EVENT Report

「自分たちが実現したいビジョン」だから追い求められる
サーキュラー・エコノミーの展望と実践者たち開催レポート [第三部]

FabCafe・ロフトワークで開催中の循環型経済をデザインするグローバル・アワード「crQlr Awards (サーキュラー・アワード)」。本アワードの関連イベントとして、2021年8月27日(金)に サーキュラー・エコノミーの展望と実践者たち crQlr Meet up! vol.0 をオンラインにて開催。多彩なゲストたちがサーキュラー・エコノミー可能性について事例を交えて意見を交わしました。
本記事は、3部構成で構成されており、その3部になります。

クロストーク3:サーキュラー・エコノミーに取り組む人たち

クロストーク3のゲストは、スタートアップや地域で活動する実践者の方々。
ロフトワークの小川 蘭那をモデレーターに、活動の詳細やサーキュラー・エコノミーとの向き合い方などについて聞きました。

■登壇者
・Liv:ra & TSUNAGU FASHION LABORATORY 小森 優美さん
・徳島県・上勝町 INOWプログラム(合同会社RDND) 東 輝実さん
・渋谷肥料 代表 坪沼敬広さん

「自分が何ができるか」を突き詰めることが、世界を変えていく

ー小川:サーキュラーエコノミーに取り組まれている皆さんに、簡単なご紹介と共に、活動を続けていかれる中で大事になさっていることをお聞かせいただけますか。

東:人口1500人ぐらいの四国で一番小さな町、徳島県上勝町から参加させていただいています。ここで、「INOWプログラム」というプロジェクトを行っています。
上勝町は、無駄や浪費をなくし、ごみゼロを目指す、日本で初めての「ゼロ・ウェイスト宣言」をした町です。ゲストはまず10日地域に溶け込んでもらいます。そこで地域の人たちとの出会い、一緒に暮らすことを一番の価値として、その中から自分にとって豊かな暮らしや自分自身を知るきっかになってもらいたいと考えています。

私たちの最大の強みは「自然との近さ」です。「環境負荷」という言葉をよく聞くんですけれども、その言葉を使う人たちが、環境つまり「自然」の中で過ごす体験を持っているかどうかが気になる時があります。体験を通して自分がどういう環境を残したいか具体的にイメージして活動しているかどうかで、結果はまるで違ってくると思っているんです。

百聞は一見にしかず、ではないのですが、実際に上勝町に来ていただいて、大雨が続く怖さなども含めて自然の豊かさを感じていただく中で、自分たちの暮らしをどうシフトしていくかを考えるきっかけになればと思って活動しています。

小森:株式会社ハイロジックでは、エシカルファッションを軸に活動していて、草木染めシルクのランジェリーブランド「Liv:ra」の展開などを行っています。また、一般社団法人TSUNAGUでは、サステナブルな社会にしていきたいという思いやアイデアを持つ人たちに向けた、個人の心の在り方を探求する実践的なラボなどを開催しています。

私も「自然と繋がる」ことを大事にしていければと思っています。さらに言えば、自然のみならず、人と人や異文化どうしなど、ありとあらゆる「繋がり」が今、希薄になっている状況で、私たちは、改めてあらゆるものごとと繋がり直していくプロセスを歩んで行かなければいけないんじゃないかって思っています。
それも、日々の暮らしや仕事といった「日常」の中で、自分を取り巻くものを見直して、淡々とでも丁寧に向き合っていくような、長期的な視野を持つ必要があるんじゃないかな、と思っています。

世界を変えていくのは、ヒロイックなイノベーションではなくて、個人レベルの日々の繰り返しの積み重ねだと思うんです。個人がどれだけ自分の内面と向き合って色んな物との関わりを変えていくがとても大切な気がしています。

ー小川:そういうようにお考えになったきっかけはあったのでしょうか。

小森:物事がうまく進んでいかないことを、政治やグローバリゼーションのせいにしていた時期が私にもありました。でも他人のせいにしているうちは、今後、社会が変わることがあったとしても、私は何の影響も与えることができない。自分にできることは、自分自身が変わっていくことしかないとある日気づいたんです。

東:小森さんのおっしゃるとおり、個人が変革することは、とても大事だと思います。ただ「変わりたい」と思った時に、どう変わったらいいか、何をやったらいいかがわからないというケースも多くあるように思います。誰かと繋ぐ架け橋になったり、こういう商品があるよとおすすめしたり、今ここでこういった課題があるから一緒に解決しましょうとお誘いしたり、といった具体的な手立てを私たちが指し示すことが、変わりたいと思った方たちの助けになるのかもしれませんね。

坪沼:「渋谷肥料」は、渋谷を「消費の終着点」から、「新しい循環の出発点」にシフトできないか?という問いから生まれたプロジェクトです。渋谷の飲食店などから出る「生ごみ」を肥料化して、渋谷のまちの力を生かした商品に活用することで「循環型社会」をより多くの人に感じていただける仕組みをつくっています。

