ハッカーのいたずら心と好奇心を見習いたい。そう、“Everything is hackable!”

企業メッセージらしからぬこんな一文が、ロフトワークの会社案内2012年度版に掲載されています。
小さくて、黄色くて、妙にぶ厚い、ノートのような一冊の冊子に。

「何かの雑誌じゃないんですか?」「ノートかと思いました」「ちょっとやりすぎなんじゃ…」

渡した方とのコミュニケーションを生む、ちょっとユニークな会社案内の「なぜ?」「どうやって?」を企画編集担当・中田がご紹介します。そう、この会社案内制作プロジェクトこそ、Hackだったのかもしれません…!

コンセプトは「増殖」。 1カ月で完成させた、120ページの会社案内

「中田さん、120ページの小さなマンガ雑誌みたいな会社案内にしちゃいませんか?」

10月、京都オフィスとのモニタ越しのミーティングにて、関西のデザインシーンを代表する、アートディレクターの原田祐馬さん(UMA/design farm)が少年のような無邪気さで切りだしたとき、私は一瞬固まったのち即答してしまいました。「やってみたいです!」と。

今年の会社案内で私たちが提示したコンセプトは「増殖」です。

スタッフ数の急増、新拠点の誕生、そして事業領域の拡大…でも決して巨大になるわけではなく、小さな細胞がポコポコと分裂して、様々なパートナーを巻き込むように成長してきたロフトワーク。その「増殖」感を、”みんなでつくる”大量のコンテンツと、小さくて愛される形にしたらどうかという提案をいただいたのでした。さすが原田さん!でも、この方向性が決まった段階で、私たちにのこされた時間はわずか一カ月(印刷期間含む)でした…。

4分の3がオマケコンテンツ!? 120ページの内訳

立ち上げ時と執筆・編集時の苦労は広報ブログに譲りますが、大波乱の1カ月を乗り切って出来上がった会社案内がこちらです!(なんだか、3分クッキングみたいですね)

小さい!

サイズはB6判。会社案内2010はA4判、2011はB5判だったので、どんどん小さくなっています。120ページというと重そうですが、形が小さく、紙も軽いものを選んだので、歴代の会社案内の中で一番コンパクトです。持ち歩きやすいと評判。

4分の3がオマケコンテンツ!?

コラム執筆にあたり、120ページの内訳を改めて見直してみました。ざっくりまとめたところ、円グラフのブルーの部分、「サービス紹介」「会社概要」など、いわゆる一般的な会社案内に必要とされるだろうコンテンツは、全体のわずか4分の1だということに今さら気付きました。

つまり、残りはすべてある意味オマケ的な部分です。言い換えれば、4分の3は、渡した人に楽しんでもらうための「ギフト」的コンテンツだったわけです。実際に編集執筆時に力を入れたのも、グラフの黄色い部分、「対談」や「コラム」、「88大ニュース」、そしてクリエイターの作品などのギフト的コンテンツでした。

オンライン上の情報は全て素材だ! 1年間のアクティビティを再編集する

さて、問題はどうやって、たった1カ月でこれらのコンテンツを作るのかということです。人も時間も無い中で、唯一、私には自慢できる資産がありました。それは、Web企業のPRとして、1年間、オウンドメディアに溜めてきたたくさんのオンラインコンテンツです。これらのコンテンツを再編集することで、今回、かなり短い期間でコンテンツを作成することができました。

  • 自社サイトのコラム、イベントレポート、制作事例取材
  • 公式Twitterの投稿
  • 公式Facebookページの投稿
  • 公式Flickrの写真
最も役に立ったオンラインコンテンツは、公式Flickrの写真群

例えば、オムロン ヘルスケア株式会社様の事例や、OpenUM プロジェクトの鼎談記事は、もともとこのコーポレートサイト用に制作していたものを、プロの編集者の方にお願いして再編集してもらいました。合宿から生まれた10年後の未来を描いたグラフィックは、ロフトワーククリエイターにブラッシュアップしてもらうという、コラボレーションコンテンツに昇華しています。私自身が執筆した「88大ニュース」という全20ページにわたるコンテンツの元ネタは、ほとんどソーシャルメディア上の投稿が元になっていて、スタッフにオンラインアンケートをとって集めました。

新たに作ったものは“未来”

ちなみに、会社案内に合わせてゼロから作ったコンテンツは、「代表 林千晶 × MITメディアラボ所長 伊藤穰一氏の未来を語る対談記事」「新・企業コンセプト」「ロフトワーク 5つのキーワード」「制作サービス」です。

