パナソニック株式会社 PROJECT

「共に+創る」オープンイノベーションに向けたメンバーの想い

パナソニックの仙田氏、蓑田氏、青山氏と、ロフトワーク棚橋の4名で振り返るワンダーラボ大阪プロジェクト。彼らのオープンイノベーション実現に向けた想い、ワンダーラボ大阪設立の背景や、空間づくりのプロセス、共創空間としての魅力をロフトワーク渡部が取材してきました。

なぜパナソニックはオープンイノベーションに挑戦するのか?

仙田 圭一さん 先端研究本部 インタラクティブAI研究部 部長

─ ロフトワークとは2012年ごろからすでにいろいろな共創プロジェクトでご一緒していましたが、パナソニック社内ではオープンイノベーションへの機運があったんでしょうか?

仙田(パナソニック):
ちょうど2012年ごろから、パナソニック自体がBtoBビジネスへ大きな舵きりがありました。BtoBは、パートナーやクライアントなど多様な人たちと研究開発を進めていかなければならず、BtoCの従来のやり方で多かったクローズドな製品開発ではなり行かないことが多い。そのタイミングで、研究開発のあり方など現場から変えていかなきゃいけないなと、社内で大きな環境・意識の転換がありました。

蓑田 佑紀さん 先端研究本部 インタラクティブAI研究部 主幹研究員

蓑田(パナソニック):
2012年ごろ、私はちょうどMITメディアラボへ出向をしていました。そこで海外の研究現場を目の当たりにしたり、MITメディアラボ 日本事務局のロフトワークが始めたFuture Session(メディアラボ 日本スポンサー企業の勉強会)で、さまざまな企業の方と出会いディスカッションしていく中で、研究開発の進め方を変えていかないといけないなと自分自身も強く思うようになりました。

─ なるほど。オープンイノベーションに踏み出したきっかけは、大きな環境の変化と、仙田さんや蓑田さんなど研究開発の現場からの想いと、両方があったわけですね。棚橋さんはオープンイノベーションについてどのように考えていますか?

棚橋(ロフトワーク)
オープンイノベーションって一言で言っても、ベースとなるフレームワークは同じなんだけど、やっぱりクライアントの文化とか仕事の仕方に合わせて進めていかないと上手くいかないなと思っています。パナソニックのみなさんとも、いろいろなプロジェクトをご一緒しましたが、やはりはじめはなかなか上手くいかなくて、何回も試行錯誤を重ねてディスカッションをしていく中で徐々にお互いスッキリしていく感じがありました。そんな中で、今回のワンダーラボ大阪プロジェクトはとてもいいタイミングだったなと感じました。

蓑田(パナソニック):
2012年ごろ、私はちょうどMITメディアラボへ出向をしていました。そこで海外の研究現場を目の当たりにしたり、MITメディアラボ 日本事務局のロフトワークが始めたFuture Session(メディアラボ 日本スポンサー企業の勉強会)で、さまざまな企業の方と出会いディスカッションしていく中で、研究開発の進め方を変えていかないといけないなと自分自身も強く思うようになりました。

 

ワンダーラボ大阪設立の背景・ねらい

─ トライアンドエラーを重ねていく中で、お互いが良い進め方を模索していくんですね。失敗も許容され、次に繋げられるような雰囲気や環境も大事そうですね。仙田さん、蓑田さん、青山さん、ワンダーラボ大阪設立の構想やねらいをぜひ教えてください。

仙田:
今って、効率性とか生産性とか、セキュリティとかの問題もあって、研究開発の現場の自由度ってあまりなくなってきている。大量のものを効率よくつくる場合はルールに従った方が良いと思うんですが、何か新しいものをゼロから探索しながらつくる時って、ルールや枠組みに縛られないものづくりの場所が必要なんじゃないかという想いがありました。

青山(パナソニック):
開発の現場からものづくりを変えていきたいという想いがありました。古くからいる研究者に話しを聞くと、昔の研究所のラボってもっと混沌としていて、めちゃくちゃできたもんだって言うんですよ、イノベーティブなことをね。

蓑田:
ここHUBは、この施設の中でも中心に位置しています。またパナソニックの門真各拠点の敷地の中で地理的にも中心に近い場所にあります。そんな場所でものづくりが変わっていけば、研究開発以外の領域にもどんどん良い影響が波及していくんじゃないかという想いもありました。

空間設計のプロセス

─ 想いを受けて、棚橋さんは具体的にどんなプロセスで進めていったんですか?

棚橋:
まずはプロジェクトメンバー全員で、ワークショップなどを通じてディスカッションをして、この空間の価値を言語化していきました。「パナソニックの人たちに使いやすい空間ってなんだろう?」もっと言うと社内にはデザイナーとエンジニアがいるので、それぞれに使いやすい空間ってなんだろうということを、デザイン面と機能面から考えていきました。蓑田さんはもちろん、社内のエンジニアやデザイナーなどにもヒアリングをしたり、食堂や執務エリアなどの現場をリサーチもしました。

空間自体の機能でいうと、上階の執務エリアとは違い、いろいろな人が出入りして入り混じるスペースだったので、柔軟にレイアウトを変えられる必要がありました。そこで建築家の古市さん監修のもとカーテン式のパーテーションを作ったり、バッタネイションの岩沢さんと一緒に可動式のデスクや椅子などをデザインしました。

─ ロフトワーク社内には建築家や家具デザイナーがいるわけではないですよね。そこも共創で、外部メンバーとチームを作って取り組んだんですね。仙田さんや蓑田さんと直接、ディスカッションすることもあったんですか?

蓑田:
もちろんありました。特に建築家の古市さんとはプロジェクトの当初から、密にコミュニケーションを取って、お互いのイメージを摺り合わせていきました。

─ 実際に外部メンバーも含めてディスカッションをしながらプロジェクトを進めるのってどうでしたか?

仙田:
たくさんのステークホルダーがいて、予算などの条件もあり色々な意思が混じり合って、その中で良いところを探りながらものづくりを進めていくのって、実は普段私たちがやっている製品開発と全く同じだったんです。

それを自社の中だけじゃなくて、会社の枠を超えてできたのはとても良かった。それから形がないものをゼロから作ろうとすると、そもそもなんでこんなことしたかったんだっけ?って基本を考え続けることになる。それがすごく良かったと思いました。

蓑田:
自分たちができることとできないことを整理して、最後にどういう落とし所にするかを外部メンバーと一緒に調整しながら進めていく。そのプロセス自体が共創でした。

青山 昇一さん 全社CTO室 共通技術サポート部 主幹

─ 最後に青山さんにお伺いしたいんですが、今後このワンダーラボ大阪はどんな未来を描いていくんでしょうか?

青山:
昔と全然違って、今はインターネットもあるし手に入れようと思えばなんでも手に入ってしまう時代です。そんな中で、個々人が「今ないものってなんだろう?」って考え直すきっかけを創り出したい。そしてその答えをこのワンダーラボ大阪に探しに来てもらいたいと思っています。

モノなのか情報なのかは分からないが、今ないものを自分たちで創り出す場にワンダーラボ大阪を育てていきたい。そのためにはこれから、まずはこの空間を使って面白いイベントなどを開催しながら、徐々に関心を集めていきたいと思っています。

棚橋:
そうですね、まずは自分たちで身近にある「ないもの」を求めて、ここに集まってきて創り出していってほしいですね。そしてゆくゆくはこの空間が古市さんが描いたイラストのように、活動の軌跡で埋め尽くされるようにしたいですね。

─まだまだ実践の途中ですね。これからのワンダーラボ大阪がどう育っていくのか楽しみです。本日はありがとうございました!

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