毎年恒例、ロフトワークの全社合宿。これまでに千葉や小豆島、奥多摩、台湾、飛騨……様々な地域に滞在してプレゼン大会や、去年はリノベーションを行ってきました。
今年訪れたのは、京都・与謝野町。与謝野町は、この春MTRL KYOTOで行われていた「YOSANO TEXTILE PROJECT」でロフトワークとご縁のあるまち。人口約2万3,000人、海と山に囲まれた与謝野町は、高級織物「丹後ちりめん」で発展した歴史があります。地域産業の立て直しのクリエイティブアイデアが注目を浴びるこのまちに、渋谷、京都、飛騨、台湾のメンバーが集合しました。

今年の合宿のテーマは、「“個”を見つめ直すことで、今と未来のロフトワークを考える」。
近年ロフトワークの業務領域がぐんと広がり、それに伴いさまざまなバックグラウンドやキャラクターをもつメンバーが増加中。ということで、各々が「個」を見つめ直し、自分や他者の新たな側面に気づき、個人の、チームの、そしてロフトワークのいまを捉え未来を発見するワークに取り組んできました。

Day1: 心身ほぐして、「免疫マップ」をつくる

おはようございます!心なしか、ちょっとまだ眠そうな渋谷メンバーは、新幹線で東京を出発。渋谷以外のメンバーが待つ京都に向かいます。

全員が合流後は合宿委員引率のもと、前日に入社したメンバー、初めましての人も多い台湾メンバーから挨拶!

そうこうしているうちに、目的地付近にある日本三景のひとつ、天橋立に到着です。諏訪と林が、颯爽と自転車で通り過ぎていたり、なんだかみんな楽しそう。

つかの間の天野橋立観光を経て、あっという間にお宿に到着、ワークに入ります……が、いつもとちょっと違うアイスブレイクがスタート。

今年の合宿のテーマ、「“個”を見つめ直す」をアイスブレイクにも投入! ボディワークで自分のからだと向き合い、他者に身を預け打ち解けよう!ということで、ダンスカンパニー「Monochrome Circus」の合田有紀さんと野村香子さんにお越しいただき、ワークを行ってもらいました。

心もからだもほぐれたところで、本題です。
ワークタイトルはずばり、「なぜ、人は目標を立てても変われないのか?

多くの人が、この疑問を自らに、他者に、抱いたことがあるのではないでしょうか。
このワークのきっかけは、マーケティングDiv.が定期的に行っている次期戦略を立てるための合宿ミーティング。普段のミーティングを繰り返すうちに、

  • ディスカッションのテーマは戦略だけでいいのか?
  • ひとりひとりは、どんな未来を見つめているのか?
  • そもそも人は変わることができるのか?

等々の疑問が浮かび、このテーマが浮上したのです。

そして書籍『なぜ人と組織は変われないのか』(2014、英治出版)を参考に、全社合宿へと展開。
一般的に、「目標設定」というと課題に対して解決策を講じるわけですが、そこに「既成の解決策があるという思い込み」があるのではといういつもと少し違う視点で挑みます。

技術的な問題ではなく、心理的な問題がある、という視点。
つまり、「変わりたくても変われない」という心理的な問題やジレンマの真相を見極め、変化から無意識に自分を守ろうとしている「免疫メカニズム」を理解しながら、新たな思考様式を手に入れよう……という、内的な、しかしダイナミックな実験といえるワーク。

今回は、事前に各自の弱み/強みを共有し合い、チームビルディングをある程度行った状態で合宿を迎えました(心理的に突っ込み合うので、信頼性を高めるためにこれ結構大事です!)。 普段プロジェクトで一緒に仕事をしている人、あまり関わりのない人、初めましての人。多様なメンバーで組んだチームで、普段の自分を主観的/客観的に共有したうえで、「免疫マップ」のフレームを使いながら、ワークを進めていきました。