僕たちが大事にしているのは、未来を考える時に「大きく考えすぎない」ことです。それを踏まえて、プロジェクトで共有している考え方がふたつあります。
ひとつが”if→ what”の話。メンバーにはよく、「SDGsだから」「地球のためだから」と構えるのはやめようと話しています。その代わりに、例えば「渋谷に行った時にどんなお店があったらいいと思う?」と自分に問いかけて、具体的なお店の姿と、そのお店を実現するために何ができるかを考えることを大切にしています。

もし飲食店でアルバイトをするなら、フードロスを極力減らしているお店の方が気持ちよく働けますよね。その理想(if)があったうえで、今度は経営する側に立って「フードロスを減らしながら経営を成り立たせるにはどうしたらいいか?」を具体的に考えること(what)で見えてくるものがあります。大切なのは、自分たちが「当事者」としてスタートすることです。「サーキュラーエコノミー」も、誰かに与えられたお題ではなく、「自分たちが実現したいビジョン」だから追い求めていけると思います。

もうひとつは「循環」の話。サーキュラーエコノミーを考えるとき、最初はどうしても大きく循環の「輪」を描きがちではないでしょうか。でも、僕たちは小さな輪を連続させていくことを大事にしています。小さな輪であれば、自分たちにできることが多くなるし、すぐに始められることもたくさんあります。それらが連続してつながっていくことで、さまざまな人たちが同時に参加できる仕組みが生まれて、製品をクイックに出すこともできます。
最初の話に戻りますが、まずは「大きく構えすぎないこと」から始めています。「自分は何ができるか」を突き詰めることで、たしかな一歩を踏み出せるのではないでしょうか。

ステップを踏んでできることから経験を積み重ねていく

ー小川:小森さんは農地を借りて、シルクの原料を作る蚕が食べる桑の木を育てることを始めるとお伺いしました。

小森:シルクに魅了されて養蚕の文化を継続させたいと考えて、思い切って東京から京都に移住しました。最終的には、シルクと草木染めの染料を自分たちで育てて、製品にしていきたいと考えています。

実は、シルクは絶滅寸前の産業です。労力がかかる上に、日本国内で生産すると高額になってしまう。従来のやり方で養蚕を復活させることは、今の資本主義には全くそぐわない状況です。しかも国からの補助金も打ち切られている。シルクを続けるには、新しい動きを続けないといけないんです。一方で、継続していく方法を研究されている方もいらっしゃいます。桑もシルクもたくさんの副産物が生まれる素材で、桑の木の葉っぱからお茶やケーキ、ジャムが出来たり、シルク自体も糸のみならず化粧品などにもなり、そのどれもがすぐれた商品です。

副産物なども含めて自然が産んだ素材を「使い切る」という感覚を持つことで、物や経済を「循環」させることができる。そうしたら、従来の資本主義と共存できる仕組みを作ることも可能じゃないか。実際、シルクを作るだけでなく、様々な方たちとコラボレーションしながら、サーキュラーエコノミーの構造を作り出すことができれば、経済的にも成立できるというデータもありました。

そこまでリサーチした上で、自分も養蚕業に関わることができると決断して、まずは自分でできることからと思い、移住して桑の木を育てることから始めるところです。

坪沼:僕たちも「ステップを踏んでいく」という発想を大事にしています。サーキュラーエコノミーを実現するといっても、明日全ての課題をクリアするのは流石に大変です。先ほどの「サーキュラースイーツ」も、原材料であるさつまいもを運ぶ際にCO2をもっと減らしていくなど、改善しなくてはいけないこともまだまだあります。

その際に心がけているのは、「いまできていること」と「まだできていないこと」を開示することです。そのうえで「こうやったらできるようになる」というステップを設定することが大切です。たとえば、渋谷の生ごみ肥料で育てたさつまいもをスイーツにして販売していますが、ビジネスが軌道に乗ったら仕入れ時の車を電気自動車に変えていく、といったイメージです。ステップを踏むごとに「できていなかったこと」が「できていること」に変化して積み重なっていきます。

ひとつの課題を解決しても、また別の課題が出てきます。でもプロジェクトを通じて実際にアクションを起こすことで、参加してくださる皆さんと一緒に循環型社会の本質に近づいていくことができます。そのための仕組みと目標をつくって実践していきたいです。

当事者として、自分がいる場所でできることから始めてみる

ー小川:皆さんに伝えたいこと、今後目指していきたいことをお聞かせいただけますか。

坪沼:僕たちは渋谷という大都市でプロジェクトを進めていますが、東さんのように地域の特色を生かした取り組みを進めている方もいらっしゃいます。場所に関わらず、どこにいても自分が「当事者」である意識を持っていれば、さまざまなことができると思います。それは「いまここで何が出来るか?」という問いに答え続ける姿勢とも言えます。

都会だから、地方だからとできない理由を探すのではなく、「都会だからこそ、地方だからこそできること」に目を向けられると良いですよね。自分たちの創意工夫次第でできることは本当にたくさんあります。

