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松坂屋名古屋店の挑戦!中部地区のプレイヤーと考える、これからのまちづくり
SAKAE Creative Meeting#2 イベントレポート

ロフトワークが松坂屋名古屋店とスタートさせた、「BASE SAKAE」プロジェクト。名古屋内外の様々なプレイヤーとのコラボレーションを通じて、松坂屋名古屋店から、新しい百貨店像を発信する場づくりを目指しています。

プロジェクトの一環としてスタートした「SAKAE Creative Meeting」は、中部地区にある技術、素材、場、人、経済的支援などのリソースを出し合い、新しいプロジェクトを生み出していくためのオープンミーティングです。盛況を博したキックオフに続き、先日12月13日、なごのキャンパスにて第2弾のオープンミーティングが開催されました。老舗百貨店・松坂屋が今まさに変わりつつある現場に、中部地区のプレイヤー達が集まった当日の様子をレポートします。

テキスト:杉田 真理子

遊び、学び、実装する。これからの松坂屋名古屋店が目指すこと

株式会社大丸松坂屋 松坂屋名古屋店 店長・執行役員 小山真人氏

2010年に、デパートメントストア宣言から100周年、2011年には「いとう呉服店」創業から400周年を迎えた松坂屋。「百貨店は今まで、多くの発明を社会にもたらしてきました」と語るのは、イベントの冒頭を飾った、松坂屋名古屋店 店長・執行役員の小山真人氏です。「新しい発明は簡単にできるものではありません。”生活と文化を結ぶマツザカヤ”という原点に立ち返り、このプロジェクトで皆さんと一緒に新しいことを発見し、松坂屋の中で実装させたい」と意気込みを語ります。

「今回のオープンミーティングのテーマである、”地域と築く、持続可能な仕組み”は、そのための第一歩です。松坂屋は、なんのためにこのプロジェクトをしているのか、覚悟はあるのか、と問われることもあります」と小山氏。「例えば、弊社の取り組みとして、大丸梅田店にで女性の性と生理をテーマにした挑戦的な企画をつくり議論が巻き起こりました。新しい時代に必要なものがあれば作るべきだし、ここで生まれたアイデアでお客様に喜んでもらえるなら、挑戦し続けなければならないそうした挑戦のために、我々の売り場はあります」と語ります。

SAKAE Creative Meetingから生まれたアイデアを松坂屋名古屋店で実験する

株式会社大丸松坂屋百貨店 営業本部 MD戦略推進室 MD企画・開発担当 村田 俊介氏

続いて本プロジェクトのコアメンバーである松坂屋の村田氏は、「名古屋内のあらゆる大人が仕掛け人となり、お互いのリソースを出し合って栄を面白くする、”遊びと学び”の種を創りたい」と説明します。自由で楽しい印象がある一方で、不真面目でネガティブな捉え方もされやすい、「遊び」という言葉。しかし、自発的に行動し、人と関わり、成長する体験の基礎となる「遊び」を、もう一度考え直す必要があるのでは、と村田氏は語ります。「大人のわたし達は、どうしても実利に集中してしまいがち。だからこそこのプロジェクトでは、大人が集まって、面白い遊びをしていきたいと思っています。」

ここでうまれた遊びの「種」の実現に向けて、松坂屋名古屋店は、活動支援と場の提供を行います。

SAKAE Creative Meetingで生まれたアイデアの種を分科会であるSmall Meetingにてブラッシュアップし、最終的には松坂屋名 古屋店の店舗にてイベントとして実施することが発表された。

一過性のイベントでは意味がない。地域と築く、持続可能な仕組みづくりに向けて

「地域と築く持続可能な仕組みづくり」と題したゲストトークでは、株式会社星野リゾート企画開発部の髙橋裕佳氏、名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部人材育成・情報発信グループ URA岡部周平氏の2名の取り組みから共創事例を学びました。一過性ではなく、地域のコミュニティと手を組みながら持続的に発展するプロジェクトは、どのようにつくれるのでしょうか?

1人ひとりの想いを積み上げ、地域の魅力を届ける

株式会社星野リゾート企画開発部 髙橋 裕佳氏

「その地域の魅力はなんですか?と聞かれたとき、特産物など、単語レベルでの説明になってしまいがち。しかし、そもそも魅力とは、単語ではなく、魅力があると感じたその人の温度感のあるストーリーを通じて伝わるものだと思っています」と語るのは、株式会社星野リゾート企画開発部(現・国内企画開発ユニット)に所属する髙橋氏。新規ホテルのコンセプト企画から、設計者とのデザイン検討、工事監理までのプロジェクト推進を普段行なっている髙橋氏は、星野リゾートによる地域の取り組みは、「1人ひとりの小さな想いの積み重ねである」と説明します。

「そもそも日本の旅館から始まっているホテルオペレーターの私たちは、一般的な不動産会社とはまちづくりに対するアプローチが違うように思います。今でこそ、海外も含め全国に展開する星野リゾートですが、昔からサービスの根底に流れる考えは変わらず、その土地ならではの魅力を発見し、磨き上げ、お客様に提供することこそが最大のおもてなしである、ということを大切にしています」と説明する髙橋氏。星野リゾートには一般的なマーケティングからではなく、スタッフひとりひとりのアイデアや想い、問題意識から企画が生まれる、と言います。

