“KYOTO”になれない僕らの町の地域活性とは?
「Local Design」速報レポート
友人の話によると、私の出た幼稚園が来春をめどに閉園するそうです。私の町はもうありません。市町村合併で隣町と合併し、その町もまた少子高齢化の波に煽られ、その経営状況は風前の灯火です。町が倒産する、なんてニュースも他人事ではないと感じます。
東京や大阪のような大都市だけに光の当たっていた時代は過ぎて、日本全国の各地域がブランディング活動を展開し注目を集めています。でもそれはほんのひと握り、我が町のように衰退している地域がほとんどです。難しい話は抜きにして悲しい、単純に悲しい。
近年は、ロフトワークが取り組むプロジェクトでも地域との取り組みが増えてきました。「Local(地域)」をキーワードに掲げ、プロジェクトの当事者を迎えてこれからの地域活性のあり方を探るイベント「Local Design ストーリー再編集と自走するデザイン」が開催されると聞き、いち観客として参加してきました。
詳細レポートはロフトワークのコーポレートサイトで近日公開予定です、そちらもお楽しみに。
■ 4万円の茄子づくしが生み出した、多数の「いいね!」
ロフトワーク林は、新潟・南魚沼の地にあって客室稼働率9割という盛況ぶりを見せる宿泊施設「里山十帖」を立ち上げた『自遊人』編集長・岩佐十良氏と対談を行いました。
「十帖」は「10のテーマ、物語」。南魚沼の里山が持つ10の物語からひとつでも感じ取ってほしい、という考えのもと、従来の旅館とは一線を画した運営をしているとのこと。
- 市場もない、人もいない地方で「ロジカルシンキング」に市場調査をしても疲弊するだけ。「デザインシンキング」で今そこにあるものを繋いで新しいものを生み出す
- 名物は在来種23種類を使った「茄子づくし」 →土地に根ざした「南魚沼、いいね!」
- いいねと思わないかぎり人は来ない、故郷への自信も生まれない
まったく新しい宿泊施設のあり方に「今まで利用した宿泊施設の中で最低だ」と憤慨する方もいたそうですが、一方で「すごくいい!」と絶賛し口コミで広めてくれる利用者も着実に増えていったそうです。スマホが台頭し、マスメディアではなくソーシャルメディアが本当の意味で力を持つ現代、ひとりひとりに確実に伝えるということが重要なのですね。
「僕らは京都になれない、普通の市場に出て行っても対峙できない」という岩佐さんの言葉が印象的でした。
■ 3つのキーワード「ストーリー」「生態系」「意識」
後半は、ロフトワークの事例を中心に、社内外から当事者を招いてのトークセッションが続きました。
KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭
- 全国的にも認知度が低く、少子高齢化等の課題を抱えている地域
- 日本における近代美術の発祥の地であり、同時に鉱山は近代産業の礎となった
- 知らない土地だったが、現地を尋ねたとき「見たこともない景色」に息を呑んだ
- 「近代化と自然。県北地域には(現代人が)見ておくべきストーリーがあると思った」(ロフトワーク林)
- 他所の人に来てもらう、地域に関わってもらうための芸術祭
芸術祭をつくる中で、喧嘩も少なからずあったというプロジェクトメンバー。成功の秘訣は「もっと地域のことを伝えたい」という思いに基づいたメンバー間の熱いコミュニケーションだったといいます。人を動かすだけのストーリーがあること、プロジェクトメンバー間でそれを共有することの大切さを感じました。
飛騨の森でクマは踊る
- 生態系:1つのものを残そうと思ったら1つを守ってもだめ。全部を守らないと崩れる
- 日本の森の4割は人工林。人間も生態系の要素なので関わった以上手を引いてはいけない
- 町の9割を覆う広葉樹林と「飛騨の生態系を繋いでいきたい」という人々の存在
- 製材所、組み木資料館 …新しいものではなく既にあるものを活かす
- トビムシメンバーが飛騨に移住+FabCafeという場所 →関係性の醸成が加速
地域活性化で多いのは、縁もゆかりもないものをまつりあげるパターン。まれに成功事例もありますが、やはりその土地に根付く「生態系」を健全に回すことがもっともその地域を活性化させることなのだな、と思いました。そして生態系の中で一番崩れている要素は「ヒト」なのかもしれない、とも。
MORE THAN プロジェクト
- 生まれ育った町の名産品「播州刃物」に海外の販路を見出した小林新也さん
- ブランドデザインや高く売る方法に関心がない →実際に売れると意識が変わってくる
- 具体的な要望が産地に届いていない、連絡先すら知らない →利用者のもとへ足を運びヒアリング、産地と繋ぐことで販路が生まれた
「何度も心は折れました(笑)。でもここで僕らが諦めちゃったら今までと同じことの繰り返しになってしまう」「成果を見せていくことが大事、見えてくると意識が変わってくる。意識を変えること」とロフトワーク秋元。「意識」という言葉が繰り返し強調されたセッションでした。
■ 大丈夫、「その地域には固有の価値がある」
来場者と意見交換をするインタラクティブトークを挟んで、ロフトワーク諏訪のクロージングスピーチ。イベント全編の総括として、4つのメッセージが届けられました。
- その地域には固有の価値がある
- 丁寧に地元の価値を見つける
- どのテクノロジー、どの人とつなげればいいのか
- どんな体験を生み出せばいいのか
「その地域には固有の価値がある」。イベントに参加して、私はこのメッセージにとても勇気づけられる思いがしました。ああ、私の町にもこのことを伝えたい。参加者の方々にも、地域との関わり方を再考するきっかけやヒントが届いていたらいいな、と思いました。
最後に。休憩時間に振る舞われた、全国各地の名産品ドリンク。地元のドリンクがみんなに飲んでもらえて、うれしかったです。詳細レポートはロフトワークのコーポレートサイトで近日公開予定です、合わせてお読みください!
Photos by Yoko Iki
http://www.ikiyoko.com/
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