4. partner デザイン経営とデザイナー

どのようにすれば自社のビジョンと響き合うデザイナーに出会えるのか。良縁を結ぶために
必要な姿勢はあるのか?
第一線で活躍する経営者とデザイナーが、それぞれの体験と気づきを語ります。

経営者

大江健(米富繊維株式会社 代表取締役社長 / COOHEM Director
日本有数のニット産地、山形で高校時代までを過ごす。卒業後、専門学校にてマーケティング、デザイン、ファブリックを学ぶ。その後、セレクトショップのスタッフを経て、 2007年、国内有名ブランドとの OEM 事業も数多く手掛ける家業の老舗ニットメーカー米富繊維株式会社に入社し、ニットテキスタイルの企画開発に携わる。長い歴史の中で独自に開発されたヴィンテージテキスタイルの数々に着目、ニットツウィードという素材の持つ無限の可能性を追求し、表現をすべく2010年に自社ブランド COOHEM(コーヘン)を立ち上げる。その後、2016年にTOKYO FASHION AWARDを受賞、2020年には第2の自社ブランド「THISISASWEATER.(ディスイズアセーター)」をスタートさせる。2015年以降、米富繊維の代表として国内外に日本のファクトリーブランドの進化を発信している。

出会い

パートナーとなったデザイナーとどのようにして知り合いましたか?

東京にいるクリエイティブ面でアドバイザーになっている方に紹介してもらいました。

契機

なぜそのデザイナーと一緒に仕事をしようと思ったのか理由を教えてください

自分自身が山形本社ベースになるタイミングで、自社ブランドだけではなく、企業としてのブランディングに着手する必要性を感じていたタイミングで、WEBからパッケージ、ロゴ、ビジュアル作成を一気通貫で手掛けていたので。

伴走

デザイナーとのコミュニケーションで気をつけていることは何ですか?

まず、お任せして、自分と感性が違うなと感じても、なぜそのデザインにしたのか?考えを聞いてから感想なりコメントをするようにしている。また、お任せする時は細かいところはあえて指示せず、指示したい場合は依頼の段階で細かく指示するようにしている。

習慣

優れたデザインを経営に取り入れるため、普段から
心がけていることはありますか?

ファッションに限らず、いろんな製品(食品など)や建築を見て、そのデザインの背景にあるものを考えること。デザインを考える際は、それを使用する人の嗜好性、生活スタイル、使用することによってその人が得られるであろうベネフィットを考えるようにしています。"

挑戦

デザイン経営を軸にこれから挑戦したいことは何ですか?

WEBや動画配信などを利用したビジュアルコミュニケーション、コロナ禍の中で地方の会社が外に発信する際には必要不可欠なツールであるから。

山田明良(福永紙工 代表取締役)プロフィール
1962年愛知県生まれ。アパレル商社勤務を経て、1993年福永紙工㈱へ入社。
2008年同社代表取締役に就任。2006年かみの工作所プロジェクトを立ち上げ。「テラダモケイ」や「空気の器」など紙を使ったアイテムをリリース。現在も多くのデザイナーと協働で紙の可能性を追求した製品の開発、製造、販売を手掛ける。
2019年~武蔵野美術大学/空間演出デザイン学科 非常勤講師

出会い

パートナーとなったデザイナーとどのようにして知り合いましたか?

最初に出会ったのはデザイナーではなくデザインディレクター、そこから一緒にデザインプロジェクトを組み立て、多くのデザイナーとのネットワークが拡がった。私も含め多くの経営者はデザインやアートの専門教育を受けていないので最初はデザインディレクターもしくはディレクションスキルのあるデザイナーと取り組むことがオススメ。

契機

なぜそのデザイナーと一緒に仕事をしようと思ったのか理由を教えてください

最初に出会ったデザインディレクターは多摩地域とデザインを結びつける活動を始めたばかりでその頃(15年前)弊社は自社の仕事にデザインの要素を取り入れたいと思っておりお互いの思惑が一致し意気投合した。

伴走

デザイナーとのコミュニケーションで気をつけていることは何ですか?

お互いを尊重することを前提になるべくフラットな関係性を作ることで長期的な信頼関係が生まれると考える。弊社がクライアントだから「上」でもなく、デザイナーが「先生」でもない関係。
またデザイナーとの取り組み条件(お金のことも含めて)をなるべく初期段階で明確にしておく。お互い納得した上できちんと契約書を取り交わしている。

習慣

優れたデザインを経営に取り入れるため、普段から
心がけていることはありますか?

