BtoB Web vol.2 顧客体験を向上させる!サイト進化 3つのステップ 開催レポート
2014年5月22日、ロフトワークとサイトコアは、BtoB企業のWebのあり方を考えるシリーズイベントの2回目を開催。BtoCと違って、比較的購買プロセスの長いBtoBにおいて、企業がWebサイトで実現し得る魅力的な顧客体験とは何なのか?その考え方と実装方法を3ステップで紹介しました。
BtoBでもユーザーオリエンテッドなコミュニケーションがカギ
顧客体験の向上をテーマに、その具体的な進め方について3ステップで考えていく今回のセミナー。まずは第1ステップとして、顧客体験を向上させるサイト構築のポイントを紹介したのは、ロフトワークの矢橋友宏です。
矢橋は、「顧客体験を考える際には、テクノロジーより戦略が大事。まず顧客を理解し、様々なチャネルで顧客接点を作っていく。しかも文脈に沿った形でタッチポイントを設計する必要がある。その先に戦略の実現を支えるのがテクノロジーです」と指摘。つまり、WCM(Web Contents Management)からCXM(Customer Experience Management)へのシフトが求められているのです。
WCM → CXM
- プロダクトファースト → カスタマーファースト
- Webを分析する → 顧客を理解する
- マルチチャネル → オムニチャネル
- コンテンツを量産 → 文脈を持っ
- コンテンツを作成、設計、提供
- 効率的 → 効果的
また、BtoBとBtoCの違いに言及し、「認知からアクションまでの流れは基本的に同じ。ユーザーオリエンテッドなコミュニケーションが必要になることに変わりはない」と矢橋。Webに求められる本質は、情報を伝えることでアクションを引き起こすための「コミュニケーションデザイン」であり、有益なコミュニケーションの創出には次の3つが必要になると説明します。
- ステータスの把握
- 興味・関心の認知
- 相手にとってユニークだと感じる情報の提示
これを可能にするために、ロフトワークではカスタマージャーニーマップを採用。矢橋は、事例を通じてその具体的手法を紹介しました。
パソナ様カスタマージャーニーマップ作成事例
新規事業を創出できる人材を獲得することを目的に、新卒採用サイトをリニューアル。
<作成手順>
1)対象となる学生に就職活動に関するインタビューを行って彼らの「行動」を書き出し、並べる
2)「思考」「感情」の要素も同じように並べる
3)マッピングできたら体験改善の方向性を議論
<作業を通じて得た発見>
•選ぶ基準の1つは、将来的にやりたい起業ができるかどうか?
•Webの情報はそれほど見ない
•必要な情報は就職活動の段階によって異なる
•実際に会社の人と会って話をすることを重視
<発見を通じて行ったこと>
•イベントとWebを緻密に連動
•「候補を探す」「エントリーする」「面接を受ける」という各段階に合わせたWebでの情報発信とイベントを用意
•コンテンツの作成~発信のプランを作成
矢橋は、「実際のターゲットにインタビューできると一番効果的」とアドバイス。ユーザー中心のコミュニケーション設計に、カスタマージャーニーマップが大いに貢献することを強調しました。
カスタマージャーニーマップについて解説したロフトワークディレクターによる記事
2時間で作るカスタマージャーニーマップ――実例とともに考える新しい「おもてなし」のカタチ カスタマージャーニーマップを正しく活用するには「おもてなし」と「カスタマーエクスペリエンス」の理解から
パーソナライゼーションで解決意欲を持つ人を見込み客へと育成
サイトコア株式会社の平井千晶氏は、自身が実践しているマーケティング施策の中から、「リードジェネレーション」と「リードナーチャリング」の施策を中心に紹介。「Sitecore CEP※はCMSとデジタルマーケティング機能を統合したシステム。手前味噌になるが、少人数で運用できているのはSitecore CEPのおかげでもある」と語る平井氏は、Sitecore CEPを使った取り組みを、リードの獲得~育成の流れに沿って説明しました。
※Sitecore CEP
Sitecore Customer Engagement Platform
どうする?
オンラインとオフラインの両輪で施策を実施。いきなり製品紹介から入らず、課題に気付いてもらうためのコンテンツを用意。 「一番重要なのは、ゆるい案件をそのまま営業に渡さずに育てること。また、課題に気付いたばかりのお客様と、解決意欲を持っているお客様とを分けること」と平井氏。
解決意欲を持ったお客様へのアプローチ
・リターゲティングを行う
一度アクセスしてきた人を約2ヵ月にわたり追跡。たとえば、事例ページを閲覧した人、資料をダウンロード済みの人に合わせて、読んで欲しい資料をオファーするバナーを表示。Sitecore CEPでは条件を指定するだけでコンテンツの出し分けが可能。
・定期的に情報を届ける
定期メールを配信。Sitecore CEPを使ってA/Bテストを実施し、よりクリック率の高い件名での配信を実現。
・「個客」に合わせたコンテンツを届ける
顧客の行動履歴に応じたシナリオを設計し、Sitecore CEPで最適なコンテンツを出し分け。
さらに、もう一歩
見込み客を育てた後、次の方法で営業に情報を提供。
- 閲覧履歴のレポートを共有
- 顧客のアクションを営業部門へ自動でメール通知
- 配信メールへの反応やイベントの情報をCRMで一括管理
- オフライン上の閲覧履歴+オフライン行動でスコアリング
- 顧客の属性や行動履歴、興味関心などの情報をもとに営業訪問または電話
どう評価する?
