ロフトワークの月に一度の全社プレゼン大会「Creative Meeting」。2009年からスタートし、

  • プロジェクトから学んだナレッジ共有
  • 市場動向や最先端情報の共有
  • 若手メンバーのプレゼンテーションのトレーニング
  • 全社員が集い、月に1回コミュニケーションができる場

などを目的として、毎度渋谷オフィスで行ってきました。そしてなんと今回はオフィスを飛び出し、渋谷・伝承ホールにて開催!! 伝統芸能から現代演劇まで行われるこのホールで、シリアルイノベーターや能楽師の方などを外部ゲストもお呼びして、豪華10本立て実施した模様を、PRの石川と原口がお伝えします。

※「和」のモチーフとして採用されたのは、マーケティング Div.の渡部の和装(内輪でごめんなさい)

先人の失敗に学ぶ

It’s fine to celebrate success, but it is more important to heed the lessons of failure.
(成功を祝うのはいいが、もっと大切なのは失敗から学ぶことだ。)
─ ビル・ゲイツ

今回のCreative Meetingのテーマのひとつは「失敗のすすめ」。
著名な起業家にも失敗なくして今はない。成功を収めている人間ほど失敗の数も多いはず。そんなわけで、我らがロフトワークの林千晶(なんと林は、今回初めてCreative Meetingに登壇)と、これまで「セカイカメラ」や「Telepathy」のコンセプトを世に打ち出してきた類まれなる日本のIT起業家、井口尊仁さんが登壇し、彼らの失敗ストーリーについて語られました。

時は1995年、林が新卒で入社した花王のマーケティング部門で働いていた頃、林は花王のとある化粧品ラインナップのリブランディングを担当しました。(商品名は伏せておきますね)
リブランディング後の新しいネーミングは、安直にも(笑)既存のラインナップ製品名のあとに「α(アルファ)」をつけ、マーケティングを展開。これがなんとコケてしまって、3年後にこの製品は廃止に…。この時、「中途半端な新しさは無駄である」と身を持って学んだ林千晶でした。

そして2008年、ロフトワークでとある省庁の大規模Webサイトのリニューアルプロジェクトを牽引していた時の話です。
移行ページ数は12万、クリスマスイブまでに3,000ページを移行完了させる予定だったけれど、いざ移行してみるとそのサイトはリンク切れ、リンク切れ、リンク切れ…(絶望)。2008年のクリスマスイブは、ひたすら確認とデバッグとリンク修正に追われていたという辛い経験を語りました。
この件は失敗というわけではないけれど、苦い経験として当時のロフトワークの歴史に刻まれました。しかしながらこの経験があってこそ、ロフトワークは大規模なサイトリニューアルを得意にするようになっていったのでした。

ー「成功も失敗も死んだ時にわかるもの」

たったひとつのことで成功や失敗なんて決めることはできない、全ては生きている限り続くもの。生き続けてやり続けて、紡ぎ続けるしかないのです。

そう語りました。

そしてDOKIDOKI Inc.の井口尊仁さんによるトーク(井口さんは、本当に話が抜群に面白くて上手です)。

これまで「セカイカメラ」や「Telepathy」など、ARやウェアラブルデバイスの概念をいち早く世に打ち出してきた日本を代表する起業家の井口さん。
でも今は、自身が立ち上げた会社、(セカイカメラの)頓智ドットも、Telepathyも退職し、常に新しい概念を世に提起し続ける稀有な人物です。

「起業家は、投資家に対しては失敗なんか絶対しない!起業家は世界を変える人間だ!常にイケている!と言い続けないといけないんです」

(スライドに「4」「20」「2」という数字を出して)

「どういう意味かわかりますか?これは今まで僕が、”会社を4つ起業”、”20億円資金獲得”、(取締役会のチェアマンであるにも関わらず)”クビになった会社が2つ”という数字です。」

