株式会社ASNOVA PROJECT

試しにつくって、生活者に問えばいい!
オープンにしながら進めるBtoCプロダクト開発

Outline

既存事業の延長ではない、プロダクト開発に挑戦

仮設足場のレンタルを柱に事業を展開する株式会社ASNOVA(以下、ASNOVA)は、多角化経営を目指し、新たな事業展開を模索しています。同社は建設業界と若者の架け橋となるメディアサイトPOPUP SOCIETYを運営するなど、業界の垣根を超えたアプローチを行っています。新規事業の一つとして模索しているのがプロダクト開発。既存事業の延長ではなく、新顧客へ向けた事業を仕掛ける狙いです。

本プロジェクトでは、足場の特性である「仮設性」を生かし、軽やかに生活をDIYできる未来をつくることができたら、変化の激しい社会に生きる一人一人に貢献できるのではないか?という仮説から、プロダクト開発をスタート。3組のクリエイターとともに、3つの商品プロトタイプを制作しました。2021年9月、プロトタイプを展示し、企画展「カセツでつくる、軽やかなくらし展」をFabCafe名古屋にて実施。一般の生活者、約200名からフィードバックを得ました。

Outputs

くらしを"軽やか"にするプロダクト

Provisional Furniture System -カセツ家具のある暮らし-

カセツラウンジチェア
カセツウォール
  • カセツラウンジチェア
  • カセツベンチ(HUMOFIT collaboration ver.)
  • カセツウォール

工事現場の足場のように構造フレームを仮設的に組み上げ、空気で膨らませた背と座のクッションを合わせることで、仮設性と快適性を兼ね合わせた座り心地が豊かなラウンジチェアをデザインしました。組立てや分解も容易にでき、クッションの空気を抜けばすぐにフラットパックになります。

カセツウォールを家の壁に付けることで、様々なマグネット付きアイテム(収納ポケット、フック、ライト等)を自由なレイアウトできます。壁面を仮設的にアップデートし、生活をより便利により楽しく彩ります。

クリエーター:横関 亮太RYOTA YOKOZEKI STUDIO株式会社

STAND

STAND

STANDは、木製のフレームにロープをかけることで、それぞれが欲しいと思うスペースを使う人自らつくることができるものです。例えば一人で集中できるデスクスペースや、リラックスしながら座れるハンモックチェアなど、様々な要望に沿ったスペースをいくつか組み合わせ、自分だけのオリジナルな家具をつくることができます。木とロープという構成は、体をやさしく包みこむ柔らかさと、簡単に畳んで収納できる仮設性、一度つくった後も解いて何度も違う形状につくりかえることができる更新性をあわせ持つ、新しい家具のカタチです。

クリエーター:etoa studio

MIZO

MIZO

モノを置く、そしてすぐに取り出すという仮設性に注目し、色々なモノが置ける「溝」を生み出したいと考えました。MIZOは空間の中に何かを置ける溝を設置し、あなたが置きたいものを置ける場所を作り出すお手伝いをします。何を置くか、どこに置くかも自由。好きなサイズ、組み合わせで空間に溝を設置できます。

クリエーター:Richard Falcema (リチャード・ファルセマ)

企画展の詳細はこちら

Process

Story

「仮設性」というコンセプトを起点に、未知のプロダクトをどのようにプロダクトに落とし込んでいったのか、ディレクター服部が振り返ります。

服部 木綿子(もめ)

Author服部 木綿子(もめ)(クリエイティブディレクター)

神戸生まれ神戸育ち。岡山で農林業や狩猟がすぐそばにある田舎暮らしを約10年に渡り経験。その中で2軒の遊休施設をゲストハウス(岡山県西粟倉村/香川県豊島)として再生し、自らも運営の第一線に立った。その後、神戸の農産物などを販売する「FARMSTAND」で、マネージャーとして店舗の運営に携るなど、ローカルのコミュニティ拠点づくりに関わってきた。

2020年2月ロフトワーク入社。感性を頼りに現場どっぷりで培ってきた経験値に、ロフトワーク流のロジカルな手法を掛け合わせたアウトプットが出来る日を目指している。趣味は、自分の人生と感覚を観察して、文章を書くこと。イラストも描く。

Profile

「ペルソナ=わたし」が生み出す、本物の熱量

こんなに物質に溢れた世界で、新しいモノやコトなんて生み出せなさそうな気がしてきます。そして、私たちは悩みます。「新規事業や商品開発は、誰のために生み出すのか」と。