フローは、ざっくりと以下の通り。

  • 改善目標を立てる
    ・マニュアル的な解決策がない目標であること
    ・自分が取り組みたい、かつメンバーも納得感のある目標
  • 阻害行動を明らかにする
    ・改善目標に対してやってしまいそうな「自分の」行為や行動
  • 阻害行動をとってしまう理由を把握する
    ・なぜ自分は阻害行動をとってしまうのか、阻害行動自体の目標
  • 固定観念を掘り起こす
    ・阻害行動をとってしまう目的の背景にある思い込み
  • アクションプランを立てる
    ・2〜4を踏まえ、改善目標を達成するためにやるべき具体的なアクション

全体の進行を務めたのは、マーケティングDiv. の君塚美香と、「自立した個人」をつなぎ、多様で共生的なネットワークで大小問わず様々なプロジェクトを行う&Co.の横石さん。
自分自身、そして他者と真摯に向き合う今回のワークで大事なのは「信頼感」。過度な配慮や恐怖心をとるような安心できる環境が、ふたりのやわらかなトークとアドバイスでつくられていきました。
そしてその掛け合いが、なんだか途中からラジオパーソナリティのように聞こえてきたのは、きっと私だけじゃないはず(笑)。

「実は◯◯を本当はやりたいと思ってる……けど、つい■■をやっちゃうんだよね……」とか。

「△△と思われがちだけど、僕実は◆◆を克服したいんですよ」とか。
(※写真と発言の関係性は一切ありません)

みんな、自分の内面をできる限りえぐり出し、聞き手もそれに見合う深い問いを投げようと本気で耳を傾けます。

ちなみにワークでの推奨リアクションは、「えぐるね〜!(話し手がナイスな深堀りをした時、聞き手が賞賛に使う表現)」と「ブロック!(それ以上は聞かないで!のサイン。腕をクロスさせる)」。

1日目は、本当は達成したい目標があるのに、自分自身でそれを阻害してしまう背景にある固定観念や思い込みを明らかにしたところで、いったんお開きに。汗だくの脳みそを休ませ、夜の宴会にうつります。

 「こんなに人数増えて、あんまり馬鹿騒ぎできなくなっちゃったね!」という社長・諏訪の音頭で、かんぱーい!
ロフトワーク全拠点のメンバーが集う、初めての宴がはじまりました。

Day2: アクションプランを立てる(そして与謝野町の方と交流する)

おはようございます!ワークショップ2日目も、スタートはボディワークから。
ストレッチに始まり、アイソレーションや気功やヨガの要素を入れた動きでからだをほぐします。

片足でバランスをとったり、体幹を意識しながらゆっくり大きな動きをしてからだと向き合うと、「意外にまだいける」「こうすればここのスジが伸びるのか〜」と、普段気づかない発見があります。お、おもしろい……!
からだがほぐれ、頭がスッキリしたところで、昨日のワークの続きに挑みます。
さあ、今日はどこまでえぐれるかな!

まずは初日の「改善目標/阻害行動/阻害行動の目的/阻害行動を生む固定観念」を再確認します。「改善目標」でおさえるべきは、“One Big Thing”、何かひとつの大きなことであること。ディテールに寄り過ぎて汎用性の低い目標を立てていた人は、ここで目標をいったん調整します。

固定観念を無理に変えることなく、でも阻害行動を起こさないためにはどうすればいいか。自分に問いかけながら、メンバーからの他者視点も交えながら、アクションプランを設計します。可能な人は、ここで具体的なTodoにまで落としました。

最後に、感想や決意表明!?を書いてみんなでシェア!
「成長とは恥の更新だ」
「自分のことを考える際にも、他人の話が参考になった」
「なんとかなる→なんとかする」
など、気になるワードが出てくる出てくる。

実は、ワーク中は諏訪・林・矢橋のマネジメント3名はゆるやかに参加禁止だったため(笑)、張り出された用紙に興味津々。ロフトワークはフラットなカルチャーなので特段大きな障壁はないはずですが、念のため社員が過度な心配をせずに動けるように設計したのでした。(もし「免疫マップ」のワークに取り組む予定の方は、参考まで!)

泣いて笑って、今後のアクションプランも明確になってスッキリした2日目の夜は、山与醤油さんの元倉庫を会場に、与謝野町のみなさんとの大交流会!

