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イベントレポート
PM Lesson Kyoto 「#01 プロジェクト計画のポイント総ざらい編」

こんにちは。ロフトワークでディレクターとして働く基(もとい)です。様々なプロジェクトを持つロフトワークですが、私は主にWebサイトのリニューアルなどのプロジェクトに携わっています。プロジェクトマネージャーとして充実した日々を過ごすとともに、最善の方法を模索し続けています。

基 真理子

Author基 真理子(HRディレクター)

兵庫出身、京都在住。フリーター時代にWebの世界に魅了され独学を始める。その後、百貨店系クレジットカード会社のWeb担当者として、サイトのフルリニューアルなどを推進。書籍『Webプロジェクトマネジメント標準』との出会いをきっかけに、2018年ロフトワークへディレクターとして入社。教育機関や企業の大規模Webリニューアルから、イベントの企画運営など幅広い領域に携わる。また大学でのPM特別授業講師、KJ法勉強会など、多様な「学び」のデザインにも従事する。2021年に罹患した病をきっかけに「健やかに働くこと」をより深く考え、HRディレクターに就任。採用業務全般から、育成プログラム開発まで「人」に関わる業務を担っている。2024年米国PMI®認定PMP®,PMI-ACP®取得。合言葉はENJOY NOISE。アカハライモリと暮らす。

Profile

多種多様なプロジェクトが溢れる現場では、決まった進め方や、前例が通用しないことが多々あります。成功=最適解へと導くための「プロジェクトマネジメント」についての書籍やサイトはたくさんあるけれど、現場に落とし込むにはどうしたらいいかわからない、そう感じている方も多いのではないでしょうか?

そこで、「プロジェクトマネジメント」の実践方法を、みんなで考えてアップデートしよう!ということで、2019年12月17日の夜、「PM Lesson Kyoto 『#01 プロジェクト計画のポイント総ざらい編』」FabCafe Kyoto / MTRL KYOTOで開催されました。

イベントはロフトワークを代表するディレクター 入谷が自身のマネジメント方法を紹介し、Nue inc.代表取締役の松倉さんが質問するという対談形式で進行しました。クリエイターから企業のプロジェクトマネージャーまで、様々な業界、職種の方に参加いただき、大盛況に終わった当日の様子と、私自身がプロジェクトマネージャーとして感じたことをレポートしたいと思います。

Nue inc.の松倉さん(左)とクリエイティブディレクター入谷(右)。入谷は、国際資格のPMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)保持者として、日頃から社内外に自身の知識や経験を発信している

プロジェクトマネジメント計画書

レポートに入る前に、少しロフトワークの仕事の進め方をご紹介します。

ロフトワークでは、基本的に全てのプロジェクトで開始時に必ず「プロジェクトマネジメント計画書」を作成します。これはプロジェクトを成功に導くために必要なことをプロジェクトメンバー全員ですり合わせするための大切な作業です。

もちろん、プロジェクト開始時点では「見えない / わからない」ことも多々あります。それでも、この文書作成作業を通じて、PMBOK®にある「10の知識エリア」を概観し、プロジェクト計画に必要な視点を網羅的に得ることが非常に重要です。イベントでは入谷が最近使っているGoogleDocs版の文書フォーマットを元に、各章に記述するべき内容と、それを書くために必要な思考回路/着眼点について紹介しました。

卒園制作におけるプロジェクトマネジメント

「プロジェクト」というと、大規模なWebサイトリニューアルやアプリ開発、建築などをイメージしがちですが、それぞれ求められる内容やリスクは大きく異なります。またPMBOK®にある「10の知識エリア」は言葉としては理解できても、実際の業務に結びつけるのに戸惑う方も多いのではないでしょうか?

