関東学院大学 PROJECT

「ユーザー中心の大学広報」を一気通貫で実装
受験生サイト・大学サイト連続リニューアル

神奈川県内に3つのキャンパスがある関東学院大学は、11学部・13学科・8コース・5研究科からなる総合大学です。約1万2千人の学生が学んでおり、2023年には国際都市・横浜の行政と商業の中心地、関内に新しく都市型キャンパスの開校を控えています。

新キャンパスの開校に伴い、ロフトワークと大学広報チームとでプロジェクトチームを結成。大学を取り巻く多様なターゲットに向けて、「変化し続ける大学のすがた」を提示するためのコミュニケーションのあり方を再定義すべく、受験生向けWebサイトと大学総合Webサイトをリニューアルしました。

大学独自の広報戦略をもとに、大学に携わる複数のユーザー像を整理。各ユーザーが求める体験価値に応じたコミュニケーション計画を立て、大学の認知や魅力の発信に取り組みました。

執筆:吉澤 瑠美
編集:岩崎 諒子(loftwork.com 編集部)
写真撮影:村上 大輔

Outline

2つのWebサイトを通じて、受験生に「2度選ばれる」機会を創出する

関東学院大学は横浜市に拠点を置く総合大学ですが、100m先は横須賀市という市の南端に位置しています。いわゆる「ヨコハマ」のイメージと実際のキャンパス風景との間には抗えないギャップがあり、受験生にキャンパスの立地を訴求する上で悩みの種となっていました。

そんな折、横浜市の中心街・関内に新キャンパス開校が決定。港町ならではの洗練されたイメージや、源流にあるミッション系大学としてのカラーを盛り込んだコミュニケーションへと、トーン&マナーを刷新する必要がありました。

さらに、私立大学のマーケティングには「2度選ばれなければならない」という課題があります。まず「受験校として選ばれること」、次に「入学校として選択されること」。「選ばれる大学」となるためには、受験生はもちろん、進路決定に大きな影響を与える学校の先生や受験生の家族・親戚に自学の特色と魅力を伝えることが大きな課題です。同時に、関東学院大学は学びの特色として「社会連携教育」を打ち出しており、地域住民や企業からの視点や評価も見逃すことはできません。

多様なステークホルダーに向けて、いかに自学ならではのブランドと存在感を示し、訴求できるか。新キャンパスの開設に合わせ、2019年から2年がかりで、受験生向けWebサイトと大学Webサイトを一新しました。

プロジェクト概要

  • プロジェクト期間:2019年11月〜2021年3月
  • クライアント:関東学院大学
  • 体制
    • プロデューサー:藤原 舞子
    • プロジェクトマネージャー/クリエイティブディレクション:松本 遼、菅沼 遥、鳴海 侑希、長谷川 太一
    • テクニカルディレクション:安藤 大海、 
    • デザイン:受験生向け・アライブ株式会社/大学Webサイト・株式会社パノラマ
    • コーディング・CMS開発実装:アライブ株式会社

Outputs

受験生サイト

受験生に「選ばれる」第一歩としてのWebサイトです。受験生の行動・ニーズから逆算して「見やすさ・わかりやすさ」を重要視。条件検索から、自分におすすめの学部・学科とその受験日程をスムーズに発見できる機能を実装しました。

大学サイト

変化しつづける大学の姿を見せるWebサイト。学生や受験生のみならず、企業や地域の人々など幅広いステークホルダーに向けて、大学と接点を持ちたいと思う「動機」を創出することを目指しています。

Topページは、学内の活動に関する最新情報を集約するとともに、関東学院大学の特色である「社会連携」を通した学びのイメージを伝えるメッセージが掲載されています。

第二階層は、関東学院の教育や研究に関する全体像を掴みつつ、最新のTOPICS・NEWS、詳細情報へ誘導するハブになっています。情報量が多いページでも読み手の関心を持続させる工夫として、追随インデックスとパララックスによる動きを取り入れました。

Approach

大学の広報戦略をもとに一気通貫で2サイトをリニューアル

本プロジェクトでは、関東学院大学の明確な広報戦略を軸として要件定義から制作を進行。一気通貫の体制で、受験生向けサイトと大学Webサイト、2つのリニューアルに挑みました。

