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教育機関、製造業向け 未来のものづくり×デジタルファブリケーション vol.1 開催レポート

“新しいものづくり”の潮流を捉え、ロフトワークとFabCafeがシリーズセミナーを企画。第1回は、ものづくりの現場で起こっている変化をはじめ、デジタルファブリケーション導入のプロセスや、実践における考え方を、教育機関および製造業向けに事例を交えながら解説しました。

Co-Creationによるものづくりへ

株式会社ロフトワーク FabCafe LLP COO 川井 敏昌

オープニングスピーチはロフトワークFabCafe LLPの川井敏昌が登壇。FABの概念やFabCafeオープンの経緯に触れつつ「インターネットを通じたボーダーレスなものづくりが促進され、イノベーションのコストも下がっている。今後、インターネットがものづくり自体の革命につながることが期待されている」と強調。

製造業の現場で、ものづくりの環境が大きく変化しつつある一方、教育の現場でも問題解決のためのデザイン思考として、デジタルファブリケーションでのものづくりを通じた学びの機会が求められています。そんな中、FabCafeとロフトワークに何ができるのか。この後のセッションを先回りする形でアピールしました。

"Sense of wonder"なものづくりを実現する8つのキーワード

株式会社ロフトワーク プロデューサー 松井 創

これからのものづくりのあり方を「Sense of wonder」と表現したロフトワークの松井創は、「個人と個人が簡単につながる時代。ネットワークの中でこそ、ワクワクドキドキするような新しいモノが生み出せる。アイデアを出すことに時間をかけるべきで、コラボレーションの中でいかにものづくりができるかがカギ」と強調。事例を通じて8つのキーワードを提示した。

1.PersonalとFAB
大企業にしか使えなかったデジタルファブリケーションツールが個人でも使える時代。個と個、個と企業をつないで、ネットワークの中から新しいものが生み出していく。
2.Small Startable
大企業でなくても、簡単にスタートアップできる仕組み、環境が整い、イノベーションのコストは確実に低下している。
3.Open Co-creation
オープンな関係性の中で参加者が協創しながらアイデアを膨ませ、ものづくりが進んでいく。
4.Living Data
生きた情報、ビッグデータやセンシングを活用・複合したインターフェイスや製品。
5.Urban Design
作ったモノが都市生活の中でどう使われていくのか、都市の空間にどんな影響を与えるのか、都市のデザインの中でプロダクトを考えることも必要になってくる。
6.Synthetic Biology
たとえば二酸化炭素を吸収して酸素を作り出す塗料のように、生物・生命科学の領域と最新のテクノロジーが融合し、新しいプロダクトの誕生が期待される。
7.4 Hats
一人の人間の頭の中に、アーティスト、サイエンティスト、デザイナー、エンジニアの4つの領域を持つことが必要。そうすることで、ものづくりに新たな可能性が拓ける。MIT Media Labの「シルクパビリオン」は、その象徴的な事例。
8.loftwork
ユーザーにワクワクドキドキを提供するものづくり、世界を変えるイノベーションを起こすようなものづくりにチャレンジしていく。

Ide-a-thonを通じて、ワクワクドキドキする共創プロセスを体感

株式会社ロフトワーク FabCafe LLP Fab Director 岩岡 孝太郎

ものづくり教育のあり方に迫ったロフトワークFabCafe LLPの岩岡孝太郎は、冒頭で、「時代は、一人ひとりが自分だけのものを必要な分だけ作るという方向へシフトしている。デジタルファブリケーションは、パーソナルファブリケーションと言い換えるほうが適切」と説明。

さらに、自分で作る家具をテーマとしたATELIER MUJIの「家具のかたがみ展」や、建築家がデザインした図面をフリーダウンロードできる「犬のための建築」、iPadで動く3Dアプリを使った3Dプリンター体験などを例に、「すべてのものは作ることができ、いつでも、どこでも、誰でも作ることができる」と強調しました。

各方面で講師も務める岩岡は、そんなFAB体験を教育の現場にどう組み込んでいるのでしょうか。

「3D CADにはRhinoceros(ライノセラス)やGrasshopper(グラスホッパー)を使用。デジタルファブリケーションとCADがつながることで、実寸大でものごとを検討できるようになってきている。特に建築の分野でこのインパクトは大きい。デジタルデータ上だけで終わらせず、必ず出力させると、選択した素材ではうまくいかないと判明したり、逆に素材の面白さにインスパイアされたりする」と岩岡。

また、作られるものがどれだけ面白いかに注力する一方で、「デジタルファブリケーションは道具にしか過ぎない」として、そこで生まれるコミュニケーションこそが重要だと語ります。3Dプリンターやレーザーカッターだからこそ、デジタルデータを介して今まではつながらなかった人たちがつながり、コミュニケーションから生まれるアイデアにインスパイアされて、一緒に作るという流れを生み出しているというのです。

たとえばロフトワークとFabCafeでは、Make-a-thonや、アーティストとコラボレーションしたライブイベント、ネットワーキングパーティなどを開催。次の2つの方向で、新しいものづくり体験の機会を提供しています。

●学びのプログラムを作る
●学びの場所を作る

さらに7月30日には、複数のものづくり拠点とユーザーをつなぐコミュニティ「TOKYO FABBERS(トーキョーファバーズ)」も発足。各拠点が連携し、ワークショップや教室などの学びのプログラムも提供される予定で、ものづくりに参加する人の裾野を広げ、将来的には東京都の産業にも貢献していく考えです。

