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Customer Experience × コンテンツ vol.3 成果の考え方と見える化 開催レポート

顧客体験を向上させるコンテンツについて考えるシリーズイベントの第3回が、2014年9月12日に開催されました。今回は、UXやWeb解析分野の第一人者でもある清水誠氏をゲストに迎え、顧客体験という観点でのコンテンツの評価方法と、成果を出すための具体的手法にフォーカス。これからのWebサイトの役割を再考する機会ともなりました。

オンラインとオフラインの両方を見ながら顧客体験をデザインする

株式会社ロフトワークの諏訪光洋は、集客から受注に至るプロセスを漏斗(ろうと)に例えたマーケティングファネルを示し、「かつてはマーケティングとセールスが切り離されていたが、この間をつなぐWebマーケティングの進化によって、漏斗の上から入ってきたものを、できる限りコンバージョンを高めながらセールスにつなげられるようになっている」と説明。

株式会社ロフトワーク 代表取締役社長 諏訪 光洋

しかも、そのプロセスは一方通行ではなく、顧客は行ったりきたりしながら、ときに離れ、再び戻ってきたりもします。つまり、オフラインを含む複数のタッチポイントがあり、ここをどうデザインするかを考えるのがCustomer Experience(以下、CX)です。

ここで諏訪はパソナキャリアのプロジェクトを例に、CXのリデザインに有効な手法を紹介しました。

1.採用サイトの改善
CXデザインの検討にあたり、ターゲットである学生に就職活動についてインタビュー。そこから、カスタマージャーニーマップ(顧客があるサービスを利用する際の一連の行動、思考、感情を“旅の道程”に見立て、記録・整理した図)を作成した。

新卒サイトでのカスタマージャーニーマップの実例

2.派遣事業におけるコミュニケーション戦略の見直し
より多くの有効人材を獲得・維持していくために、16名の派遣スタッフにインタビュー。派遣スタッフの4つの欲求を導き出すと共に3人のペルソナを設定し、6つのタッチポイントの改善プロジェクトを順次実行。タッチポイントごとにKPI、KGIを設定し、現在も定量的・定性的両面から分析、改善を行っている。

諏訪は、「後者はWebの手法をリアルな業務改善やコミュニケーションの改善につなげている事例。オフラインでのやりとりも、改めて見るとWebのやりとりに非常に近い」として、「これからのCXは、Webの手法を活かし、オンラインとオフラインの両方を見ながら改善を行っていくことになるだろう」と語りました。

途中にある行動の変化を数値でとらえ、改善アクションにつなげる

基調講演には、Webアナリストとして知られる清水誠氏が登壇。「集客とSEOばかりが話題になり、Webサイトがブラックボックス化しがち」と指摘する清水氏は、「大事なのは、Webやコンテンツの目的を明確にし、目的に応じて評価すること」だと強調。これを実践した例として、最老舗地ビール蔵サンクトガーレンのWebリニューアルを紹介しました。

清水 誠氏

Webの位置付けや運用方法で悩んでいた同社は、3つのペルソナを設定し、それぞれのペルソナが自社のビールを知り、「また飲みたい」と思ってもらう(=ゴール)までの流れと、そこに至るまでのさまざまなハードルを図解することからスタート。次に、このハードルを取り除き、ゴールまでの流れをスムーズにするための施策とコンテンツをマッピングしていきました。

3つのペルソナを図解

さらに、各施策について、目的と分析の切り口、効果測定の指標を整理。このとき、「訪問の目的に応じた途中の変化をゴールと見なすのがポイント」と清水氏。たとえば、知りたい欲求を持って流入してきた人なら、買う以前に、商品を知るためのコンテンツを数多く見てもらうことが重要です。そこで、特長を伝えるコンテンツを評価する場合は、ゴールまでに起こる行動の変化を指標とする(中間コンバージョンに設定する)ことになります。

特長を伝えるコンテンツ特長→商品ページへの遷移で評価

実際にこの方法で検証した結果、特長を伝えるコンテンツから見始めた人の48%が商品ページに移動しており、別ページから見始めた人に比べて、回遊や購入につながりやすいことが判明。同様に、ブログの記事も、一つひとつが狙いどおりの効果を上げているかどうかを多角的な指標で分析することで、次に書くべき内容のヒントが見つけやすくなっています。同社のオンラインの売上が倍増したのは、お客様にどうなってほしいのかを明確にした上で、それを数値化して改善に臨んだからこその成果でしょう。

