EVENT report

国内メーカーはサーキュラーエコノミー時代をどう生き抜くのか?
実践者に学ぶ、マネタイズ・社内理解の進め方

ライオン・ブリヂストン・バンドー化学に学ぶ、サーキュラーエコノミー時代の生き残り戦略とは?

環境配慮を考える上でのキーワードとして、近年EUを中心に盛り上がりを見せている「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」。今後グローバルに広がっていくと考えられるこの新たな概念に対し、日本の製造業はどのようなアクションを起こしていくべきなのでしょうか。

その答えとなる道筋を探すために、ロフトワークでは「サーキュラーエコノミー時代の事業戦略とは?—ライオン・ブリヂストン・バンドー化学に学ぶ実践事例」と題し、イベントを開催。ライフサイクル工学を専門とし、「Circular Economy(CE)研究会」の研究主幹を務める東京大学大学院教授の梅田 靖先生、そしてサーキュラーエコノミーにいち早く着目し、事業開発に踏み出しているメーカー3社とともに、これからのものづくりに必要な視点について議論しました。

後編となる本稿では、サーキュラーエコノミーの概念を新規事業に取り入れ事業化を目指すバンドー化学、行政や競合他社との協業から「資源循環型社会」の実現を目指すライオン、経営戦略の中心にサーキュラーエコノミーへの貢献を掲げ、ビジネスモデルのトランスフォームを推進するブリヂストンの事例をご紹介。後半では、「サーキュラーエコノミー実装社会に向けて、メーカーは事業戦略をどう描くのか?」をテーマに東京大学梅田教授と3社が繰り広げたクロストークの模様をお届けします。

■前編
東大大学院 梅田靖教授が語る サーキュラーエコノミーが変える、ビジネスの可能性

■イベント概要
サーキュラーエコノミー時代の事業戦略とは?—ライオン・ブリヂストン・バンドー化学に学ぶ実践

執筆:野本 纏花
企画・編集:loftwork.com編集部 横山 暁子

バンドー化学、サーキュラーエコノミーに適合した新規事業開発に挑む

自動車部品、産業資材、高機能エラストマー製品など、素材を混ぜ合わせて生み出した「伝える/運ぶ/飾る」などの機能を提供することで社会を支えるバンドー化学。BtoBのものづくり企業として115年の歴史を持ち、16カ国、20拠点に展開し世界4極供給体制を実現するグローバル企業です。

そんなバンドー化学がサーキュラーエコノミーと出会ったのは、将来を見据えた新規事業開発に取り組む中で、ロフトワークとともに2050年の“あるべき姿”を模索する中でのことでした。

新規事業を「環境配慮型ものづくり」を実践していくための事業開発と捉え直し、サーキュラーエコノミーの概念を組み込んだ開発方針に転換。来たるサーキュラーエコノミー実装社会において、開発技術がどのように必要とされるかを描き出しました。

世界の製造業におけるサーキュラーエコノミー事例のリサーチや、ワークショップを行ったり、梅田先生にインタビューを行ったりしながら、サーキュラーエコノミーが実装された社会に適用できる技術やビジネスモデルを突き詰めていきました。その結果、アウトプットの一つとして生まれたのが、今後の指針となるサーキュラーエコノミーマップです。

「次の100年に向けて新規事業を開発していく中で、今、向かっている方向の確からしさを確認するための『心のよりどころ』にしています。こうしたサーキュラーエコノミーのコンセプトを、既存事業を含む会社全体に波及させていくことができたら、2050年も変わらず持続的に経営できるのではないかと考えています」(及川さん)

ライオン、「心地よくくらすことがいつのまにかエコにつながる生活」の実現を目指す

今年、創業130年を迎えたライオン。ハミガキ、ハブラシ、石けん、洗剤、ヘアケア・スキンケア製品、クッキング用品、薬品など、私たちに身近な商品を提供すると同時に、「事業を通じて社会のお役に立つ」という創業の精神を受け継ぎ、健康で快適な生活習慣づくりに向けて、正しい歯磨きや手洗いの習慣を根付かせるために、さまざまな啓発活動を行なってきました。