まず、2つのサイトに共通する要件定義を実施。その上でより小規模な受験生向けサイトから着手し、次に大学サイトの順で構築し、両方のサイトでコンセプトの軸がぶれることなく進めることができました。

さらに、本プロジェクトでは、より受験生に近い感覚を制作の視点に取り入れるために、広報課の最若手メンバーを入れたプロジェクトチームを編成。Webの運用・構築の経験が浅いメンバーが小規模サイトの構築を経験しながら学習・成長できたことで、続くより大規模な大学本体サイトのリニューアルまで完遂できました。

「シンプルでわかりやすい」情報設計とUIを徹底

リニューアル以前は、大学サイトと受験生サイトの両方で似たようなコンテンツが乱立しており、閲覧するユーザーにとっても、サイトを管理・更新する人にとっても煩雑な状況でした。そこで、2つのサイトの目的を以下のように定め、コンテンツ構造と導線を設計しました。

  1. 大学サイト:これから関東学院大学と接点を持つ人に向けて「動機」を作るための情報提供
  2. 受験生サイト:受験生を必要な情報へ誘導するための導線設計

その上で、大学サイトでは、多様なステークホルダーに向けて関東学院大学と接点を持ちたいという動機付けを図るために、自学の魅力として打ち出すコンテンツを、企業・自治体・地域と連携して教育を展開する「社会連携教育」と、学び・研究成果により社会課題の解決に貢献する「教育研究活動事例」の2点に設定。アクセス数が最も多いトップページや、第二階層ページにおいて、関連コンテンツを強く押し出しています。

受験生サイトは、メインターゲットとなる受験生の視点に立った「使いやすさ」にフォーカスし、条件検索から学科を絞り込みできる機能を実装。グローバルナビゲーションの「学びを探す」から、自分が関心のある事柄に関連するタグや、志望する業界から関連する学部・学科を絞り混みできるように。さらに、「受け方を探す」からは、受験科目や受験日程、試験会場などの情報から自分が受験できる学部・学科を絞り込むことも可能です。

情報設計は高校生からのアクセス傾向を鑑みて、スマートフォンサイトから優先して作り込み、その後PCサイトへとUIを分岐させました。

CMSを拡張性の高いWordPressにリプレイス、静的化でアクセス集中にも対応

今回のリニューアルでは、従来使用していた商用CMSから、オープンソース型のCMSであるWordPressへとリプレイスがなされました。その理由として、世界中で広く使われているCMSであること、拡張性が高くこの先の機能改修やリニューアルが比較的やりやすいことなどが挙げられます。

さらに、サイトを運用する広報担当者の運用負荷軽減にもつながっています。受験生サイトと大学サイトの両方をWordPressで統一したことで、広報担当者が慣れた環境の中ですべてのコンテンツを運用・管理できるように。管理画面は、コンテンツ表現の自由度の高さを取り入れつつ、迷わず直感的に操作できるテンプレートを構築。コーディングやプログラミングといった高度な知識がなくても、ストレスなくサイトの更新作業ができる環境を整えました。

一方で、WordPressはアクセス集中などの負荷に弱い傾向にある「動的CMS」です。入試時期などで一時的にサーバーの負荷が高まりサイトが落ちてしまうこと、また、セキュリティ面のリスクが懸念されました。その対策として、WordPressサイトを静的化するサービス「esper」を導入。応答速度の向上とセキュリティ対策の両面をカバーしました。

Outcome

変化の時代に適応する、大学広報の基盤を確立

絶えず変化するVUCA時代において、「未来を見据え、日々変化していく大学のすがた」を発信していくことが、自学の魅力訴求につながる。新しいWebサイトは、関東学院大学広報部門の「強い信念」を体現しています。

例えば、大学Webサイトにおいて最も高いクリエイティビティが求められるTopページのビジュアルとコピー。これをひとつのクリエイティブで固定化せず、広報課内で「今最も伝えるべきトピック」を検討し、随時更新していく体制を選択しました。難易度の高い運用方法ですが、リニューアルから半年が経過した現在も、クリエイティブの品質を保ちながら、移り変わる「大学のすがた」を発信し続けています。

