EVENT

「職場の人間科学」著者 Ben Waber氏登壇
行動分析で変える!パフォーマンスを最大化する働き方

組織のパフォーマンスを高めるには、何をどう変えればよいのか。ロフトワークは、2015年5月14日、人間科学の視点から組織マネジメントと生産性の向上を考えるイベントを開催。「職場の人間科学(People Analytics)」の著者Ben Waber氏を招き、行動分析データに基づく組織改革の可能性について考えました。

行動データから職場改善のヒントが見えてくる

「今日は、ウェアラブルで一人ひとりの行動をトラックしていく一方で、最高の演技を生み出す“ステージを作る”という視点を持ってみたい」。

ロフトワーク カワナアキのオープニングトークでスタートしたイベントは、Humanyze(前:Sociometric Solutions)代表のBen Waber氏(以下、ベン氏)がセッションに登壇。話し方や動きを測定するセンサー「Sociometric Badge」を使って、データに基づく組織マネジメントを提案するベン氏は、自社事例を交えながら、これからの組織改革のあり方を解説しました。

Humanyze(前:Sociometric Solutions) Co-Founder, President, and CEO Mr. Ben Waber

はじめに「なぜ組織改革は難しい?」と切り出したベン氏は、「ビジネスに関連する簡単かつ重要な質問に対し、仮説は立てられても、データがないから客観的に答えられない」と指摘。「位置情報や相手との距離、自分の動き、話し方などについてデータを取得できれば、自社で何が起こっているかがわかり、改善が可能になる」と説明しました。

ベン氏が開発したSociometric Badgeを使うと、声のトーンや大きさ、スピード、発言回数、話す順番などのデータを取得し、可視化できます。ブレーンストーミングなどでは、会話に参加していない人の有無や対話量の偏りが把握でき、そこから職場改善のヒントが得られます。「社会心理学の研究によると、ブレーンストーミングを通じて新しいアイデアを創出したいなら、平等な参加率が必要。話す割合だけでなく、誰が誰のあとに話すといった会話の流れも重要」とベン氏。

非常に興味深いのは、最近になって多くの企業が「People Analytics部門」を組織し始めているという事実です。People Analytics部門の仕事は、行動データに基づいて組織計画を改革すること。ここでベン氏は、Sociometric Badgeの活用事例をいくつか紹介しました。

  • IT企業の例:データ分析の結果、組織内のエキスパートが同僚を支援することで、仕事の完了時間が大幅に削減されることが判明。個人のパフォーマンスに対してではなく、グループ目標の達成度に対する報酬制度に変更し、部門のパフォーマンスが10%改善。
  • コールセンターの例:データ分析に基づいて、バラバラだった社員の休憩時間を統一。話す機会の増加→エンゲージメント向上→ストレス削減という循環が生まれ、生産性が23%増加。転職率は40%から12%まで低減。年間15億円の効果。
  • 小売銀行の例:拠点間のパフォーマンスのバラツキを解明すべく、60拠点のコミュニケーションを分析。万遍なく対話している拠点のパフォーマンスが高いことがわかり、グループ報酬制度を導入すると共に、複数に分かれていたフロアを1つに統合。販売量が11%増加、250億円の効果。

「一般的に距離効果は非常に高い。机の距離は会話に大きく影響する」とベン氏。たとえば、別フロアから同フロア、同列、隣人と距離が縮まるごとに約10%ずつコミュニケーション割合が増えていきます。ベン氏は、「いずれもデータを使うことによって重要な行動を発見できた」と語り、職場変革におけるデータ活用の重要性を強調しました。

砂漠サバイバルゲームでチームビルディングエクササイズ

続くワークショップでは、職場における会話の重要性を体感。Sociometric Badgeを装着した参加者が4人1チームに分かれ、砂漠からの生還をかけて協力する「サバイバルゲーム」を行いました。まず個人ワークで砂漠からの脱出計画を立て、次にチームで意見交換しながら作戦を練り上げ、最後に発表する流れです。

ゲーム体験をもとに、Sociometric Badgeの活用アイデアについてディスカッション。チーム内でどのようなコミュニケーションが行われたかも計測して可視化し、ベン氏が解説。

ワークショップ後は、ゲーム体験をもとに、Sociometric Badgeの活用アイデアについてディスカッション。いずれのアイデアも、実現に向けてはプライバシー保護の問題が切り離せません。