「さすがにクビになると、絶望しますよ(笑)起業家を襲う恐怖とは、

  • いつクビになるか
  • いつ製品を見捨てられるか
  • いつ資金がつきるか
  • いつチームに反乱をおこされるか

そういった恐怖に向き合い続けなければなりません。」
「恐怖の根源とは孤独です。孤独にどう向きあうか?自分自身の価値観を世の中に問うのは、ある意味孤独からしか生まれないのでは。孤独というのは、起業家にとっては価値の変遷なのではと思うようになりました。」

「(Telepathyを退任した後)サンフランシスコのアパートでナメクジのように生きていました(笑)。孤独があるからこそ、人に会いたい、語り合いたい、出会いたい、ということで、移動を始めました。移動すると、いろんな人やアイデアに会える。そのことで純粋にインスパイアされます。
そしてDOKIDOKI Inc,を新たに立ち上げ、人間のコミュニケーションを豊かにする新サービス「BABY(ベイビーアプリ)」のコンセプトが生まれた。
とにかく孤独で喋りたくて仕様がない時、好きなだけ喋れる、それがどれだけ素晴らしいか、サンフランシスコでそう強く感じました。」

ノウハウから心意気まで!日々のナレッジを共有

ロフトワーク有数のPMI認定PMP(プロジェクトマネジメントの国際資格)保有者である井上果林は、「プロジェクトマネジメントがちょっと楽しくなるポイント」を紹介。ロフトワークは、2008年に代表の林による共著書『Webプロジェクトマネジメント標準』をベースにさまざまなプロジェクトに取り組んでいます。この要となっているのが、プロジェクトマネジメントの世界標準「PMBOK」。PMBOKにはさまざまなナレッジやフレームワークが集約されていますが、「フレームワークのテンプレートはあくまでも最大公約数的なナレッジ。これを死守することが大事なのではない」としたうえで挙げたプロジェクトを乗りこなすためのポイントは、以下の通り。

  • 他社のプロジェクトマネジメントの話を聞いてみる
  • 基本に立ち戻る
  • 自分の「勝ちパターン」を知っておく

自分らしいプロジェクトをつくっていこう!と締めくくった結果……Best Knowledgeを受賞!

ロフトワークで最初に生まれたオウンドサービス「loftwork.com」の編集をオープン当初から担当している岩崎諒子は、loftwrok.comの“活用術”を解説。

loftwork.comは、約2万人が登録しているクリエイターのネットワーク・ポートフォリオサイト。クリエイターの作品を閲覧できるのはもちろんさまざまな公募企画も実施され、クリエイター参加型の共創プラットフォームでもあります。

今回は、loftwork.comを通して行える「新しいプロダクトや技術の事例を増やす/展開する/価値をリフレーミング、リデザインする/仮説検証する」という4つのポイントを解説しました。

「強いチームには妙なグルーヴ感がある」(上村直人
あるWebリニューアル案件で、リソース不足ゆえに効率よくいいものを生み出さないといけない状況に。そこでとった策は、チームワークに勢いをつけてプロジェクトを促進すること。事実、時間不足で打ち合わせの数は最小限になり、体裁よりも中身に目が向き、プロジェクトの成長そのものがモチベーションにつながりチーム全体の没入感が増して……と良い循環が生まれたようです。 最後に「グルーヴ=深い部分での共感が生み出す、プロジェクトを正しい方向に推進する力」と締めくくりました。

「ヘルスケアIoTデバイスの開発秘話(まだ途中だけど)」(春口香策)
今春ロフトワークにジョインした春口の前職は、プロダクトデザイナー。スケッチ→試作→制作→商品化、という流れで仕事を進めるなかで、よりプロジェクト全体に携わりたいという思いからロフトワークへ。
現在多国籍・他業種なチームでプロジェクトに取り組むなかで、プロセスを紹介しながら時差や言語の壁を挟んだコミュニケーションの難しさも共有しました。

「移行作業の自動化」(川竹敏晴
Webサイトの移行作業、めちゃくちゃ大変ですよね。でもそれを自動化できるかもしれない!というディレクター垂涎の提案をした川竹。なんとプレゼンで一言も喋らずにこれを伝えきり、舞台上からドヤ顔で私たちの観客をパシャパシャ撮るばかり。というのも、プログラムを組んでしまえば移行作業ができるよ、と伝えるプレゼンそのものをプログラムして、全自動で操作していたから。締めの言葉は「これは人工知能ではない、人工無能だ」。

