UX Design Tool Box
答えはすべてユーザの中にある!
UX向上に役立つインタビューワークショップ講座
UXの起点は「共感」からはじまる
はじめに、「今日の講座の目的はデプスインタビューを体感すること。デプスインタビューとは、ユーザのインサイトを明らかにしてそれをUXデザインにフィードバックするためのものですが、そもそもUXとは何でしょう?」と西本は会場に問いかけました。ここで「おでん」を例にしてUXの全体像を説明しながら「一口におでんと言っても、買い物に行き、食材を買い、レシピを検索し、調理し、家族とおでんを囲むなど、さまざまな体験がある」と説明。
「それがWebサイトを作ることに置き換えても、近視眼的にサイトの中だけでユーザ体験を考えがちだが、おでんの例で言う体験全体を考えて、“寄り”と“引き”のように視点を変えることで体験全体が見えてくる」と強調しました。
共感を起点としたUXデザインのプロセス
- ステップ1
ユーザ体験への深い洞察と共感 - ステップ2
問題定義 - ステップ3
解決策の創造 - ステップ4
実際に触ったり操作できる形でプロトタイピング - ステップ5
プロトタイプを使ったテストとフィードバック
引用元:デザイン思考 5つのステップ (一般社団法人デザイン思考研究所) / CC BY-NC-SA 3.0
共感のための代表的手法
デプスインタビュー
一対一で対話をし、「なぜ?」「どうして?」を掘り下げていく。労力は高いが、じっくり話す分深い共感が得られる。
グループインタビュー
複数名と特定のテーマについて話し合う。他の人の言葉に影響されやすく、共感は浅い。
文脈的インタビュー
現場で実際に作業してもらいインタビューをする。現地に足を運ぶため、労力は高い。
フィールドリサーチ
現場で直接観察をし、関係者への調査を行う。現地に足を運ぶため、労力は高い。
4つの手法の中でも、もっとも深い共感が得られるのがデプスインタビューです。西本自身もよく使うというこの手法のメリットは、ユーザの本質的な欲求や本音が見えてくる点。そこに共感できたとき、初めてユーザを深く知ることができるのです。その進め方は次のとおりです。
デプスインタビューの進め方
準備:リクルーティングの条件、質問内容を整理したガイド、進捗を把握するための管理シートを作成する。
リクルーティング:外部ではなくても、知人やクライアントのネットワークを使って条件に合う人を集める。
インタビュー:進行係、メモ係、撮影係で臨む。
分析:インタビュー内容からパターンを整理し、ペルソナを作成する。
デプスインタビューの目的や手順を確認したところで、西本による座学は終了。いよいよ1~4の流れを実際に体感するワークショップが始まりました。
ユーザインサイトをつかむためのインタビュー実践!
ワークショップでは、「某飲食店情報サイトを運営する架空の企業が、ビジネスパーソンの平日の夕食をサポートする新規Webサービスを検討することになった」との想定のもと、企業のUXデザイン担当者としてインタビューを実践。ミッションは、「共感」を通じて、新規Webサービスのビジネスチャンスがどこにあるのかを特定することです。
ワークショップの流れに沿って、その様子を簡単に紹介します。
質問内容づくり
インタビューの質を高めるため、まずはインタビューによって明らかにしたいことをグループごとに議論。その結果に基づいて、「属性」「サービス関連」「コンテキスト」に関する質問内容を整理していきました。「はじめに全体を把握し、気になる点を深堀していける状況を作るように心がけると、網羅的に話が聞ける」と西本。
インタビュー
3人編成のグループ内で、インタビュアー、ノートテイカー、フォトグラファーの役割を決め、他グループのメンバーにインタビュー。
- インタビューのポイント
共感できるまで「なぜ?」を繰り返し、「○○だから●●なんだ」とわかるまで聞くこと。 - ノートテイカーのポイント
要約したり、自分の言葉で置き換えたりせず、事実をそのまま書き起こすこと。 - カメラマンのポイント
引きと寄りのカットを両方押さえること。レポートへの掲載を想定し、アングルにもこだわると良い。
分析
今回は時間の制約上、1グループのインタビュー結果をピックアップし、参加者全員で分析に取り組みました。具体的には、ノートテイカーのノートから重要箇所を抜き出して付箋に書き出し、親和図法でグルーピング。最後に、各グループの内容を要約するラベルを付けるという手順です。今回のケースでは、次のようにまとめられました。
得られた気づき
・「仕事が忙しいエンジニアでも仕事は楽しい」
・「食事を長く楽しむために栄養、運動を気にする」
・「一人暮らしで面倒、時間がないので外食してしまう」
・「忙しいから夕食の時間を有効に使いたい」
・「平日は固定メンバーで終電まで飲む」
・「コミュニケーションがしたいから外食をする」
これは一人のインタビューから得られたインサイトに過ぎません。実際には、インタビューが終わるごとに分析を行い、最後に全員分のインサイトを集めて再び親和図法で分析。最終的に見えてきたパターンをもとに、ビジネスチャンスを特定していくことになります。
ワークショップを終えた西本は、改めてUXデザインの価値に言及。「例えるなら、UXデザインはコンパス。変化のスピードが速い時代に、地図はもはや役に立たない。体験を軸に考えていけば、世界がどう変わろうとキャッチアップしていける。今後ますます、総合的な体験のデザインが大事になってくる」と総括しました。
イベント概要
商品やサービスを使う顧客の体験、企業ビジネスの中での顧客体験など”ユーザのエクスペリエンスをどうデザインするか?”に注目が集まっています。
サービス、ソリューション、プロダクトなどあらゆる「モノ」を設計するときに、欠かすことのできない要素の一つが「ユーザインサイト」です。「なぜ」「どうして」「どうやって」など、価値提供者として必ず考えなければいけない重要な要素を、どうやってユーザとのコミュニケーションで探るのか。
本講座では、シニアディレクター 西本泰司がWeb担当者Forumに寄稿したコラム<UXデザインに役立つフレームワーク5選>を元に、UXデザイン手法を体系的に学べるプログラムをご用意しました。その中でユーザインサイトを探るための「デプスインタビュー」を取り上げ、コラムの中では紹介しきれなかった具体的なインタビュー手法を、ワークショップを通して実践いただけます。
UXデザインの手法は世の中に多数あり、書籍やインターネットで比較的簡単に実践方法を学ぶことができるようになりましたが、それを体系化して学べる講座はまだないはずです!
ロフトワークと一緒にUXデザインを学んでみませんか?