ロフトワークが北海道釧路市からの委託により制作した、阿寒湖アイヌコタンを舞台に現代アイヌ文化の魅力を伝える短編映画『urar suye(ウララ スエ)』が、日本国際観光映画祭2025にて、旅ムービー部門最優秀賞を受賞しました。

授賞式の様子
授賞式にて。左から、授与者の山崎樹一郎監督、十川雅司さん(本作監督)、伊達 善行(ロフトワーク)、杉崎太さん(釧路市 産業振興部 阿寒観光振興課長)、許 孟慈(ロフトワーク)

『urar suye』は、夢を叶えることを困難に感じるひとりの若者が、阿寒湖の大自然を舞台にアイヌ文化と出会い、深い交流を通して、より自分らしく生きるための身体感覚とマインドセットを獲得する物語です。映画は、阿寒湖アイヌコタン公式YouTubeチャンネルにて視聴いただけます。

阿寒湖アイヌコタン 公式YouTubeチャンネル

短編映画『urar suye』

制作背景

短編映画『urar suye』は、釧路市による令和6年度アイヌ文化関連観光プロモーション事業の一環として制作されました。本作は、アイヌの美術・工芸だけでなく、日常生活や周辺環境を含めた「生きたアイヌ文化」の魅力に焦点を当てています。また、アイヌ固有の世界観が現代の都市生活者の課題感をときほぐし、エンパワメントし得る可能性を、広く伝えることを目指しています。

阿寒湖アイヌコタンについて

アイヌコタンの風景

本作の舞台となっている「阿寒湖アイヌコタン」は、約120人が暮らす北海道内有数のコタンです。

アイヌの信仰「全てのものに魂が宿る」の意識のもと、触れ合う・つくる・食べる・受け継ぐ・解き放つ・自然と生きる、といった体験ができる場所としてアイヌの文化を発信してきました。 北海道の雄大な自然と共存し、豊かで神秘的な精神世界を築いたアイヌの文化や歴史を体感できる場所です。

>> 阿寒湖アイヌコタン Webサイト

十川雅司監督からのメッセージ   

監督を務めたのは、同性の親友との恋愛模様を描いた短編映画『駆け抜けたら、海。』(2023)を手がけた、若手気鋭の映画監督・十川雅司氏です。

十川 雅司監督のプロフィール写真

このような賞をいただけてとても光栄です。この賞は、北海道阿寒湖アイヌコタンの皆さんとキャスト、スタッフ、釧路市の皆さんで掴んだものです。この映画のストーリーは、阿寒湖アイヌコタンの方々との会話から生まれ、出演者のほとんどが地元の方です。お芝居をしたことのない方にも無理やり出ていただきましたが、皆さんから出てくる素直な土地の”声”や阿寒湖の神秘的な”光”、そして、”アイヌ文化”を〈映画〉に収めることができたことがとても貴重な経験でした。この作品が、見てくださった方の新しい旅のきっかけになれば幸いです。

(脚本・編集・監督:十川 雅司)

プロフィール

徳島県出身。大学で演劇に没頭。卒業後は、映画制作に興味を持ち、深田晃司監督をはじめ、様々な監督のもとで助監督を務め映画づくりを学ぶ。傍ら、精力的に自主映画を監督。『駆け抜けたら、海。(2023)』が国内外22の映画祭にノミネート、賞を受賞。同作品がMIRRORLIAR FILMS season5の一つに選出され、日本全国15スクリーンで劇場公開を達成する。

日本国際観光映像祭について

日本国際観光映像祭(JWTFF)は、観光映像を通じて地域の魅力を世界に発信し、観光振興に貢献することを目的とした国際的な映像祭です。世界各国から応募された多種多様な観光映像が上映され、審査員による厳正な審査を経て、各賞が決定されます。

第7回となる2025年は、3月17日から19日の期間、岡山県真庭市にて開催され、“観光”と”映像”にまつわるフォーラムでは、活発な議論が展開されました。JWTFFは、観光映像を通じて、地域の魅力を再発見し、世界に発信する場であるとともに、観光の未来について考えるきっかけを提供し、持続可能な観光の発展に貢献しています。

授賞式の様子

映画概要情報

映画のキャプチャ

ストーリー

東京で音楽活動をしているユカリ(xiangyu)は、自分のアーティストとしての将来性を信じきれず、思い悩んでいた。そんな中、ユカリは大学の同級生であるダンサーのサヤに誘われ、釧路にある阿寒湖アイヌコタン(「コタン」は、アイヌ語で「集落」)を訪れることに。

アイヌコタンは〈創り作り手の街〉とも呼ばれており、人々の暮らしの中に伝統的に受け継がれた木彫りや刺繍、歌や踊りが息づいている。さらに、アイヌの世界観では、山や川、動物、樹木といった自然物や、火や雷などの自然現象、道具などに「カムイ」が宿ると信じられていた。

ユカリはアイヌコタンを巡りながら、人々が日々の営みの中でカムイの存在を全身で感じることで、自分自身と世界とのつながりを捉えなおしていく。

制作チーム

脚本・編集・監督:
十川 雅司

出演:
xiangyu
Koharu Hiyori
秋辺デボ
床 みどり
山本 栄子
郷右近 富貴子
鰹屋 エリカ

プロデューサー:
伊達 善行(株式会社ロフトワーク)
コ・プロデューサー:
許 孟慈(株式会社ロフトワーク)
撮影監督:西岡 空良
撮影助手:大西 恵太
録音・整音:久保 琢也
音楽:高橋遼
ヘアメイク:河本 花葉
制作応援:神出 空
ポスターデザイン:ddd.pizza
ポスタースチール:十川 雅司
現場スチール:大川 彩果
ネイチャーガイド:安井 岳

製作:釧路市

監修:
阿寒アイヌ工芸協同組合

企画・制作:
株式会社ロフトワーク

協力:
有限会社 阿寒ネイチャーセンター
株式会社阿寒湖バスセンター
阿寒観光汽船株式会社
阿寒湖アイヌシアターイコㇿ
株式会社プリズム
一般財団法人 前田一歩園財団
民芸喫茶 ポロンノ
ハポの店
阿寒摩周国立公園阿寒湖管理官事務所(環境省)
阿寒湖アイヌコタンの皆様

この事業はアイヌ政策推進交付金(内閣府)を活用して釧路市の委託により行っています。