EVENT Report

若者の人材不足解消を目指す、中小企業の挑戦!
足場レンタル会社 社長が語る、メディア事業を始めた理由

SDGs達成の2030年まで、残すところ10年。「行動の10年」がスタートした2020年もいよいよ終わりに近づく今、社会課題と向き合いながら、その活動を企業の利益につなげていくには、どうすればよいかと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

そこでロフトワークでは、新規事業を始める際に必要な視点を探るべく、オンラインイベント「実践者に学ぶ!社会と向き合う新規事業のつくり方」を開催。生活者の声を起点に社会や業界の課題をあぶり出し、事業戦略を設計・事業化した事例として、株式会社LIXIL「SATO」事業部 Head of Market Expansion 坂田 優さんと、株式会社ASNOVA 代表取締役社長 上田 桂司さんにご登壇いただきました。

社会課題解決を目指した事業開発の実践事例について、LIXIL「SATO」事業、ASNOVAメディア事業、両者のクロストークを3回に渡りレポートします。

執筆:野本 纏花
編集:loftwork.com編集部

業界を俯瞰できる中立な立場からこそ、業界全体の人材不足解消を目指す

ASNOVAでは、建設現場で足場を施工する足場屋さん(とび職人)に対し、ハンマーひとつで簡単に組み立てられる「クサビ式足場」を貸し出す「足場レンタル事業」を行っています。

そんなASNOVAが社会課題を解決する新規事業として、ロフトワークと共に始めたのは、業界の人材不足解消を目指し足場と若手を接続するメディア「POP UP SOCIETY」でした。建設業界は働き手が不足しています。中でも足場職人の人材不足は深刻です。

それにしても、なぜ業界の人材不足を解決する手段が、メディアだったのでしょうか。

当事者である足場屋さんが人材不足に関する訴求を行なっても、自社の課題解決にしかならず、業界全体の課題解決につながらない。私たちなら、足場レンタル業という中立な立場で業界を俯瞰できることから、業界と外部を接続するためのメディアサイトをつくることにしました(上田さん)

株式会社ASNOVA 代表取締役社長 上田 桂司さん

足場そのものから「カセツ」に置き換え、若者との新たな接点をつくる

テーマを足場そのものからカセツに置き換えたことで、これまで足場とはまったく接点のなかった人びととの関係性ができ、さまざまなチャネルに対してカセツの価値を伝えることができたと考えています(上田さん)

ASNOVAが考えるカセツには、「仮に作る=仮“設”」と「先を推測する=仮“説”」の2つの意味があります。そんなカセツをテーマにした「POP UP SOCIETY」では、水上に浮かぶ夏限定の学びの場「Floating Berlin(フローティング ベルリン)」、若い僧侶がコンテナで“仮設のお寺”をつくるプロジェクト「懇々山七万寺(こんこんさんななまんじ)」、世界初のポータブルな水再生処理プラント「WOTA(ウォータ)」など、仮設性にまつわる記事が15本掲載されています。

Webマガジン「POP UP SOCIETY」※現在は公開は終了しております。

業界のイメージをまず変え、社会的地位を向上させていく

「POP UP SOCIETY」を立ち上げる前には顧客アンケートを実施したほか、足場業界に対する先入観の正体を探るために、リサーチプロジェクトも行いました。その結果、足場業界に対する生活者の眼差しを妨げる3つの壁(「自分には関係ない」という無関心の壁・「よくわからない」という理解不足の壁・「思ってたのと違う」というギャップの壁)があることがわかりました。

一般の人たちの眼差しを妨げる3つの壁:リサーチを通じての一番の気付きは、3K(きつい、汚い、危険)以前に偏見のフィルターが働き、そもそも若者は業界に対して無関心であり、”足場”と聞いただけで「自分とは関係の無いもの」と、見向きもしないことがわかりました。

無関心の壁が最も険しく、多くの人から足場業界に関心を向ける必然性やきっかけを奪っています。メディアを通じて、この壁を少しずつ壊しながら、足場業界に対する好感を育てていく必要があると考えました。業界のイメージをまず変え、社会的地位を向上させていく。社会から目を向けられることで、業界も変わっていくのです。それが最終的に、人材の採用・定着・育成につながると考えています(上田さん)

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