EVENT

loftwork "DAY 2014" Innovation - イノベーションの実践 -
開催レポート(後編)

イノベーションの実践 ― ロフトワークCase Study

Case Study3: パソナキャリア「イノベーションを起こす人材を採用するには?」

株式会社パソナ 駒井 亮氏(写真左) ロフトワークシニアディレクター 西本 泰司(写真右)

後半のセッションはWebプロジェクトのCaseStudyを紹介。まずはパソナキャリアの駒井亮氏とロフトワークの西本泰司が登壇しました。「イノベーションを起こす人材の採用」を実現したパソナキャリアの新卒採用向けWebサイトのリニューアル関連プロジェクトを報告しました。

イノベーションを起こす人を集めるためにWebに何ができるのか?という問いから始まったこのプロジェクト、まずは小さくPDCAを回すために、外注していたコンテンツ制作を、採用チームと学生インターンの社内チームでコンテンツを作成する体制へと変革。その背景を駒井氏は「コンテンツ制作を外注すると1年単位の大きなサイクルでしか回せなかったPDCAを自社で回すことで、よりコンパクトにすることが狙いでした。さらに内製することで極端に完成されたイメージではなく、現場の生の様子を伝えられると考えました」と語りました。

記事ライティングも写真撮影も経験がない採用チームのスタッフが取材のノウハウを学んだ結果、コンテンツが増加し、Facebookページへの投稿数が増え閲覧数が300%増。イベント参加者も120%増と、採用活動のPDCAに良い循環を生み出しました。駒井氏は「応募者数が増えたのと同時に、採用したい学生が面談に来る確率も高くなった」と手応えを感じています。

学生と実際に会い、ワークショップでの対話を通じてWebの役割を再定義した

学生とコラボレーションする機会を増やしたことにより”ユーザ目線”での採用戦略構築やサイトデザインが可能になったと駒井氏は語りました。また、一緒に働きたいと思う学生から注目された理由は、採用したいと思う学生をチームに入れたこと、採用したい人物像に近い人材がいるロフトワークとパートナーを組んだこと。つまり、採用チーム自体が“採用したい人物像”に近づいたであるといいます。

西本は「プロジェクトの進行プロセスはWeb記事などで公開するなど、オープンさも大切にしました。イノベーションは大きなことをいきなり起こすことよりも、小さなことでもいいので自分たちが変わっていくことが大事だと思います」と小さなことからでもイノベーションを実践できることを強調。「プロジェクトメンバーにターゲットユーザの学生がいると、ユーザーとの距離が近くなり戦略の細かいチューニングも可能になる」と、まずはターゲットユーザと実際にコミュニケーションしてみることの重要さを語りました。

現在、駒井氏は採用担当チームを離れて新規事業開発を担当しており、インターンシップのソーシャルマッチングサービス「Pintern」の立ち上げに取り組んでいます。最後に西本が「採用の未来はこれからどうなるか?」と質問すると、「これからは社内と社外のあいだの垣根が曖昧になって行くと思います。会社の内外で線引きするのでなく、仲間やファンなどの別のセグメントを厚くするなどの方法で良い人材が流れてくる仕組みが必要ではないでしょうか」とこれからの採用について考えを述べました。

Case Study4: NECビッグローブ「チーム作りから生まれたAndroidアプリ Widget Home」

NECビッグローブ株式会社 瀬川 友輔氏

Case Studyの最後は、NECビッグローブ瀬川友輔氏とロフトワーク重松佑が登壇。Androidアプリ「WidgetHome」プロジェクトを紹介しました。同プロジェクトのユニークなところは収益性から作るものを決めて人をアサインするのではなく、一緒にものを作りたい人とチームを作ることだと瀬川氏は説明。”クライアント側がお願いしたものではなく、制作側が自分でコミットしたものを作る””ドキュメントよりユーザに見せられるものを優先して作る”という、それぞれの立場を超えた開発を行ったことを明かしました。

Androidの機能を生かしてデザイン性も優れたプロダクトを作り、Androidはかっこわるいというイメージを刷新したいという思いが「WidgetHome」の原点です。そして、チーム全員が「欲しい」と思えるものであり、なおかつそのプロダクトが市場に適合するかという、エモーショナルな判断とロジカルな分析に基づいて開発がスタートしました。

重松は「会議は毎回場所を変えて開催しました。あえて不安定な状態に保つというアジャイルの哲学を実践しました。デザイン検証には特大パネルを持参してユーザヒアリングを行い”相手が思わず前のめりで意見を言ってくれる”という状態を引き出すことに注力しました。最終的にはティザーサイトで反応を確認しながら、口コミで効果計測を行うなど顧客エンゲージメントを重視して検証をしていきました。」と語りました。