冒頭部分では、入谷のプライベートプロジェクト「娘の卒園記念DVD制作」を元に、「10の知識エリア」を具体化。この誰でも想像しやすく、自分ごと化しやすいサンプルによって、一気にイメージの解像度が上がりました。

あえて非効率な方法をとる

特に印象的で、頷かれる方も多かったが「コミュニケーション」の部分。ここではメンバー全員が使える共通のコミュニケーションツールがなかったために、保育園の教室に設置されているウォールポケットに手紙を置くことでスムーズに進めたというエピソードがありました。

ツールに限らず、複数メンバーに動いてもらう難しさは、現場担当者の方は日々痛感されていると思います。メンバーが増えれば増えるほどリテラシーや環境、プロジェクトへの思いも振れ幅が大きくなっていくからです。

入谷の場合、この「卒園記念DVD制作」プロジェクトでは手紙を残すという、あえて「アナログ」な方法をとっていました。プロジェクトマネージャーと聞くと、もっとも効率が良い方法を選択する、というイメージがあるかもしれません。しかし、実はこの「アナログ」なコミュニケーションを選択した点が重要です。

実際の業務プロジェクトでも、「アナログ」と「デジタル」な方法を、コミュニケーションをしたい相手、内容の重要性、認識の齟齬が発生しやすいかどうかなどによって使い分けます。オンラインでは意思疎通がむずかしい場合でも、会いに行けば一気に問題が解決することもあります。

日々の業務でも感じることですが、プロジェクトは「人」を中心に回ります。効率性、確実性のみを選択し続けても、プロジェクトメンバーに共感してもらえなかったら意味がありません。きちんと相手に伝わるコミュニケーションを考えること、そして時には成功への「投資」として非効率な手段を選択することも必要なのだと感じました。

不確実を楽しむために

イベントの後半では、ロフトワークの具体的なプロジェクトを例にしたディスカッションも行いました。トピックは、「大規模プロジェクトでのステークホルダーマネジメント」や、「スケジュールの作り方」、「リスクをどこまで洗い出すか」など、プロジェクトマネージャーが悩みがちなポイントについて。質疑応答では、具体的なお悩みから、「PMとはなにか?」という大きなテーマまで質問いただきました。さまざまな業種・職種の方からお話を聞ける、非常に良い機会になりました。

イベントを通じて特に私が感じたのは、プロジェクトの成功のためには「考えだす」ためのきっかけづくりが大事だということです。目的が見えない、ビジョンがない、リスクが見えないなど「ない、ない」だらけの中でも、自分の脳内でただモヤモヤさせているだけでなく、書き出す、話すというシンプルなアウトプットは大きな前進につながります。

たとえば、入谷が紹介していたのは、クライアント側の目的が不明確だったり、まとまらない場合に、「こうなりたくない」から話してもらうという方法。「なりたい」が明確でなくても「なりたくない」であれば、スムーズに話せるかもしれません。リスクが見えない、何から始めたらいいかわからない場合は、今回ご紹介したGoogleDocs版の文書フォーマットを元に、まずはメンバーで話してみることも重要でしょう。

プロジェクトは答えがない不確実性に溢れています。特にクリエイティブなプロジェクトの場合は、それを楽しむことも大切。確実なことはしっかりとマネジメントし、不確実に向き合ってどこまでリスクを楽しめるのか、バランスを考えることが求められます。見えないまま留まっていては何も始まりません。相手のことを考え、みんなで始めるためのきっかけを作り出し、段階的に具体化していくことがプロジェクトマネージャーの大事な仕事ではないでしょうか。

会場の参加者からも自身の経験に基づくお悩み相談が続々と寄せられました!

皆でアップデートする

会社や人によってプロジェクトマネジメントの方法は大きく異なります。業界や職種を超えて、普段はなかなか聞くことのできない実践方法を皆で話して、アップデートすることは発見も多く、すごく貴重な機会になりました。

今回のイベントをとおして、それぞれの領域の経験を持ち寄って共有することで、皆の知識レベルを底上げすることができるのではないかと感じました。入谷も、リスクマネジメントの話題の中で、「リスクをいかに詳細に洗い出せるかは、その人が実際に経験したリスクの数に寄るところが大きい」と言って会場が湧いていましたが、リスクに限らず、皆の経験値を共有することで、知識に変えていくことができるのではないかと感じています。PM Lessonはこれからも不定期で開催していきます。皆のPM力をレベルアップしていくことで、よりクリエイティブに楽しいものを作り出せるよう、悩みを持ち寄って、一緒に切磋琢磨していきましょう!

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