株式会社ケーブルメディアワイワイ PROJECT

動画総再生数2,000万回。エンタメ不足の地域を活性化
タテ型ショート動画共創プログラム「コネクリ延岡」

株式会社ケーブルメディアワイワイとロフトワークは、エンタメが不足する地方都市における若者離れの課題を改善し、長期展望から好循環を生みだすことに挑戦。宮崎県延岡市を舞台にアーティスト・イン・レジデンスを実施し、12組の映像作家と地元市民が共創しながら「映像のまち延岡」のイメージを広める縦型ショート動画を制作しました。

プロジェクトに関わった地域住民の数は200人。発信された動画はYouTubeやTikTokを通じて2,000万回以上再生され、延岡の認知拡大と交流・関係人口を増やすことに寄与しました。

Background

「映像のまち延岡」の未来シナリオを、映像作家と地域住民の手で実現する

株式会社ケーブルメディアワイワイは、宮崎県延岡市でケーブルテレビ局、コミュニティFMの運営を中心とした放送事業、電気通信事業などを行う、地域密着型のメディア企業です。

宮崎県は他地域と比べて視聴可能なテレビチャンネル数が少ないこともあり、番組づくりや事業を通じて人々にエンターテイメントを提供してきた同社は、長らく地元で愛され続けてきました。しかし多くの地方都市と同様、延岡市もまた人口減少・少子高齢化が進んでおり、交流人口を増やすこと、地域のにぎわい創出が深刻な課題となりつつありました。

2020年、ケーブルメディアワイワイは、地域密着型のメディア企業の未来のあり方を見据え、オープンスペース「waiwai PLAY LAB」をオープン。延岡から市民が映像をつくり、世界に発信していくためのクリエイティブな拠点として施設運用を開始しました。ロフトワークは、同施設のコンセプト設計、ロードマップ策定、コミュニケーションデザインを支援しました。

waiwai PLAY LABについて

waiwai PLAY LABは、“動画エンターテインメントを拡張するTechnology×Movieラボスペース”をコンセプトに、 動画制作をメインに「Technology」「Entertainment」「Education」の要素を取り入れ、 先端テクノロジーや動画エンターテインメントで遊べる・学べる・発信・交流できる機会を提供するオープンスペースです。

>>waiwai PLAY LAB Webサイト

2023年、同社はwaiwai PLAY LABを拠点に、地域の課題を解決し新しい価値を生み出すためのチャレンジとして、さまざまな映像作家が延岡に滞在しながら映像を制作するプログラム「Connect & Create NOBEOKA(通称 コネクリ延岡)」を始動したのです。

執筆・編集:岩崎 諒子(ゆえんユニット マーケティング/loftwork.com編集部)

Challenge

地域資源を再評価し、未来の「ありたい文化」を興す

本プロジェクトにおける最大の挑戦は、地域の人々が自らエンタメの作り手となり、世界に発信していくための場づくりと仕掛けづくり、そして関係づくりです。

プロジェクトオーナーであるケーブルメディアワイワイが目指しているのは、クリエイターと地域住民が共創しながら、持続的に延岡をエンパワメントするエコシステムを構築すること。この構想を実現するために、コネクリ延岡の取り組みを起点に、地域発の新しいメディア事業を創出することをも視野に入れています。

プロジェクトチームは、延岡市内が映像制作の場所としてポテンシャルが高いことに着目。同市は海や山といった自然資源が豊かで、さらに商店街やスーパーなど「まち」をまるごとロケ地として活用できる余地があります。こうした地域資源の捉えなおしによって、延岡市に「映像のまち」としての新しい価値を見出し、地域をともに盛り上げていくパートナーとして映像作家にフォーカスを当てました。

映像作家と地域住民が共につくる、延岡市発のエンタメ

本プロジェクトでは、映像作家たちが延岡市での滞在を通して、地域資源を生かし地元の人々と共創しながら縦型ショート動画をつくる、最大約1.5ヶ月間のアーティスト・イン・レジデンスを軸にプログラムを実施しました。