まずはデザイナーからの提案は「全面肯定」から始める。デザイナーの権利、知財を大事にする。出来るだけ時間をかける/結果を急がない。すぐ儲けようとしない。
また「デザインを経営に取り入れる」も大事だが「デザインするように経営する」意識で取り組んでいる。事業の構想をデザイナーみたいにラフスケッチしてみる。そのラフスケッチが自分なりに美しいかどうか考察し儲かりそうでも美しいと思えない場合は着手しないようにしている。

挑戦

デザイン経営を軸にこれから挑戦したいことは何ですか?

これまでの製造中心のモノづくり事業を緩やかに継承しつつもよりクリエイティブに特化した企画、開発、デザイン、ブランディング事業に注力し紙の可能性を追求していく。
また若いクリエーターやデザイナーがのびのび、ラディカルに発想、空想、活動できる環境を少しでも提供していきたい。そうすることで長期的にみて自社のポテンシャルや存在の意味が見出せると考える。
これまでの慣習や常識を「美しいかどうか?」の視点で考察しブルシット・ジョブを排除することで右肩あがりの成長を前提としない企業のあり方、生き方に挑戦したい。

1963年 福井県生まれ。1986年 株式会社若越(現ジャクエツ)入社。2004年専務取締役を経て、06年より現職。株式会社ジャクエツは1916年創業。「未来は、あそびの中に。」をスローガンに、幼児施設向けの教材や遊具の製造販売にとどまらず、園舎の設計施工や、近年は美術館や商業施設といった公共施設にあるキッズスペースへ質の高いあそび空間づくりを提案している。

出会い

パートナーとなったデザイナーとどのようにして知り合いましたか?

クリエイティブディレクター・佐藤可士和さんとは、2003年に佐藤さんが出演されたテレビ番組で、今後やってみたい仕事について「今まであまりデザインの力が入っていない領域、医療とか教育とか、たとえば幼稚園などをぜひデザインしてみたいですね」とお話されていたのをみて、すぐに佐藤さんに会いにうかがいました。そこから、「ふじようちえん」(東京都立川市)のプロジェクトがスタートしました。佐藤さんとの出会いをきっかけに、プロダクトデザイナーの深澤直人さんをご紹介していただき、第一線で活躍するデザイナーとのプロジェクトが加速していきました。2015年には、あそびの研究所「PLAY DESIGN LAB」をつくって、デザイナーを中心に研究者、建築家、教育者など、分野の枠を超えた協働を始めています。

契機

なぜそのデザイナーと一緒に仕事をしようと思ったのか理由を教えてください

佐藤可士和さんには、「自社の弱いところを補うためにデザインを使うのでは無く、一番強くて勝負ができるところにデザインの力を使ってほしい」と言われました。個別の施策ではなく、経営戦略としてデザインを活用してほしいということです。経営がわかるデザイナーとは、経営者も一緒に経営そのものをデザインすることができます。そのためには経営者自身がデザインへの関心を持つことも必要だと思います。
それから、外部の優れたデザイナーと仕事をすることで、社内のデザイナーが多くの刺激を受けながら成長することができました。社内だけだと、どうしても新たな発想が生まれにくくなりますし、外部と関わることで、これまで当たり前に感じていた自分たちの強みにも気付くことができます、今はお互いのノウハウをうまく融合させながら、新たな製品開発を進めています。

伴走

デザイナーとのコミュニケーションで気をつけていることは何ですか?

思いを共有することを大切にしています。これからの時代、共感力や感性が大切になるからこそ、私たちは「あそび」に価値があると考えています。ご一緒していただくデザイナーの方々は、みなさん「子どもたちに何か残したい」「子どもの未来に関わりたい」といった強い思いをもってらっしゃいます。そんな方々と、あそびの価値について思いを共有し、考えを巡らせることで、新しい展開をつくっていくことができます。
プロジェクトを進めるうえでは、福井本社の開発拠点であるINUHARIKO LABや工場、モデル幼稚園など、企画開発の場から子どもたちがあそぶ現場まで、実際に来て見てもらうことも意識しています。自分が考えたコンセプトを形にしてすぐさま反応を確認できるフィールドがあることは、デザイナーにとっても魅力的です。こうした環境の中で、より良いモノ・コトづくりが実現できていると思っています。

習慣

優れたデザインを経営に取り入れるため、普段から
心がけていることはありますか?

