EVENT

DESIGN CAMP FOR TOURIST EXPERIENCE
Day2-3 開催レポート

Day2

課題から考えよう。顧客は、自身の課題解決を望んでいる

ロフトワークのカワナアキ(以下、アキ)は、2日目のワークのキーワードに「ユーザーエクスペリエンス(以下、UX)」を挙げ、「誰のために何を作るかを考えるときは、ビジョン、ゴール、コンセプト、それを実現するアイデア、根拠となるインサイト、インサイトを導くための観察や事実というように、レイヤー構造でUXを考えていく」と説明。

また、もう一つ忘れてはならないのがヒューマンセンタードデザインだとして、「出せば売れた時代と違って、ビジョンから落とし込むのではなく、ユーザーの目線や思考プロセスからビジョンに向かうべき」と強調。

アイディエーション中心に設計された2日目も、この考え方に基づき、ペルソナの定義からスタート。カスタマージャーニーマップ(以下、CJM)の作成、課題の特定、アイデア出しへと進んでいきました。

STEP1 ペルソナの定義

宿題として各自が作成してきたペルソナをチーム内で共有。そこから対象とするペルソナを絞り込み、ペルソナ名、ゴール、ニーズ、人となりを定義。今回、2つのチームが作成したペルソナは、「ロードムービー型トラベラー」「こだわりマイペース旅慣れトラベラー」です。

STEP2 CJMを作成

ペルソナをベースにCJMを作成。時間軸(横軸)×タッチポイント(縦軸)の両輪を捉えつつ、その瞬間にユーザーが何を考え(Head)、感じ(Heart)、行動(Hand)しているのかを考えていきます。
「その瞬間において各タッチポイントがどのように有機的に結びついているかを考えること。」(アキ)

STEP3 ペインポイントを特定

続いて、作成したCJMから、ユーザーのペインポイント(例:欲しい情報にたどりつけない、写真の整理が大変といった課題)を探します。「顧客はあなたのソリューションに興味はない。興味があるのは、顧客自身の課題だ」(500 Startups創業者デイブ・マクルーア)。という言葉にもあるように、重要なポイントは、顧客自身の課題をきちんと捉えることです。

STEP4 アイデアスケッチ

ペインポイントの中でももっとも大きいものをユーザーの課題として特定。それを解決するためのアイデアを考えます。今回はとにかく手を動かすということで、イラストを書きながらアイデアをスケッチしていきました。

STEP5 チャレンジセッション

「アイデアスケッチで出たアイデアは、既存の枠組みから抜け出ていない。人は知らず知らずのうちに自分の中で思考パターンを作り、枠の中に収めようとする。ここからは、水平思考(ラテラルシンキング)を使ってそうした枠組みを取り払っていく」とアキ。水平思考とは、常識を疑い、既存の思考パターンを壊して、創造力を刺激するための方法です。

必要なのは発想の転換。まずはユーザーの課題やニーズを言語化し、その前提条件を・否定する ・プロセスを逆転するといった方法で既存の枠組みを取り払い、課題解決のアイデアを考えていきます(例:ホテルのチェックイン時に待たされる→チェックインしなくてもいいのでは?→チェックインレスのサービス)。

今回は、「(1)ペルソナ(2)タッチポイント(3)ユーザーが持つ課題やニーズ(前提条件)→(4)発想の転換→(5)アイデアの創出」を3回繰り返してアイデアをブラッシュアップしていきました。

そして、この日の終わりに出された宿題は2つ。個々にアイデアを具体化・詳細化し、LEAN CANVAS(ビジネスモデルを考える際のフレームワーク)とストーリーボード(アイデアを4コマ漫画で表現したもの)にまとめるというものでした。

Day3

フィードバックを繰り返し、ビジネスアイデアを磨き上げる

3日目は、最終プレゼンに向けてさらに議論を深め、各チームでアイデアをブラッシュアップ。単なる夢物語を描くのではなく、収益モデルやKPIまでを明らかにし、ビジネス面からその価値をアピールできることが求められました。

