EVENT

全てのクリエイターに門戸を広げ、新たなVR表現を探る
「NEWVIEW AWARDS 2018」に込めた未来への期待

「超体験をデザインせよ」。

2018年1月、3次元の新しい表現(VR)を探求し、次世代のクリエイターを発掘・育成するプロジェクト「NEWVIEW」がスタートしました。VRといえど、テクノロジーの文脈だけでは語れないこのプロジェクト。現実と非現実が曖昧になる「超体験」の表現が日常に入って来たとき、私たちはどんなカルチャーに出会えるのだろう。私たちの間には、どんなコミュニケーションが生まれるのだろう──。

そんな可能性と期待が込められた「NEWVIEW AWARDS 2018」が、6月1日よりいよいよスタート。ファッション・カルチャー・アート分野のVRコンテンツを募集する本アワードの発足を記念して、5月24日、ローンチパーティが開催されました。審査員やクリエイターによるトークを凝縮し、レポートをお届けします。

写真:鈴木渉
テキスト:内海織加

あらゆるクリエイターに参加してほしい、プログラミング知識不要のVRアワード。

「近い未来、すべてのクリエイターは、3次元空間での表現活動をすることができるようになるのではないか」。

NEWVIEWのプロジェクトマネージャー原亮介は、NEWVIEWプロジェクトの紹介をこんな仮説からスタートし、こう続けました。

「そんなクリエイティブの可能性を元に、3次元空間の新たな表現と体験をデザインすることにフォーカスを当てた実験的プロジェクトでありコミュニティとして生まれたのが、『NEWVIEW』というプロジェクトです。VRというと、まだゲームの世界が中心ですが、『NEWVIEW AWARDS 2018』の開催を機に、もっと私たちに身近なライフスタイルやカルチャー、ファッションやアートでのVRコンテンツやシーンが誕生することを期待しています」。

「NEWVIEW AWARDS 2018」は、新しい時代を牽引する次世代クリエイターを発掘することも目的のひとつ。すでにVRで作品を作っている人だけでなく、ファッションやデザイン、写真や動画など、さまざまなジャンルで制作活動をしてきたすべてのクリエイターに対して、門戸を広く開けています。「NEWVIEW AWARDS 2018」の作品制作のツールは、誰もが簡単にVRコンテンツをクリエイト&発信できるプラットフォーム「STYLY」。今まで3次元空間のデザインに挑戦したことがない人でも簡単に挑戦できるカジュアルさがあるからこそ、作品の幅は無限に膨らんでいきます。

関連リンク

NEWVIEW AWARDS 2018 STYLY

「STYLY」を提供するPsychic VR Lab CEOの山口征浩氏は、VRの可能性と「NEWVIEW AWARDS 2018」の期待についてこう語ってくれました。

「生活の一部にVRがあるとか、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を使ってVR空間を身に纏う時代は、もうすぐそこ。『STYLY』は、そんな未来に向かって、VRをもっと身近にすることを目的に生まれたクラウドサービスです。クラウドですので、ブラウザさえ動けばどんな環境でも作ることができますし、3Dや画像、動画など、クリエイターのみなさんが普段使っているツールを簡単にインポートすることも可能。プログラミングの知識も不要です。そして、各種HMDに対応しているので、ボタンひとつで気軽に体験を届けることができるのです。アカウントを作れば、誰でも制作ができます。無料なので、まずは気軽に登録してみてください」。

原 亮介(ロフトワーク)
山口 征浩氏(Psychic VR Lab CEO)

Psychic VR Labは、今回、このアワードのために期間限定で3Dスキャナを無料開放することを発表しました。VR空間という非現実なものの中に現実世界のものや人を配置することで、今まで見たことがない空間づくりや空間の使い方、現実と非現実の世界の不思議な融合が実現するかもしれません。
※3Dスキャナの設置場所や日程などの詳細情報は、追って公式サイトにて告知予定です。

また、「NEWVIEW AWARDS 2018」は、日本に限らず世界規模で公募されています。バルセロナ、バンコク、台北といったFabCafeの海外拠点でグローバルツアーが開催されるなど、国内に留まらないダイナミックな展開という意味でも、稀有な日本発のアワードと言えるでしょう。

NEWVIEW AWARDS 2018 公式サイト

日本語 English

VRの概念も覆すほどインパクトのある新たな3次元空間の表現に出会いたい。

今まで類を見ないVRのコンペティションアワードとあって、審査員の方々も非常に豪華!