「日本神話沼からこんにちは」(安藤大海
この夏入社したテクニカルディレクター・安藤は、神社検定の資格をもつほどの日本神話好き。実はマーベルコミックに神道の神が出ている、人間に寿命がついたゆえんといわれる神の所在etc、日本神話の魅力を存分に語りました。ちなみに、土地の歴史つながりということで彼が渋谷郷土史をまとめた記事はこちらからどうぞ!

「アフロマンス流、HACK ism.」(SHIBUYA HACK PROJECT)
まちをもっとよくするアイデアを、企業とまちで実現するプロジェクト「SHIBUYA HACK PROJECT」のプロジェクトメンバー対談では、クリエイターのアフロマンスさんを交えてプロジェクトが今後向かう先についてディスカッション。もし渋谷のどこでも使っていいよと言われたら何をする?(→終電後の地下鉄のホームでパーティ!) プロジェクトに人が集う理由って何だろう?(→人は理屈じゃ動かない、グルーヴ感が大事!)等々、チームの和気あいあいとした雰囲気が素敵でした。

和と輪 能の世界を体験

ここでスペシャルゲストとして、能楽師の安田登さんが登場。安田さんは、能楽師のワキ方として活躍しながら、論語などを学ぶ塾を展開したり公認ロルファー(米国のボディワークの技術)としての活動を行うなど非常に多彩な方です。

▽TEDxSeeds2010で演じた「夢十夜」はこちら

「能って、今も昔もみんな観てるうちに寝ちゃうんですよね。でも、そんなものが650年も続いている。なんででしょう。」そんな問いかけから始まった安田さんの講演。 能を生んだ世阿弥が残した言葉のひとつ「初心忘るべからず」の言葉の真意、「初心」があるからこそ伝承され続け、豊臣秀吉/江戸時代初期/明治/戦後に起きた危機を乗り越え今も能が現存している……という壮観なストーリーを、演目「海人(あま)」の実演も交えながらお話しいただきました。

他にも、20分という短い時間のなかでたくさんのことをお話しいただきましたが、一度このあたりで。きっと、客席にいた多くのメンバーがもっと聞いていたいと思ったはず。知的好奇心が刺激され、本当に、本っ当に面白かったです。

合宿のワーク発表

最後に、このCreative Meetingの2日後に迫る、毎年恒例の全社員合宿のために構成されたチームごとの事前ワーク発表を実施。
今年の合宿のテーマは、「“個”を見つめ直すことで、今と未来のロフトワークを考える」。
ロフトワークのプロジェクトに関する「キーワード」をベースにチームを決定、そのキーワードにちなんだプロジェクトを実施するなら…?というテーマで1チーム90秒、合計15チームによる発表がテンポよく行われました。

地域1チーム
コミュニティチーム
アート1チーム
地域3チーム
グローバルチーム
大学チーム
バイオチーム
アート2チーム
IoTチーム
オフィス空間1チーム
オフィス空間2チーム
公共空間・都市2チーム
プロダクトデザインチーム
公共空間・都市1チーム
地域2チーム

今回初めて伝承ホールを借りて開催した社内イベント。正直私も社内メンバーも(たかが社内イベントに、やり過ぎでは…しかも合宿前に…)なんてことが頭をよぎっていたのですが、実際に来てみてやってみて、やっぱりすごく面白かった。立派な舞台で「内輪」イベントだからこそできる自由、気持ち良く、いざ舞台が社内の普段のスペースから立派なホールに変わるだけで、いつもよりみんながキリッと話し出すし、聞く方もピシッと話に引き込まれる。(会場の椅子がふかふかで寝落ちしていた人もいたのは一興)。
そして、他人事ながら、改めてロフトワークのイベント運営スキルのプロフェッショナルさに、密かに感嘆していました。

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Layout ディレクターの野島稔喜が、
静岡文化芸術大学のゲスト講師を務めます