STEP1 ストーリーボードの共有と修正

宿題として各自が作成してきたストーリーボードの内容について、6色ハット発想法を使ってチームメンバー全員がフィードバックを実施。その内容を受けてストーリーボードを修正していきます。6色ハット発想法とは、建設的な議論を促すために、白は客観的な視点、黄色はポジティブな視点、黒は否定的な視点など、選んだ帽子の色に設定された視点から強制的にアイデアを発想していく方法です。

STEP2 収益モデルの共有と修正

LEAN CANVAS上で各自が考えてきた収益モデルを共有し、STEP1と同じ手法でフィードバックを実施。それを受けて収益モデルを修正していきます。

STEP3 最終プレゼン

最終プレゼンの準備とチーム内での特訓を終え、11名の参加者全員が3日間の成果を1人5分で発表。チーム内で「発表→フィードバック→修正」のプロセスを2回繰り返したあとの発表とあって、いずれも完成度の高いプレゼンが展開されました。その一部をご紹介します。

サービス名「TRIP SHARE GLASEES」

カメラを搭載したメガネと脳波センサーを付けて旅をすると、感情の動きを脳波が捉えて撮影した写真とともにクラウド上に保存され、BGM付きの映像として編集される。

 

ゴール
面倒な作業なしに、旅のストーリーを大切な人と簡単にシェア
コンセプト
ドライブレコーダーのように旅行体験を録画し、ドラマチックな映像に仕上げて共有
ターゲット
エフォートレスにドラマを作りたいロードムービー型トラベラー
解決する課題
旅の想い出を共有したいが写真や動画の整理といった面倒な作業をしたくない
ソリューション
① 何もしなくても旅のストーリーをシェアできるシステム
② 大切な人といつでも旅のストーリーをシェアできる環境
収益モデル
・月約1000万の売上を想定
ツール自体の売上(サービス利用は無料)、映像に関連する企業や自治体からの広告収入、BGMに使用される音源の著作権管理および売上など
KPI
ユーザーの動画再生100万回/月、広告インプレッション:150万ipm/月、広告CM:50万回/月、ECサイト流入数:20万UU/月、ECサイトコンバージョン:3%、ECサイト1回あたり購入額:3000円

サービス名「TOUR GUIDE MATCHING APP SERVICE」

現地情報をプッシュ型で提供し、詳しく知りたい!というときに、自分に合う現地ガイドを選んで一緒に旅行。ひと味違った旅を満喫できる。

 

ゴール
本当の魅力を知っているのはやっぱりそこにいる「人」
コンセプト
多種・多様なガイドがあなたの旅をよりあなたらしくご案内
ターゲット
こだわりの強いマイペースな旅慣れトラベラー
解決する課題
他にはない自分だけのこだわりの旅を体験したい
ソリューション
① 到着前にアプリをダウンロード
② 利用したくなるサービスの提供
③ 外国人が不安なく利用するための環境の提供
④ ガイドの顔が見え安心して利用できる機能の提供
収益モデル
ユーザーの利用は基本的に無料、広告収入で収益を上げるモデル
KPI
認知拡大フェーズ→アプリダウンロード数
収益拡大フェーズ→広告収入

3日間にわたって開催されたロフトワーク初のデザインキャンプセミナー渋谷の街で訪日観光客をスカウトし、旅の課題をインタビューすることから始まり、手を動かし、頭を使い、ターゲットの本質的なニーズとそれにマッチするサービスを考え続けることで、サービスデザインの手法を体感しました。

イベント後に実施された懇親会では、多くの参加者が、お互いの課題感や、体感してみた感想を共有しあい、新たなつながりも生まれていました。次につながる成果の一つと言えそうです。

イベント概要

訪日観光客のタッチポイント企業が幅広く参加

年々増加する、海外からの訪日観光客。政府が掲げる年間の訪日観光客数2,000万人の目標は来年にも達成されると言われ、観光客が増えるとともに彼らが求める日本での体験も多様化しています。ひとつのサービスや地域で取り組んできた個別のインバウンド対策から、より広域、より包括的な視点で彼らの旅や体験を提案することが求められています。ただ、一事業体が観光客の訪日体験においてすべての接点となることは困難であることも事実です。本イベントでは、訪日観光客とのタッチポイントにおいて、キーとなるプレーヤーの各企業(空港、観光地、通信、交通、飲食、宿泊など)に参加いただき、ユーザーである訪日観光客の体験をどのように良いものにできるか議論し、各タッチポイントのアイデア、およびそれらをいかに線として結ぶかを考えます。