苦しみの原因は、きっと答えを「外」に求めているからかもしれません。そこで今回、私たちは「内」を探求することにしました。「ペルソナ=わたし」だと、どんな商品やサービスを生み出せばいいのか細部に渡ってイメージが及び、情熱を持って取り組めるのではないか。「わたし」という像を煮詰めたペルソナ像は、結果的に多くの共感やファンを生むのだと仮説を立てました。

自分たちの「命題」を出し合って、それを解決するプロダクトを考えるアイディエーション中。足元にはクリエイターの赤ちゃん。アイディエーションの空間に、プライベートがにじみ出ると「命題」の解像度があがります。

座禅、山散策…無駄に思えることにこそ発見がある

内なる探索が、いいプロダクトづくりに繋がるとするならば、寄り集まったチームメンバーが「内」をさらけ出せる状況が必要です。プロジェクトメンバーは、ASNOVAの社長と社員の方々、クリエイター3組、そしてロフトワークと、初めて会う人たちばかり。京都、飛騨、富士吉田と場所を変えながら合計3回のアイディエーション合宿を重ねましたが、その各回で「自己変容」のプログラムを差し込みました。もちろん、自己変容なんて一朝一夕でできるものではありませんが、「はじめまして」の緊張感から、少しずつ鎧を外していくことはできます。京都では建仁寺両足院の座禅プログラムに参加したり、飛騨では山の中を散策することで、それぞれの緊張が溶けていった気がします。

京都では建仁寺両足院の座禅プログラムに参加。
飛騨では、関連会社であるヒダクマ のメンバーに森を案内してもらいました。

途中経過を恐れずにオープンに。プロセスが唯一無二の世界観をつくる

ASNOVA社の社運を賭けた新規事業。一般的には、完成しローンチするまで、水面下で進めていくことが多いでしょう。しかし今回は、「例えばこんな事業はどうだろう?」という仮説の段階で世に問うことにチャレンジしました。

建設足場のレンタルサービスというBtoBが主たる事業領域で、かつ、自社のプロダクトは持っていないASNOVA社。今回立てた仮説は、「新規事業として『私たちのくらしにひそむ“厄介な問題”を、ふわっと軽くできるプロダクト』をBtoCで展開することにチャレンジできるのではないか」ということ。3組のクリエイターと共にプロトタイプ(試作品)を作り、生活者に実際に触れてもらって、フィードバックをもらいました。

ASNOVA社の現状の事業では、生活者との直接的な接点はありません。そこで、私たちはプロトタイプのお披露目場所に、FabCafe Nagoyaを選びました。FabCafe Nagoyaでは日頃から多様でクリエイティブなイベントや展示が行われています。目の前に公園があり、人通りも多いことから、家族連れ、学生、社会人まで幅広い客層が集うことが特徴です。こういった客層を持つカフェで、足場レンタル会社の新商品プロトタイプのオープンリサーチをやってみる。これもチャレンジ。

カセツでつくる、軽やかなくらし展

ポップなキャラクターで人々を引き寄せる

固定されているはずのパーツが入れ替わったり、移動したりすることで「カセツ性」を表現する主人公のカセツちゃん。左上のバーベキューに参加している男性は、エキスパートインタビューを引き受けてくださった藤原 辰史さん(京都大学 人文科学研究所 准教授)

プロトタイプ制作の裏で、「カセツちゃんとコテイちゃん」というInstagram企画を同時に進行していました。商品開発の拠り所とした、足場の持つ「カセツ性」。「そもそもカセツって何?」という問いを小難しくせず、ポップに伝える一コマ漫画です。「普段公園で固定されているスプリング遊具にカセツ性を持たせたら…?」という私たちの妄想を、イラストレーターの中山信一さんが一緒に形にしてくださいました。合宿中に「いいプロダクトってなんだろう」を問うべく、6名のエキスパートの方々にインタビューを実施したのですが、インタビュイーの皆さんをひっそり漫画に登場させるという遊びも行っていました。

Instagramは、オープンリサーチ前の1ヶ月間、ほぼ毎日コンテンツを更新。さらに、オープンリサーチの会場装飾に「カセツちゃん」と「コテイちゃん」を登場させて、ポップな表現を取り入れることで、展示に対する敷居をさげ、幅広い層の方の来場につながりました。(10日間の会期で、205人の来場者がアンケートに協力してくださいました!)

