「ロフトワークってどんな会社」と誰かが尋ねたら、
「クールなクリエイティブ集団」
そう答えてくれる人がいたらしあわせだなと思っている。
「クール」という表現を使う時点で、すでにクールではないのかもしれないけれど、アメリカで生の英語に触れた私にとって
“Wow, it’s cool!”
と人が言うときのニュアンスは他の表現では置き換えがたく、今でも私の中では最高の褒め言葉なのである。
ところが最近、困ったことに気がついた。
数の問題である。
誰かがこう言ったとしよう。
「渋谷にね、5人のクールなクリエイティブ集団がいてね」
この表現には、「5人」という数に選び抜かれた響きがある。アーティストのように尖った人たちの集まりを想像する。カッコいい。
次にこういう言ったとする。
「渋谷にね、20人のクールなクリエイティブ集団がいてね」
こう聞くと、なんだか楽しそうである。クリエイティブ好きが集まっていて、でも20人という規模を維持しているのだから、遊び心と同時にビジネス感覚も持ち合わせている印象も受ける。楽しく仕事をしてそうだ。
ところが、である。
もしこんな風に誰かが語り始めたとしたらどうだろう?
「渋谷にね、100人のクールなクリエイティブ集団がいてね」
・・・どこか違和感がある。
100人みんながクリエイティブ?
そんなこと可能なんだろうか?
1人1人が自立的に楽しみながら動ける印象が一気に弱くなり、兵隊のような組織をつい想像してしまう。
これは単なる私の印象ではなく、おそらく現実をそれなりに反映していると思う。5人なら完全に自立&独立。20人ならゆるやかな規則と各自の自主性を維持。しかし100人になるど、明確なルールや規範、最大公約数を優先する仕組みが、組織として機能させるために必要になる。それがどうしてもちょっとやってみちゃうチャレンジ精神、自立性、イノベーティブ、といったワクワクさせる要素と背反し、クールな印象を与えない。
でもロフトワークは100人、200人を超える組織に育てていきたい。クールなクリエイティブ集団のまま、どうやったらもっともっと成長できるだろう?
その時、頭に浮かんだのが、小さな集団の無限増殖。一つの集団は5人とか多くても20人。そんなクリエイティブ集団が世界でネットワークされている。
「世界に50の活動拠点をもっているクリエイティブ集団で、
ワールドワイドで300人のネットワークらしい」
こう聞くと人数が多くてもすごくクールだ。
それぞれの活動体が、「クリエイティブプロジェクトのプロフェッショナル」という基盤は共有しながら、地域や文化を融合させながら自立性をもって活動していく。そんな活動拠点が世界に広がっていたら、最高にワクワクするのである。
そんな未来へのヴィジョンを込めて、2011年9月1日、「ロフトワーク烏丸」をスタートさせる。
「ロフトワーク京都」でもなく、「ロフトワーク関西」でもない。
もっとマイクロに、もっと軽快に、どんどん仲間を広げていきたい。
同時に東京にあるロフトワークも「ロフトワーク渋谷」に変えた。いつかロフトワーク丸の内、ロフトワーク武蔵小金井、ロフトワーク神田といった感じで、東京の中にもいくつも拠点が増えていく気がするから。
次にできる拠点はどこだろう?
はるか海を越えた街かもしれないね。
それを案内できる日もそう遠くないはず!
▲渋谷と烏丸はモニター越しにいつもつながっている