 そんなライオンでは、2019年に長期環境目標「LION Eco Challenge 2050」を策定。「脱炭素社会」と「資源循環型社会」の実現を目指し、脱炭素、プラスチック、水資源の課題解決に向けた4つのチャレンジに取り組んでいます。

中でもサーキュラーエコノミーの実現に向けて取り組んでいるチャレンジ3「プラスチックの高度な資源循環」に関する3つの事例が紹介されました。

1つ目は、環境に配慮した衣料用洗剤の話だ。洗浄力を高め、泡切れを良くすることで、従来品で必要だったすすぎの回数を、2回から1回に減らすことができました。これにより、CO2の排出量を大幅に削減。また昨年発売した商品には、初の100%リサイクルペットボトルを採用するなど、3R+Renewableの取り組みを推し進めています。

2つ目は、つめかえフィルム容器の再生というテーマで競合である花王と取り組みを始めた例です。ライオンでは「濃縮化」によるコンパクト化→「ボトルのPET化・軽量化」→「つめかえ品」の提供という順で、当初のモデルから約80%のプラスチック使用量を低減してきた。現在、出荷量の約80%を占めるまでに成長した「つめかえ品」市場だが、プラスチックの削減に貢献する一方、つめかえ品で使用しているフィルム容器は、複合素材であることからリサイクルが難しいという課題がありました。そこでライオンは花王と手を組み、フィルム容器toフィルム容器の水平リサイクルの実現を目指す取り組みを始めているます。

3つ目は、2015年から始めているハブラシ・リサイクルプログラムだ。使い終わったハブラシを回収して、植木鉢のような新たなプラスチック製品に生まれ変わらせるというこのプログラム。昨年から墨田区と協定を結び、区のゴミ回収事業と連動したリサイクルモデルを構築しています。

「正直、現在はまだ個々の取り組みが独立して動いているので、今後どのように連動させていくのかはまだ模索している段階です。今後、これらの取り組みを連動させるサーキュラーエコノミー戦略を描いて、花王さんだけでなく、一緒に協働する仲間をもっと増やしていきたいと思っています」(池西さん)

ブリヂストン、サーキュラーエコノミーの実現に向けてビジネスモデルを変革

創立90年を迎えたブリヂストンは、売上の約8割をタイヤ事業が占めています。乗用車、トラック・バス、建設・鉱山車両、航空機など、さまざまなタイヤを提供しており、世界のタイヤ市場におけるシェアは第2位。海外売上高比率が約8割を占めるグローバル企業です。

昨年発表した中長期事業戦略構想では「2050 年にサステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンを掲げ、サステナビリティを経営の中核に据えた独自のビジネスモデルにより、「モビリティ貢献」「サーキュラーエコノミー貢献」「CO2 削減貢献」を目指しています。

サーキュラーエコノミーの実現に向けたブリヂストンのアプローチは、以下の図の通りです。

バリューチェーンをよりサーキュラーなビジネスモデルに変革していくために、まずは既存のビジネスをマッピングしました。「資源生産性の向上」「マテリアルサーキュラリティの向上」「プロダクトサーキュラリティの向上」をサーキュラーエコノミーへの貢献領域とし、さまざまな取り組みを進めています。

講演では「資源生産性の向上」に関する2つの事例が紹介されました。

1つ目は、省資源設計について話です。CO2排出量削減と省資源化に貢献するタイヤ軽量化の新技術「ENLITEN(エンライトン)」により、従来の乗用車用タイヤに比べ約20%の軽量化を実現。他にもこれまで培ったものづくりの経験・ノウハウとデジタルを融合し、新しい素材開発にも着手しています。

2つ目はリトレッドを中核としたビジネスモデルです。リトレッドとは、走行によって摩耗したタイヤのトレッドゴム(路面と接する部分のゴム)の表面を削り、その上に新しいゴムを貼り付け、再利用するものです。これにより、タイヤ1本あたりの原材料使用量が新品タイヤの1/3以下で済みます。ブリヂストンでは、独自の技術力で耐久性を上げ、適正なメンテナンスを行うことで、複数回のリトレッドを可能にし、タイヤ資産を最大限活用できる仕組みを実現。新品+リトレッド+メンテナンスのパッケージをサブスクリプションで提供することで、高い利益率を維持しながら、商品のライフサイクルで生じるCO2の半減につなげています。

