loftwork "DAY 2014" Innovation - イノベーションの実践 -
開催レポート(前編)
2014年1月31日、ロフトワークは「Innovation」をテーマに「loftwork “DAY 2014”」を開催。イノベーションを実践している企業、ともにイノベーションを創り出しているメンバーを迎えて、各プロジェクトの具体的なプロセスや成果を紹介しました。また、後半では会場にいる全員が参加してイノベーションを体感するワークショップも用意。当日の様子をレポート形式でお伝えします。
数多くの人が日々確実なかたちで取り組んでいるイノベーションを発見する
半日をかけて行われたloftwork”DAY2014”は、Opening Talk「イノベーションは実践されているのか」からスタート。ロフトワーク林千晶の司会進行のもと、WIRED編集長 若林恵氏、電通国際情報サービス 渡邊伸彦氏、ロフトワーク諏訪光洋が登壇しました。
林ははじめに、「イノベーションという言葉がよく聞かれるようになっているが、日本国内での実践はまるで都市伝説のように思われている。とはいえ、数多くの人が確実なかたちで日々取り組んでいるはず」と語り、パネラーの三人にイノベーションとの向き合い方、実践の難しさについて投げかけました。
ロフトワーク諏訪は「イノベーションが起きるポイントの見つけ方ではないか。たとえば、カスタマーではなくユーザーという視点でサービスを見直すだけでも発想が変わる」と発言。これに対し、林は言葉を変えるだけで価値が変わることに着目し、「言葉の持つ力について、言葉のプロとしてどう思うか?」と若林氏に問いかけました。
若林氏は「カスタマーからユーザーに言葉が変わることで“使い手”として再定義される」として「“紙の本が電子書籍”になるという名詞の変化より、デバイスが変わり“読む行為が変わる”という動詞の変化の方が重要ではないか」と新たな視点を提示しました。
諏訪はイノベーションをredesignくらいのサイズにブレイクダウンすると、イノベーションという言葉の意味を日常に引き寄せられるのではと提案し、若林氏は「21世紀はアジャストの時代。すごいジャンプをして違う世界へ行くことをあきらめることからイノベーションを考えることが大切では」と、それに応えました。
渡邊氏は「人の価値観を少しでも変えられることがイノベーションだと思うと、人々は毎日イノベーションを起こしていけるのではないか」と発言。諏訪は「たとえば、ちょっとした不便さの改善、日常に埋没してあたりまえになってしまっている価値の再発見を重ねながら、小さくひそんだプロジェクトから新しい構造物を創っていくことではないか」とイノベーションを実践するストラテジーを語りました。
イノベーションの実践 ― ロフトワークCase Study
Case Study 1: イノベーションを生み出す空間「KOIL」
ロフトワーク君塚美香によるIceBreakで参加者の緊張がほぐれた後は、ロフトワークのプロジェクトから生まれたイノベーションを「Case Study」として紹介。まずは、三井不動産の松井健氏とロフトワーク松井創が登壇し、柏の葉キャンパスシティに2014年4月14日オープン予定の柏の葉オープンイノベーションラボ「KOIL」の事例を紹介しました。
柏の葉キャンパスシティは、つくばエクスプレスで都心から約30分。国内有数の学術都市の中心に位置しており、沿線には約20の国立研究所、民間の研究所もあわせると約100の研究機関が存在します。松井氏は「新しい技術が生まれる街の真ん中に、ビジネスが生まれるプラットフォームを創りたい」と考えMITメディアラボ所長の伊藤穰一氏に直接相談をしました。「そこで、日本にいる代理人として紹介されたのが林さんとロフトワークでした」と、約一年半前を振り返りました。
当時のロフトワークはFabCafeなど新しい取り組みに着手しはじめた頃、ロフトワークの松井と林は当初「Web構築だけではイノベーションスペースに大きな貢献はできない。空間設計やプログラムづくりを含めてもっと複合的に関わらせてほしい」と提案し、FabCafeの内装デザイン・設計を依頼した成瀬・猪熊建築設計事務所とのパートナーシップでプランニングを行いました。
松井氏は「予想外の人に出会って一緒に未来を描くような場所にしたい。ロフトワークの発案で建物の真ん中に作ったファクトリーをみんなをつなぐ潤滑油にしたら人が集まるのではないか。ただ面白く新しいものを創ったことに満足せず、結果をしっかり出していきたい」と春のオープンに向けて抱負を語りました。