↑アプリ名をブレストした時のリアルタイムドキュメンテーション

重松は「Androidアプリの開発であるにも関わらず仕様書や議事録は一切なし。その代わりに、会議での発言内容や雰囲気、盛り上がった話題を動画で記録するなど、開発プロセスもコンテンツ化して公開していきました。そのプロセスでは、ポスターやCM動画など予想外なPRコンテンツも多数制作されました」とプロジェクトのポイントを解説。

最後に瀬川氏は「何を作るかよりも誰と作るかを重視することによって、『早くメンバーに見せたい』という思いが強くなるのでモチベーションが高く保たれる。作れば作るほどにやる気が高くなっていきました。社内だけでチームを組むのではなく、社外の人も柔軟に入れてチームを組むのがいい」と参加者へアドバイスしました。

「この人と一緒に何ができるだろう?」という思いは間違いなくイノベーションに結びつく

ロフトワークのCase Studyの後は、日々様々なプロジェクトでイノベーションを実践する3名が登壇。それぞれの取り組みを紹介します。

How? - Open Innovation

株式会社ナカダイ 中台 澄之氏

ナカダイの中台氏は廃棄物の中間処理業を行う一方で、自由な発想で廃棄物を活用し、モノ作りの素材へと変化させる様々な取り組みを実施しています。2011年1月から工場見学の受け入れを開始、さらに同年10月からは廃棄物のマテリアルを一般公開して「解体するワークショップ」や廃棄物からモノ作りをするワークショップなどを始めました。2012年3月には「モノ:ファクトリー」をオープンし、現在では、東京・品川にもショールームを開いています。

株式会社トビムシ 竹本 吉輝氏

トビムシの竹本氏は、人の手が入らなくなった森林の管理、再生とそこで生まれた間伐材から様々なプロダクトを生み出す事業を展開。間伐材から小さなサイズの板で作る床材「ユカハリ」、端材で作るiPhoneケース、割り箸などさまざまなプロダクトを開発・制作・販売しています。人工林の手入れを行う循環を生み出して、豊かで美しい森を守り「過去から未来につながる空間を作りたい」と竹本氏。また、地域が国に依存せず、誇り高く道を歩めることを森からやっていきたいとも語りました。

NPO法人CANVAS 石戸 奈々子氏

CANVASの石戸氏は、産官学で総合的な学びの場をつくるNPOを運営。年に一度のワークショップコレクションでは全国から100の「つくるワークショップ」を集めて開催、二日間で10万人の子どもたちが参加しました。「知識を覚えるのではなく、他者と協力しながら新しい価値を創りだしていくことが大切だと教える」と石戸氏。子どもたちの発想を社会に生かすプロジェクトにも取り組んでおり、すべてのプロジェクトがコラボレーション型で、子どもたちに最適な環境を提供したいと語りました。

ワークショップでは参加者が「誰とどんな面白いことをやりたいか」を発表

最後は、全員にシートが配られ「あなたの仕事は?」「誰と?」「何ができる?」の3つの項目に、それぞれ記入して「今日聞いた話をもとに、コラボレーションできたらおもしろいと思うこと」を書き込むワークショップを行いました。

たとえば、ナカダイの中台氏は、石垣市役所の小笹氏と一緒に「石垣島の廃棄物のインプットアウトプットをコンサルティングし、日本が誇る世界一ゴミのない島を一緒に作りたい」と発表。トビムシ竹本氏は、「子どもたちと森の未来をデザインしたい」とCANVAS石戸氏にアプローチし、いずれも前向きな回答を得て、会場を沸かせていました。

Closing Talkには再びロフトワーク林が登壇。「何か新しいことを実行したい人が集まっている中で、想像もしない出会いが生まれてここから新しいアクションが生まれたらうれしい。そういう人がたくさんいることが自分自身にとっても、また他の人にとっても励みになって大きな流れになるのではないか」と話しました。

さらには「イノベーションは技術だけによってもたらされるものではない」と指摘。「すべてに共通したのは人と人がつながること。職種や会社の違いなど、従来の枠を超えて動くことがすごく重要」であり「得意なことは明確だけど、役割は明確でないなかで生まれるのがイノベーションであり、そのなかで生まれるのが人と人の信頼関係と新しい未来を作りたいという強い思い」だと語り、一日を締めくくりました。

イベント概要

“イノベーション”というキーワードが注目されて数年。さまざまな場所や企業で、イノベーションを目指した取組みがスタートしています。

今年のloftwork “DAY” では、イノベーションを実践する先端企業、そして一緒に創りだしているメンバーを迎え、具体的なプロセスや成果をご紹介します。

会の後半は、参加者の皆さんにもイノベーションのプロセスに参加していただくプログラムをご用意しました。2014年のスタートは、ロフトワークと一緒にイノベーションを体感してみませんか?