さらに、ブリヂストンではお客様ごとに空気圧などのタイヤデータを把握できるタイヤモニタリングなど、デジタルも組み合わせたソリューションサービスの取り組みも進めています。これをリトレッドのサブスクリプションパッケージと掛け合わせることで、単なるタイヤの製造・販売から脱却し、包括的なサービス化で差別化を図っていきます。

「このようにお客様に提供する価値を高めながら、サステナブルなビジネスを実現していきたい。いろいろなパートナーと組みながらサーキュラーエコノミーを共創していきたい」(稲継さん)

サーキュラーエコノミーをどう利益につなげていく?

ここからは「サーキュラーエコノミー実装社会に向けて、メーカーは事業戦略をどう描くのか?」をテーマに行った、3社のご担当者と梅田先生によるクロストークの模様をお伝えします。モデレーターは株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 上ノ薗 正人が務めます。

バンドー化学株式会社 経営企画部 新規事業企画担当リーダー 及川 征大

ロフトワーク 上ノ薗:サーキュラーエコノミーの話は、どうしても長期的な話になりがちです。会社からは「どうやって利益を上げるの?」という問いが降りかかってきますよね。いきなり核心をつくような話になりますが、みなさんマネタイズについては、どのようにお考えでしょうか?まずは及川さんからお願いします。

バンドー化学 及川さん:他の2社と違って、うちはまだ一銭のお金にもなっていないのですが、欧州をはじめいろいろな事例を見る中で、「意外と身近なところに使えるものがあるのではないか」ということに気づいたんです。例えば、ものづくりの過程で出る“廃液”のような、今まで捨てていたものを再利用することで、原価低減につなげられるのではないか、と模索しているところです。

ロフトワーク 上ノ薗:バンドー化学さんはシーズ段階だからこそ、設計段階からそういった思想を取り込めることが優位性になっていくでしょうね。では池西さん、いかがでしょうか。

ライオン 池西さん:まずビジネスとして利益を上げることは大前提です。なので、既存のビジネスをベースとして、お客様に買っていただく製品の中に、環境を配慮した取り組みを盛り込んでいるわけです。とはいえ、環境的な価値が上がったからといって、お客様の購入量が増えるわけではないので、環境の側面から製品の価値を伝えるだけでなく、他の側面からの訴求もしっかり行っていく必要があると考えています。

次にハブラシ・リサイクルのようなリサイクル事業に関しては、決してペイできているわけではありません。オーラルケア商品は我々の会社にとって重要な勝ち筋ですので、この領域に関しては、たとえどんな世界になっても残しておく必要がある。だからこそ、とにかくスモールスタートで始めてみて、その中で課題を見つけながら、長期的な利益を得るための道筋を探ることを、最優先にしています。

ロフトワーク 上ノ薗:「サーキュラーエコノミーはビジネスじゃない」と切り離すようなことはしない、ということですね。では稲継さん、お願いします。 

ブリヂストン 稲継さん:当社ではポートフォリオを考える際に、コア事業・成長事業・探索事業の3つに切り分けています。コア事業でしっかりと稼ぎ、サブスクリプションパッケージのようなソリューションは成長事業として伸ばしていき、タイヤをマテリアルに戻していくところは探索事業として、コア事業や成長事業で稼いだキャッシュを使いながら、将来の種をまいていく、という考え方です。

サーキュラーエコノミーは、「価値の循環」だと思うんですね。結局、お客様はタイヤという“もの”を買いたいのではなく、安心・安全に移動するという“価値”のためにタイヤを買っているはずです。このように発想を切り替えると、タイヤを大量に安く作って販売するのではなく、「耐久性のあるタイヤを長く使い続けてもらえるようなサービスを提供することで、お客様の持続的なパートナーになっていこう」という価値観に切り替わっていくと思います。

ロフトワーク 上ノ薗:利益を上げるために、お客様への提供価値を追求するというのは、まさにサーキュラーエコノミーの本質ですね。梅田先生は、どう思われますか?