これを実現しているのは、今回のWebリニューアルプロジェクトを完走した広報課のメンバーたち。要件定義フェーズにおけるブランド価値の言語化から参画したことで、広報課チーム全体が、自学が発信していくべきブランドイメージとコンテンツの役割、Webサイトの機能を深く理解している状態を作りました。また、新しい更新環境もチームのパフォーマンス向上に寄与しており、現場からは「驚くほど使いやすくなった」との声も上がっています。

定量的な変化として、大学Webサイトでは、コンテンツのカテゴリーを「教育研究活動事例」と「社会連携教育」に集約したことにより、特別なSEO対策をすることなく自然検索からのサイト流入が増加。リニューアルの効果として、Webサイトの信頼度・評価が高まったことを示しています。

運用チームにコンセプトを浸透させ、モチベーションとパフォーマンスを高めながら、広報戦略から施策までをスピーディに実行する。関東学院大学は、激動の時代に適応するための強固な広報基盤を確立しました。

Member

菅沼 遥

菅沼 遥

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

松本 遼

株式会社ロフトワーク
MTRL リードディレクター

Profile

藤原 舞子

株式会社ロフトワーク
シニアプロデューサー

Profile

長谷川 太一

長谷川 太一

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

メンバーズボイス

“総合大学における情報発信、情報公開の最も大きな課題は、膨大な情報と多様なターゲットとの交通整理。さまざまな目的をもってWebサイトを訪れる人たちに、いかにして適切な情報を提供できるかが重要です。

一方で、現在、全国にある大学の数は約800校。持続的に選択される大学になるためには、自学の特性や特色を固有の社会的イメージとして積み上げ、差別化することが求められます。

対象に向けて最適化・最小化された情報提供は、「利便性」という観点では合理的です。しかし、イメージ形成という点では、ある種の余白、余韻、無駄と思えるような情報を散りばめて提示する必要があります。

この相反する情報設計へのチャレンジとして、関東学院大学はロフトワークと相談しながら、ユーザーのペルソナを細かく設定した上で、動線をユーザーのプロフィールではなく、動機を起点に整理する形でWebサイトを再構築しました。

ユーザーが必要な情報を提供しつつ、情報の「余白」を感じられるWebサイトとして、これからも運用していきたいと考えています。”

関東学院大学 事務局次長(入学・広報担当) 安田 智宏

“このプロジェクトの大きな特徴は、「理性的」だった事にあると思います。

関東学院大学のみなさんが自らの強みやターゲットを明確に認識していた事で、デザインプランや情報設計、コンテンツの仕分けまで多くのワークをこなしていく中でも、目的を見失うことなく議論ができました。
時に意見がぶつかることもありましたが、「目的に至るために手段をどうするか」という目線は常に変わらず、理性的・戦略的なプロジェクトの進行ができたと感じています。

また、この明確なビジョンに基づいた戦略性と、若いメンバーの多いチームならではの吸収力で、私たちも含めて大きく成長できたプロジェクトだと思います。

もともと多くの魅力的なコンテンツを持っている大学なので、今後のWebサイトの成長を楽しみにしています。”

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 松本 遼

“関東学院大学さんとは、約2年間かけて受験生サイト・大学サイトの制作をすすめてきました。

その過程で、広報部のみなさんと一緒にターゲットのニーズを想像しながら、
「関東学院大学のどんな魅力を伝えたらよいだろう?」と、試行錯誤してきました。

結果として、変化し続ける大学の姿を映し出しつつ、
同時に、変わらない特色もしっかりと訴求する。
それぞれの情報を連携させながら、受験生の興味・関心に訴えかける
ちょうど良いバランスを実現できたのではと思っています。

Webサイトはリニューアルして終わり、ではなく
いかに育てていくか、がとても重要です。

広報チームの皆様の情報発信力、運用力で、
さらに素敵なWebサイトに育てていただけると嬉しいです。”

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 菅沼 遥

Keywords

Next Contents

学校運営の基盤を支える、法人部門への信頼と共感を呼ぶ
上智学院 Webサイトリニューアル