「知恵にお金をかける」ということを心がけています。中小企業の多くはそもそも資金に余裕があるわけではありませんが、そんな中でのお金の使い方・買い物には経営者の考え方や感性が明確にあらわれます。好きな陶芸作家の河井寛次郎の言葉に「物買ってくる。自分買ってくる。」「この世は自分を探しに来たところこの世は自分を見に来たところ。」「どこかに自分がいるのだ。出て歩く。」の3つがあります。この言葉にもあるように、顧客として自分のお金で買ってみる、外に出かけて、顧客や他の業界の方、デザイナーなど、たくさんの人に直接会って話を聞き、五感を使って身体を介して知識を知恵にすることが大切だと思っています。

挑戦

デザイン経営を軸にこれから挑戦したいことは何ですか?

社内では「未来価値」という言葉を使っていますが、私たちがつくって提供しているのは子どもたちにとって利便性が高く効率的で、即効性のある価値ではなく、子どもの成長と共に拡大する、未来に花ひらく種でありたいと考えています。今の子どもたちには右肩上がりの経済ではなく、将来予測が不可能、答えの見えない社会が待ち受けています。創造力や共感性などあそびを通して学んだ力(非認知能力)をもとにして、子どもたちが困難を乗り越えて自分の道(将来)を拓いていけるようにすることが、より良い社会をつくる近道になると信じて、そうした未来価値を創造する企業を目指してまいります。

デザイナー

2003年金沢美術工芸大学卒業後、日本デザインセンター入社。2011年大黒デザイン研究室設立。2018年から拠点をLAに移す。グラフィックデザインを基軸に置きながら、アート、ライフスタイル、テクノロジーにフォーカスし、新たな価値創出のためのプロジェクトに積極的に取り組んでいる。主な受賞歴:東京ADC原弘賞、JAGDA新人賞、JAGDA賞、SDA賞、D&AD(UK)、NYADC、One Show、Clio Award(US)、FRAME Award(HL)ほか多数。

出会い

なぜデザイン経営に取り入れたいと考える事業者からの
依頼を引き受けようと思ったのか、理由を教えてください

プロジェクトを良い方向に進めるためには、クライアントとデザイナーという形式的な関係性だけではなく、お互いをリスペクトし、価値観や美意識を共感できる関係性が重要だと考えています。デザイナーの投げたボールをしっかりと受け止め、そのボールをしっかり返してくれる人、このやりとりの質が高いほどプロジェクトの推進力が高まります。同時にデザイナー側もクライアントの課題に向き合い、価値ある提案をする力が求められます。
製品やサービスの価値を人々に伝えるプロセスは全てデザインだと考えています。デザイン経営とはプロジェクトの具体的なヴィジョンを立て、チーム全体が同じ方向に進むことを重視する姿勢の表れなのではないでしょうか。そのような企業や人に貢献したいなと思っています。

契機

デザイナーから見たデザイン経営における
「良い」デザイナーのポイントを教えてください

物事に潜む本質的な価値を見つけ出し、可視化できるデザイナーです。言い換えると、社会の変化にアンテナを貼り、社会をより良くする可能性に立ち向かえる人。本当に良いものを知り、自分の言葉で世の中に発信できる人。そして、直感を信じてクリエイティビティを発揮できる人です。

伴走

経営者とのコミュニケーションで気をつけていることは何ですか?

目指すべきゴールのイメージを共有することです。経営者との会話では、今目に見えているものではなく、その話を見据えたことがほとんどです。ヴィジュアルコミュニケーションを行うには、曖昧な認識で進めていくのは無理です。重要な言葉やイメージを見つけられれば、全体のデザインコンセプトにつながっていきます。なので、今ないものは会話の中から探していくしかありません。言葉やイメージを聞き出す工夫をすることに気をつけています。これは自分の理解が深まると同時に、経営者の方も頭が整理されていくことがあります。

習慣

優れた経営者と出会うために、自身の仕事の
発信の仕方で普段から心がけていることはありますか?

優れた経営者と出会うためという目的で考えたことはありませんが、目的と方法をシンプルに伝えることは心がけています。
それよりも、価値観と美意識を共有できる人との繋がりは大切したいと思っています。

挑戦

デザイン経営を取り入れようとしている事業者との仕事で
取り組みたいことは何ですか?