東京大学 大学院工学系研究科 教授 梅田 靖

東京大学 梅田さん「価値化」というのは、すごく重要なキーワードですね。欧州でサーキュラーエコノミーの取り組みが進んでいる企業は、どちらかというと単品販売やB2Bのビジネスが多くて、価値の提供方法をマネジメントすることで、顧客が快適に使い続ける関係性を築いています。

サーキュラーエコノミーで利益を上げるという話でいうと、「価値化」のほかにあと2つポイントがあって、1つ目は「視野を広げること」。メーカーは、“ものをつくって売るまで”がこれまでの視野だったと思いますが、サーキュラーエコノミーのためにその先の“使われたものを回収して原料に戻す”ところまで考えなければならないとなると、一見、損に見えるかもしれません。しかし、これまでかかっていたリサイクルコストがなくなる分、長い目で見ると、プラスになる可能性も十分にあり得るわけです。そして2つ目はデータを活用した「リーン化」です。要するに、デジタル化によって取得したデータを活用することで、いろいろなところの無駄を削ぎ落としていくということです。これにはライオンさんが花王さんと手を組んだように、メーカーは流通やリサイクル業者など、さまざまな企業と連携を図っていくことが大切ですね。

社内でサーキュラーエコノミーに対する理解を浸透させるには?

株式会社ブリヂストン Gサステナビリティ推進部 部長 稲継 明宏

ロフトワーク 上ノ薗:次に、社内の意識をどのように変えていったのか、プロセスについて伺いたいと思います。社内でサーキュラーエコノミーに対する理解が深まったきっかけやターニングポイントを教えてください。では3社の中で最もプロセスが進んでいるブリヂストンの稲継さんからお願いします。 

ブリヂストン 稲継さん:ここが一番難しい問題ですよね。事業部門がサーキュラーエコノミーを「よくわからないカタカナ用語」と切り捨てるのか、「経営戦略に直結する重要なトピック」としてしっかり理解を深めるのかによって、本質的な取り組みが大きく変わってくると思います。

 私がサーキュラーエコノミーを推進する立場として気をつけていたのは、従来の3Rのような“環境に良いことをしよう”という文脈ではなく、「これはビジネスモデルを変革する動きにつながる経営戦略なんです」と根気強く伝え続けることです。2015年くらいから始めていたものの、なかなか浸透しなかったのですが、トップが「サーキュラーエコノミーに向けて、我々が提供する価値を捉えなおそう」という発想に切り替わったところから、大きく前に進むようになりました。私がサーキュラーエコノミーに関する本をトップに紹介したら、その日のうちに「この本を管理職全員に配って読ませるように」と指示が出たほどです。

 このようにトップが心の底からサーキュラーエコノミーを重視していると、全社的にも「これはしっかりと理解しなければ」という動きに変わっていくので、トップに「サーキュラーエコノミーは重要な経営戦略である」と理解してもらうことが、一番大切だと思います。

ライオン株式会社 サステナビリティ推進部 池西 岳樹

ロフトワーク 上ノ薗:経営のド真ん中にサーキュラーエコノミーを据えるというのは、欧州型の成功事例にも通じるお話ですね。では池西さん、お願いします。

ライオン 池西さん:正直なところ、まさに今、社内の流れが変わっているところだと感じています。ライオンでは先日、中期経営戦略フレーム「Vision2030」を発表したのですが、そこでトップが「サステナビリティへの貢献と事業成長の両立は、経営戦略のド真ん中です」と宣言したんですね。

なかなかボトムアップで社内に浸透させるのは難しくて、経営会議に社外の講師の方を招いて、サーキュラーエコノミーの重要性を解いていただきながら、経営の意識を変えるために地道な活動を続けてきました。「会社としてやらなければいけないことだから」「当たり前にやることだから」という流れをつくらないと、社内は動きませんから。

それと、私自身、1年前まではずっとR&D部門にいたので、サステナビリティを自分ごととして考えたことがなかったんです。今の部署がどんな活動をしていたのかも、まったく知らなくて。社内に仲間を増やす重要性を痛感しました。そこで昨年から、うちの部署のメンバーが社内の全部署を回って、自分たちが何をしているのかを伝える活動を始めました。この地道な活動と社長のコミットが相まって、この先大きな流れになっていくだろうと考えています。

