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スタートアップは積極的に活用したい!
政府と一緒に実証実験を実現できる「規制のサンドボックス制度」
利用メリットと制度課題

新たな技術やビジネスモデルの社会実装を推進するため、内閣官房が主導し2018年にスタートした「Regulatory Sandbox in Japan(規制のサンドボックス制度)」。2020年10月までに19のプロジェクトが認定を受け、チームによるサポートの元でプロジェクトに取り組んでいます。

テキスト・編集 Loftwork.com編集部/写真 中込涼

「規制のサンドボックス」とは?

冒頭、「規制のサンドボックス制度」を運用する、内閣官房 日本経済再生総合事務局(現・成長戦略会議事務局)新技術等社会実装推進チームの田邊国治さん、萩原成さんより制度の概要が説明されました。

「規制のサンドボックス制度(略称:サンドボックス)のコンセプトは、“まずやってみる”。規制官庁が常に、最新の技術やビジネスモデルを理解できるわけではないし、その前提を理解していないことも少なくない。価値がありそうだと考えたとしても、ひとつのケースで規制の変更を認めると他も認めなくてはならなくなるから容易に認められない。そこで必要になるのが、データに基づくエビデンス。サンドボックスの仕組みで、期間や参加者を限定した、現行の規制の適用を受けない実証実験の場をつくり、判断のためのデータ収集を行うことを支援しています。」

「実証実験をどうアレンジするのかは、サンドボックス制度利用のキーポイントです。限定的すぎたり、エビデンスを出せないような実験では意味がありません。申請書の作成から規制官庁との論点整理まで、チームから専任の担当者がつき、さまざまなサポートを行っています。もちろん、オンラインでも対応していますよ。」
日本は特定の分野を絞らず、FinTech、モビリティ、ヘルスケアなど広くサポートするのも特徴。

「国の制度改革スキームには、さまざまな手段があります。私たちは、皆さんからの相談を受けて別の制度を紹介することもあります。まずは、相談してほしい。」と締めくくりました。

「規制のサンドボックス制度」を利用して良かったこと

認定された3つのプロジェクトについて、参画メンバーから規制のサンドボックス制度利用の経緯とよかったことを紹介していただきました。

Case1:キャンピングカーを利用した新たな宿泊体験「BUS HOUSE」

「“やってみる” というコンセプトにのっかって、一番ご迷惑をかけたのはうちでは(笑)」と切り出したのは、株式会社EXx 代表取締役CEO 青木大和さん。同社は、自由な移動を通して人の可能性を広げることを目指しています。キャンピングカーを宿泊を含む用途で貸し出すことが旅館業法との関連で規制にかかる可能性があるため、この対象外であることを明確化するために実証を行うこととなりました。

「認定されたのはちょうど1年前です。サンドボックスに参加した結果、少し方向転換して事業を進めることにはなりましたが、1年間とは思えない進捗がありました。最初は事業方向も見えてなかったんですが、事業化できるか含めて伴走してもらった、という感じです。政府に認められた事業として自治体からも評価されるので、公的機関との仕事が増えたりもしましたね。」

サポートした萩原さんは、「事業ニーズは門外漢ですが、行政官としての経験に基づいてフィードバックできます。当初の狙い通りに着地することがサンドボックスの目的ではありません。青木さんのように新たなアライアンス先ができたり、資金調達が可能になったりするプロジェクトもあります。うまく活用してほしいです」と付け加えました。

Case2:電動キックボードのシェアリングという手軽で新しい移動手段

制度を利用するプロジェクトにはモビリティ領域、なかでも電動キックボードに関する規制の改正を求めるプロジェクトが複数あります。そのひとつが株式会社Luupが立ち上げた電動キックボードシェアリング事業「LUUP」。海外では爆発的に流行する電動キックボードですが、日本では電動キックボードは原動機付自動車(いわゆる原付)に分類され、さまざまな規制が普及の妨げとなっています。

LUUPを法律面でサポートした國峯法律事務所 弁護士 國峯孝祐さんはサンドボックス制度を、ベンチャーが制度改正を働きかけるきっかけとして使いやすい制度と話します。
「規制変更を求めるにはロビー活動という手段もありますが、コストもかかるし、人材・資金等のリソースをもつ大企業でないと難しいですよね。実証実験を政府とともに行うことで制度改正に向けた議論を開始することができるし、政府とのコミュニケーションもうまくとれるようになります。」

実証実験は、横浜国立大学構内の幅が広い道路で行われましたが、メディアにも多く取り上げられ認知が広がるとともに、政府や議員の関心も集めることに成功。2020年7月に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」で取り上げられ、「新事業特例制度」により規制の特例措置のもと東京都区内をはじめ全国各地で自転車レーンを走行する実証実験が行われることになっています。
内閣官房が窓口となりハンズオンで面倒見てもらえるなんて、本当に良い制度です。弁護士と違って無償ですし笑」

Case3:公助と自助のはざまを救う、「共助」のためのP2P保険プラットフォーム

幹事をたて、みんなでお金を出しあい、何かあればそこからお金をだし助け合う。国や自治体による支援(公助)では賄われない、地域や職場のコミュニティによる互助システムは随分と縮小しています。共助の仕組みの再構築を理念にかかげ、Frich株式会社は日本初のP2P保険プラットフォームを立ち上げました。

