EVENT

「100BANCH」から生まれた3プロジェクトから学ぶ、
イノベーティブなサービスを生み出す秘訣とは

2019年11月21日、「Service Design Scramble ー 勝手に他社の新サービスを考えてみる Vol.3」を開催しました。毎回、様々な業種や職種の参加者が1つのチームとなり、テーマオーナーが抱える課題について、勝手に新サービスのアイデアを考え合うワークショップを行う本イベント。(ワークショップのプロセスなど「Service Design Scramble」の詳しい紹介はこちらから)

冒頭のSpecial Sessionでは、35歳未満の若手チャレンジャーが集い、100年先の未来をつくる実験区「100BANCH」から、3プロジェクトの起業家をゲストに迎え、ピッチトークを実施しました。

テキスト(野本纏花)/企画・編集(岩沢エリ)

パナソニックに「100BANCH」が必要だったワケ

今回のイベントに登壇した3プロジェクトの話に移る前に、これらのプロジェクトを生み出した「100BANCH」について、株式会社ロフトワーク Layout Unit ディレクター 加藤 翼より紹介がありました。

「2018年にパナソニックが創業100周年を迎えることを機に構想がスタートした『100BANCH』プロジェクト。松下幸之助のような、100年先の未来を創る人材を輩出すべく、パナソニック、カフェ・カンパニー、ロフトワークの3社による共同事業として運営しています」(加藤)

2017年7月7日にオープンしてから、3年目に入った「100BANCH」。そのメインプログラムである「ガレージプログラム」では、各分野のトップランナー24名によるメンタリングと活動拠点を提供しており、これまでに約150件のプロジェクトが採択されてきました。

なぜこのようなプロジェクトを、パナソニックのような大企業が行なっているのでしょうか。その理由について加藤は、次のように説明します。

「よくCSRなのかと聞かれますが、そうではありません。『100BANCH』に常駐しているパナソニックのメンバーは、未来戦略室という社長直下の経営企画部門に所属しています。このチームの機能は、主に5つあります。1つめは、次世代のライフスタイルを素早くキャッチして、次の事業戦略に活かすこと。2つめは、出島のように、大企業の制約に縛られることなく、自由に実験ができる場所をつくること。3つめは、『100BANCH』に集うスタートアップの起業家やクリエイターたちとコミュニティとしてつながることで、将来パートナーシップを組めるような信頼関係を築くこと。4つめは、『100周年を機に松下幸之助のスピリットを再び取り戻そう』という社内に対するインナーコミュニケーション。そして5つめが、活動の結果として、PR・ブランディング・採用強化です」(加藤)

そんな100年先の豊かな未来づくりに挑む「100BANCH」のメンバーの中から、常識を逆手に取ったビジネスに挑戦する3人の起業家と、彼らが手がけるプロジェクトの内容について、紹介していきましょう。

移動式アトラクション『どこでもバンジーVR』

株式会社ロジリシティ代表取締役 野々村 晢弥

「脳科学の視点を取り入れながら『面白い・新しい冒険体験』をつくるプロジェクト『Omoracy』の中で、移動式の体験型アトラクション『どこでもバンジーVR』を開発しています」(野々村さん)

『どこでもバンジーVR』がイノベーティブであるポイント

  1. 既に世にあるVRバンジージャンプは、すべてどこかに座って画面だけが落下する「ブランコ型」。しかし、バンジージャンプの真価は、自分の意志で倒れこむところにあると考え、非ブランコ型の『どこでもバンジーVR』を開発することに。
  2. エンタメ領域で使われているVRコンテンツは、一度体験すればお腹いっぱいになる。これを逆手に取り、“人生で一度は体験してみたいVRコンテンツ”を作りたかった。話題性を商品価値にするために、サーカスのような移動式を採用した。
  3. 脳科学のアプローチから現実とフィクションをクロスオーバーさせることで、能動的な体験による感動を生み出したいと思った。

