Aru Societyは、私たちロフトワークとして、これからの100年先を見据えながら共に在る社会をどのように描いていくか、未来への物語を考えるためのプロジェクトです。物語のコンテクストをより詳細に導き出していくために、文化、風土、歴史、風習、産業の根底に流れる「美意識」というコンテクストを紐解くことを何よりも重視しています。変わらない/変えてはならない価値は何か? その紐解きをまず行い、それらを軸としながらも、一体何を変容させることが未来にとってより望ましいのか導き出しながら、物語を仕立てていくことを重視し、サステナブル・スタディツアーやクリエイティブシティ・コモンズ会議など、様々なアクティビティをお届けしてきました。

そして、この度「100年後の世界のために描く未来に向けた価値創造物語」 をお届けするオウンドメディアサイト “Aru Commons Media”を正式に一般公開する運びとなりました。

Aru Society オウンドメディアサイト “Aru Commons Media”が目指すこと

Questions for the Future.
VALUE CREATION STORY for the Future World in another 100 years.
100年後の世界のために描く、未来に向けた価値創造物語

未来は背後にあって見えないもの。過去は時間的にも、空間的にも前にある。
見えない背後を見るのではなく、前方にある既知の過去をしっかりと読むこと。
そうすれば、背後から迫り来る未来をより良く生きることが出来る。

ホメ・ロスがオデュッセイアで “過去” という時間について定義をしたように、
未来とは、過去・現在・未来を一本の道でつなぐことであり、
時間という軸は、本来途切れることのない地続きのものなのなのだとすれば、
不確かな未来など、そもそも存在しないのではないでしょうか。
人間は、どのようなときも「なぜ?」「どのように?」という思考を繰り返しながら、
その時代時代をより良く生きようと、未来を創造し、
そして、同時に大切な変わらない永遠性の価値というものを継承して来たのだと思います。
つまりは、“只今”という時間に向き合うことが、100年先の未来という豊かな時間に
つながっていくということなのかもしれません。

Aru Commons Media で特集をするのは、“只今”という時間に向き合い、
未来への挑戦と創造する、一人ひとりの思考と生き方=知性です。
背後から迫り来る未来をより良く生きるための知性をメディアとして共有しながら、
そして、新たな物語が生まれてくる「土壌」を耕し、
あらゆる人々と知を交錯し合いながら共に物語を創造していきたいと思います。

おすすめのコンテンツ記事のご紹介

「美を追求する中でうまれる新たな価値と技術」
株式会社細尾 代表取締役社長 細尾真孝さんへのインタビュー記事

織物は京都に根付く産業であり、技術や機械、職人の技や美的感覚といった言語化しきれていない感性的な独自の価値はまさに『京都の文化』であると捉えることができる。文化価値を掘り下げること、特に織物と自然、環境との関係性を紐解いていくことは、人間の根源的な営みに触れる行為でもあり、永遠の探索でもある。京都から世界をリードする株式会社細尾代表取締役社長 細尾真孝さんは、おそらくその永遠のテーマに対して、真正面から挑み続ける挑戦者でもある。伝統は古きを良きとするのではなく、現代の新たな視点を取り入れながら、非連続の革新を成し遂げていく。それが、京都のスピリットの本質だ。これからの織物産業の新生はどのように生まれようとしているのか?どのような未来の可能性をどのように切り拓こうとしているのか? ロフトワーク クリエイティブディレクターの加藤あんがインタビューを実施。

自分たちのDNAは何なのかみたいなことから始まっています。僕らの場合、そのDNAは西陣織の「美と協業と革新」です。(細尾 真孝さん)

細尾 真孝

Interviewee細尾 真孝(代表取締役社長)

1978年生まれ。西陣織の老舗、細尾12代目。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後フィレンツェに留学。2008年に細尾入社。西陣織の技術を活用した革新的なテキスタイルを海外に向けて展開。「ディオール」「シャネル」「エルメス」「カルティエ」の店舗やザ・リッツ・カールトンなどの5つ星ホテルに供給するなど、唯一無二のアートテキスタイルとして、世界のトップメゾンから高い支持を受けている。また、アーティストとのコラボレーションも積極的に行う。 2012年より京都の伝統工芸を担う同世代の後継者によるプロジェクト「GO ON」を結成。国内外で伝統工芸を広める活動を行う。 著書に『日本の美意識で世界初に挑む』

Interviewer’comment
ロフトワーク クリエイティブディレクターの加藤あんが記事に込めた想いとは?

京都という都市の文化的アイデンティティのひとつを担う織物。織物は、職人の技、機械、そして感覚という幾重もの要素が詰まっているものであり、京都という自然豊かな環境が生み出す染色の技術は、この土地と切り離すことができない関係にあります。細尾さんは、V&A博物館でのスマートテキスタイルの展示や、建築家ミケーレ・デ・ルッキ氏率いるAMDL CIRCLE、そしてこれから展示がはじまるアーティストのカールステン・ニコライ氏とのコラボレーションなど、世界的な表現者との協業をされています。これらの活動に共通するのは「美と協業と革新」という一貫したテーマでした。「サプライヤー」ではなく「コラボレーター」にどうなれるかと語る細尾さんのお言葉から京都から生まれる美の力強さ、そして伝統を未来へつなぐ革新的アプローチについて深く探ることができました。

