残業はしない。ポリシーは“結果を出せる自由人”。26歳という若さでシニアディレクターとして活躍する寺井は、まさにロフトワークのホープです。そんな寺井への社内外からの信頼は、その気さくでひとなつっこい性格と、仕事への厳しい姿勢の両面で築かれています。

デザイナーになれなかった自分の「居場所」

きっかけはまさに偶然。寺井がロフトワークと出会ったのは、デザイナーを目指して就職活動をしていた最中、偶然見つけた求人情報だったと言います。

「高校の頃からデザイナーに憧れていて、安いソフトウェアとペンタブを買って、独学で制作をしていました。大学では環境デザインを専攻し、就職活動中は毎週東京に夜行バスで通って広告代理店や制作会社を受けていました。でも、ぜんぜん受からない。専門的に勉強してきた人たちとの差をなかなか埋められなかったんです。ロフトワークと出会ったのは、デザイナーへの夢を半ば諦めかけていたときでした」

寺井は、求人情報を見つけたのが遅かったため会社説明会にも参加できず、会社案内も持たずに面接に挑んだものの、代表の林に気に入られて面接をパス、そのまま採用となります。デザイナーになりたかった自分から、デザイナーと仕事をする立場に進んだ寺井の目に、ディレクターという仕事はどのように映ったのでしょう?

「拾ってもらえてラッキー!という感じで、まだディレクターってどんな仕事なんだろう?と思いながらの入社でした(笑)。実際のところ、自分には黙々と毎日デザインをつくり上げていくストイックさや感性がないことに気付いていたんです。それでも、デザインは好きなわけで、そんな、どっちつかずな自分というのが、意外にもディレクターという役割に合っていたんだと思います」

ディレクターの仕事は、クライアントの要望をどう具体化するか言語で説明し、それを実現するために作り手が実力を120%発揮できる環境を整えて導いていくことです。そのためには、常に全体を俯瞰する客観的視点や説明能力、そして決断力が求められます。寺井にとっては、それがぴったりの仕事だったようです。

「学生時代にバンドをやっていたのですが、曲作りのときは、実際に音を作るより構成する方に興味があったんです。今思えば自分の立ち位置はいつもディレクター的だったのかなあと思ったりします。もともと、感性を磨いて制作に没頭していくより、頭で考えてしまうタイプなんだと思います」

ディレクターの意味を考えるきっかけになった失敗

寺井はロフトワーク入社数ヶ月後には官公庁のWebサイトリニューアルという大きな仕事に関わり、またたく間に大学や証券会社の大規模Webサイトを一人で担当していきます。まさにロフトワークのホープとして実績を積んできた寺井ですが、時には失敗もあったといいます。

「僕がロフトワークに入って初めての仕事は、モバイルゲームのアバター制作でした。月に100点を超えるアバターの制作は、時間的にも、作業的にもかなり過酷と言えます。それで、張り切って進行管理をきちんとしようと思うばかりに、細かくやり過ぎてしまったんです。分からないことや当初の取り決めと異なることがあればすぐにクライアントに聞き、ちょっとでも進行が遅れればクリエイターやクライアントを急かしてしまう…。結果、僕があまりに細かいために、クライアントから担当の変更を依頼されてしまったんです。このときは本当に申し訳なくて落ち込みました。

でもこの時から“何のためにディレクターがいるのか”ということを意識するようになりました。当たり前ですが、クライアントに判断をすべて仰いでいたらディレクターがいる意味がないんですよね。クライアントは、自分たちのつくりたいものを理解し、ビジネス目標に到達するためにより良い方法を考え、自律的に効率よく制作をしてくれるパートナーがほしいわけです。そのためには相手を推し量ることが大切で、“何をどのタイミングで確認すべきか?”とか、“これは本当に言われた通りに進めていいのか?”など、ひとつひとつ意図を持ってコミュニケーションをすることが必要なんです。この失敗を期に、自分たちは何のためにプロジェクトに参加しているのか、ディレクターの役割とはなんなのか、そんなことをすごく意識するようになりました」

いいディレクションができていれば、残業はなくなる

かくして寺井は、26歳という若さで、35人のディレクターをまとめる4人のシニアディレクターの1人に抜擢されます。多忙を極めると思いきや、寺井は社内でもトップクラスに残業をしません。一般的に長時間労働になりがちな制作の現場で、残業をしないコツとは何なのでしょうか?

「ディレクターの仕事というのは、1人でできることを極めるのではなく、チームで何ができるかを考え続けること。社内業務でも同じで、自分より優れたスキルを持っている人が隣にいたら、無理して自分で抱え込むのではなく、その人に頼む。そのほうが時間的にもクオリティーの面でもみんながハッピーだし、結果的に時間も短くなるんですよね。ただし、情報の伝え方やゴールの設定、進捗の管理には特に気を配り、依頼された人が余計なことに気を取られず作業に集中できる環境づくりを行います。そうやって仕事のあるべき場所を的確に見定めていくことで、結果的に自分が一番必要とされる仕事に集中できます。それは、誰かにタスクを押し付けて自分は残業しない…という意味ではもちろんなく、チーム全体で効率がよく、しかも品質が上がる方法を常に考えるようにしてるんです。

あともうひとつ、残業をしないコツは、諦めることですね。たとえその日にやるべきことが終わらなくても、夜中まで残業するより、きっぱり諦めて、翌朝に回してしまいます。終わらなかった分を翌朝しても大体は間に合うし、効率的だし、何よりプライベートの時間も持てて健康的です。ただ、そうやって正しく判断するためにも、毎日タスクを最小単位まで細分化して15分単位で一日の予定を立てています」

自由には責任がつきまとうもの

今年で入社5年目となる寺井。彼がロフトワーク越しに見る未来のテーマは“自由人”だと言います。

「自由な生き方をしたいといつも思っています。ちょっと軟派そうに見えるのに仕事はしっかり結果を出している人ってかっこいいじゃないですか。ただ、使い古された言葉ですが、自由には責任が伴わなければいけないわけで、自由を与えられる代わりに、自分は何を差し出せるのか?ということを常に考えていなければいけないのです。そこを勘違いして甘えてしまうと、ただのぬるま湯になってしまう。突然「ロフトワークは明日で解散します!」と言われたときに、一人でもやっていけるようになっていなければいけないんです。少なくとも、僕は常にそれを考えています。

そんな意味で、僕が憧れるのは、777interactiveの福田敏也さん。福田さんはいつも本当に遊び心に富んでいてフレンドリーで、ある日突然ロフトワークに料理しに来てしまうような自由な人なんです(笑)。でも同時に仕事でも絶え間ない挑戦を続けているし、福田さんが話し始めると、そこは笑いと感動と知性の渦のような場所になる。仕事ができて、かつ自由な視野を持っている人というのはこういう人のことなんだろうと、本当に尊敬しています。僕もそんな風になりたいと思いますね」

ロフトワークは働き方の自由度が高い会社です。でも、その自由さに甘んじて怠け心が勝ってしまえば、たちまち成長も止まり、会社も成り立たなくなってしまうでしょう。社員それぞれが独立したプロの集団として邁進していくためにも、これからも寺井には、その仕事に対する厳しい姿勢と制作に対する熱い想いで、皆を刺激していってほしいと思います!

寺井の趣味は写真撮影。写真はオフィスから臨む首都高の様子

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