人生は体験を探す旅だと思っています。未知の体験を求める好奇心があれば、人生は豊かになる。私のプロジェクトを通じて、そのような価値観を世の中に広めていけたらと考えています(野々村さん)

傘のシェアリングサービス『アイカサ(i-kasa)』

株式会社Nature Innovation Group CEO 丸川 照司

「『アイカサ』は傘のシェアリングサービスです。都内で雨が降ると、傘のない人が150万人くらいいて、そのうち約15万人が傘を買います。日本全国で廃棄されているビニール傘は毎年8,000万本。これは相当な無駄ですよね。単に傘を貸すのではなく、雨の日の移動を変えるMaaS(Mobility as a Service)として、この事業に挑んでいます」(丸川さん)

『アイカサ』がイノベーティブであるポイント

  1. ニーズのある場所(移動の始まりと終わり)にアイカサスポットを設置することで、生活者の雨の日の行動を変え、店舗の機会損失を減らそうとしている。
  2. テクノロジーを活用し、無人で運営することで、24時間たった70円という安さでサービスを提供できるスキームを開発。このインフラが完成したら、天気予報を気にせずに手ぶらで出かけられるという新たな価値を提供できるようになる。
  3. 『アイカサ』の傘をすべてリサイクル可能な素材にする研究を進めたり、忘れ物として警察に届けられた『アイカサ』の傘を回収するスキーム作りに取り組んだりしながら、ビジネスを通じて社会課題の解決に挑んでいる。

「個人的な目標は、世の中の変なところをたくさん変えていくことです。1つめの事業として『アイカサ』で社会をしっかりと変えていき、さらに他の挑戦も重ねていけたらと思っています」(丸川さん)

IoTティーポット『teplo(テプロ)』

株式会社LOAD&ROAD 代表取締役 河野辺 和典

「私たちは、IoTティーポット『teplo(テプロ)』の開発によって、急須をアップデートしているスタートアップです。センサーに指を置いて、体温や脈拍を計測することで、アプリが自動的にその人の体調に合わせて、最適な温度と時間でお茶を抽出することができます」(河野辺さん)

『teplo』がイノベーティブであるポイント

  1. データの収集と解析によって、煎茶の技術が確立された1750年から使われてきた急須を進化させられると気づいた。
  2. お茶の生産者にユーザーの印象をフィードバックすることで、新たなプロダクト開発に活かせるエコシステムを作ろうとしている。
  3. 当初は個人ユースを想定していたが、企業やホテル、飲食店など、おもてなしの体験ツールとして、販売の場を広げている。

「おいしいお茶を淹れて終わりではなく、飲み終わった後にアプリでレーティングをしてもらったデータを集積することで、これまで可視化されていなかったユーザーの情報がわかるようになりました。私たちはデータを活用することで、お茶産業のエコシステムを構築していきます」(河野辺さん)

アイデアのタネはどこにある?

次は、株式会社ロフトワーク クリエイティブDiv. シニアディレクター 原 亮介がモデレーターを務め、「100BANCH」でイノベーティブなプロジェクトに挑む3名とともにPanel Sessionを行いました。彼らは、いかにして常識を解体し、革新的アイデアを共創することができたのか。その実践手法を探りました。

原:今日お集まりいただいたみなさんがお悩みを抱えているのは、まだ世の中にないところから革新的なモノやサービスを生み出す「0→1」のところだと思うのですが、いきなり「0→1」に行くのは難しくて、その間には「0.1=着想」「0.5=ブレイクスルー」「0.8=共感」といったようないくつかのティッピング・ポイントがあったのではないかと予想してみました。

原:既に「1」に到達されているお三方に、ご自身のこれまでの歩みを振り返ってもらいながら、それぞれのポイントについて順番に教えていただきたいと思います。まずは、「0.1=着想」について。みなさんが現在のサービスを思いついたきっかけは何でしたか?

