅了されるのだ。
対談の最後にジョイがポソっと言っていた。
「偶然をEmbrace(愛して受け入れる)して生きていきたいよね」って。
そして私はジョイこそが、Mr.セレンディピティ(偶然をきっかけに閃きを得て幸運を掴み取る人)だと思いました。
※ジョイがメディアラボで実現しようとしている目標は、後日、「Wisdomのあの人に会いたい」で掲載されるので、お楽しみに
▼おまけ
二人で韓国のCCカンファレンスでベストドレッサーを受賞した時の写真
CC Asia Conference 2010



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