胸ときめく大好きなシーズンがやってきた。12月25日まではクリスマス一色。艶やかなイルミネーションやクリスマスケーキでお祝いしていたかと思うと、翌日には心機一転。襟を正して日本人らしく、新年を迎える準備を始める。玄関の飾りも、間をおかずにクリスマルリースからしめ縄へと代わり、お節料理をいただく。このせわしなさと、美味しいものを両取りしてしまう欲張り感がたまらない。
何より元旦は日本中、夢であふれている。普段は苦手な人混みも、初詣のごった返しは例外。みんながどんなことを祈るのかと想像しながら、初詣の列に身を委ねるのも悪くない。そして今年も日本のしきたりに習って、新年の抱負をしたためておくこととする。
「早起きは三文の徳」で胆力を高める
この数年、6時起床を続けてきたけれど、子供の高校入学を機に4時半起きをしなくてはいけなくなった。さすがに冬の4時半は辛い。暗いし、寒いし、なんといっても眠たい。年末は忘年会も続いたので、布団の暖かさに負けてずるずると二度寝をしてしまっていたが、今年から初心にかえり朝型リズムを取り戻そうと思う。
でも、ただ我慢して起きるだけじゃつまらない(し、続かない)。出社までの3時間を楽しくて、有意義に使うプランを立ててしまおうと思う。まず筋トレから始めるつもり。歳を重ねると美しさの基本は筋肉だと教わり、俄然モチベーションがアップした。身体が健やかに整ったら、ミルクティでも飲みながら、読書と文章書きで脳のトレーニングに移る。今まで以上に思考を整理し、言葉にすることが必要になりそうだから、朝の自由時間は貴重なはず。
すぐに成果を伴わない努力を続ける力を「胆力」というらしい。今年鍛えたいのは、まさにそれ。一日一日、眠さに負けずちゃんと起きる。その先に、精神的な胆力の向上もあるはず。
イノベーションを腹落ちさせる
ロフトワークのメンバーと、オープンイノベーションの実践を重ねてきた。2014年にYAMAHAと一緒に開催した音楽ハッカソンからは、世界で注目を浴びる光るスニーカー『Orphe(オルフェ)』が生まれた。2016年に開催された茨城県北芸術祭では、芸術祭として初めてアートハッカソンで作家を選出し、科学者とアーティストの混合チームから作品『干渉する浮遊体』が誕生。アワードで受賞するなど、高い評価を得ている。
オリンパスと数年にわたって取り組んできたオープンプラットフォームカメラ『Olympus Air』は、2015年にグッドデザイン賞ベスト100を受賞。ユーザが自由にカメラパーツを出力できるサービスを広げるなど、製品の魅力を高めるための取り組みが続いている。このように、ハッカソンに代表される「オープンイノベーション」という技法は、確実に成果を生み出している。
実践に加え、言語化も進めてきた。経済産業省イノベーション小委員会では、議論を重ねてレポートを作成。オープンイノベーションを「アイディア創出」「技術開発」「社会実装」の3つのフェーズで定義した。詳しくは、新しい働き方を提案するメディア『WORKMILL』で、筑波大学立本先生と遅野井さんとの鼎談を通じて解説しているので、ぜひ読んでほしい。(「オープン・イノベーション ― 日本企業の変革を阻むものとは」「日本流ブレークスルーのカギはどこに?」「創造と変革への萌芽を育てるために」)
それでもどこかまだ、オープンイノベーションの所在が定まらない。だから今年は、オープンイノベーションを経営学における実践的技法として捉え、どのような役割を担い、どのように他の技法と連携するのかを統合してみたい。それによりオープンイノベーションにとどまらず、イノベーション領域で新たに生まれている技法群を、単なる「ノウハウ」としてではなく、これからの時代に重要な経営手法として位置づけられるのではないか。なぜなら、ハッカソンもデザインも、遊びでも格好つけでもない。経営に直結する重要な技法だと信じているから。
愛で多様性を受け入れる
偉そうな抱負を並べてしまったけれど、長い目で取り組みたい大切な目標がこれだ。ロフトワークのメンバーも100名を超えた。これだけの人数になると、いろいろ、多様になる。結果を出して自信満々なメンバーもいれば、個性的な才能をうまくいかせず悶々とするメンバーもいる。出産して幸せいっぱいの人もいれば、失恋して仕事どころじゃない人もいる。他にも留学、独立、病気、家業の後継ぎなど、様々な相談が舞い込んでくる。
前までは、悶々とするメンバーがいるのが苦手だった。まるで経営者として未熟だと宣言されている気がして、事態の改善に必死になっていた。でも最近、考え方が変わってきた。
もっと、そのままを受け入れてもいいのではないか。できるところ、できないところ。調子がいい時、悪い時。交感神経と副交感神経が交互に作用するように、揺らぎがあって当然だ。苦手なところを矯正するのではなく、視点をかえて、個性が生かされる環境をじっくり生み出せばいい。
だからロフトワークは、エリート集団じゃなくて、多様な芸人集団、あるいは動物園のような会社になるんじゃないかな。不思議な、個性豊かな人間がどんどん集まってくる。それは、短期的には不調和をもたらすから、すぐには成果に繋がらない。会社としては、困るかもしれない。でもそんな状況からこそ、想像もしなかった新しい発想が生まれて、私たちはより一層、クリエイティブになるのだ。
「矛盾しうる要素を一度に呑み下し、実践のなかに発展的に解消することをこそ、創造的というのだ」と言ったのは、尊敬する川喜田二郎氏。ロフトワークはこれからも創造的企業として、関わるものそのままを受け入れて、可能性を引き出す存在を目指したい。
2017年元旦