開催概要

セミナータイトル loftwork “DAY 2014” Innovation – イノベーションの実践 –
開催日時 2014年1月31日(金)13:30〜(13:00受付開始)
場所

六本木アカデミーヒルズ オーディトリアム
地図

対象 ・新しい価値を創造したい方
・アントレプレナーの方(社内アントレプレナーの方含む)
・R&D、プロダクト開発、マーケティング、ウェブ担当者など
参加費 無料(懇親会のみ有料 3000円)
定員 150名
主催 株式会社ロフトワーク
ご注意 ・個人、同業のご参加はご遠慮いただく場合がございます。
・当日のお写真、レポートは後日弊社サイトに公開いたしますので
 参加者の方は予めご容赦ください。
・懇親会費は当日現金にてお支払いください。

プログラム

13:30~14:10

Opening Talk 「イノベーションは実践されているのか?」
WIRED 編集長
若林 恵氏

株式会社電通国際情報サービス
執行役員 オープンイノベーション研究所長
渡邊 信彦氏

14:10~14:20
Ice Break
14:20~15:20
Why? – Case Study1
空間/KOIL
三井不動産 松井氏 × ロフトワーク 松井
地域/USIO
石垣市役所 小笹氏 × ロフトワーク 中田

三井不動産株式会社
柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部統括
松井 健氏

石垣市役所
企画部観光文化課 主査
小笹 俊太郎氏

15:20~15:30
Break
15:30~16:30

Why? – Case Study2 – Webプロジェクト
リクルートコンテンツ/パソナ
パソナ 駒井氏 × ロフトワーク 西本
UI/NECビッグローブ
NECビッグローブ 瀬川氏 × ロフトワーク 重松

株式会社パソナ
パソナキャリアカンパニー 営業総本部 新規事業開発担当
駒井 亮氏

NECビッグローブ株式会社
メディアサービス事業部 事業開発グループ主任
瀬川 友輔氏

16:30~17:00

How? – Open Innovation
株式会社トビムシ
代表取締役
竹本 吉輝氏

株式会社ナカダイ
取締役 モノ:ファクトリー代表
中台 澄之氏

NPO法人CANVAS
理事長/株式会社デジタルえほん代表取締役
石戸 奈々子氏

17:00~17:50
Workshop
17:50~18:00
Closing Talk 「未来をデザインするイノベーションとは?」
18:30~20:30
懇親会(有料 3000円 / 別会場)

プログラム

13:30~14:10

Opening Talk 「イノベーションは実践されているのか?」
WIRED 編集長
若林 恵氏

株式会社電通国際情報サービス
執行役員 オープンイノベーション研究所長
渡邊 信彦氏

14:10~14:20
Ice Break
14:20~15:20
Why? – Case Study1
空間/KOIL
三井不動産 松井氏 × ロフトワーク 松井
地域/USIO
石垣市役所 小笹氏 × ロフトワーク 中田

三井不動産株式会社
柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部統括
松井 健氏

石垣市役所
企画部観光文化課 主査
小笹 俊太郎氏

15:20~15:30
Break
15:30~16:30

Why? – Case Study2 – Webプロジェクト
リクルートコンテンツ/パソナ
パソナ 駒井氏 × ロフトワーク 西本
UI/NECビッグローブ
NECビッグローブ 瀬川氏 × ロフトワーク 重松

株式会社パソナ
パソナキャリアカンパニー 営業総本部 新規事業開発担当
駒井 亮氏

NECビッグローブ株式会社
メディアサービス事業部 事業開発グループ主任
瀬川 友輔氏

16:30~17:00

How? – Open Innovation
株式会社トビムシ
代表取締役
竹本 吉輝氏

株式会社ナカダイ
取締役 モノ:ファクトリー代表
中台 澄之氏

NPO法人CANVAS
理事長/株式会社デジタルえほん代表取締役
石戸 奈々子氏

17:00~17:50
Workshop
17:50~18:00
Closing Talk 「未来をデザインするイノベーションとは?」
18:30~20:30
懇親会(有料 3000円 / 別会場)

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