旅行中のライフライン 「モバイル」がテーマ

日本独特のハイコンテクスト文化(暗黙知のうえに成り立つコミュニケーションやシステム)や、外国人にとっては複雑なユーザビリティなど、ツーリストの体験には日本人が普段意識しない多くのハードルがあります。その体験を向上する可能性(体験をシンプルにする、シームレス化する、ユニーク性をもたせる、など)を、実現可能なモバイルのサービスアイデアに落とし込むことで、デザインリサーチおよび体験のデザインを実感していただくことが本セミナーのゴールです。

ワークショップ概要:顧客の視点でタッチポイントをとらえ、新サービスを考える

本ワークショップは、訪日観光客へのインタビューを行い、彼らのインサイト(潜在的な価値観)を発見するところから始まります。行動や選択のベースになる「メンタルモデル(考え方の根幹)」に重点を置くことで、ターゲットのセグメント情報(国や性別など)ではなく感情の連続である体験を基にしたサービスアイデアを発想することができます。

本イベントをナビゲートするのは、多数の戦略的デザインリサーチのプロジェクトを実行してきたロフトワークのカワナ アキ。米国のデザインファームfrogで培ったデザインリサーチの知見を用いて、新たなサービスを生み出すワークショップを設計します。成長するインバウンド・マーケットを日本企業が協業して発展できるチャンスと捉え、顧客体験の旅を描くことで「点」の施策を結び「線」にしてみませんか?

開催概要

セミナータイトル 訪日外国人の行動を「線」でとらえ 新サービスをデザインする3日間
開催日時 2016年1月15日(金) ・22日(金)・29日(金)
計3日間 全日 9:00 – 19:00
場所 FabCafe MTRL
対象 ・空港、観光地、自治体、通信、交通、宿泊業界の方
・東京オリンピックに向けて、訪日観光客への新しいサービス・製品・プロモーションを企画している方
・3日間全てのプログラムに参加できる方(やむを得ない事情がある場合はご相談ください)
定員 15名
主催 株式会社ロフトワーク
ご注意 ・プログラムは予告なく変更される場合があります
・当日の参加者の皆さんのお写真は、後日公開するレポートなどに掲載させていただきます

プログラム

Day1 :Understanding

問題発見、論点設定、「誰のため」のサービスかを定義する

■2016年1月15日(金)

  • 09:00 – 11:00 レクチャー
  • 11:00 – 13:00 フィールドリサーチ・インタビュー
  • 13:00 – 14:00 Lunch
  • 14:00 – 16:00 フィールドリサーチからインサイトを落とし込む
  • 16:00 – 18:00 インサイトの発見、ペルソナ作成
  • 18:00 – 19:00 まとめ・課題の説明・次回の案内

Day2 :Ideation

顧客体験の設定、体験施策のアイディエーション、差別化要因

■2016年1月22日(金)

  • 09:00 – 10:00 レクチャー
  • 10:00 – 12:00 カスタマージャーニーマップ作成
  • 12:00 – 13:00 Lunch
  • 13:00 – 14:00 Idea sketch Session
  • 14:00 – 15:20 Provocation #1(アイデア発想1)
  • 15:20 – 16:40 Provocation #2(アイデア発想2)
  • 16:40 – 18:00 Provocation #3(アイデア発想3)
  • 18:00 – 19:00 まとめ・課題の説明・次回の案内

Day3 :Business Model & Presentation

事業モデルに落とし込む、フィールドピッチプレゼンテーション

■2016年1月29日(金)

  • 09:00 – 11:00 ストーリーボード作成
  • 11:00 – 11:30 レクチャー:ビジネスモデルへの落し込み
  • 11:30 – 18:00 Lunch・プレゼン準備
  • 18:00 – 19:00 会場移動
  • 19:00 – 21:00 チームプレゼンテーション&立食パーティー

※Day3のプレゼンテーション会場は、別途アナウンスします。

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