つまり、未来に向けたロフトワークの背骨となるようなコンテンツは、会社案内制作をきっかけに刷新したのです。結果的に、Webから紙コンテンツをつくり、そして紙から企業コンセプトを見直すような、サイクルが出来上がりました。

ユニークな会社案内でつながる絆

「時間がなさすぎる」「120ページも作って読んでもらえるのか」「あまり奇抜にするとツールとして機能しない」

などなど、実は、会社案内2012制作にあたっては、色々な意見がありました。私自身も内心ハラハラドキドキしながら、出来上がった会社案内を皆さんにお届けしました。でもやっぱり、今回この形で作ってよかった!と、改めて感じています。

クライアントやパートナーとの絆

制作中から、広報ブログや個人のFacebookであえて制作プロセスを公開していたことで、「頑張れ!」「楽しみにしてる!」「うちにも送ってくださいね!」などのコメントをたくさんいただきました。
現物をお届けしてからは、「ロフトワークから会社案内が届いた!」というツイートやFacebook投稿も。リアルでもオンラインでもたくさんのコミュニケーションが生まれました。
「すごい分厚い会社案内届いた…誰が読むというのだ!」とツッコミを入れてくれた某メディア編集長とも、それはそれでひとつの絆だったのではと、前向きにとらえています(笑)。皆さん、本当にありがとうございました!

クリエイターとの絆

もうこれは、いくらお礼をしても足りないほどです。

全体のアートディレクションを手がけていただき、入稿ぎりぎりまでブラッシュアップし続けてくれたのは、UMA/designのアートディレクター・原田祐馬さん、デザイナー・山副佳祐さん。経営者ポートレートを毎年ビシッと決めてくれる写真家・池田晶紀さん、素敵な風景写真を提供してくれた写真家・川瀬一絵さん、パーティ会場での全員集合写真という難しい撮影で素晴らしい一枚を撮ってくれた写真家・たださん。かなりタイトなスケジュールで第一特集のインタビュー執筆編集やコラムの要約を手がけてくれたのは、編集者の多田智美さん。そして、巻頭を飾るキュートな作品をつくってくれたクリエイターのchcktrさん、肉さん、カヤヒロヤさん、白須賀毅さん。皆さん、本当にありがとうございました!

スタッフとの絆

そしてそして、スタッフとの絆も深まりました。今回、スタッフの顔が見えるよう、たくさん登場してもらったこともあり、「田舎に持ってって自慢する!」というコメントが嬉しかったし、制作期間中は、まったく違う部署の複数のスタッフが「大丈夫?今すぐ原稿手伝うからデータちょうだい!」と、何度も助け舟を出してくれました。まさに「みんなでつくる」状態でしたね…。みんな、本当にありがとう!

Everything is hackable!

会社案内52ページ「ロフトワークが愛する5つのキーワード」の5番目に「Hack」を掲げてます。

「ハッカー」という言葉は世間的にはちょっと悪いイメージもあると思うのですが、ロフトワークが見習いたいのは「いたずら心と好奇心」。Hackという言葉の意味はもともと、”ラフでシンプルなアプローチ、アイデア、ひらめき、自分なりの工夫、インフォーマルな解決策” で”面白い成果をだすこと”です。

手前味噌で恐縮ですが、今回チャレンジしたことは「会社案内のHack」だったのかもしれません。会社案内の既成概念を飛び越えて話題をつくる、1年間のオンライン上でのアクティビティを紙に再編集する、制作過程をオープンにしてしまう…などなど。

(でも、制作に苦しむ様子を見せてしまうのはHack的にはクールじゃないですね…)

知恵と工夫とクリエイティビティで、絆をつくる。たくさんの反省と涙もありましたが、そんなメディアづくりをこれからも頑張っていきたいです。そうだ、Everything is hackable!

*追伸:もっとちゃんとした(?)会社案内制作についての記事は弊社・川上直記がばっちり執筆しているので、ぜひご覧ください!そして、ロフトワークでは貴社の会社案内制作のお手伝いもしております♪

会社案内制作サービス

ロフトワークでは、高いコミュニケーション能力を備えたディレクターが様々な得意分野を持つクリエイターネットワークの中から、予算に応じてその企業に最適なクリエイティブチームを編成し、理念やビジネスモデルをしっかりと踏まえたうえで、目的にあった会社案内やパンフレットを制作します

Next Contents

「ETHICAL DESIGN WEEK TOKYO 2024」内関連イベントに
Layout シニアディレクター宮本明里とバイスMTRLマネージャー長島絵未が登壇