EVENT Report

LIXIL 黒字化を達成したソーシャルビジネス
「SATO」事業はトイレを通じて1億人の衛生環境の改善を目指す

SDGs達成の2030年まで、残すところ10年。「行動の10年」がスタートした2020年もいよいよ終わりに近づく今、社会課題と向き合いながら、その活動を企業の利益につなげていくには、どうすればよいかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこでロフトワークでは、新規事業を始める際に必要な視点を探るべく、オンラインイベント「実践者に学ぶ!社会と向き合う新規事業のつくり方」を開催。生活者の声を起点に社会や業界の課題をあぶり出し、事業戦略を設計・事業化した事例として、株式会社LIXIL「SATO」事業部 Head of Market Expansion 坂田 優さんと、株式会社ASNOVA 代表取締役社長 上田 桂司さんにご登壇いただきました。

社会課題解決を目指した事業開発の実践事例について、LIXIL「SATO」事業、ASNOVAメディア事業、両者のクロストークを3回に渡りレポートします。

コーポレート・レスポンシビリティ戦略と事業戦略は一致は不可欠

世界中の誰もが願う豊かで快適な暮らしの実現を目指すLIXILでは、世界150カ国以上で毎日10億人が製品を利用しています。そんなLIXILでは、CR(Corporate Responsibility)は事業の持続的な成長の基盤です。CR戦略と事業戦略は一致すべき」という考えのもと、SDGsにおいて「グローバルな衛生課題の解決」「水の保全と環境保護」「多様性の尊重」の3分野に焦点をあて、さまざまな取り組みを推進しています。

坂田さんが所属する「SATO」事業部が取り組んでいるのが「グローバルな衛生課題の解決」です。安全で衛生的なトイレを利用できない人びとは世界中に約20億人もいると言われています。劣悪な衛生環境によって、2015年には約22兆円もの経済損失が推定されています。「1億人の人びとの衛生環境を改善し、生活の質の向上につなげる」という目標のもと、「SATO」事業部は開発途上国に向けたトイレの普及に挑んでいます。

キャプション:株式会社LIXIL「SATO」事業部 Head of Market Expansion 坂田 優さん

課題解決の鍵となるのは『安価で革新的な製品』『パートナーシップ』『アドボカシー活動』

2013年から始まった「SATO」事業を通じて、「衛生課題解決へ向けた取り組みを加速させる3つの鍵」を見つけたと話す坂田さん。『安価で革新的なトイレ製品』『戦略的パートナーシップ』『アドボカシー活動』これらのうち1つでも欠けると、私たちの事業は失敗し、衛生課題の解決につながりません」。

無償提供では根付かない。自律的、持続的なサイクルをつくる

「SATO」はシンプルなプラスチックのトイレですが、カウンターウエイト式の弁が付いていることにより、病原菌を媒介する虫や悪臭を低減します。「SATO」事業はバングラディッシュから始まり、各地の文化や生活様式に応じて形状を進化させながら、今では世界中で38ヶ国、約430万台が出荷され、2,100万人の衛生課題を改善しています。

「『SATO』をチャリティで無償提供すると、最初の1ヶ月は使われても、その後メンテナンスされずにすぐ使えない状態になってしまいます。だから私たちは事業として製品・技術開発を行い、現地のパートナー企業とライセンス契約を結び、製造・販売・施工・保守を地域住民が担うモデルを採用しています。この『MAKE→SELL→USE』のサイクルを回すことにより、自律的かつ持続的に衛生環境を改善することができるのです」(坂田さん)

World Toilet Day - SATO Toilets Testimonial

World Toilet Day - SATO Toilets Testimonial:11月19日「世界トイレの日」に際し公開された

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