<ビジュアルWeb解析とは?>
サンクトガーレンで実践したような方法論を、清水氏は「ビジュアルWeb解析」として体系化。“ビジュアルで理解して伝える”という新しい解析スタイルとして次のように紹介しました。

最後に清水氏は、「当たり前の数字だけを追わないこと。ビジネス全体、Web、さらにはリアルな店舗を含めたお客様との対話の状況を図解すると、全体の中で起こすべき変化が見えてきます。その変化を指標として分析を行い、起こった変化を数字で追い、改善アクションにつなげていく。これがビジュアルWeb解析の考え方であり、地道に続けると確実な改善が可能になります」と語りました。

継続は力なり!役割分担を明確にして確実にPDCAを回す

続くセッションでは、株式会社日本製粉システムセンター(以下、日本製粉SCと略)の安川篤氏が、日本製粉のWebリニューアル事例を紹介。リニューアル後の運用の観点から、数々のヒントが提供されました。

株式会社日本製粉システムセンター システム部 開発課 安川 篤氏

リニューアルの目的は、お客様が知りたい情報をわかりやすく提供できるサイトを実現し、訪問者の拡大、ブランド力強化、情報更新業務の効率化を目指すこと。企業目線の情報発信を続けてきたサイトは、見た目も大きく改善されています。

リニューアルによる改善点

また、NORENの導入で運用は大きく変わりました。

●ニュースリリースの登録
Before:リリースをWordで作成後、CMSで再度作成
After:作成したリリースをPDF化して添付し、自動配信
成果:運用の負荷が軽減(1日→10分)

●レシピ登録
Before:担当部署と日本製粉SCとの間で発生するメールのやりとりが煩雑
After:担当部署でレシピを登録し、自動配信
成果:業務時間・量ともに削減(数日→数時間)

●修正・更新作業の内製化
Before:外部業者にページ制作を依頼し、納品後、日本製粉SCが手作業で公開
After:修正・更新は社内で行い、日本製粉SCがNORENに直接アップして自動配信
成果:手作業での公開がなくなり、内製化で外部への委託料も軽減

成果について、「日本製粉広報部、各部署、日本製粉SCがWin-Winの関係を保つことができた」と安川氏。また、運用面での工夫に次の点を挙げ、「継続は力なり」と強調します。

●チームづくり
・月一回定例会を行う
・飲み会以外のコミュニケーションも大切にし、引き出しをたくさん持つ

●会話力
・NOREN(CMS)の操作説明会を部署ごとに行う
・同じビルにいる利点を活かし、極力直接会話する

●PDCAサイクル
・定例会などで再提案や再問題提起を継続的に行う
・打ち合わせは頻繁に行う

運用主体である「人」を第一に考え、全員でゴールを共有し、役割分担を明確にしてPDCAを確実に回す。そのための地道な取り組みが、同社のWebの成長を支えていると言えそうです。

国内実績No.1のNORENでコンテンツの力をアップ

続いて最後に登壇したのは、株式会社のれんの八木康介氏。八木氏は、Experienceについて考えるとき、次の3点を改めて考える必要があると切り出しました。

1 コンテンツとはなにか?
自分たちが発信すべき情報が何かを考える

2 対象は誰なのか?
CXを提供する相手は誰かを考える(対象が社内の人であるケースもある)

3 デバイスはなにか?
提供したいコンテンツがどのデバイスで見られるのかを考える

株式会社のれん 営業推進部 NORENエバンジェリスト 八木 康介氏

さらにもうひとつ、3つの大前提として考えるべきなのがKPIです。「必ずKPIに基づいてアクションを起こすこと。アクションに迷ったときに立ち戻るポイントとしても有効」と八木氏。

ここで八木氏は、NORENユーザーの4つの事例を紹介。いずれも、更新の遅れやヌケモレ、ミス、見栄えのバラツキなど、手作業による運用に限界を感じ、NORENの導入に踏み切ったケースです。NORENには、コンテンツ管理機能を持つ「NOREN Content Server」と、Webサイト用ファイル管理/配信機能を持つ「NOREN Deploy Server」の2つがあり、4社はこれらを採用して改善を実現しています。

