
日本の会計を、次のステージへ
「弥生会計 Next」UXデザイン策定を支援
Outline
中小企業や個人事業主などのスモールビジネスのバックオフィス業務を支援するソフトウェア・クラウドサービスを展開する弥生株式会社。長年にわたり会計ソフト市場において高いシェアを誇る「弥生シリーズ」は、350万を超える登録ユーザーに支持されています。
2023年10月、同社はクラウド時代の業務を支える新たなサービスブランド「弥生Next」を立ち上げました。会計や労務に関するサービス同士がシームレスにつながることで、業務の完全自動化と経営支援を両立し、バックオフィスから企業の成長を支えることを目指しています。2025年4月8日には、その中核となる法人向けクラウド会計サービス「弥生会計 Next」が正式リリース。経費精算や請求業務などを含む、統合的な経営プラットフォームとして進化を遂げました。
ロフトワークは、「弥生会計 Next」のプロダクト開発において、ユーザーリサーチ、UXデザイン策定、プロダクトのデザインレビューなど、一連のデザインプロセスに伴走。サービスの方向性整理からプロダクトの直感的な使いやすさの実装までを支援しました。特にアジャイル開発に沿った「デザインスプリント」の手法を活用し、品質向上と開発効率を両立させるとともに、手法の内製化をサポートすることで継続的なUX改善体制の構築にも貢献しました。
弥生会計 Nextについて

「弥生会計Next」は、「会計・経費・請求。誰でもカンタン、まとめて効率化」をキャッチコピーに、業務の効率化を実現する各機能を実装する、法人向けクラウド会計サービスです。
「弥生会計 Next 」の詳細をみる
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Approach
機能ではなく“成功体験”の重視へ、UX設計の視点を転換
本プロジェクトでは、ユーザーにとっての「成功体験」を起点にUX設計を行いました。
たとえば「口座を連携する」という機能は、それ自体を目的とするのではなく、「残高をリアルタイムで確認できる」という体験として捉え直すことができます。こうした、結果として生じる状態(アウトカム)としての“成功体験”に着目することで、機能単位では見えにくかった価値を明確にし、ユーザーの定着率や満足度につながる設計を目指しました。
具体的には、プロダクトバックログアイテム(PBI)を整理する際に、「実装する機能」ではなく、「ユーザーがどう感じ、何を達成できるか」という視点で再構成。体験から逆算するUX設計を通じて、プロダクトの提供価値を強化しました。


つまずきを見逃さず、素早く対応するUX改善サイクル
UX改善に向けたプロセス設計では、限られた開発リソースの中で本質的な課題にアプローチできるよう、「デザインスプリント」の手法を採用しました。課題の特定から改善案の立案、プロトタイプの作成、ユーザーテストまでを2週間単位で繰り返すことで、デザイン初期フェーズの検証スピードを高めています。
またプロダクト開発中は、ユーザビリティテスト(客観評価)とヒューリスティック評価(専門家による主観評価)を併用し、UX/UIに潜む違和感や操作上のつまずきを可視化。 「今、どの部分を優先的に改善すべきか」が明確になるフィードバックプロセスを構築することで、迅速かつ効果的な改善サイクルの実現につなげました。
デザインプロセスを内製化し、継続的な改善の土台を築く
弥生の社内に「UX改善を回し続けるノウハウと仕組み」を残すことは、今回の伴走支援において重要なゴールのひとつでした。プロジェクトでは、仮説の立て方や検証の進め方、フィードバックの整理・反映の手順などを、再現可能なプロセスとして体系化。社内のUXチームが独力で改善サイクルをまわせるよう、ツールやフォーマット、ガイドラインの形で共有しました。
この取り組みは、プロダクトの継続的改善を支えるだけでなく、組織全体の自律的なデザイン意識を高め、弥生が“デザインの力”で事業を進化させていくための土台づくりにもつながっています。
Member
メンバーズボイス
“プロジェクト初期に実施した事業者インタビューで、それまでの仮説が根底から覆り、危機感を覚えたことを鮮明に記憶しています。これをきっかけに弥生が本当に届けるべき価値を改めて言語化し、機能ではなくユーザーの成功体験を起点とする設計へと転換することができました。改善サイクルの内製化支援により、継続的に価値を高められる体制が整ったことも、今後の弥生にとって大きな財産となっています。熱意を持って伴走いただいたことに心から感謝しています。”
弥生株式会社 次世代本部 千古 英毅さま
“日本の会計が次なるステージへと踏み出したこのタイミングで、その変革を支える「弥生会計 Next」のデザインに携われたことを、嬉しく思います。本サービスは、単なる業務効率化を超えて、会計という営みそのものを再定義するような体験価値の創出を目指し、このプロジェクトを通じて“デザインの力でどこまで価値を引き出せるか”という問いに挑戦してきました。そして今、その一歩が形となり、多くのユーザーの手に届こうとしていることには、感慨深いものがあります。これからの挑戦が、日本中のビジネスにポジティブな変化をもたらしていくことを、強く願っています。”
株式会社ロフトワーク シニアディレクター 寺本 修造
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