施策の展開後は、次の方法で評価を実施。
・施策全体の評価指標
一度アクセスしてきた人を約2ヵ月にわたり追跡。たとえば、事例ページを閲覧した人、資料をダウンロード済みの人に合わせて、読んで欲しい資料をオファーするバナーを表示。Sitecore CEPでは条件を指定するだけでコンテンツの出し分けが可能。
・オンライン施策の分析指標
最終的にコンバートした人の数だけでなく、資料ダウンロードやニュースレターの登録など、何かしらのアクションに対してスコアを付与し、オンライン上でのエンゲージメントの度合いを計測。
サイトコアの取り組みは、まずは実践して検証し、次から次にActionを起こすことで、失敗しながら学ぶやり方です。平井氏は、「これができるのは、システムをはじめ、組織の協力体制、自分自身がちょっとやってみようかなと思える環境があるから」と語り、Sitecore CEPの使い勝手の良さをさりげなくアピールしていました。
ペルソナ別・セールスステージ別にコンテンツをセグメンテーションする
サイトコア株式会社の片桐佳江氏は、平井氏のセッションを受け、パーソナライゼーションを実装した育成型のサイトを構築するための具体的な手法に迫りました。
はじめに、「ファネルからこぼれおちたコンタクトやリードの中には、育てれば案件になる金の粒が含まれている。そんな潜在顧客の育成には、顧客起点のコミュニケーション設計が必要」と片桐氏。また、その際の重要な設計要素が「ペルソナ別コンテンツ・セグメンテーション」と「セールスステージ別コンテンツ・セグメンテーション」であり、ペルソナ×セールスステージの組み合わせによって、“個客”に最適化されたコンテンツを届けられるようになると言います。
・ペルソナ別コンテンツ・セグメンテーション
主に、顧客インタビューで得た定性的な情報と、CRMデータ分析から得た定量的な情報の2つを参考にペルソナを作成し、取得したコンタクトに対してどのペルソナ区分に属するのかという情報を付与。このペルソナ区分に応じてコンテンツをセグメンテーションしておく。
・セールスステージ別コンテンツ・セグメンテーション
BtoBの場合、比較的購買プロセスが長いため、「興味喚起」「欲求醸成」「比較検討」「追加購入」といったステージに分け、このステージに応じてコンテンツをセグメンテーションしておく。
ここで片桐氏は、もう1つ重要なポイントとして、閲覧アクションからペルソナとセールスステージを判断するためのスコアリングの手法を紹介。「オンラインだけでなくオフラインのコンテンツや活動内容も併せて、その両方にスコアを付与。そこから顧客のプロファイル像が見えてくれば、次にどんなコンテンツをお勧めすべきかがわかる」と説明します。
では実際に、特定のパターンに一致した人にコンテンツをパーソナライズ表示させるにはどうしたらよいのでしょうか。必要なIT基盤は次の3つです。
1)パーソナライゼーション機能を持ったCMS(WCMS)
2)マーケティングオートメーション機能
3)CRMや顧客DB
さらに、「これらが連携していることが重要。そうでないとコミュニケーションのフローが分断され、一貫したメッセージの配信や効果検証が行えない」と片桐氏。加えてPDCAを素早く回していくには、「マーケティング戦略設計者」「データ分析者」「Web運用・管理者」の配置および連携も必須です。
片桐氏は以上を総括し、Web上で案件の種を育成し、ビジネスに貢献するためのポイントを改めて整理しました。
<まとめ>
●コミュニケーション設計要素:ペルソナ、セールスステージ、コンテンツ
●必要なIT基盤:WCMS+MA+CRM
●PDCA組織体制の整備
セッション終了後は、ロフトワークの君塚をモデレーターに、パネルディスカッションを実施。登壇者らの豊富なノウハウにヒントを得ようと会場からも次々と質問が飛び出し、活気溢れる50分となりました。顧客体験を考えるためには、今ある情報を整理するのではなく、顧客から始めること「いったんWebのことを考えるのをやめましょう」という矢橋のまとめの言葉が、はじめの一歩となりそうです。
パネルディスカッションで挙げられた質問と回答
パネルディスカッションで挙げられた質問と回答をいくつかご紹介します。
Q:カスタマージャーニーマップについてより詳しい内容を教えてほしい。
[ ロフトワークからの回答 ]
ロフトワークがカスタマージャーニーマップについて執筆した記事がWeb担当者Forumに掲載されています。作成時に必要な考え方、利用するメリット、作成手順まで詳しくご紹介していますのでぜひご覧ください。
▼カスタマージャーニーマップを正しく勝つようするには「おもてなし」と「カスタマーエクスペリエンス」の理解から
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/11/14/16305
▼2時間で作るカスタマージャーニーマップ実例とともに考える新しい「おもてなし」のカタチ
http://web-tan.forum.impressrd.jp/e/2013/11/27/16409
Q:カスタマージャーニーマップの項目は、定められているのか?