プログラムに参加する映像作家は、ロフトワークが運営するアワードプラットフォーム「AWRD」を通じて公募。「延岡であれば、今まで挑戦できなかった映像制作にチャレンジできる」というメッセージを伝えながら、プロジェクトをアピールしました。さらに、「延岡市民に映像制作の楽しさを伝えること」というプログラムのミッションを前面に打ち出して、プロモーションを実施。結果として、12組が延岡現地で行われるレジデンスプログラムへと進みました。

レジデンスプログラムでは、採択された作家に対し制作支援金を支給。制作環境として、waiwai PLAY LABの機材およびスペースを提供しました。また、映像クリエイターに向けて、延岡市内の場所をロケ地として利用することを支援したほか、地元有志によるキャスト出演をコーディネートしました。

さらに、プロジェクトを地域の中で盛り上げる仕掛けとして、waiwai PLAY LABを会場に、延岡市内の人々に向けて制作されたショート動画作品を発表する映像祭も開催しました。

延岡市内で行われた撮影の様子

Approach

多様なクリエイターとのコラボレーションで、プログラムの魅力を高める

映画監督 上田慎一郎さん(写真右奥)

コネクリ延岡は、プログラムに参加した映像作家のほかにも、さまざまな才能あふれるクリエイターとのコラボレーションを通して、プログラムの魅力と推進力を高めました。

プログラムのメンターを務めたのは、『カメラを止めるな!』、『100日間生きたワニ』などの作品で知られる、映画監督 上田慎一郎さん。採択者選定に協力いただいたほか、延岡市現地で映像作家へのメンタリングに協力。先達として映像作家らに寄り添い、技術支援のみならず、精神的な支柱としてもプログラムをサポートしました。

プログラムのコンセプトを手掛けたのは、コピーライターの河カタ ソウさん。プロジェクトチームとのディスカッションを経て、地域と「つながる」そして「クリエイトする」というアイデアから「Connect & Create」、そして映像を「こねくる」という制作のイメージを繋げ合わせ「コネクリ延岡」という、プロジェクトの愛称を考案しました。

印象的なビジュアルを手掛けたのは、UMA / design farm の原田祐馬さんです。原田さんは、プロジェクトの拠点となった共創スペースwaiwai Play LabのVIデザインを担当していますが、今回も継続して、プロジェクトのコンセプトを体現するコミュニケーションをデザインしました。

映像の象徴としてのRGBを基調にしたビビッドなカラースキームと、粘土の親しみやすいイメージが印象的なキービジュアル。延岡を「こねくる」ことを表現しています。
SNS投稿用画像や映像祭のバナーなど、シリーズでビジュアルコミュニケーションを展開。

活動を地域に根付かせる、特別な体験としての「祭」をつくる

プロジェクトの集大成として、またプログラムをさらに多くの延岡市民に認知してもらう機会として、2023年1月27日、waiwai PLAY LABで「CONNECT&CREATE NOBEOKA 映像祭」を開催。

映像祭では、地域の人々に映像祭をより楽しんでもらうために、気に入った作品に投票できる仕組みを用意。さらに、キービジュアルを生かしたアワードのオリジナルトロフィーと表彰状も用意して、映像祭を盛り上げました。また、グランプリ受賞者には追加の支援金を支給したほか、ケーブルメディアワイワイと協働しながら、さらに作品の品質を高めました。

屋外スペースでは、地元で人気の飲食店が出展する「コネクリマルシェ」も同時開催。映像祭が文字通り地域のお祭りとして愛されるように、また延岡で暮らす人々自身が改めて地元の魅力を実感できる機会となるように、特別な思い出となる場と体験をつくりました。

Outputs

延岡を舞台に12組の作家と制作した、14本の縦型ショート動画

プログラムを通して生まれた縦型ショート動画は、コメディからヒューマンドラマ、アバターが登場して「多様性」を問う作品まで、作家ごとに全く異なる個性を持った14作品。これらはすべてwaiwai PLAY LABの公式YouTubeチャンネルで公開されたほか、作家ごとのTikTokアカウントから、#コネクリ延岡 のハッシュタグと共に発信されました。