ロフトワーク 上ノ薗:地道な活動、大事ですね。では及川さん、お願いします。

バンドー化学 及川さん:当社はまだサーキュラーエコノミーを経営にまでは取り込めておらず、新規事業のテーマとして取り入れています。なので、新規事業として社内の同意を得ていくには少しでもマネタイズができていて、この先大きく成長していく道筋が見えていないと難しいんですよね。ただ、ブリヂストンさんのマテリアルサーキュラリティのように、企業の垣根を越えて共創する動きをつくっていくことが、社内の意識を変えていくことにつながるのではないかと思いました。

ロフトワーク 上ノ薗:確かに、それは良いと思いますね。梅田先生、ここまでのお話を聞いて、いかがですか?

 東京大学 梅田さん:いやぁ、日本国内でも経営の中核にきちんと据えてサーキュラーエコノミーに臨んでいらっしゃるというのは、とても心強いですね。みなさんおっしゃるように、トップがちゃんと腹を据えて意思決定するのは、非常に重要なこと。それに社内外のコミュニケーションをしっかりとって、納得して自分ごと化することも大事ですよね。

LWメンバーが選ぶおすすめ書籍 三選

競争から共創へ。サーキュラーエコノミーへの第一歩をどう踏み出す?

ロフトワーク クリエイティブディレクター 上ノ薗 正人

ロフトワーク 上ノ薗:では最後のテーマとして、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、どのように事業化を進めていけば良いと思われますか?稲継さんからお願いします。

ブリヂストン 稲継さん:欧州では資源を有効活用するところにビジネスオポチュニティを見出していることを知り、衝撃を受けたんですね。そこで我々もサーキュラーエコノミーの概念を体系化してマッピングすることで、自分たちの事業を整理してみたところ、リトレッドやリペア、シェアリング、軽量化など、実は意外とやっていることも多いことがわかりました。そうすると逆に、足りていないところが見えてきたので、“みんながわかりやすいイメージ図をつくる”というのは、とても有効だと思います。それを元に経営会議などでも議論が進み、事業部門へと広がっていくので、既存事業をトランスフォームさせるためには、同じ言語で共通理解を深めるというのは重要な一歩だったと考えています。

ロフトワーク 上ノ薗:既存事業の可視化ですね。では池西さん、お願いします。

ライオン 池西さん:どこが起点だったかというのは明確に答えられないのですが、我々の中では製品ライフサイクルと資源循環は同じ輪だと捉えているので、サーキュラーエコノミーのためにというよりも、その輪の中で何をしなければならないかということは、ずっと考えていました。ただブリヂストンさんのように経営から事業部門まで浸透するところまではまだ至っていないので、現場に広げていくためにメスを入れていかなければならないと思っています。

ロフトワーク 上ノ薗:なるほど。及川さんは、いかがですか。

 バンドー化学 及川さん:2050年に向けた新規事業を考える上でサーキュラーエコノミーの概念に出逢い、そこからロフトワークさんに入っていただきながら、体系化とともに自分ごと化する作業を行いました。そこで生まれたアウトプットでは、既存事業にも十分当てはめられることが言語化できたので、小さく初めて大きく育てることが得意なバンドー化学の強みを活かしながら、今後サーキュラーエコノミーの概念に則った事業開発をしていけると信じてがんばっていきます。

ロフトワーク 上ノ薗:ありがとうございます。皆さんのお話から、サーキュラーエコノミーと事業を融合させていくためには、①あるべき未来の姿を見据え、逆算で今必要なアクションを考える(新規事業からスタート・既存業務のトランスフォーム)②社内の意識変革(味方を増やしていく活動)③規模の大小によらず「ビジネス」すなわちちゃんと利益を出すための事業をやる、ということがポイントになりそうですね。では、最後に梅田さん、本日の感想をお聞かせください。

東京大学 梅田さん:今日は、日本のサーキュラーエコノミーの歯車が回り始めている実感を得ることができました。仲間づくりを大切にしながら、製品の質にもこだわったサーキュラーエコノミーの実現を目指すというのは、まさに日本ならでは。今後が非常に楽しみです。ありがとうございました。

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