僕が活動テーマとしている、アート、ライフスタイル、テクノロジーを掘り下げられる仕事に巡り会えたら嬉しいです。環境問題は今後あらゆる分野において価値基準となっていくでしょうし、宇宙開発事業もとても盛り上がっています。現在はアメリカ、中国、UAEが火星探査を進めていますが、日本の企業も技術面でとても活躍しています。近い未来にデザインから宇宙開発に携わりたいです。

2009年、角田真祐子と長谷川哲士によって設立。デザインをみんなの力にすることを目指し、ハッピーなデザインでみんなをつなぐデザインチーム。「想いを共有し、最適な手段で魅力的に可視化し、伝達する」一連の流れをデザインと考え、グラフィックやプロダクトなどの領域に捉われない活動を様々な分野で展開する。グッドデザイン賞、日本パッケージデザイン大賞金賞、キッズデザイン賞など受賞。武蔵野美術大学、昭和女子大学非常勤講師。

出会い

なぜデザイン経営に取り入れたいと考える事業者からの
依頼を引き受けようと思ったのか、理由を教えてください

デザインと経営の距離が近くなることで、デザインの持つ力を効果的に発揮しやすくなると考えているからです。デザインは、色や形などのビジュアル面をどのように設計しコントロールするのかという部分がわかりやすい役割ですが、それはあくまでデザインの1つの側面にすぎません。何のためにビジュアル面を統一するのか?本当に伝えたい想いは?など、目には見えないベースとなる考え方を整理し、研ぎ澄ますというのもデザインの重要な役割です。後者のようなデザインの認識は、まだまだ十分とは言い難く、色や形を整えるだけの仕事だと思われていることがほとんどです。デザイン経営の成功モデルが少しずつでも増えていくことで、デザインへの認識も変わっていくことを期待しています。

契機

デザイナーから見たデザイン経営における
「良い」デザイナーのポイントを教えてください

企業毎に「良い」の基準は変わってしまうと思うのですが、全体に共通して重要だと思うのは「コミュニケーション」です。色や形を決める前段階として、考え方や想いを整頓するには、コミュニケーションを重ねていくしか方法がありません。デザイナーは、自分たちの感覚を押し付けるのではなく、まずはしっかりと事業者の話を聞いて現状を知ることがスタートです。そして、聞いたことを鵜呑みにせず、わからないことや気になることに対して、的確に質問し提案する必要があります。これらのコミュニケーションを如何に円滑に行えるのか否かという点が、「良い」デザイナーを判断するポイントになると考えます。デザイナーと事業者の相性もコミュニケーションの内容に大きく影響するので、実際に話したり会ったりした際のフィーリングも重要な判断基準だと思います。

伴走

経営者とのコミュニケーションで気をつけていることは何ですか?

経営者の方の「好き嫌い」での判断ではなく、事業の目的に対して「良いことは良い」「悪いことは悪い」とはっきり、且つ失礼の無いように伝えるようにしています。クライアントとデザイナーは受発注という契約関係ではありますが、1つのチームという意識で接するようにしています。経営者(クライアント)から言われたことを、言われたままにやるのではチームとは言えません。両者で同じゴールを設定し、協力し会って一丸となり突き進むのがチームだと思います。時には意見がぶつかることもあるかもしれませんが、それらもポジティブに乗り越えることで絆が深まり、よりハッピーな関係性の強いチームになれると思っています。

習慣

優れた経営者と出会うために、自身の仕事の
発信の仕方で普段から心がけていることはありますか?

出会うためには、まず知ってもらう必要があるので、手がけた仕事をHPやSNS、自社メールニュースなどで定期的に発信しています。その際に、完成物のビジュアルだけではなく、プロジェクトの背景や狙い、表現の裏側にある前提なども文章で簡潔に記載するようにしています。それは、ビジュアルによる感覚的な認知と、説明テキストによる言語的理解の両面から自分たちの仕事を知ってもらいたいと考えているからです。そして、トークショーや取材などメディアを通じての発信の際に、「ハッピーなデザイン」というminnaの活動コンセプトが伝わるように、発する言葉がブレないように意識して受け応えしています。何気ない日々のふるまいや、小さな積み重ねが、そのデザイナー自身のイメージにつながると考えています。

挑戦

デザイン経営を取り入れようとしている事業者との仕事で
取り組みたいことは何ですか?