京丹後の野菜と日本海の魚介を使った、見た目も味も最っ高に美味しい食事とお酒を、地元の方々に振舞っていただきました。
あっぷる・ふぁーむさん、欧風ダイニング クッチーニさん、誠武農園さん、まさ農園さん、やさい魂研究所さん、与謝野庵さん、谷口酒造さん、与謝野娘酒造さん、本当に美味しかったです。ごちそうさまでした!!

わいわいと盛り上がるなか、突如始まったのは……

2日間、ボディワークで協力いただいたMonochrome Circusの2人によるパフォーマンス!

与謝野町は、かつて繊維業で栄えたまち。繊維から生まれた“糸”に、今回交流会で生まれたご縁を重ねて表現した、インスタレーションアクト。色んな人の腕や肩にどんどん紡がれていく糸に、会場全体がどんどん笑顔に!

合田さん、野村さん、素敵なワーク、パフォーマンス本当にありがとうございました。

そして今回のサプライズゲスト、与謝野町の山添藤真町長とデザインマネジメントオフィス・MTDOの田子學さんによるトークもありました。

「与謝野町には、美しい山、川、海、そしてその自然環境に育まれる一次産業と二次産業が息づいている。2万3,000人のひとつのまちにこれだけの産業があるのはとても価値のあること。与謝野町は「みえるまち」をコンセプトに、“安心と安全” “個性” “もてなし”がみえる環境を構築して産業を市場にのせ、次世代につなげていく」。よそのモデルケースを単に模倣するのではない、山添町長の気概に富んだ施策を聞いて、与謝野町愛がこちらもますます高まります。

※与謝野ブランド戦略・ブランドサイトはこちら

「山添町長からクリエイティブ・ディレクターとして来て欲しいと言われて与謝野町を歩いたとき、ここは産業の宝庫だと気づいた。TPPで環太平洋エリアの国々と産業で勝負する時、日本が戦うべきは“信頼面”。地域の宝である素材をどう“調理”するか考え、まちの中で産業のエコシステムをつくろうと挑戦している」。農水産業、繊維業、食品産業。あらゆる産業が一巡する実現可能性の高さに驚きつつ、私たちもどう関わろうかと妄想が膨らみます!

交流会のあとは自由行動だったので、地元のスナックへ繰り出したり、夜の畑に探検に行ったり!?、宿に戻ってしっぽり地酒を味わったり。各々に与謝野町の夜を満喫したのでした。

そして最終日、これまでの雨模様が嘘のようなお天気のなか、農業コースと織物業コースに分かれて与謝野ツアーに出掛けました。

私が巡った織物業コースの工場は、がちゃんがちゃんという機織りの音が心地よく、職人の方の仕草、凛とした空気が、神秘的な雰囲気。ずっと見ていたいと思える仕事から生まれた絹織物はびっくりするくらい柔らかくて軽くて、これ全部ください!!と言いたいくらい。

農業コースも、地産肥料の生成プロセスを学び、ホップのフレッシュで豊かな香りを満喫し、酒好きメンバーにはたまらないツアーだったようです。

いやあ、いい町です、与謝野町。ワークショップで“個”を見つめて未来を考えるなかで、与謝野町とのこれからのコラボレーションにも思いを馳せる、2016年の合宿でした。

今回合宿にご協力いただいたすべての方々へ、改めてお礼を申し上げます。
本当に、ありがとうございました!!

原口 さとみ

Author原口 さとみ(パブリックリレーションズ)

慶應義塾大学SFC卒。学生時代にソーシャルビジネスや開発経済を学びながら、フォトジャーナリズムやチャリティプロジェクトの可能性を模索する。卒業後は英治出版株式会社に入社し、出版プロデューサーとして書籍企画、編集、DTPデザイン、プロモーション等を担当する。その後NPOにて新興国のスタートアップや社会起業家を支援するプログラムのPR等を経て、2015年ロフトワーク入社。

Next Contents

ロフトワークが運営を担う、富士フイルムビジネスイノベーションの体験型展示施設
「Green Park FLOOP (グリーン パーク フループ)」が
横浜・みなとみらいにオープン