[ ロフトワークからの回答 ]
項目は、目的に応じて変わることがありますが「ペルソナ、フェーズ、タッチポイント、思考、感情の5領域」はおさえることが多いです。
Q:カスタマージャーニーマップをつくる際、どのようなメンバーで行うとよいか?
[ ロフトワークからの回答 ]
顧客の視点から考える必要があるので、顧客と接点がある部門の方々と作成することを推奨します。ロフトワークがご支援したお客様の案件では、実際にターゲットとなるユーザーと一緒に作成した事例もあります。
Q:契約を維持したり、追加購入してもらうためにSitecore CEP上で提供すべき顧客体験は何か?
[ サイトコアからの回答 ]
顧客情報の詳細がわかっている場合は、利用商品のTipsを提供するなどし顧客満足度を高めたりオプションサービスの活用例などに誘導する方法があります。また、シンプルに顧客企業のドメイン単位でコンテンツを出し分けることもできます。
Q:Sitecore CEP※と一般的なCRMソリューションはどのように使いわければよいか?
[ サイトコアからの回答 ]
Sitecore CEPは、サイトを構築する機能をもち、Web上での行動やコンタクトに対するCRMにたけています。一般的なCRMソリューションはオフラインの コンタクト情報や営業活動履歴にフォーカスした機能のものが多いため、両者を連携するとオンライン&オフラインを通したCRMを実施できます。
イベント概要
BtoB企業のWebの在り方を考えるシリーズイベント。第2回目となる今回のテーマは、「顧客体験を向上させるサイト」です。
UXやCXというキーワードが注目されてきていますが、これはBtoC企業だけにとどまらずBtoB企業にとっても必要とされています。しかし、具体的にどのようにはじめればよいのでしょうか?
本イベントでは、UXやCX向上に欠かせない考え方と実装方法を3つのステップにわけて解説。ステップ1として、スモールスタートでのサイト構築、ステップ2では部分最適でのパーソナライゼーション実装、さらに最終ステップとしてビジネスの全体最適を考えた顧客セグメンテーションとパーソナライゼーションの実現。
それぞれのステップを事例を交えてご紹介するとともに、パネルディスカッションでは成功させるポイントを考えていきます。
開催概要
セミナータイトル | BtoB Web vol.2 - 顧客体験を向上させる!サイト進化 3つのステップ – |
---|---|
開催日時 | 2014年5月22日(木)14:00 – 17:00(受付開始:13:30) |
場所 | loftwork Lab(ロフトワーク渋谷) [渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア10F] 地図 |
対象 | ・BtoB企業のサイト活用法を知りたい方 ・顧客体験向上、パーソナライゼーションなどに興味をお持ちの方 ・Webリニューアルをご検討中の方 |
参加費 | 無料 |
定員 | 40名 |
共催 | 株式会社ロフトワーク、サイトコア株式会社 |
ご注意 | ・プログラムは、予告なく変更される場合があります。 ・個人、同業のご参加はご遠慮いただく場合があります。 ・当日の参加者の皆さんのお写真は、後日公開するレポートなどに掲載させていただきます。 ・ご記入いただいた個人情報は、株式会社ロフトワークおよび、共催企業のみで共有し 結果の分析および、ご案内以外では利用いたしません。 |
プログラム
- 14:00~14:10
- オープニングスピーチ
・BtoB企業が今考えるべきExperience Design
・スモールスタートのメリット - 14:10~14:40
- 「ステップ1:顧客体験を向上させるサイト構築」
・顧客体験を向上させるサイト構築
・プロジェクトの進め方 – ワークショップ形式の戦略設計、カスタマージャーニマップの活用
・成功事例とそこから学ぶべきポイント - 14:40~14:50
- 休憩
- 14:50~15:20
-
「ステップ2:ブランドを身近に感じるシナリオ作り」
・BtoB企業のリードジェネレーションとナーチャリング
・サイトコア自社事例にみる運用フロー
・定量、定性の成果サイトコア株式会社
マーケティングコミュニケーションマネージャー
平井 千晶氏 - 15:20~15:50
-
「ステップ3:パーソナライゼーションに向けたセグメンテーションとスコアリング」
・顧客セグメンテーションの考え方
・評価指標とスコアリングの最適化
・その先にあるステップサイトコア株式会社
マーケティンググループ マーケティング本部長
片桐 佳江氏 - 15:50~16:40
- パネルディスカッション「3つのステップを成功させるためのポイント」
(矢橋、平井氏、片桐氏 モデレーター:君塚)