<参加者から出た活用アイデアの例>

  • ギャップ分析:自分の意見が一人よがりではないかどうかを客観的に評価。
  • チームデザイン:ランチに行く仲間をデータに基づいてレコメンド。
    全員が納得の上で意思決定できているかどうか測定。
  • コーチング:トップセールスの働き方を記録して業務改善や教育改革を実現。
  • コミュニケーションの効率化:意思決定やブレストの場面で最適な人数を算出。
  • 人事プロセスの自動化:退職しそうな人を予測。

さらに、ゲーム中のブレーンストーミングがメンバーの考えにどのような影響を与えたか、全員がチームで決めた作戦をベストだと思えたかどうか、ベン氏がSociometric Badgeで取得したデータの解析結果を解説しつつ、振り返りを行いました。

Sociometric Badgeの活用アイデアについて参加者から様々なアイデアが寄せられました

縁の下の力持ちがきちんと評価される時代になる?!

イベントの締めくくりには、ハーバード・ビジネス・レビューの岩佐文夫編集長が加わり、ベン氏、ロフトワークの林千晶の3人でパネルディスカッションを実施。パフォーマンスの最大化を焦点に議論を展開しました。その一部をご紹介します。

<コラボレーション>

ハーバード・ビジネス・レビュー編集長 岩佐 文夫氏

林:ハーバード・ビジネス・レビュー3月号は「オフィスの生産性」だったが。

岩佐氏:オフィスの機能の一つが、会話する、コラボレーションすること。凡人が集まっていかにいいアイデアを出すか、ここに無限の可能性を感じている。そのメカニズムを解明したいとの思いでテーマを決めた。私が考える理想の会議は、5案出てきたときに、もっといい案を作ろうと6案目が出てきたとき。そういう会議は、全員6案目がいい!と思っているし、企画が成功すれば全員が自分の手柄だと思っている。

林:想像もしなかった案に到達する瞬間が絶対にある。一人では絶対にたどりつけないところに行けるような議論。コンサルティング経験から、そのあたりのメカニズムについて何か秘訣はある?

ベン氏:スティーブジョブズが、ピクサーの本社ビルにトイレを一つだけ作ろうとした話は有名。誰かと鉢合わせして会話する機会を増やし、アイデアの創出につなげる狙い。非公式な場で偶然出会ったときに新しいアイデアが生まれやすいことは、データでも証明されている。

<科学的経営管理法>

ベン氏:複雑なものを作る上で必要なのはコミュニケーション。特に、非公式な場で交わされる会話こそが重要。科学的根拠に基づいて組織を経営できれば、脅威的なスピードで革新的なものを作ることも可能になる。

岩佐氏:科学的経営管理法を代表する言葉が、「測定できないものは経営できない」。労働の概念が、製品を作ることではなく、頭の中でモノを生み出すことにシフトしているが、机の前に一時間座っていればいい企画が生まれるわけではない。ベン氏の研究がすばらしいのは、従来の計測方法ではムダと言われてきたものに意味があることを数値化し、ナレッジワーカーに何が必要かを明らかにできる可能性があるということだろう。

<ウェアラブル技術の未来>

ロフトワーク 林千晶

林:労働の概念が変わってくると仕事とプライベートの境界線が曖昧になり、組織には悩ましい時代。未来に向けては何か考えている?

ベン氏:10年以内に、ウェアラブルは衣服になると思う。あらゆるものを感知して、データからどう行動すべきかを判断し、自ら環境に影響を与えるようになるだろう。

岩佐氏:ウェアラブルで自分では気づけなかったことがわかるってすばらしい。縁の下の力持ちがきちんと評価される時代になるのかも。

林:でも情報システム部門は大変。

ベン氏:そのためにPeople Analytics部門がある。でないとデータを効果的に扱えない。上司の仕事は評価することではなく、社員のパフォーマンスを向上させるための環境を作ること。そこに人間のデータを使うことで、自分をどう改善すべきかがわかるようになる。

林:極端に言えば、人事評価を行うのは上司ではなく、コンピュータになっていくのかもしれない。

組織のパフォーマンス評価を個人の主観や定性情報に頼ってきたわたしたち。センサリング技術の進化により、新たな評価軸がその中心になろうとしています。これまで可視化できなかった、日々のコミュニケーションの中には、組織改革のヒントが詰まっていることでしょう。議論はまさに今はじまりました。