「ご近所ガイド OMOレンジャー」まるで旅先に住む友人のように、行きつけのお店や地元民しか知らない場所へ連れて行ってくれるサービス

事例として髙橋氏は、新しい都市観光ホテルOMOを取り上げます。「OMOは、寝るだけでは終わらせない、旅のテンションをあげる都市観光ホテルです。普段ビジネスホテルに泊まっている観光客をターゲットに、彼らに新しい可能性を届けたい、という想いから企画がスタートしました。」
OMOでは、星野リゾートのスタッフである「OMOレンジャー」が、地域の人に変わって地元のディープな魅力を教えてくれます。初めて来た街でも、あたかもそれが自分の街であるかのように体験することができます。

「持続可能なプロジェクトであるために必要なものは?という問いに答えるとするなら、地域との包括連携協定などの行政との仕組や地域との体制づくりはもちろん大切だと思っています。しかし、そこに関わる1人ひとりがまちに対しての想いやストーリーを持っていて、それがまちを生み出す仕掛けにつながっていること、こそ大切なことだと思います」と髙橋氏。

OMOの新店舗「OMO7大阪新今宮」が位置する大阪・あいりん地区は、日雇い労働者の多いことで有名な地域。星野リゾートが入ることで、地域の魅力を再発見し、その魅力を発信していくお手伝いができればと、髙橋氏は語ります。一方で、地域との関わりで髙橋氏が強調するのは、「自分も相手も無理をしないこと。相互に期待しすぎないこと」。「お互いが出来ること、出来ないことを理解し、尊重しあうことが地域と持続的な関係性を築いていく上で大切なのではと思います。」

若者に、新しいことに挑戦するマインドセットをつくる

名古屋大学 学術研究・産学官連携推進本部人材育成・情報発信グループ URA 岡部周平氏

「今地域に大切なのは、新しいことに挑戦するマインドセットを作ること、そして、失敗してもナイスチャレンジ!と暖かく認めてあげる土壌です」と話すのは、名古屋大学の岡部氏。岡部氏は、東海地区5大学による起業家育成のためのTongaliプロジェクトを運営しています。学生の起業をサポートするTongaliプロジェクトは、大学院生、研究者を対象に、アントレプレナーシップ教育を実施しています。

「アントレプレナーシップとは、事業創造や新商品開発などに高い創造意欲を持ち、リスクに対しても積極的に挑戦していく姿勢や発想、能力などを指します。ですので、必ず起業しなければいけない、という訳ではありません。新しいことに挑戦する、というマインドセットが大切なんです。起業は、あくまでもひとつのアウトプットのあり方でしかない」と岡部氏は語ります。

「大学発ベンチャーの増加数で見ると、名古屋大学はトップクラス。Tongaliプロジェクトでは、東海地区を大学から盛り上げていくために、グローカルのアントレプレナー研修や、ビジネスプランコンテストなど、さまざまなプログラムを行なっています。」

岡部さんが強調するのは、スタートアップエコシステムの確立です。スタートアップが生まれやすい環境づくりや法制度の規制緩和などを行い、地域の特徴を活かしたエコシステムをつくる必要性を、岡部さんは語ります。「名古屋市も、グローバル都市拠点を目指せるのではと思っています。また、市民や学生など、地域の方に継続的に関わってもらうためには、自分ごと化すること、そしてアウトプットよりも、一緒にやることのプロセスを大切にすることが重要です。」

中部地区プレイヤーによるピッチトーク

ゲストトークの後は、参加者によるピッチトークが開催されました。個人や企業で取り組まれている活動について、7名がプレゼンテーションを行い、仲間をつのるなど熱い思いを届けました。

アイデアの種を見つけるためのワークショップ

さまざまなプロジェクトからインスピレーションを得たところで、次のプログラムは、参加者個人、あるいは所属する会社・団体が提供できそうなリソースを出し合い、中部地区を盛り上げるためのアイデアを考えるワークショップです。ワークショップのテーマは、「遊び」。「あなたのリソースをつかって、こどもたち(あるいは大人に)、どんな遊びや学びの場をつくれますか?」という問いに対し、自由に発想しながらさまざまなリソースを混ぜ、どんなアイデアが実行できるかを考えます。

領域は異なりつつも、名古屋への愛と熱意を共有する参加者たち。こどもたちをワクワクさせる遊びや教育、あるいは、大人の遊び心をくすぐる企画、というふたつの視点から、アイデア出しを行いしました。

SAKAE Creative Meetingのこれから

2020年にはSAKAE Creative Meetingの分科会であるSmall Meetingを開催。松坂屋フロアでのイベント開催に向け、ワークから生まれたアイデアの種を実行プランに落とし込むフェーズへ進みます。松坂屋名古屋店は、活動支援と場の提供を行いアイデアの実装に向けてチームをリードしていきます。

SAKAE Creative Meetingでは参加者1人ひとりが自由に発想を広げ、他の参加者と交流することで、共創の芽が生まれる土壌が育まれています。この活動は今後も継続していきます。中部地区を盛り上げて行きたい方のご参加お待ちしています。

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