イベントでは、伊藤ガビン氏、松武秀樹氏、泉水隆氏から本アワードに期待することについてお話しいただきました。

 

伊藤 ガビン氏(編集者)

「1回目っていいですよね。何が出てくるかわからない。それがものすごく楽しみです。雑なものがうじゃうじゃあるって、豊かなことだと思うんですね。ぜひ、みなさんの妄想を大いに爆発させてください。映像でもなんでも、『あぁ、いいなぁ』くらいだとまだまだ。すごい作品て、最初は、二度と見たくないって思うくらいの拒絶反応から入るんですよ。だから、日和らずにそのくらいインパクトのあるものを目指してください」

松武 秀樹氏(音楽家/シンセサイザー・プログラマー)

「視聴覚って、どの分野も完成形は存在しません。それは、どれも常に発展の可能性があるということ。わたしも音楽を作っていますが、いまだに完成形には辿り着いていません。重要なのは、今ある技術で何をするかということ。人がやっていないこと、見たことがないもの、聴いたことがないものを作ってほしいと思います。そして、作品の質は、クリエイターが持っている“DNA”に値します。自分のDNAを作品で表現してください」

泉水 隆氏(株式会社パルコ 常務執行役)

「現在建て直している渋谷パルコも、来年には再びオープンいたします。新生渋谷パルコでは、VRのような新しいテクノロジーも積極的に取り入れていけたらと考えているので、ファッション分野でのVR表現、VRコンテンツというものに期待したいと思っております」

審査員のみなさんは、企画、映像、音楽、ファッション、アートなど、さまざまな分野の第一線で活躍されてきた方々ばかり。そのジャンルの幅広さも、「NEWVIEW AWARDS 2018」がいかに自由度が高く、今までにないVRを求めているかということの現れ。VRの概念を一度壊して、まっさらな状態から新しい空間表現として考えていく。そのくらいの潔さも、このアワードには必要なのかもしれません。

VRを作ったことがなくても感覚的にサクサク。「STYLY」なら、とにかく自由に楽しめる。

「NEWVIEW」には、グラフィックデザイナーや映像クリエイター、写真家やシャンデリアアーティスト(!)など、すでに約20名ほどのアーティストやクリエイターの方々に参加いただき、VR作品が生まれています。今回のローンチパーティでは、映像作家の大月壮氏、イラストレーターのSTEREO TENNIS氏、アートディレクターの伊波英里氏の3名にご登場いただき、今回NEWVIEWのクリエイターキュレーションも務めた編集者の安東嵩史氏をモデレーターに迎え、初めてのVR作品づくりについて振り返っていただきました。今までVRとはちがう分野での表現がメインだった彼らにとって、この3次元空間を使った体験のデザインはどのようなものだったのでしょうか。

 

大月 壮氏(映像ディレクター/映像作家)

「作るにあたってVR作品をいくつか見てみたら、世界が水平に広がっていくものが多かったんです。だから、ぼくは垂直で行こうと思い、どんどん上に展開していくものにしたんです。様々なツールで作られた素材をインポートできるので、雑多にコラージュしていくような感覚でサクサク作れました。音を配置すると近づけば音が大きくなり、離れれば小さくなるといったような普通の映像では体験出来ないことが可能だったのは面白かったです。20年前の映像のシーンのように、おもしろいキュレーションの展示やベッドルームで作られる気負いない作品が増えることでVRシーンが醸成されていくのを楽しみにしています」

STEREO TENNIS氏(グラフィックアーティスト/イラストレーター)