Frichは保険加入ニーズがありながら市場ニーズが小さい等を理由に保険が成立しない分野を主な対象としています。SNSでつながっている個人同士がグループをつくり、幹事役がオーナーとなって「保険」を組むというスキームです。
Frichのプラットフォームでは、少額短期保険業者による再保険の引受が必要であることから、保険業法施行令にある少額短期保険業者の再保険不可条項からの適用除外を求めてサンドボックスを利用しています。金融庁との調整の結果、規制のサンドボックス制度で初めてとなる、新たな規制の特例措置を得ての認定となりました。
Frichが提供するP2P保険のポイントは、加入者コミュニティ内での日頃のコミュニケーションが事故予防のインセンティブとなること。実証実験では、実際にこれが機能するかどうか、エビデンスの取得を行っていると、Frich株式会社 代表取締役 富永源太郎さんは説明します。

「コミュニティの効果が発揮しやすいもの、発揮しづらいものの2つの「保険」を作成し、実験しています。特定犬種に特化したペットメディアと連携し、特定犬種に特化した「保険」も開発中です。保険という公的要素が強い業界でのベンチャー参入には信頼感が重要。ユーザーにもサービスへの信頼性を提供できるよう努力していきます。」

小さなチャレンジをたくさん増やす

続いて、革新的事業活動評価委員会の委員としてサンドボックスのプロジェクト認定にも関与するロフトワーク 代表取締役 林千晶がモデレーターとなり、制度の課題と解決の方向について議論が行われました。

「制度が重視しているのは、小さなチャレンジを数多く行うこと。規制改革会議では、実施による効果が大きいアジェンダが取り上げられやすい。でもスタートアップが取り組むのは、まだ効果が未知数であったり、それほどマーケットとインパクトが大きくないもの。スタートアップとやるから、スピード感ある対応の要請にも答えていきたい。」(田邊氏)
という話を受け、電動キックボードもまだまだ時間がかかりそうですよね?スピード感とは?と林は投げかけます。
「日本のさまざまな法律や規制は、精緻に作られているがゆえに柔軟性が低いのだと思います。規制のサンドボックス制度は、政府が新しい動きに対応するための実証実験とも言えますね。新しいものを評価する軸や仕組みができるきっかけにもなるでしょう。実際、各省庁はいま経験値をためているところです。最初は議論すら躊躇するけど、だんだん慣れてきています。プロセスを何本も回しながら、このスピードをどんどん早めていけると思っています。」(萩原氏)

実証実験の結果は実際に規制の改正に活かされている?

この質問に対しては、パナソニックのプロジェクトの事例が紹介されました。

「PLC(電力線を用いた通信)を家電で使うことは、経産省の法律ではこれまでできませんでした。実証実験の中で試作品をつくり実験したら、経産省の懸念がクリアになり、通達で改正されることになりました。文面だけではOKがでなくても、実際にやってみせたら納得、っていうケースは多くあります」(田邊氏)

「Frichの場合、実証実験は少人数を対象に行っていますが、もちろん、より多くの方に加入していただけるような「保険」の提供も想定しており、保険業法の改正も働きかけていきます。金融庁とは当初から、法改正を念頭に議論させて頂いています。」(富永氏)

「規制のサンドボックス制度」の利用を増やすには?

メリットを感じる事業者がいる一方で、まだまだ利用が少ないことも課題の一つ。

「弁護士から見ても、どういう時に使えばよいか、わかりにくいのだと思います。いつ使えばいいかわかりづらいけれど、政府を巻き込んで実証できるのは思ってもみなかったメリット。いち弁護士でできることには限りがあるけど、サンドボックスチームのみなさんはすごく協力してくれる。スタートアップを支援する弁護士にはもっと知ってほしいですね。」(国峯弁護士)

「サンドボックス制度は、省庁側にもうまく使ってほしいと思っています。立場的にNOと言わざるをえないということはあるんですね。でも、制度にのっかれば、省庁も堂々とトライアルができます。過去に制定した法規制が、いまでも生産性に寄与しているとは限らないですし、プロジェクトを素材に議論することは、政府にも新しい気づきを提供するはずです。
 制度は3年目を迎えますが、より多くのプロジェクトに応募してもらうために、今回のようにいろいろな方を交えてイベントを開催したり、紹介の機会を増やし、エコシステムをつくっているところです。みなさんの協力をぜひお願いしたいです。」(田邊氏)

「資料が文字ばかりでわかりづらいし、名前も変えてみるっていうのもひとつかも。サンドボックス、って言っても「え?サンドバッグ?!」って聞き返されたりして、サンドバッグ的な側面はあるんだけど、「サンドボックス」っていう名前すら耳慣れないのかも。わかりやすいって、浸透のためには大事ですよね。」(青木氏)

さて、このレポートも文字ばかりで、議論の臨場感が伝わるか不安ですが、何はともあれ、規制のサンドボックス制度はスタートアップにとって、とても活用のしがいがある制度であり、気軽に相談できるチームがいる、ということが伝われば幸いです。
興味をお持ちの方、チームへのご相談はこちらからお願いします。

後編では、3つのプロジェクトとそれぞれの制度利用について、「わかりやすく」ご紹介する予定です。お楽しみに!

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