EVENT

神戸R不動産の小泉さんと考える
これからの働き方やコミュニティ

町の解像度が上がったリモートワーク期間

こんにちは。京都オフィスでクリエイティブディレクターをしている服部です。

コロナ禍の春、公共交通機関に乗ることを控え、徒歩もしくは自転車で近所を巡りました。日頃、駅前のスーパーの利用一辺倒だったけれど、商店街の八百屋や豆腐屋を発見し、居住地に対する解像度が上がるのを感じる日々でした。

神戸の自宅付近の風景

6月に入り、2ヶ月ぶりに、神戸の自宅から京都のオフィスに出社。片道2時間の通勤時間は気が重かったけれど、心身が満ちていく感覚がありました。他愛もない雑談、最高。黙々と別々の仕事をしていても同じ空間に同僚がいる事実は「ここで働いているんだなー」と実感させました。会うって良い。ちなみに、リモートワーク期間に入社した同僚とオフラインで初対面を果たした時は、「サイズ感」に驚愕しました。別に小さいとも大きいとも想像していたわけではないのだけど。約2ヶ月間、オンラインで(無意識に)収集した情報をもとに、プロファイリングしていた同僚像を、瞬時に補正したのでした。芸能人を生で見て「本物の方が可愛かったです♡」と言う時の感覚と同じかもしれないですね。

そんな出来事のちょっと前、Withコロナの時代のコミュニティのあり方をテーマに、オンラインでイベントを企画・開催しました。この記事では、このイベントから特に私が個人的に興味深いと思ったことをお伝えしたいと思います。

服部 木綿子(もめ)

Author服部 木綿子(もめ)(クリエイティブディレクター)

神戸生まれ神戸育ち。岡山で農林業や狩猟がすぐそばにある田舎暮らしを約10年に渡り経験。その中で2軒の遊休施設をゲストハウス(岡山県西粟倉村/香川県豊島)として再生し、自らも運営の第一線に立った。その後、神戸の農産物などを販売するショップで、マネージャーとして店舗の運営に携るなど、ローカルのコミュニティ拠点づくりに関わってきた。プロジェクトを通じて出会ったクライアントやクリエイター、ロフトワークのメンバーが、一個人として楽しく、持っている能力をシェアし合える「ええ空気」なプロジェクト設計が得意。社会が面白くなるのは、専門分野やバックグラウンドの異なる個人が肩書きを忘れてつながる瞬間だと信じていて、公私の境界線を往来しながら、さまざまな場づくりを行っている。

Profile

オンライン利用が加速。リアルな場はどうなるかを考えたい

ゲストにお招きしたのは、神戸R不動産の小泉寛明さん。小泉さんの活動は多岐に渡りますが、毎週土曜日の朝に開催されているFARMERS MARKETや、神戸産の野菜や加工品の販売店であるFARMSTANDの仕掛け人です。これらの拠点を通じて、小泉さんは「顔の見える経済」と呼ぶ繋がりを地道に育てています。私の前職はFARMSTANDのマネージャーなので、小泉さんは当時のボス。ちなみに、さらにそれ以前の私は、山村でゲストハウスの女将をしていたこともあり、「コミュニティ」の現場に長くおりました。今のオフィスに併設されているFabCafe Kyotoも、いわゆる「コミュニティ」のハブとなっている場所。Fabcafe Kyotoのマネージャーの木下も交えて、「『顔の見える』経済とは? - withコロナ時代の働き方とコミュニティ」をテーマにお話ししました。

このイベントは、私の自主企画。多くのことがオンラインに置き換えられることを実感し始め、リアルな場の意味が今後薄まっていくのかも?と、人と人が繋がりあえる場所をつくることが好きな私としては、物寂しさを感じていました。そこで、このテーマの実践者である小泉さんをお呼びして、今何を考えているのか聞いてみたいと思いました。これからの住む場所、働く場所、そういった「コミュニティ」の今後について、発見の多い時間となりました。

イベント当日の様子。

多様な「公共」が生まれて欲しい

イベントの全容は、アーカイブ動画をぜひご覧ください。トークセッションの中で特に印象的だったのは、在宅ワークが広がった場合、従来の8時間労働での固定給という働き方から、「この仕事でいくら」という風に、個人事業的な働き方が広がっていくだろうという仮説。小泉さん曰く、個人事業主になると確定申告をすることになるから、税の使い方について考える人が増えていくことが期待されるとのこと。たとえば、NPOに寄付すると税の控除が受けられるのですが、NPOに寄付をする人が増えると、NPOの運営がしやすくなります。NPOのような中間的な存在が活躍できる世の中になると、豊かな「公共」が生まれてくるのではないかと、小泉さんは伝えていました。ここで言う「公共」とは、「何かあっても生きていける!」というセーフティーネットになり得る存在。言い換えれば、仲間やコミュニティのことです。ガバメントが「平等に」提供してくれる公共もあるけれども、NPOのような存在が多く活躍すると、多様な「公共」が生まれてくるのかもしれません。

個人と個人がビジョンで繋がるコミュニティ

個人事業主的な働き方が増えると言っても、個人でやれることには限界があって、私たちは繋がりを必要とし、コミュニティを拠り所にします。その舞台は、オンライン/オフラインに限らないと思います。おそらく両方。そのためには、ビジョンを共有し、個人と個人が繋がってコミュニティを育んでいくのでしょう。少し唐突ですが、これは「デザイン経営」の文脈に通ずるものがあると感じました。企業の場合も、ビジョンを共有し合う個人の集合体となれば、コミュニティとして存在し得るのかな…と考えを巡らせました。

小さな事業体が繋がり合う「顔の見える経済」は、コロナショックのような時も助け合えて、変化に強いのかもしれません。(小泉さん中心に執筆された「ローカルエコノミーのつくり方:ミッドサイズの都市から変わる仕事と経済のしくみ」(学芸出版社)より)

オンラインを活用し、オフラインを充実させよう

オンラインをうまく利用することで、オフラインの時間を有効に使うことができます。小泉さんは、仕事を効率化させ、畑や古民家のDIYに時間を使うことで、生活を充実させているそうです。リモートワークが進み通勤時間を縮小させられたら、駅から徒歩15分圏内ではなく、徒歩15分圏外にある物件で畑をしながら暮らすなどの選択肢が増え、町のあり方、暮らし方も変容していくのかもしれません。

オフラインの時間をもっと活用できるようになると、どんな場所でどんなコミュニティと関わり合って暮らしていくかが、より重要になってきます。私の愛すべき「リアルな場」は、これからますます重要になる!と、勇気をもらったイベントでした。


また近々、地域のプレイヤーとイベントを企画中です。また、こちらのサイトでお知らせしますので、ぜひご覧ください。

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