NOREN導入4社の主な成果

  • シンプルな操作方法により入力作業が簡素化。
  • 分単位でのスケジュール配信により手作業を排除し、ミスも軽減。
  • 表現の自由度に対する制約により、見栄えが統一されると同時に情報の質が向上。
  • PDFファイルも、IT部門が手を動かすことなくWebサイトに掲載。
  • ワンソースマルチシステム、ワンソースマルチサイト、ワンソースマルチデバイスを実現。

最後に八木氏は、「NORENは国内約500社への導入実績がある」とアピール。成果を出すために、コンテンツプラットフォームの活用が有効であることを強調しました。

セッション終了後は、のれんの中田文紀子氏をモデレーターに、清水氏と諏訪によるパネルディスカッションを実施。コンセプトダイアグラムとカスタマージャーニーマップの使い分け方法や、定性データでの経営陣の説得方法などを紹介。最後は、「全部を追い過ぎない。数値を上げることに執着するのではなく、たとえば、数値が低くても高いリードが得られるのがWeb、という割り切りも必要」という話に。中田氏は「捨てるという選択も大切。割り切ることで一歩を踏み出しやすくなる」とまとめ、セミナーは幕を閉じました。

イベント概要

企業が顧客体験向上を考えるとき、どのような成果指標を設けるべきなのか?

顧客体験を向上させるコンテンツとは?、を考えるシリーズイベント”Customer Experience × コンテンツ”。第3回目となる今回は、「成果の考え方と見える化」をテーマに開催。

ゲストには、UXやWeb解析の分野で第一人者でもある清水誠氏をお迎えします。ビジネス戦略全体から考えなければならないCustomer Experienceにおける、Webサイトの評価方法と、評価に対して組織がとるべきアクションについて、事例を通してご紹介いただきます。また、日本製粉システムセンターから安川氏をお迎えし、Webリニューアル後の具体的な運用体制や成果、今後の展望もお話いただきます。

開催概要

セミナータイトル Customer Experience × コンテンツ vol.3
– 成果の考え方と見える化 –
開催日時 9月12日(金) 14:00 – 17:00(13:30 受付開始)
場所 市ヶ谷 アシスト セミナールーム
東京都千代田区九段北4-2-1 市ヶ谷東急ビル
[地図]
対象
  • 顧客体験向上のためにコンテンツを有効活用したい方
  • 顧客体験の成果指標を知りたい方
  • CMSなどのコンテンツプラットフォームの導入を検討されている方
参加費 3,000円
定員 80名
共催 株式会社ロフトワーク、株式会社のれん(アシストグループ)
ご注意
  • 参加費は当日受付にてお支払いいただきます。
  • 開催日まで1週間前を経過したキャンセルまたは無断欠席の場合は、参加費の100%をお支払いいただきますので予めご了承ください。
  • プログラムは予告なく変更される場合があります。
  • 個人、同業のご参加はご遠慮いただく場合があります。
  • 当日の参加者の皆さんのお写真は、後日公開するレポートなどに掲載させていただきます。
  • 個人情報は、共催パートナー間で共有し、サービスのご案内以外の目的には利用いたしません。

プログラム

14:00~14:20
「企業が今考えるべきExperience Design」
・Experience Designの先端事例
・Experience Designの設計
・企業が今起すべきアクションとは?
14:20~15:20
基調講演「ビジュアルWeb解析の3つのステップとその活用」
・ビジネス戦略全体で考えるべきExperience Design
・組織全体を動かす本当のWeb解析とは?
・ビジュアルWeb解析の3つのステップ

清水 誠

15:20~15:30
休憩
15:30~16:00
「日本製粉のリニューアル後の運用」
・日本製粉におけるWebサイトの役割
・リニューアルとその後の運用
・成果と展望

株式会社日本製粉システムセンター
システム部 開発課
安川 篤氏

16:00~16:20
「顧客体験を向上させるコンテンツの力とその活用」
・Customer Experienceとコンテンツの関係
・成功事例4社とそこから学ぶべきポイント
・成果を出すためのコンテンツプラットフォーム活用

株式会社のれん
技術推進部 NORENエバンジェリスト
八木 康介氏

16:20~17:00
パネルディスカッション
・ビジュアルWeb解析の具体的手法
・分析結果のビジュアライズで社内キーパーソンを動かす
・企業全体のCXの中でWebはどのような役割を果たすのか?
・これからのWeb担当者に求められるマインドとスキルセット

清水氏、ロフトワーク 諏訪
モデレーター:のれん 中田氏

清水 誠

株式会社のれん
営業推進部 部長
中田 文紀子氏

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