学校法人工学院大学 PROJECT

他大学数百サイトの検証で導き出した、工学院大学だけが持つ価値

創立125周年を機に、業務改善・情報発信・ブランディングの3つの観点でサイトリニューアル

1887年の開学以来、社会のニーズに技術者教育で応え続け、現在は4学部14学科を擁する工科系総合大学となった工学院大学。同学では、2012年10月31日に創立125周年の節目を迎えるにあたり、新しいスタートを飾るにふさわしいこの日をWebサイトのリニューアル公開日に設定。4ヵ月という短期プロジェクトに、最後まで強い信念を持って取り組んだ工学院大学の鈴木由香氏とロフトワークのシニアディレクター濱田真一、クリエイティブディレクター町田和宏が、リニューアルにかけた思いを語ります。

濱田(ロフトワーク) 改めてリニューアルの経緯をお聞かせください。

工学院大学 鈴木由香様

鈴木(工学院大学) 2010年の終わり頃から、本学全体の情報発信力の強化に向けてプロジェクトが立ちあがり、その中核を担う施策としてサイトリニューアルへの動きが本格化しました。一方で、ブランドを表現していく基軸ツールとしてWebを展開していきたいという考えもありました。

リニューアルした工学院大学のWebサイト

十数年、サイトの構造自体は変わっておらず、当初はHTMLを直接打ち込んでサイトを更新していました。時には一日数十件の更新依頼が入ることもあり、リアルタイムな情報発信ができず、情報発信量も少ないことが悩みでした。業務改善、情報発信力、ブランディングの3つの観点でWebを活用していくためには、仕組みから変える必要があると考え、CMSの導入に踏み切りました。

濱田 パートナー選びにあたりロフトワークに期待されたことはなにかありましたか?

鈴木 ビジョンやゴールは見えているのに、そのプロセスをどう展開すればよいかがわからない。たとえばそのビジョンにあったWebデザインとはどんなものがふさわしいのか?ブランディングの基軸となりながら、ユーザーが使いやすいWebサイトの構造設計はどんなものなのか?こうした悩みを解消してくれるパートナーを探していました。今回敢えて、コンペ段階からディレクターに提案に加わってもらい、どんな解決策を導き出すのか、こちらの質問にどんな答えが返ってくるのかを見極めさせていただきました。一緒に仕事をする人の理解度を知ることは、クリエイティブ力を問われる仕事をすすめる上でも大事なポイントだと思っています。

最終的にロフトワークに決定したのは、WebRelease2での制作実績、他大学の制作実績があったことも大きかったです。一番重要な構造設計の部分でノウハウを蓄積されているのは強みだと思います。

他大学数百サイトの調査、ワークショップを経て独自のインターフェース設計を実現

シニアディレクター 濱田真一

濱田 個人的にとても興味深い案件で、私自身も気合いは十分でした。企画段階では、既存の大学サイトに縛られない“工学院大学らしさ”を打ち出したいと考え、国内外200~300の大学サイトを徹底的に調査、分析しました。設計段階で実施したワークショップでは、コンテンツ設計が優れた約100の大学サイトを分析して配置の平均値を出し、それをベースに工学院大学のコンテンツを分類したものを叩き台として用意しました。

鈴木 100サイトの平均値は、我々が追い切れない細部までフォローされていて心強かったです。おかげで調査結果をベースに「工学院大学として最適なスタイル」は何かを議論できました。またワークショップを通じて、大学全体を知る多様なスタッフと一緒に俯瞰することで、眠っているニーズを引き出せたこと、我々が考えていた「こうあるべき論」をいい形で崩すことができました。

企画書の一部(250の大学サイトを分析)

参考サイトの収集にはPinterest( http://pinterest.com/ )を使用

現状サイトのリンク構造を分析

動きのあるサイトを演出するためのメガドロップダウンメニュー

コンテンツはグリッドレイアウトでランダムに表示

クリエイティブディレクター 町田和宏

町田 とはいえワイヤーフレームの作成には苦労しました。既存の殻を破るインターフェースの構築は思いのほかハードルが高く、ナビゲーションの調整に手間取り、途中からデザインを乗せて具体性を明示する方法に変更しました。デザインについては黒やグレーを効果的に使ったサイトを希望されていました。事前に参考サイトの中から「このデザインは合わない」と思うものを提示いただいていたのが、デザイナーの可能性を狭めることなく進められてとても良かったです。

鈴木 デザインは人によって感じ方も違いますし、黒やグレーといってもいろいろですから、コンセプトと合わないサイトを予めお伝えし、あとはロフトワークのデザイン力に任せてみました。コンペ時の提案デザインは奇抜でしたが、最終的に完成したものも他の大学サイトにはないものでした。本学らしさを出しながら、かつ今までとは違う表現をしたかったのでとても満足です。ターゲットへの訴求力を重視し、トップページでよく見られるデザインを第2階層に持ってくるという挑戦も実現できました。

濱田 情報設計やデザインはかなり時間をかけました。第2階層のグローバルナビゲーションにJSによるメガドロップダウンメニューを組み込んだり、グリッドでコンテンツを配置したり、既存サイトにはない仕組みを取り入れ、ユーザの導線を確保しながら、今までにないサイトを実現しました。

町田 新しいことに取り組むために、社内のテクニカルディレクターとは頻繁に相談をしました。社内の様々なスタッフにも頻繁にヒアリングをして、多彩な意見を取り入れながらデザイン、サイト構造共につくりあげていきました。また試験的にプロジェクトの進捗や息抜きのためのちょっとした小ネタを盛り込んだ「プロジェクト新聞」なるものを作ってみたんですが、それも今振り返るとチームビルディングとしてとても良かったと思います(笑)。

ユーザビリティの向上、運用負荷の軽減、情報発信力の強化に加え、学内からの注目度もアップ

町田 情報設計とデザインに予想以上に時間を費やしてしまい、厳しいスケジュールに一時期は緊張感も走りましたが、関係者全員が持てる力をフルに発揮することで乗り越えられました。リニューアル後の反響はどうですか?

鈴木 PV数の減少は、滞在時間が大きく変化していないことからも、目的のページに到達しやすくなったのだろうと解釈しています。学内からの注目度も上がり、教職員だけではなく、学生からも「情報を載せたい!」という依頼が活発に入るようになりました。運用面では更新の手間が飛躍的に軽減されると同時に、リアルタイムな情報が載るようになり、変わったね!と言われることが多くなりました。

タイトなスケジュールにもかかわらず、よくぞここまで驚きのあるものになったなと思います。「お腹がすいたからおにぎりが食べたい」と言っておにぎりが出てきたら、そこに喜びはあっても驚きはありません。「実はラーメンのほうがいいのでは?」といったように、Wantsをどう満たしていくべきかを一緒に考えてくれるロフトワークあっての成果です。

濱田 うれしいお言葉です。当社としても、“考える部分”で引き続きご支援できればと思いますが、次の具体的な動きは見えていますか?

鈴木 職員レベルでのCMS運用を実現するために、学部サイトや研究室サイトのテンプレートを用意し、ブランドイメージの一元化に向けた働きかけをしていく予定です。あとは、アクセスログ解析を活用した流入施策の検討や検証も課題です。今回のプロジェクトに注いだ情熱の火を消すことなく、Webサイトを軸にブランド力の強化につなげていきたいですね。

町田 本日はありがとうございました。我々ロフトワークも引き続きご支援を続けていければと思います。

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