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「栄と、あなたと、次の400年へ。」
SAKAE Creative Meeting#1 イベントレポート

今、分野の垣根を越えたコラボレーションの重要性が、益々高まりつつあります。そんな中、名古屋内外の資源やプレイヤーをいま一度見つめ直し、それらを「混ぜる」ことで新しい価値創出を目指すプロジェクトが始まりました。

ロフトワークが松坂屋名古屋店とスタートさせた「BASE SAKAE」プロジェクトは、松坂屋名古屋店から、新しい百貨店像を発信する場づくりを目指します。従来のテナントリーシングとは異なる形で、未来に向けた新しい価値創造のための”活動基地”づくりを行います。

テキスト:杉田 真理子

松坂屋名古屋店とロフトワークによる新プロジェクトが始動

新しい価値の提案には、名古屋内外の様々なプレイヤーとの、既成概念を超えた共創的コラボレーションが大切になります。プロジェクトのキックオフとして9月27日(金)に開催された「SAKAE Creative Meeting#1 地域コミュニティと共創を考える 」は、中部地区にある技術、素材、場、人、経済的支援など、各プレイヤーが持つリソースを出し合い、共創システムを構築していく手がかりとするために企画されました。

松坂屋と参加者のビジョンが”混ざり”合う新プロジェクトを創出するために開催されたキックオフイベントをレポートします。

「栄と、あなたと、次の400年へ。」

「百貨店は、創業から常に新しい文化を発明し続けてきました。”生活と文化を結ぶマツザカヤ”という標語がありますが、今の時代に、私たち松坂屋はどう生活と文化を結ぶことができるのか?この地域の皆さんと、どんな新しいことをやっていけるか?これを考えてみたいと思います」

こう語るのは、カンファレンスの冒頭を飾った、松坂屋名古屋店長・執行役員の小山 真人氏。2010年に、デパートメントストア宣言から100周年、2011年には「いとう呉服店」創業から400周年を迎えた松坂屋。「次の400年」を視野に、新しい価値創造を名古屋・栄からはじめていきたいと、意気込みを語ります。

松坂屋名古屋店長・執行役員 小山 真人氏

松坂屋の創業は1611年。日本で最初のコーポレートカラーを導入したり、それまでは座売りが通常であった日本で、初めて土足入場を可能にしたのも、松坂屋銀座店です。百貨店は常に時代を先駆け、イノベーションを起こし続けてきました。

松坂屋名古屋店は現在、百貨店離れの進む若い女性層も楽しめるKiKiYOCOCHOなど、従来の百貨店とは異なる新しい場づくりを進めることで、新しい価値観の提案、未来に向けた取り組みを行なっています。

「”見やすく選びやすく買いやすい”、という百貨店は、新しいサービスや消費文化が急速なサイクルで変化する現代において、つまらない、と思われる存在になってしまった。たくさんのことにチャレンジしている一方で、今の時代、”百貨店は敷居がたかい”と思われているのも事実です。」

この状態を打破するために、今日ご参加者のみなさんと「暮らしの新しいビジョンを発明したい」と、小山氏は語ります。

2020年7月 名古屋栄にFabCafeをオープン

株式会社ロフトワークからは、取締役の矢橋 友宏が登壇し、2020年7月にFabCafe名古屋を栄にオープンすることを発表しました。

人が集い、人が出会い、人が繋がる「FabCafe」。世界10拠点のクリエイターコミュニティとものづくりの場を持つFabCafeは、多様なクリエイターとの共創を通じて、新しい価値を作ることをサポートしています。

ロフトワークは、「閉じられていたこと・ものをオープンにし、新しい文脈と結合させることで、新しい価値が生まれる仕組みをつくる」ことに挑戦していると、矢橋は説明します。今まで組織内で、知り合い同士で作っていたものを、できるだけオープンに、違った属性の人々と一緒に、作っていく。今までは出会ったことのないプレイヤー同士が出会った時に生まれるもの、そこで生み出される価値を、ロフトワークは大切にしています。

「空間というハードだけではなく、コミュニケーションや発信などのソフト面を融合していくことで、持続的にコミュニティが育まれる土壌が生まれます。こんな土壌を、松坂屋とロフトワーク 、そして名古屋の様々なプレイヤーの皆さんと一緒に、仕掛けていきたい。」という思いを語りました。

地域コミュニティとの共創で育む、名古屋のクリエイティブのこれから

「名古屋のクリエイティブのこれから」と題したゲストトークでは、株式会社Mizkan Holdingsの高橋 宏祐氏、郡上ものづくりプロジェクトの上村 大輔氏、株式会社オカムラの小倉 悠希氏の3名の取り組みから共創事例を学びました。

共創するだけでは意味がない。WinWinの関係性を築く

株式会社Mizkan Holdingsチーフ・ダイレクト・ストラテジー・オフィサー 高橋 宏祐氏

”組む”ことはもちろん大事ですが、組んだだけでは意味がありません。一緒に何をしたいのか、その目的をはっきりさせることが大切です。また、自分中心にならず、WinWinで相互にとってメリットがある方向性を探るべきです」と共創、というプロセスに関して、株式会社Mizkan Holdingsチーフ・ダイレクト・ストラテジー・オフィサーの高橋宏祐氏は語ります。

