ロフトワーク

CMS学会

7月23日、第一回目のCMS学会を開催しました。
CMS学会
「学会なんて偉そうなネーミングじゃないか?」
「一体何をやる会なんだ?」
と思われる方もいるかもしれませんね。そこでこの会が開催された経緯と主旨を説明したいと思います。


きっかけになったのはクライアントのコメントなのです。
今年1月に開催したCMSセミナーでのこと。講演してくださったクライアントの皆さんが休憩時間に話が弾み、お互いにCMS導入を起点としたアクセス解析方法とか検索エンジンとの連携などについて情報共有することに。これがとても有益で何より楽しかったみたい。そして笑顔の皆さんが帰り際に私に出した宿題がこれ。
「ロフトワークでユーザ会をやってほしい。でも単なる営業アプローチではなく、ロフトワークらしい会ができるはず。それを考えてみてください」

うーん、ロフトワークらしいユーザ会ってどんなものだろう。
パーティ?ゲーム?いやいや、そうじゃないでしょう。試行錯誤すること半年。そして迎えた5月のセミナーで神が降りてきました(笑)
「サイトづくりに求められるKPI設定」というテーマで講演をしたところ、そこにいらしていた三菱電機の大矢さんが質疑応答の中で「CMS導入の効果を測る指標が業界として全く整備されていない。毎回、同じような壁に企業のWeb担当者がぶつかっているのだから、制作/開発側でそういったものを整備したらどうか?」とコメントくださったのです。
その瞬間にシナプスが結合しました。これだ!
ということで実現したのが「CMS学会」なのです。
単に歓談するのではなく、集まったみんなで真剣にCMS導入効果の考え方や測定方法を考え、業界全体の改善に貢献できるような活動にしたい。そのため「勉強会」とか「ユーザ会」ではなく「学会」というネーミングを選びました。
また「ロフトワークらしい」という面では、教訓やグッドプラクティス(良慣行)は可能な限りオープンにすべきである、というロフトワーク理念に従って、CMS学会を通じてまとめるアウトプットは参加者全員の共同著作物とし、「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」を適用してみんなが自由に使えるようにしました。
この理念に共感して参加してくださったのが「CMS学会 参加メンバー」なのです。
西川慈恩さん(オムロン)、塚田広造さん(コニカミノルタ情報システム)、安齋利典さん・大矢富保さん・粕谷俊彦さん(三菱電機)、荻野寛さん(物質・材料研究機構)、本間充さん・田中剛さん(花王)、金子典正さん・ 大木慎也さん(ヤマトシステム開発)、岩木圭さん(大阪ガス)、山本忠俊さん(朝日新聞)、増井達巳さん(キヤノンマーケティングジャパン)、寺西隆行さん(Z会)、清水誠さん(楽天)、そしていつもロフトワークをサポートしてくれている高橋宏祐さん(富士通デザイン)。
事前にアンケート記入してもらい、当日、集まった指標をベースにディスカッションを行いました。一人の意見に触発され、みんなが次々と発言していく。議題もどんどん広がっていきます。
CMS学会
盛り上がった分だけまとめは難しくなりましたが、こんな視点で整理しようと思っています。
1)CMS導入するサイトを分類する
 サイトの種類によってCMS導入の目的は大きく異なるため、
 導入するサイトを分類し、それぞれにROI指標を考える。
 分類には経済産業省が試験的に公開している「IT投資価値評価ガイドライン」
 プロジェクトタイプを参考にする(インフラ型、業務効率型、戦略型の3種)
 
2)ROI指標はバランス・スコアカードに基づいてリストアップする
 「費用削減」「情報発信力強化」といった分類も試みましたが、
 高橋さんのアドバイスに従って管理会計で用いられている
 フレームワークであるバランス・スコアカードを採用。
 「財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点」
 の4つで整理してみようと思います。
3)数値化にこだわらない
 必ずしもすべての成果が数値化できるものではない。
 数字にならない定性的な効果も積極的に取り入れる。
4)CMS導入プロジェクトの成功と失敗の教訓も含める
 さらにROI指標だけでなく、導入プロジェクトで経験した
 リアルな成功のノウハウ、失敗の原因なども集約し、
 教訓としてまとめる。
CMS学会第二回は8月6日開催予定。メンバーみんなで項目を取捨選択したり洗練させ、アウトプットとしてまとめます!お楽しみに。



Comments 4

  1. 初めまして。プロジェクト管理(PMBOK)の書籍を読ませていただいたことがきっかけで、このブログを拝見しました。
    学会というネーミングはともかく、このようなユーザー会的取り組みはとても良いですね。機会があればぜひ情報交換させていただきたいと思います。

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  2. Non

    数値化できない部分としては、
    ・基盤となるWEB予備知識の向上
    ・情報提供(ドキュメント作成)能力
    ・企業パフォーマンス管理と成し得る広報活動
    企業&経営側の持つ情報とそれらの情報システムが、
    WEBを通して消費者とつながる時に、その手法は、
    ブームや流行、最新技術も含めて変化する。
    あくまでメソッドの変化なので、目的がメソッドに
    置き換わらないように心掛けることで、
    情報伝達のプロセスが一定の理念を持つことができる。
    簡単に言うと、企業側の一連の情報システムの中に、
    ある意味、広報担当がインターネットの役割はなく、
    任意の理念に紐付いたアウトプットであるということ。
    ということで・・・
    適切なUIが提供されていることが前提です。
    我々の現場はプロセスの中のほんの一齣に過ぎないですけど、
    それでも大きな役割だと思って毎日頑張りますよ。
    難しいことは頭の良い人達にお任せしますので、
    概念よりもアクションで行きたいと思います。
    ちょっと話はそれますが、ECサイト分析って面白いですよ。
    そのサイトの在庫・価格・売り上げ見通し・計上などって、
    表からでも動向調査できますので、そのEC部門の予算管理が
    見えてしまったりします。
    そもそもパフォーマンス管理も露出の程度を見極めないと、
    消費者側がフィードバックを自由に行うことに繋がりますし、
    よりリアルタイムなオペレーションが期待されますね。

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  3. chiaki

    tazukeさん、コメントありがとうございます。第一回のレポートはこちらにも掲載されています。
    http://www.loftwork.jp/seminar/2009/20090724cms_r.html
    第二回が終わったらちゃんと成果を掲載しますのでそちらもお楽しみに。
    Nonさん、こんにちは。元気にしていますか?
    > 簡単に言うと、企業側の一連の情報システムの中に、
    > ある意味、広報担当がインターネットの役割はなく、
    >任意の理念に紐付いたアウトプットであるということ。
    >
    >適切なUIが提供されていることが前提です。
    ご指摘の通りです。CMS学会でも実際に導入した企業担当者から最も多く寄せられたのは、制作費の低減や業務効率化よりも、Webに対する戦略的な視点から生まれたコメントでした。
    そしてそういうサイト運営を実現するには、CMSという基盤やアクセス解析ツールの活用が不可欠でもあるのです。
    ますます難しく、でもやりがいのある仕事になってきましたね。一緒に頑張りましょう。ECサイトの話も今度お会いした時にゆっくり聞かせてください。

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  4. 非常に興味深く拝見しました。名称や内容だけでなく、どのような団体が管理・運用していくのかなど今後の課題は多いと思いますが、現状指標となるものがなく、CMS導入またはリプレースを考えている企業の方にとっては、とても選びづらい状況であるのは確かだと思いますので、CMS学会の動きが業界にとっていい影響を与えることを期待しております。

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