TUNE(治雲)豪雨を鎮める気象制御のキービジュアル

大阪・関西万博で8月20日(水)から展示がスタート

ロフトワークは、京都大学防災研究所の山口弘誠教授がプロジェクトマネージャーを務める研究開発プロジェクト「ゲリラ豪雨・線状対流系豪雨と共に生きる気象制御」(略称:豪雨制御プロジェクト)の、展示作品制作および展示空間構成を担当します。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)のフューチャーライフ万博「フューチャーライフエクスペリエンス」の期間展示会場にて、2025年8月20日(水)~8月31日(日)の間、作品が展示されます。

近年、線状降水帯・ゲリラ豪雨など豪雨災害が頻繁に起こっており、地球温暖化によって、その激しさは増す可能性があります。〈豪雨制御プロジェクト〉は、「人命を守ること」を目的に、豪雨の勢いを“鎮める”気象制御技術の研究開発を進めています。本展示では、気象制御が実現した2050年の未来社会を舞台にしたアニメーション作品を上映します。

豪雨制御プロジェクトとは

本プロジェクトの研究目的は、ゲリラ豪雨や線状降水帯による被害を減らすことです。気象シミュレーションや現地観測、実験をもとに豪雨を弱める方法を開発し、社会に受け入れられるリアルタイム調整型の制御システムを構築します。このシステムで豪雨の強さや頻度をコントロールし2050年までに、安全で自然と調和した社会の実現を目指します。

本プロジェクトは、京都大学防災研究所や愛媛大学等に所属する様々な専門領域の研究者が集まり研究を進めている、国立研究開発法人科学技術振興機構が推進する「ムーンショット型研究開発事業」の目標8に採択されています

豪雨制御プロジェクト

Webサイト

展示内容  

本展示のタイトルは『TUNE(治雲) ― 豪雨を鎮める気象制御』。来場者が、気象制御の実現した2050年の未来社会を体感し、研究開発の現在地を知ることのできる展示空間として構成しています。

本展示では、気象制御の実現した2050年の未来社会を舞台にしたアニメーション作品を上映します。自然に介入することへの葛藤を抱える登場人物たちの姿を通じて、気象制御技術と私たちの暮らしのつながりを感じ、作品を観た一人ひとりが“自分ならどう考えるか”と未来へ思いを馳せるきっかけとなることを目指しています。

『TUNE(治雲) ― 2050年の豪雨制御』

2035年生まれの高校生、松岡晴陽は悩む。先日、神戸市役所から治雲調整員[チューナー]の選任通知が届いたからだ。
日本全国で集中豪雨が増す中、主要都市は雨量を時間的・空間的に均すことができる治雲技術を導入。しかし気象に介入する技術の発展に対する懸念の声も大きく、行政は市民による熟議を治雲政策に反映する制度を開始した。1カ月後に開かれる議論の場で、晴陽はほかのチューナーたちに対して治雲に関する自分の意見を表明しなければならない。彼女は雨すらも“多数派のもの”として操られるようになるのが悔しく、治雲の発展に対する違和感を表明したいと考えているが…。

原作 津久井五月
企画 豪雨制御プロジェクト、株式会社ロフトワーク
監督 崎村宙央
制作 2025年

アニメーション作品の上映のほか、〈豪雨制御プロジェクト〉が開発中の水蒸気の流入を抑制するための洋上カーテンを模擬した風洞実験模型の展示や、研究最前線のメッセージを記録したドキュメンタリーの上映など、気象制御にまつわる研究開発の現在地と未来を感じられる構成となっています。

本展示は、内閣府のムーンショット型研究開発制度において、JSTが推進する目標(目標1、2、3、6、8、9、10)の体験型展示(2025年7月23日(水)~8月31日(日))の一環として行われます。

メッセージ

山口弘誠の人物写真

豪雨が発生する前のきっかけとなる様々な現象を“豪雨の種”と呼んでいます。豪雨の種の中には、都市の排熱や高層ビルによる気流の乱れや、地球温暖化による水蒸気増加なども含まれます。つまり、人類がやり過ぎてしまった結果、豪雨が促進していると捉えています。豪雨の種を抑制する=自然を治療する、という考え方の構築と技術開発を目指しています。人間は雨と数え切れないほど接点があって、農業や漁業など職業的な関わりだけでなく、洗濯や傘など日常的な関わり、雨乞いや祭りなど民族的な関わり、文学や美学など芸術的な関わり、インフラ整備や避難行動など防災的な関わりなどがあげられます。それだけに雨の影響範囲はとても大きく、全員の希望を満たすような豪雨制御は存在しません。だからこそ、社会全体として豪雨と向き合って、何を選択するのかを見極めていくことが大切だと考えています。

(山口弘誠:京都大学防災研究所 気候変動適応研究センター 教授)

村上航の人物写真

ロフトワークは、〈豪雨制御プロジェクト〉の研究者の皆さんと、展示を通じてどのようなメッセージを届けるべきか、対話を重ねてきました。そこでたどり着いたのが、天気を「制御する」技術ではなく、天気を「知り、対話する」ことを可能にする“インタープリター”としての技術の姿でした。もう一つ忘れてはいけないことが、その技術をどう使うかは、誰かに委ねるものではなく、私たち一人ひとりが向き合い、考えていくべき問いであるということです。このメッセージを伝えるために、2050年の未来を生きることになる高校生やクリエイターたちとの共創によって、作品をつくりあげました。もしも、空と話すことができる未来が訪れたら、あなたは空に、何を願うでしょうか。ぜひ会場で、あなた自身の答えを探してみてください。

(村上航:クリエイティブディレクター / なはれ)

展示詳細

展示エリア: 大阪・関西万博 フューチャーライフゾーン Future Life Village 内フューチャーライフエクスペリエンス(FLE)期間展示会場

展示名

『TUNE (治雲) — 豪雨を鎮める気象制御』

開催期間
2025年8月20日(水)〜8月31日(日)
10:00-21:00
FLE期間展示参加者
豪雨制御プロジェクト
協力
株式会社ロフトワーク

Keywords

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