「Mizkanの事業ではありますが、ZENBプロジェクトでは、あえてMizkanの名前を出していません。生活者の視点から見ると、新しい事業に関して、大企業もベンチャーも関係ありませんよね。生活者の悩みと企業が発信したいメッセージは必ずしも一緒ではないので、彼らにとっての価値を、ストーリーという形ではっきりと伝える必要があります。その時に、今までになかった驚きやインパクトがあることも、大切です」と高橋氏は新規事業を通じて学んだポイントを紹介しました。

高橋氏が統括するMizkanの新規事業「ZENB」

高橋氏が統括するMizkanの新規事業「ZEMB」
ZENBは、普段は捨てている野菜の芯や皮なども含めて、可能な限り、丸ごとぜんぶ頂けるペーストやスティックなどの商品を開発しています。着色料や保存料は使わずに、”野菜そのものよりも野菜の味がする”ことが特徴です。大量に余っていた酒粕を使って酢を作ったことから始まった会社Mizkanの原点そのものであると紹介されました。

まちを誇る思いや熱量が地域産業やコミュニティを育てる

有限会社KEIZ 専務取締役 アートディレクター 上村 大輔氏

続いて登場した有限会社KEIZ 専務取締役、アートディレクターの上村 大輔氏は、「まちを誇るということ」というテーマで、自身の取り組みを紹介してくださいました。上村さんは、地元郡上を拠点として、アートディレクションとシルクスクリーン印刷のふたつの仕事を掛け持ちしています。

1974年創業の有限会社KEIZは、郡上の地場産業。田舎の町工場としてスタートしました。
「暖簾やのぼりを作ってきたが、改めて考えたとき、一歩進んだものづくりをしていなかったな、と気づいたんです。」と当時を振り返る上村さんは、現在では昼と夜で色が変わる暖簾づくりなど、現代の技術と伝統を掛け合わせた実験的な取り組みを進めています。そのほかにも、「働く」を自由に、をテーマに、ジユウノハコというコワーキングスペースを名古屋で運営しています。

「岐阜郡上で生まれ育ち、一旦は郡上を出て海外などを見て回りましたが、結局は探し求めていたものは、足元にありました。生まれ育った郡上が、いかに面白い場所か、改めて気づいたんです。」

「この土地には、今何が必要なのか?これを判断するには、まずはきちんとしたリサーチが必要です。この土地には何があり、何が行われているのか、きちんと把握することから、ものづくり・ことづくりを進めていきたい。」と上村さんは語ります。

また、共創に関しては「熱量のレベルが一緒かどうか」を重視するという上村さん。「一緒にやったら、どういうことが面白くなるのか?」を常に考えながら、コラボレーションをすると言います。

郡上を舞台に上村氏が手がけるプロジェクト

紫外線に反応して朝から夜へとカラーパターンを変えりるファブリックパーテーション「renon」
シルクスクリーン印刷が気軽に体験できる「Takara Gallery」

対話、そして手を動かして課題解決をしていく実効性が大切

株式会社オカムラ 中部支社 マーケティング課 セールスプロモーションセンター/
Open Innovation Biotope “Cue” コミュニティマネージャー 小倉 悠希氏

最後の登壇者である小倉 悠希氏は、Open Innovation Biotope “Cue”のコミュニティマネージャーを勤めています。オカムラ・WORK MILLプロジェクトが運営する共創空間のひとつであるCueでの知見をもとに、「場や空間から始まる共創」というテーマでお話頂きました。

「共創空間とは、業種や組織の枠を超えた多様なステークホルダーと、新たなつながりやひらめきが得られるよう活動、発信をしていく場です。コワーキングではなく、イベントやプロジェクトなどを通じて、新しい”はたらく”のあり方を発見するための場です。」と小倉さんは説明します。

「最近は、オカムラが受ける相談の種類も増えてきました。これまでの家具の製造販売だけでなく、広い視野で発信していきたい、人と人とのつながりを意識しながら、”はたらく”を中心としたストーリーを作りたい、という思いで、オカムラは共創の場を持つことにしました。今は、共創の価値を問いながら活動をしています。」と小倉さん。

「ここには、様々なバックグラウンドの人々が集まります。企業の業種や規模もさまざまですし、自治体・行政の方・学生・NPOの方もいます。こうした多様性と、生まれたコミュニティやプロジェクトの継続性は大切にしています。また、対話だけで満足せず、手を動かして課題解決をしていく実効性も今後さらに大切にしていきたいです。」

共創空間「Cue」の運営において重視して取り入れている3つの要素

集う場があることの強みを、日々実感しているという小倉さんは、「Cueを共創のムーブメントの基地としてさらに進化させていきます。」と意気込みを語りました。

アイデアの実現を目指す実験の場「SAKAE Creative Meeting」

ゲストトークの後は、参加者総勢80名が、個人あるいは所属する会社・団体が提供できそうなリソースを出し合い、課題解決に繋がるアイデアを考えるワークショップが開催されました。ワークを通じて80を超えるさまざまなアイデアが創出されました。

名古屋への愛と熱意を共有していながら、これまではあまり繋がる機会のなかった、領域の異なるプレイヤーである参加者達。このような形でアイデアを出し合うことで、お互いにWinWinな関係性を築きながら新しいプロジェクトを生み出していくための、ヒントが得られたのではと思います。

12/13(金)SAKAE Creative Meeting#2を開催します

SAKAE Creative Meetingは継続して開催し、ここから生み出されたアイデアの実現に向けて活動を広げていきます。松坂屋名古屋店、ロフトワーク と一緒に中部地区を盛り上げたい方や参加者と新しい取り組みに挑戦したい方は、ぜひご参加ください。

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