加藤 あん

Interviewer加藤 あん(クリエイティブディレクター / なはれ)

愛知県出身。名古屋芸術大学芸術教養領域卒業。大学では「身体と衣服」をテーマに研究。また、展覧会の企画やキャンパスの改装計画にも携わる。2021年FabCafe Nagoyaでインターンを経験し、クリエイティブの力を体感。様々な分野とクリエイティブによって生み出される新たな価値の遭遇を求め、ロフトワークに入社。映画と生姜が好き。

Profile

「創造的進化とは、何か?」
生物学者・作家 福岡伸一さん インタビュー記事

©DYNAMIC EQUILIBRIUM OF LIFE / EXPO2025

©DYNAMIC EQUILIBRIUM OF LIFE / EXPO2025

今を生きる私たちにとって、本来的な自然が持つ利他性という豊かさ“ピュシス”を回復することこそ非常に重要なことであると、福岡伸一さんの著書『音楽と生命』(坂本龍一、福岡伸一共著、(株)集英社2023年発行)では、坂本龍一さんとの数年がかりの対談の中で繰り返し語られている。『音楽と生命』で語られた内容をベースに、本インタビューを実施した。なぜ、今、“ピュシス”なのか?生命とは何か? 進化とは何か? イノベーションの本質とは何か? 福岡さんの豊かな見識に基づいた、問いに対する答えを集約し特集記事として掲載した。

利己的ではなく、生命が「利他的に」振舞ったときこそ、生命は大きく進化しているんです。

この「利他」という言葉がキーワードなんです。生命38億年の歴史の中では、3回程度、利他的な革命があります。(福岡 伸一さん)

福岡 伸一

Interviewee福岡 伸一(生物学者・作家)

1959年東京生まれ。京都大学卒および同大学院博士課程修了。ハーバード大学研修員、京都大学助教授などを経て、現在、青山学院大学教授・米国ロックフェラー大学客員教授。サントリー学芸賞を受賞し、90万部を超えるベストセラーとなった「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)、「動的平衡」シリーズ(木楽舎)など、“生命とは何か”を動的平衡論から問い直した著作を数多く発表している。また、大のフェルメール好きとしても知られ、最新のデジタル印刷技術によってリ・クリエイト(再創造)したフェルメール全作品を展示する「フェルメール・センター銀座」の監修および、館長もつとめた。2025年の大阪・関西万博で、テーマ事業「いのちを知る」を担当。

Interviewer’comment
AruSocietyアートディレクター小川敦子が記事に込めた想いとは?

Aru Societyというプロジェクトの構想は、今から2年前、『音楽と生命』のページを開いたことから始まりました。ピュシスとは何か。それを言葉として体系化し、詳らかにするロゴスとは何か。人間の生命倫理とは一体何か。福岡さんと坂本さんの対談は、非常に深く、鋭く、そして、温かな目線で「生きるとは何か?」ということを読者に問い続けてくるような素晴らしいものでした。そして、私自身は、この本から受けた「問い」を自分自身が今立つ地点において、一体何が出来るのだろう?そう考えたときに、私一人で答えを出そうとするのではなく、あらゆる領域の多様な方々と共に未来を考え、そして、企業がこれからどのように生きることが出来るのかを考えていくことについてトライしてみたいと思ったのでした。ですから、福岡さんへのインタビューの実現が叶ったときは、本当に嬉しく、また同時に、ここからが本当の始まりだと思い、決意を新たに構成したのがこの特集になります。

小川 敦子

Interviewer小川 敦子(アートディレクター)

ロフトワーク京都 アートディレクター。1978年生まれ。百貨店勤務を経て、生活雑貨メーカーにて企画・広報業務に従事。総合不動産会社にて広報部門の立ち上げに参画。デザインと経営を結びつける総合ディレクションを行う。その後、フリーランスのアートディレクターとして、医療機関など様々な事業領域のブランディングディレクションを手掛ける。そこにしかない世界観をクライアントと共に創り出し、女性目線で調和させることをモットーにしている。2020年ロフトワーク入社。コンセプトメイキング、組織デザイン、コーポレート・ブランディング、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)、都市戦略デザイン設計を主な得意領域とし、経産省中部経済産業局、大垣共立銀行との共同プロジェクト「東海サーキュラープロジェクト」(2021-2022)、「椙山女学園大学リブランディング設計」(2022)、文化と経済の好循環を創出する京都市都市戦略2050年都市構想案提唱(2023-2024)等。現在は、共にある社会の在り方を描くロフトワーク自社プロジェクトAruSocietyのプロジェクト設計、アートディレクションを主に担当し、京都、大阪、東京の3都市を接続する都市コモンズを醸成中。

Profile

今後、近日公開を予定しているコンテンツについて

Aru Commons Media では、次のようなコンテンツの特集を予定しています。

  • 「人間とAI。未来に必要な創造性とは、何か?」
    一般社団法人サステナブル経営推進機構(SuMPO)理事長  石田秀輝さん
  • 「水と生きる。」
    サントリーホールディングス株式会社MBC開発研究所/サステナビリティ経営推進本部シニアアドバイザー 山田健さん
  • 「知性と自然。牧野富太郎が遺した世界。」

Next Contents

先端の研究開発を行う研究者と社会課題解決に取り組むプレイヤーの3ヶ月の共創活動「サイエンスインパクトラボ」の2025年度業務をMTRLが運営