ロフトワークの松井は「イノベーションをテーマとした新しいコミュニティ、場所を創ろうとしていたけれど、今思えば一つひとつのことすべてが小さなイノベーションでした。企業のためだけでもなければ個人のためだけでもなく、エンジニアやクリエイターがユーザーとともにco-designを実践する場にしたい。イノベーションの実践においては、テーマも大事だが議論と議論を行う場所などの環境要因も重要。みなさんのやりたいこととKOILのような場所をつなげていきたい」と締めくくりました。
Case Study 2: デザインの力で島の魅力を再発見する「USIO DESIGN PROJECT」
続いて、石垣市役所 小笹俊太郎氏とロフトワーク中田一会、寺井翔茉が登壇。石垣島の名産品リデザインプロジェクト「USIO DESIGN PROJECT」について報告しました。小笹氏とロフトワークの出会いは、「Roooots 名産品リデザインプロジェクト」の仕組みに興味を持った小笹氏からの問い合わせでした。小笹氏からの最初の要望は「外部目線」「モノを通した地域の魅力発信」「台湾からの視点」の三点。これに応えるべく、ロフトワークは石垣、東京、台北の各地域チームを作り、各チームの強みを生かしながら連携しあう体制でプロジェクトを進めてきました。
プロジェクトは名産品の「発掘」からスタートし、石垣島の事業者からリデザイン対象となる名産品の応募を募りました。結果40アイテムの応募があり、その中から10アイテムが選ばれました。デザインの公募は、ロフトワークの持つ2万人のクリエイターネットワーク、FabCafe台北との連携、そして台湾デザイナーズウィークと連携しながら公募を実施。公募期間中のプロモーションを地道に行った結果、2ヶ月で204人のクリエイターから431作品が集まりました。デザイン審査は、台湾の国立デザインセンター 陳文龍氏、離島経済新聞の鯨本あつこ氏、ロフトワーク林千晶、スマイルズ遠山正道氏の4名が担当。石垣島で熱い議論を重ね、その直後に名産品の事業者や地元メディアに向けに結果発表を行い、その様子はネットで中継も行いました。
「今後、モノが伝道師になって島の魅力を代弁して欲しいという想いを込めて、モノそのものの魅力に留まらず、まわりの島の背景を伝えることを重要視しました」と小笹氏。また、本プロジェクトを担当したロフトワークシニアディレクターの寺井は「プロジェクトのなかでは「会う」ことを重視し、デザインを担当するクリエイターを石垣島に招いて生産者を訪問してもらうなど、一歩踏み込んだ体験も設定しました。そして「他人が選んだ服を着る」というコンセプトで、自分たちでは気づかない新しい視点で魅力の再発見を促しています。」と語りました。
イノベーションについて小笹氏は「正しいかどうかではなく『今何をすればどう動くか』が重要。そこに色気、楽しさ、美味しさがあることがすごく大事だと思う」と小笹氏は語り、コミュニケーションディレクターとしてプロジェクトに参加した、ロフトワークPRの中田は「新しいものを始めるときに、人を動かす”いいにおい”のさせ方を設計するのが、私たちロフトワークがクリエイティブでできることだと思う」と語りました。
イベント概要
“イノベーション”というキーワードが注目されて数年。さまざまな場所や企業で、イノベーションを目指した取組みがスタートしています。
今年のloftwork “DAY” では、イノベーションを実践する先端企業、そして一緒に創りだしているメンバーを迎え、具体的なプロセスや成果をご紹介します。
会の後半は、参加者の皆さんにもイノベーションのプロセスに参加していただくプログラムをご用意しました。2014年のスタートは、ロフトワークと一緒にイノベーションを体感してみませんか?
開催概要
セミナータイトル | loftwork “DAY 2014” Innovation – イノベーションの実践 – |
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開催日時 | 2014年1月31日(金)13:30〜(13:00受付開始) |
場所 |
六本木アカデミーヒルズ オーディトリアム |
対象 | ・新しい価値を創造したい方 ・アントレプレナーの方(社内アントレプレナーの方含む) ・R&D、プロダクト開発、マーケティング、ウェブ担当者など |
参加費 | 無料(懇親会のみ有料 3000円) |
定員 | 150名 |
主催 | 株式会社ロフトワーク |
ご注意 | ・個人、同業のご参加はご遠慮いただく場合がございます。 ・当日のお写真、レポートは後日弊社サイトに公開いたしますので 参加者の方は予めご容赦ください。 ・懇親会費は当日現金にてお支払いください。 |