事業者の方々の既存事業を継続、拡大していくことだけでなく、デザイン経営の強みを活かした新しいチャレンジをご一緒できればすごく素敵だなと思います。経営の段階からデザイナーが関わることで、今までにない発想や可能性が生まれ、予想もしなかった新たな展開を迎えるかもしれません。未知なる変化を楽しみ、物事の表層だけではなく、その前提に対してもデザインの力を活用することで、世の中をもっとハッピーな方向に進めていけると信じています。

小板橋基希(アートディレクター・デザイナー/株式会社アカオニ代表取締役)
1975年群馬県生まれ。東北芸術工科大学卒業。大学入学とともに山形に移住。東北の「自然・暮らし・遊び・食べ物」に魅せられ卒業後も山形に定住し、2004年にアカオニを立上げる。以来、グラフィックデザインからWeb、写真、コピーワークなどのクリエイティブを駆使するデザインチームとなり、全国津々浦々に点在するクライアントの様々な要望に応えている。現在も山形市にて「アカるく すなオニ」営業中。
https://akaoni.org

出会い

なぜデザイン経営に取り入れたいと考える事業者からの
依頼を引き受けようと思ったのか、理由を教えてください

デザイン経営の導入というより、ロゴやパッケージ、WEBサイトなどの直接的な制作を入口に、関係性が続き、デザイン事例が積み重なっていく事が多いです。事業者の方々も「デザインの力」を少しづつ実感していく感じです。
ターゲットやネーミングなど詳細が決まった状態で依頼されるよりも、もっと前段の部分から相談をしてもらうと、デザイナーとしても色々な角度でアプローチでき、より面白いアウトプットが可能です。そんな二人三脚を組んでくれる事業者からの依頼はすすんで受けています。
事業者もデザイナーに遠慮せずに、どんどんコンタクトを取って出会いを作って欲しいです。世の中にはデザイナーを紹介する本もサイトも沢山あるので、勇気を持って踏み込んでみることが新しい出会いにつながるはずです。
デザインは会社の商品やサービスの質を上げる「投資」です。デザインへの投資の覚悟、価値への理解があれば良いデザイナーと出会えると考えてます。

契機

デザイナーから見たデザイン経営における
「良い」デザイナーのポイントを教えてください

言われたことをやるだけでなく、デザイナーの視点で会社の面白い未来を考えてくれるデザイナー。またせっかく作った商品が売れないと誰も幸せになれないと考えているので、きちんと売り上げに還元できるデザインができることも大事なポイントです。

伴走

経営者とのコミュニケーションで気をつけていることは何ですか?

業界の固まってしまっているルールや考え方を良い意味で更新していきたいと思っているので、自分の考えはしっかり伝えるようにしている。そして経営者の考えも冷静に受け止めて、デザインをどのように事業の取り組めば面白くなるのかを考えるようにしています。個性豊かな経営者の方々と信頼関係を作っていくことも面白さのひとつです。
またローカルでは、少しづつ予算をかけながら段階的にデザインを及ぼしていくことや、即効的な成果を求めるよりも継続的に使い続けられるデザインが必要な場合が多々あります。このゆるやかな時間軸を事業者と焦る事なく一緒に楽しむことも大切です。

習慣

優れた経営者と出会うために、自身の仕事の
発信の仕方で普段から心がけていることはありますか?

山形は製品の品質の高いクライアントが多く、そんな人たちと同じ生活圏で暮らすことで、良いデザインが生まれ、それらの仕事が、現在の色々な方達との出会いに繋がりました。これからも面白い情熱や想いを持った人に出会いたいです。

挑戦

デザイン経営を取り入れようとしている事業者との仕事で
取り組みたいことは何ですか?

新しいこと、価値観、未来を作ろうとされている方と仕事したいです。そこでできたデザインが良い循環を作り、より面白い社会へ繋がっていくと思っています。

Hitomi Watanabe Deluca HI(NY) | Co-founder, Creative Director, Art Director
ニューヨークのSchool of Visual Artsグラフィックデザイン科卒業。2008年にIku OyamadaとHI(NY)を設立し、2016年に日本支社を京都に開設。著書に『ニューヨークのアートディレクターがいま、日本のビジネスリーダーに伝えたいこと』(共著)。

出会い

なぜデザイン経営に取り入れたいと考える事業者からの
依頼を引き受けようと思ったのか、理由を教えてください

私たちの仕事は、事業者の個性や強み、大切にしたいと思っている理念、社会的な存在意義などといった、その会社の唯一無二の「らしさ」を最大に引き出し、その価値を正しく演出し、効果的に伝えることです。そしてそれによって、事業者が提供するブランドに対してお客さまに共感してもらい、ファンになってもらうことをゴールとしています。まず私たちが事業者のその思いに共感できるかどうかということが非常に重要なポイントとなってきます。
人の思いとは当然、人それぞれさまざま。事業にとっての目標や哲学だけでなく、その思いの基盤となっているもの、根底にある志、考え方など、その人個人の「らしさ」を私たちは大切にしています。もしかしたらその思いは提供するサービスや商品とは直接は関係ないかもしれませんし、関係ないと少なくともご本人は思っているかもしれません。しかし、ブランドを続けていくと、この個人の「根本」が透けて見えてきます。ここにギャップがあると、ご本人も苦しくなってきますし、ブランドとしてもブレや違和感が生じてきます。ですので、私たちがここに共感できるかどうかが決め手となります。