Outcome

地域の内と外に浸透しはじめた、動画のまち「延岡」のイメージ

コネクリ延岡の取り組みを通して制作された映像作品は、延岡と馴染みのない視聴者からも多くの反響を得て、延岡の認知拡大に寄与しました。

動画共有サイトから得た反響

TIkTok 動画再生数

  • 最大再生数(『現実は厳しい』) 1,100万回
  • 合計再生数 2,000万回

YouTubeオンライン配信視聴数

  • Connect & Create NOBEOKA Movie Festival :1,800人 

また、映像祭には、プログラムに採択された映像作家と地元の人々を中心に、子どもからお年寄りまで200人を超える人々が参加し、会場では立ち見が出るほどの大盛況となりました。

映像祭には、親子連れも多く参加。延岡で生まれた映像作品を楽しみました。

コメディ作品が上映された際は会場全体で笑いが起きるなど、和やかな雰囲気の中で進行しました。

市民投票には数多くの投票があり、地元からもプログラムに対する関心が高いことが伺えました。

今回、延岡市を拠点に活動している「劇団すいとどうかにち」がプログラムに協力。劇団員がエキストラとして映像に出演しました。映像祭に足を運んだ劇団員の中には、自分が出演した作品を観て涙する方も。

人との関わりを求めて地元の劇団に参加したが、まさかこういった映像作品に出演できるとは思っていませんでした。監督と一緒に撮影し、作品が形になり、こうした場で公開されたのが嬉しいです。

(「劇団すいとどうかにち」メンバーの声)

映像祭の総評では、上田監督から映像作家一人ひとりに向けて、熱のこもった講評がありました。映像祭終了後はクリエイター、地元キャストの方々が互いに声を掛け合い、感謝を伝える姿も。14点の映像作品が、延岡の方々とクリエイターとの深い交流を通して作り上げられたことを、相互に実感できる機会となりました。

映像祭終了後は映像作家と上田監督、プロジェクトチームが集まり、今回の映像祭の振り返りと次に向けた決起会を実施。改善したい点や、次回参加する際にチャレンジしてみたいアイデアなど、多くの意見が出ました。

プログラム全体を通して、映像作家と地域住民とが共につくる体験を共有することで、これからも続いていく関係としての「地縁」を育んだ本プロジェクト。映像作家による表現力と発信力、そして地域の人々の前向きな作家支援によって、延岡は「映像のまち」への変化に向けての一歩を踏み出しました。

Creators

レジデンスプログラム 採択クリエイター

ゲストクリエイター

「劇団スカッシュ」と「伊吹とよへ」2つのチャンネルが立ち上げた、奇妙な日常を描くショートドラマチャンネル「いぶよへスカッシュ」から、劇団スカッシュ(@squash_tatsuya)がゲストクリエイターとして参加。制作した動画の再生回数が、公開後1週間で1,100万回を超えるなど、大きな反響を得ました。

Staff Credit

  • クライアント:株式会社ケーブルメディアワイワイ
  • プロデュース:原 亮介、中圓尾 岳大
  • プロジェクトマネジメント、クリエイティブディレクション:伊達 善行
  • クリエイティブディレクション:吉田 真希、天野 凛(以上、株式会社ロフトワーク)
  • グラフィックデザイン:原田 祐馬(UMA Design Office)
  • コピーライティング:河カタ ソウ
  • メンタリング:上田 慎一郎

Member

原 亮介

株式会社ロフトワーク
MVMNTユニットリーダー

Profile

伊達 善行

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

中圓尾 岳大

株式会社ロフトワーク
プロデューサー

Profile

吉田 真貴

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

天野 凜

株式会社ロフトワーク
クリエイティブディレクター

Profile

川口 和真

株式会社ロフトワーク
MTRL クリエイティブディレクター

Profile

Keywords

Next Contents

未来の存在意義を探索する “新”創造拠点
マクセル「クセがあるスタジオ」