左から:ロフトワーク 原、Nature Innovation Group 丸川さん、ロジリシティ 野々村さん、LOAD&ROAD 河野辺さん

河野辺さん:当時、私はボストンにいたのですが、ボストンの冬はめちゃくちゃ寒いんです。それで温かい飲み物を飲むようになって。コーヒーばかり飲んでいたら体調が悪くなってしまったので、お茶を飲むことにしたのがきっかけですね。日本ではあまりありがたみを感じていなかったお茶の良さを知った。お茶について調べていくうちに、お茶をおいしく淹れるための条件は、抽出温度や時間、水や茶葉の量など、数値制御できるところがたくさんあると気が付いて、IoTのティーポットが作れないかと考え始めました。

野々村さん:スカイダイビングやスキューバーダイビングなど、いろいろと体験してきた中で、バンジージャンプが圧倒的に怖かったからです。あの場所に立ってみないとわからない恐怖がある。しかも誰かが飛ばしてくれるわけではなく、自分で飛ばなければいけません。他にも作りたいものはたくさんあるのですが、まずはバンジージャンプだろうと思っていました。

丸川さん:私は、メルカリとDMM.comが自転車のシェアリングサービスに参入するというニュースをたまたま目にしたときに、「いやいや、日本は自転車よりも傘でしょ」と思ったからですね。調べてみたら誰もやっていなかったので、自分でやればいいじゃないかと思い始め、動いているうちにその想いが増していった感じです。

原:原:なるほど。では「0.5=ブレイクスルー」はいかがでしょうか。「これはいけるぞ!」と確信を持った瞬間を教えてください。

丸川さん:私たちは、コンビニや駅など、傘がよく売れる場所や傘が必要とされる場所にアイカサスポットを置いてもらいに行くのですが、そこで許可をいただけた瞬間がブレイクスルーになったと思います。

野々村さん:僕はエンジニアではないので、エンジニアのコミュニティに足を運んで「こういうものを作りたい」とVRバンジーのアイデアをプレゼンしていたのですが、その中で僕の話に共感してくれた人が出てきたんですね。実際に、1週間ほどでプロトタイプを作ってきてくれて、試してみたら「まさにこれだよ!」と感動して。その瞬間に、「これはいける!」と思いました。

河野辺さん:僕はいけるかどうかわからない中で、試しにクラウドファンディングをやってみたところ、1,300人くらいがオーダーしてくれたときですね。

原:お三方に共通しているのが、ローンチする“タイミングの良さ”だと思うのですが、やはりタイミングは重要ですか?

丸川さん:ものすごく重要だと思います。市場に受け入れられるタイミングもそうですし、テクノロジーを活用する上で、コストが下がっていることも大切ですよね。

野々村さん:倒れこむタイプのバンジージャンプが世の中にないタイミングで気付けたのは大きかったですね。もし既にあったら、ここまで熱量を持って走り出せていなかったと思います。

河野辺さん:部品のコストも調達のしやすさも時代によって変わりますので、タイミングは大切ですね。今はとてもやりやすい時代だと思います。

原:傘のシェアリングサービスが受け入れられたのも、VRのエンジニアが見つかったのも、クラウドファンディングを活用できたのも、すべて今だからこそですよね。ここがまさに「0.8=共感」につながったのだと思います。こうしてお話を聞いてみると、お三方ともサービスの原型からスタートしたわけではなく、ご自身の強い想いが根底にあるということがわかりました。みなさんも「世の中のこういうことを解決すべきだ」「まだ世の中にこれはないからやってみたい」というところから新しいサービスを着想していくと良いのではないでしょうか。

イベントではこの後、勝手に他社の新サービスを考えてみるワークショップへと入っていきました。「Service Design Scramble」は今後も継続して開催する予定です。常識を覆す革新的なアイデアを生み出したい方は、ぜひご参加ください!

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