カセツちゃんの3コマ漫画で、アンケートのお願い。真面目にならず、いろんな人がポップに参加できる雰囲気作りをしました。

“振り返り”が大事。率直な意見を出して、次の歩み方を考える。

今回のオープンリサーチでは、来場者からのアンケートが多く集まっただけでなく、ASNOVA社が受けたメディア取材も17件と多くの反響がありました。(掲載記事はこちら:朝日新聞毎日新聞東海テレビ
ASNOVA社は、取材に一つひとつ答えていく中で「我々が取り組むべき新規事業、生み出すべきプロダクト、サービスはどんな形だろうか」と、より具体的に深く考えることができたと言います。また、プロトタイプがあると、紙の企画書を使うよりも多くの人と具体的なイメージを共有してディスカッションできます。

このプロジェクトの設計段階では、オープンリサーチ後すぐにプロトタイプのいずれかを商品化に向けて走り出す予定でした。しかし、想定どおりに進まないのは当然で、大事にしたいのは、実施後、全員で振り返ること。そして、計画からの変更を恐れないことです。

クリエイター3組がチームメンバーに加わってからは、ASNOVA社とも、クリエイターとも同じSlack上でオープンにコミュニケーションを取り合い、ひとつのチームとして歩んできました。今回のプロジェクトの終わりに、ASNOVAの上田社長の口からクリエイターに向けて、すぐに次のフェーズに進まずに、一度ASNOVA社内で整理することになったことを伝え、それを受けて、クリエイターからも感じたことを率直に伝え合う場を持ちました。

この後、どのように進んでいくかは私たちにもまだ分かりませんが、この振り返り記事自体が、また何かの化学反応を起こすかもしれないですね!

ワンチームで取り組んだASNOVAの皆さん、etoa studioさん、横関亮太さん、 Richard Falcema、通称リッキーさん!(と、ロフトワークメンバー)

エキスパートインタビューに協力頂いた皆さま

連続起業家 井口 尊仁さん
fermata株式会社 共同創設者 中村 寛子さん
京都大学 人文科学研究所 准教授 藤原 辰史さん
VUILD株式会社 COO 井上 達哉さん
muraco代表 村上 卓也さん

プロジェクト概要

Member

上田 桂司

上田 桂司

株式会社ASNOVA
代表取締役社長

小野 真

小野 真

株式会社ASNOVA
事業企画室 室長

横関 亮太

横関 亮太

RYOTA YOKOZEKI STUDIO株式会社
代表

住友 恵理

住友 恵理

etoa studio

河合 晃

河合 晃

etoa studio

Richard Falcema (リチャード・ファルセマ)

Richard Falcema (リチャード・ファルセマ)

国広 信哉

株式会社ロフトワーク
シニアディレクター

Profile

服部 木綿子(もめ)

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

小島 和人(ハモ)

株式会社ロフトワーク
プロデューサー

Profile

メンバーズボイス

“私が大事にしていることは、ASNOVAの存在理由です。私たち“だからこそ“やるべきことを明確にすることで、社会において広く共感されると感じています。また、プロダクトに挑戦している理由は、人間らしさを大事にするためでもあります。どれだけデジタルが発達しても、人を理解できるのは人だけであるからです。もがき、苦しみ 、だけど楽しく...取り組むプロセスに対して、多くの共感をいただけるようなプロダクトの開発を夢見ています。”

株式会社ASNOVA 事業企画室 室長 小野 真

“今回ずっと意識していたのは「振り返り(レトロスペクティブ)」でした。発言して振り返る。つくって振り返る。晒して振り返る。つねにみんなで振り返ることで、同じ目標や責任を持てるチームになっていく感じが最高でした。直線的に創造していくよりも、ぐるぐるまわりながら創造する。そんな蛇行するプロセスをふむことで、「なんかええやん」と思えるプロダクトにできるんじゃないかと思います。人間矛盾だらけですしね。”

ロフトワーク シニアディレクター 国広 信哉

“ASNOVA社から、商品づくりの構想を聞いた時、作るもの自体は良いものだったとして「なぜASNOVAがそれをやるのか」「誰の、なんのためのものなのか」という部分のデザインが必要と感じ、全体計画を立てました。とにかく作って出してみることを目標としながらも「なぜ、なんのため」も置いてけぼりにせず仮説する。時間軸と思考軸を行き来することが、新しい商品や文化づくりには必要です。”

ロフトワーク プロデューサー 小島 和人

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