契機

デザイナーから見たデザイン経営における
「良い」デザイナーのポイントを教えてください

事業者・ブランドオーナーとラポール、つまり信頼関係を築けること。課題や強みを的確に見つけ、固定観念や自分の価値観にとらわれず本質を見極められること。信頼関係をもとに唯一無二の「らしさ」を引き出せること。オーディエンスや時代、市場を偏りなく把握できること。柔軟な思考でクリエイティブに問題解決ができること。ブランドのDNAを、ターゲット・オーディエンスや社会に正しく伝わるかたちに表現することができること。
これら全てが大事なポイントですが、これだけ多岐に渡る内容全てに長けていて、一人で全てをカバーできる人というのは稀だと思います。自分の弱い分野も認識し、それを補える人とチームになって活動するという選択を取れることも重要なポイントです。

伴走

経営者とのコミュニケーションで気をつけていることは何ですか?

傾聴することとラポールを築くことです。話の内容だけではなく、話し方や語調、表情やしぐさなどの相手が発するあらゆるサインを受け取れるよう感覚を集中させます。
ブランドの基盤づくりをする上で、経営者の本当の思いを知る必要があります。本人が自覚していることだけではなく、意識にのぼっていないような内的な側面も引き出していかなければなりません。ですので、相手に集中し、言葉をくみ取り、気になる箇所がでてきたらそこを深掘りするようにしています。
その時に気をつけているのは、愛情をもって聞くこと、ポジティブでいること、リラックスして話せるような雰囲気にすることです。いつも相手のチアリーダーになったようなイメージで接しています。あとは、自分の価値観で測らないこと、一般化したなにかに紐付けないことです。主観によっていろいろな受け取り方ができる表現の場合は、自分の感覚で勝手に理解しようとせず、どういう意味なのかを定義してもらい、きちんと理解できるように気をつけます。

習慣

優れた経営者と出会うために、自身の仕事の
発信の仕方で普段から心がけていることはありますか?

デザイン経営、つまりブランディングにとって、最終形となるビジュアルはあくまで一要素に過ぎません。そこに至るまでの思考プロセスと、戦略とアウトプットを串刺しするクリエイティブな視点を伝えることを心がけています。
プロジェクト以外にも、自分たちの目線で選ぶデザイン経営の成功事例や、日本のデザイナーの社会的地位を上げるための提言、ソーシャルデザインについての私見、ときには経営と育児の関係性など、一見プロジェクトとは直接関係のないようなことも発信しています。私たちと事業者は、デザイン経営という長距離を伴走していくチームメイト。私たちが事業者に共感できなければいけないのと同時に、事業者も私たちに共感していただくことができければ、信頼関係を築くことはできません。それ故に、プロジェクトだけではない私たちの理念やビジョンなども常に発信するように努めています。

挑戦

デザイン経営を取り入れようとしている事業者との仕事で
取り組みたいことは何ですか?

私たちにご依頼くださる事業者の方々は、業種はさまざまですが、不思議とどこかの部分で公約数が出てきます。商品やサービスそのものに限らず、会社としてのビジョンに共通点があることもあれば、社会的責任に関する理念が同じ方向であることも。すでに取り組んでいることなのですが、この公約数を繋がりとして事業者の方々を引き合わせ、それがそれぞれの事業にも、そして社会や環境にも相乗効果が生まれたときに、大きな喜びを感じることができます。
これまでにも、例えば環境への配慮をコンセプトとする宿泊施設と、クリーンビューティに徹底する美容ブランドを、アメニティの導入へ向けて引き合わせたり、地域創生を目的とした商品を開発する事業者さんを、社会的課題の解決がテーマのショップに紹介したりなどしてきましたが、このような取り組みを今後もたくさん広げていきたいと思っています。

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5. Practice デザイン経営と実践

2021年に著名なデザイナーや経営者を講師に招き、実際に様々な分野の事業者が取り組んだ、デザイン経営導入支援プログラムの課題をシェアします。実践への第一歩はここからはじまります。

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