東:そうですね。今、世界的に、企業が、私たちが今までやってきたような循環する経済、サーキュラーエコノミーを志向してきています。社会が変わる潮目に立ち会っているのかなと思っています。

上勝町で暮らしていると、人と自然との共生のあり方を常に考えさせられます。限界集落の問題にも否応なく向き合います。人口が減って、受けられるサービスが少しずつ減っていく。人の手を入れなければ、自然に集落が侵食されていきます。

自然にも許容力のリミットはあることを意識せずにいると、結局、自分に跳ね返ってくるんですよね。自然と共生するような暮らし方をしていると、それこそ、雨で農作物が取れないからカフェで出す野菜がないとか、そういうちっちゃい課題がたくさん出てくるものです。

そういった、ちょっと大変だなって思うところを皆が共有しやすくなれば、必要な人に必要なものが届くようなサービスが作られたりするでしょうし、グリーンウォッシュ的なうわべだけの取り組みも淘汰されていくんじゃないかなと思いました。

小森:先ほども話しましたが、個人でどう考え、どう動くかだと思います。皆が今いる場所からどうアクションしていくか、そしてそのアクションが「自分の幸せのため」という動機から始まっているということが重要だと思うんです。

自分が本当に幸せになる、望んでいる生き方をしたいから、アクションする。結果的に社会がより良く変わっていく。そういったプロセスが、アクションを継続していく時には大事になってきます。自分の内面に向き合ってアクションをする人が増えたらいいな、と思っています。

ー小川:御三方に共通しているのは、「社会問題を解決するぞ」みたいな意気込んだ感じではなくて、自分が社会に持っている違和感みたいなところから活動を起こしているところですね。自分の気持ちに向き合うとか、当事者意識が大事なのだなと感じました。

クロージング:社会に対して持っている何気ない違和感をきっかけにアクションを

ー棚橋:今回の3つのセッションでは、いくつもの大事なキーワードが出てきたように思います。まず「何を循環」させるのかということ。私自身、今回のセッションが始まるまで「資源」を循環させればいいのだろうくらいに考えていたのですが、皆さんのお話を伺って、「幸福」とか「喜び」「感謝」、自分自身も含めた「誰かのため」みたいな思いが、本当に大事なんだな、と感じました。

物だけではなく、そういった思いも一緒に乗せて循環させる。その「思い」がなければ、人から人への循環は続かず、いつかものも捨てられていってしまうんじゃなかな、とまで考えました。

カワバタさんの「ループ」の容器のように、思いがあるからこそ、循環させる物自体も魅力的になる。だから使う人たちも「もう1回使いたい」という思いも出てくる。安居さんの「誰かの悩みは他人の宝」という話も、やはり誰かのためになれば、という思いが根底にあるからこそ実現できる考え方だと感じるんですよね。
ステークホルダーの間で情報共有をするのが大事だという話もありましたね。大下さんと湯崎さんのボトムアップ。坪沼さんの「ちっちゃい輪っか」を連続させて、みんなが参加できるようにするっていうお話も印象的でした。

いずれも、皆さんが共通しておっしゃている「思いを持って、できることから、やってみよう」という考えに繋がっていきますし、実際に動く時には「遊びが大事だよね」というマクティアさんの話もすごく大切だと思います。
他にもたくさんいただいたお話やアイディアをもとにして、私たちも「サーキュラーエコノミー」をデザインしていきたいなと思います。

イベント動画アーカイブURL:
https://www.youtube.com/watch?v=b6y7Ur8FvQU

循環型経済をデザインするグローバル・アワード「crQlr Awards」開催中

大事なことは、まずアクションを起こすこと。今日のセッションの要諦はこれに尽きるように思います。誰かがやってみたことを見て、誰かが新たな可能性に気付くこともあります。実際、今日のセッションでもそんなことがいくつか起こりました。ご自身がやっていることを共有することで、自分が考えていなかった広がりが生まれてくることがあります。

循環する社会、サーキュラーエコノミーを少しでも早く実現させていくためにも、皆さんのアイディアや取り組みを、サーキュラーアワードに応募していただければと思っています。

crQlr Awards:https://awrd.com/award/crqlr-2021

募集期間:2021年08月04日(水) – 2021年10月15日(金)
審査期間:2021年10月16日(土) – 2021年10月28日(木)
作品発表:2021年10月下旬
授賞式:2021年11月

Speaker

小森 優美

小森 優美

株式会社HighLogic,一般社団法人TSUNAGU
代表取締役,代表理事

東 輝実

東 輝実

合同会社RDND
代表社員

坪沼 敬広

坪沼 敬広

渋谷肥料
代表

小川 蘭那

小川 蘭那

株式会社ロフトワーク, FabCafe Tokyo
プロデューサー

棚橋 弘季

株式会社ロフトワーク
執行役員 兼 イノベーションメーカー

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