もっと街にパーソナルな解答を。ー道玄坂花壇からはじまる、小さな公共HACKー 実践記録(後編)
Step4:プレゼンテーションの時間です
「道玄坂の時間・空間のスキマを埋めよう」
アイデア名:スキマつぶし by team さかのうえ
花壇同士のスキマは向かい合って座るのにちょうどよさそう、という発想から、パラソルやテーブルを設えることで休み時間や待ち時間のような「スキマ時間」を過ごせる場所にすることを提案。普段は自転車やゴミやカラーコーンが置かれている場所が、親密な憩いの場になりそうです。
大西:道玄坂は交通量のある通り。(人が歩いている方を向くのではなく)坂を見下ろす/見上げる向きに座ることで感じ方が変わるのは納得。
ミリ:カラーコーンに板を乗せてみた、という簡易さが良いなと思った。スキマ感を残しつつ、雑多な場所性や高さの違いをもっと活かすテーブル・椅子のデザインができればなお良さそう。
石川:ランチの後コーヒーを飲む時間あるよね、といった人の動線や時間の使い方の発見があったチーム。
「道玄坂を自分の庭にしよう」
アイデア名:Portable Public Garden by team 428モジュール
道玄坂の花壇を自分ごと化にするには?という問いに、個人が小さな庭を道玄坂に持てる仕組みを提案。
428mm角の箱庭を道玄坂の商店主さんや個人に販売、思い思いの箱庭を育ててもらい、道玄坂花壇で展示を行うという仕組み。展示は期間限定であっても、箱庭の世話は日常的に行われるため、関わる人達の愛着もまた育てられそうな仕組みです。
長谷川:花壇全部、700人位の道玄坂のファンが増えたら嬉しいです。
石川:個人が引き受けられるサイズに気づいた所がポイントだと思う。「自分の庭」は自分のテリトリーという意味でもあり、それをモジュールとして分配できるのが面白い。
ミリ:まちづくりの管理系の話は息苦しくなることもしばしば。第三者がコミットできる仕組みでもあり、負担を分担できるかも。
「道玄坂の風景をパーソナライズ」
アイデア名:#シリプロ by team Hey! 尻
428mmモジュールの派生で考えられた、お尻の形をしたベンチ。3ヶ月4.28万円で自分のお尻の形のベンチ(名前入り)を道玄坂に設置できる仕組みを提案。ワークショップ(FabCafeでお尻型をとり、成形を発注)、尻埋め式(花壇に設置する儀式)をへて、もっと道玄坂を自分ごと化することを狙いました。他人のお尻であっても、いいお尻や合う/合わないを探す楽しさ、インスタ映えなど楽しめる。だけでなく、集めたお金を花壇のメンテナンス費に充当するという、マネタイズまで考えられた提案です。
石川(初):ぴったりなお尻に出会えたら「お尻あい」ですね。
岩沢:座る場所を規定するので、リュックで花を潰してしまう問題も解消できそう。
大西:フィットネスクラブと提携して、ダイエットのビフォーアフターをしたら面白いかも。
オーディエンス:仕掛けが奇抜でびっくりしたが、面白い。道玄坂を歩くときはお店を見がち・・花壇や道路側に目を向かせることで空間の魅力づくりに繋がりそう。
「ゴミはなくならない、ならばモニュメントに」
アイデア名:タダ・ゴミアート・ダ by team 打倒ポイ捨て
ポイ捨てを防ぐためにゴミ箱を設置すると、容量以上のゴミが集まり溢れかえってしまう(なので今は撤去されている)、という地元の経験談に対して、ゴミの種類ごとにモニュメントを作ることで、分別を促す提案を行ないました。
例えば吸い殻であれば、穴に吸い殻を差し込むことで文字が浮かび上がる灰皿。ゴミを花壇やベンチに集積させることで、捨てれば捨てるほど人の居場所がなくなる、批判的なアプローチをもったモニュメントなど、可視化することでゴミに対する注意を促します。
長谷川:数値としては地元の人もゴミの量がわかっていない。タバコの方はものすごく大きな壁を作らないと、足りなさそう・・
大西:騒音公害なども可視化することで問題提起になるかもしれないと思った。
石川(初):他のチームはいかに捨てられないかを考えていたが、「ゴミは捨て続けられるものだ」と定義したことがユニーク。渋谷でアートパフォーマンスとしてやると、メディア効果は期待できると思う。
もっと気分良くまちを使う、ためのXS
今回出されたアイディアたちは、SHIBUYA HACK PROJECT事務局にて選定・ブラッシュアップをおこない、実際に街で試してみる予定です。
この発表会、実は、花壇を所有する渋谷区の職員の方や、渋谷駅前エリアマネジメントの関係者、花壇運営に関わる商店会や振興組合の方といった多くの「当事者」の方達がオーディエンスとして参加していたんです。プレゼンテーションの熱量を直に感じ、意見を交わし、ともにアクションを起こしていくための、きっかけ作りの会でもありました。
これまで、道路やガードレール・標識といった公共空間にある多くの構造物は、日本全国くまなく万遍なく設置することが求められてきました。都市も私たちの生活も、さまざまなインフラに支えられて発展を続けています。
一方で、均質で巨大なインフラシステムと小さな個人の身体の間にはどうやら不具合もありそうだ、という事は、参加者のみなさんが自然と共有していた意識です。わたしたちは、パブリックスペースに人間や個別の事情や地域らしさに向き合ったパーソナルな解答を求め始めたのかもしれません。「みんながより気分良くまちを使うために、私たちはXLシステムを補完するXSシステムを考えているんだと思います。」とは、石川初さんのコメント。
渋谷道玄坂の花壇で試みる、できたてホヤホヤのXSシステムを早く体験してみたい。そんな気持ちになった一日でした。参加者のみなさま、お疲れさまでした!