 

イベント概要

本イベントは、全編日本語で開催します。

働き方を変え、組織のパフォーマンスを上げるーー。しかし、働き方は定性評価で語られることが多く、「何をどのように変えることが有効なのか?」を示すデータは、ほとんどありませんでした。

そこに新しい視点を取り入れたのが、「職場の人間科学(People Analytics)」の著者 Ben Waber氏です。

Ben氏が代表を務めるSociometric Solutionsでは、Sociometric Badgeというコミュニケーション・位置などを測定するセンサーで、データに基づいた組織マネジメントの提案をしています。製薬、金融、ソフトウェア、病院などさまざまな業界での分析経験を通じて、

・会話の内容ではなく、話し方のような”シグナル”の計測が重要
・組織で明文化されていない、非公式なアドバイスは業績に大きな影響を及ぼす
・知識をみつけ、広めるのが上手な人が生産性に大きく関与している

などこれまで見過ごされがちだったポイントをデータ解析から明らかにしています。本イベントでは、定量分析から考える、組織マネジメントと生産性向上についてBen Waber氏を招きお話しいただきます。Sociometric Solutions社がこれまで培ったナレッジを体感いただけるワークショップもご用意しています。

開催概要

セミナータイトル 「職場の人間科学」著者 Ben Waber氏登壇
行動分析で変える!パフォーマンスを最大化する働き方
開催日時 2015年5月14日(木)13:30〜19:30(開場 13:15)
場所 ロフトワーク渋谷 (10F)
地図
対象
  • 組織や接客のパフォーマンス改善を検討されている方
  • センシングテクノロジーを利用した科学的分析に興味をお持ちの方
  • Sociometric Solutionsのサービス導入を検討されている方
参加費 10,000円(税込)
※懇親会の費用を含みます
定員 40名
主催 株式会社ロフトワーク
ご注意
  • 個人、同業のご参加はご遠慮ください。
  • プログラムは予告なく変更される場合があります。
  • 申込完了メールは、フォーム入力のメールアドレスではなく、Peatixアカウント登録のメールアドレスに送付されます。
  • 決済完了をもって申込受付となります。お支払い前に定員に達した場合は、参加ができなくなりますのでATMやコンビニ決済選択の方はすみやかにお支払いをお願いします。
  • 領収書の発行についてはPeatixサポートページをご覧ください。
  • 参加費決済後の払い戻しはお受けできませんので予めご了承ください。
  • 参加者の皆さんのお写真は、後日公開するレポートなどに掲載いたします。

プログラム

13:30〜13:45
Opening Talk

13:45〜14:45
Sociometric Intro「行動分析で変える!パフォーマンスを最大化する働き方」
Sociometric Solutions Co-Founder, President, and CEO Mr. Ben Waber

14:45〜15:00
Role Play Game 「Sociometric Badgeを体験する」
Sociometric Solutions Co-Founder, President, and CEO Mr. Ben Waber

職場において、ブレーンストーミングなどの“会話”は重要視されています。では、会話は具体的にどのように重要なのでしょうか?参加者の皆さんに、サバイバルゲームを通してその重要性を体感いただきます。

15:00〜15:15
Break

15:15〜17:00
Use Cases and Q&A Discussion
Sociometric Solutions Co-Founder, President, and CEO Mr. Ben Waber

Sociometric Solutionsが提供するサービスは、組織にどのように有効なのか?事例を交えご紹介しながら、参加者の皆さん自身の組織でどのように活用できるのかディスカッションします。

17:00〜17:15
Break

17:15〜18:00
Game Results and Perspectives
Sociometric Solutions Co-Founder, President, and CEO Mr. Ben Waber

前半のRole Play Gameやディスカッションから、実際のデータ解析結果をご覧いただきます。

18:00〜18:45
Panel Discussion
Sociometric Solutions Co-Founder, President, and CEO Mr. Ben Waber
ハーバード・ビジネス・レビュー編集長 岩佐 文夫氏
株式会社ダイヤモンド社
ハーバード・ビジネス・レビュー編集長 岩佐 文夫氏
株式会社ロフトワーク 共同創業者、代表取締役 林 千晶

18:45〜19:30
Networking

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