「今回は、私が手がけているイラストの世界を、立体的な街にしてみました。平面でしか体験したことがない自分の作品を中を歩ける、一方通行だったものが360°見えるようになるっていうのは、とっても楽しくて、見たい世界がぐっと近づいてくるような感覚がありました。私は、あえてシンプルに、単純に、空間を作ってみたのですが、それは、普段VRとは縁遠い女性や子どもが見ても、楽しそう!おもしろい!って思ってもらえるような“とっかかり”を作りたかったからなんです。わたしの作品のアイデアソースは80年代のカルチャーなどのノスタルジーな世界ですが、失われていくものや見ることができなくなったものを体験できるVR作品には興味があります。社会に繋がるVRのポジションて、ある気がしますね」

伊波英里氏(グラフィックアーティスト/アートディレクター)

「古典落語の『まんじゅうこわい』というお話を、VR空間で読み進めていく作品を作りました。通常、耳で聴くものを目で読むという、普段とはちがった落語の楽しみ方になるので、このお話を知っている人も知らない人も、新鮮に楽しめるのではないかと思いました。VR空間は、無限に続くようなイメージがあったので、物語という始点と終点のある枠組みを、この空間で展開したらどうなるのか実験してみたかったのもあります。3Dを扱うことも初めてだったのですが、直感的に画像を配置することができたので楽しかったですね。感覚的に作ることができるので、子どもが作ったVRの世界も見てみたいと思いました」

この3名の作品は、世界観も展開の仕方もまったく異なります。しかし、作ってみた感想として共通していたのは、「感覚的に作ることができた」ということ。今まで彼らが取り組んできたクリエイティブとなんら変わらない向き合い方、もしくは、もっとあそびに近いカジュアルな感覚で作品づくりを楽しみ、そして作者自身が、自ら作った3次元空間の中で、今まで味わったことのない感覚を手に入れたことは確かなようです。

トークセッションの最後には、アーティスト・村田実莉氏がSTYLYを使ってライブクリエーションに挑戦。HDMをつけて、ディスプレイではなく3次元空間で直接編集するように制作を行い、参加者の方も実際に制作を体験するなど、早速会場で新たな作品のアレンジが生まれつつありました。

イベントのクライマックスには、ライブパフォーマンスにコンポーザー 、トラックメイカーなど多方面でマルチに活動中の女性アーティストUtae氏が登場、前日にリリースしたニューシングルを披露しました。ビジュアルだけでなく「音」のVR表現を施したミュージックビデオと共に、ニューシングル『VICTORIA』(PURRE GOOHN、VJ:Yousuke Fuyama、MV制作:lute)などを演じ、会場のボルテージはどんどん上がっていきます。

『VICTORIA』は、「NEWVIEW AWARDS 2018」の記念作品にも選出
ディスプレイに映っているのは、左のモデルがHMDで観ているVR映像

ファッションや音楽、映像、グラフィックなど、現代のカルチャーを体現する人々が集まり、新しいクリエイティブ表現と体験をデザインしていく実験的なプロジェクト&コミュニティ、「NEWVIEW」。この今までになかった初めてのVRアワードでは、どんな作品が集まるのでしょうか。応募期間は、2018年6月1日(金)から7月31日(火)までの2ヶ月。VR制作未経験の方も、プログラミング不要のSTYLYを使ってぜひ応募してみてくださいね!

(DJ:God Scorpion)

NEWVIEW AWARDS 2018概要

  • テーマ:ULTRA EXPERIENCE(超体験)をデザインせよ
  • 応募期間:2018年6月1日(金)~ 7月31日(火)正午(⽇本時間)。
  • 応募資格:誰でも、何点でも応募可能(グループでの応募も可能)。無料。
  • 審査員:
    • m-flo(プロデュース・ユニット)
    • 伊藤ガビン(編集者)
    • 松武秀樹(音楽家、シンセサイザー・プログラマー)
    • Agi Chen(アーティスト)
    • René Pinnell(CEO & Founder of Kaleidoscope)
    • 泉水 隆(株式会社パルコ 常務執行役)
  • 主催:NEWVIEW PROJECT(Psychic VR Lab / PARCO / Loftwrok)
  • 公式サイト:https://newview.design/awards/2018/jp

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