未知なるものを探究し、不確実な未来をワクワクに変える

株式会社ロフトワーク イノベーションメーカー 棚橋 弘季

ロフトワークの棚橋弘季は、ものづくりの現場向けにイノベーションのヒントを提供。「標準的なものづくりプロセスがあるわけではない。解くべき問題に応じて適切なプロセスをデザインすることから始まる。また、ものづくりプロセスをオープンにし、外部とパートナーシップを築いていくためには、不確実性を考慮したプロセスデザインが必要」として、ものづくりを2つのフェーズに分けてポイントを解説しました。

新しいモノの企画フェーズ

未完成なモノの提供
外部の開発者や作り手と企業がうまくつきあっていくためには、外から手を出したくなる仕組みづくりが必要。
Lean
仮説は作って壊すもの。検証を繰り返しながら学びを重ねることによって、仮説を柔軟に変えていく。仮説→検証のプロセスを早く回すことが大事。
リフレーミング
わからないことが何かを知るために、フィールドワークを実施したり、自分自身で体験してみたりすることで既知から未知へ飛び出し、発想のフレームを変更する。Ide-a-thonやMake-a-thonを通じて、自分とは違う考え方に触れるのも有効。

「考えるのはあくまでも自分たち。外の視点を素材として加え、未知を知ることによって、自分たちで新しい発想ができるようになる。これがオープンにすることの意義。」(棚橋)

新しいモノの実現フェーズ

未完成なモノの提供
外部の開発者や作り手と企業がうまくつきあっていくためには、外から手を出したくなる仕組みづくりが必要。

1)部品としての製品
2)外部に開いた口(API、SDK、製品の外形仕様など)
3)Hackの参考なる基本レシピやサンプル
4)開発者&クリエイターコミュニティ
5)オープンなイベントやコンテスト

OPC(Open Platform Community) - Olympus

事例)オリンパス「オープンプラットフォームカメラ」
カメラをオープンプラットフォーム化することで、アクセサリーやアプリを外部のデベロッパーやクリエイター、さらにはユーザーがハックできるようにし、新しいカメラ体験をみんなで開拓するプロジェクト。

最後に、「未来は予測できない。不確実性への不安をどんな方向に向けるとワクワクに変わるのか。そんなことを考えていくと、未来は楽しいものになるはず」と棚橋。イノベーションメーカーの目は、常に未知なるものを探究し続けています。

セッション終了後は、パネルディスカッションを実施。教育現場、製造現場に携わる参加者からの質問を中心に、登壇者が経験に基づくノウハウを紹介。質問にあがっていた現場担当者がが抱える課題からも、ものづくりをとりまく環境の変化がうかがえました。

イベント概要

ここ数年、「Make」、「デジタルファブリケーション」などのキーワードが脚光を浴び、ものづくりの可能性が大きく変わるといわれてきました。では、実際のプロジェクトではどのような取組みがなされ、どのような変化が起きているのでしょうか?

本イベントでは、ものづくりのトレンドだけにとどまらず、導入のプロセスや成功ポイントまでを実践的に解説。特に新しいものづくりに注目している「教育機関」「製造業」という2つの業界にフォーカスして考えていきます。

クリエイティブ・エージェンシーとして企業のイノベーションを戦略からアウトプットまで支援するロフトワークと、レーザーカッターや3Dプリンター等のデジタルツールを設置したものづくりカフェを展開するFabCafeの2社で共催し、両社が支援したプロジェクトなども事例としてとりあげ解説していきます。

教育機関向けには、FabCafeが提供する子供向けワークショップや企業とのコラボレーションの取組みなどを例にあげ、デジタルツール設置だけにとどまらない本当の学びにむけたプログラム設計などの重要さを、製造業向けには、イノベーションを起すためのプロダクト開発は考え方、プロセス、体制をどのように変えるべきなのかをご紹介していきます。

いよいよ実践のフェーズにはいった”新しいものづくり”。明日からの具体的アクションに向けたヒントをご提供します。

開催概要

セミナータイトル – 教育機関、製造業向け –
未来のものづくり×デジタルファブリケーション vol.1
開催日時 2014年7月25日(金)15:00~19:30(14:30受付開始)
場所 loftwork Lab(ロフトワーク渋谷) 地図 
対象 ・学校、施設などにものづくり教育を取り入れたい方
・企業、組織にものづくりの新しい手法やプロセス導入を検討している方
参加費 無料
定員 50名
共催 株式会社ロフトワーク、FabCafe LLP
ご注意 ・プログラムは、予告なく変更される場合があります。
・個人、同業のご参加はご遠慮いただく場合があります。
・当日の参加者の皆さんのお写真は、後日公開するレポートなどに掲載させていただきます。
・ご記入いただいた個人情報は、株式会社ロフトワークおよび、共催企業のみで共有し結果の分析および、ご案内以外では利用いたしません。

プログラム

15:00~15:10
「オープニングスピーチ」
・イベント主旨
・本日のタイムテーブル
15:10~15:50
「先端事例から学ぶ、ものづくりのトレンド」
・ものづくりの過去、今、これから
・国内&海外の先端事例
・企業や教育機関が今取組むべきこと
15:50~16:30
「Case1:[教育機関向け]ものづくり教育の成功ポイント」
・ものづくり教育がなぜ注目されているのか?
・FabCafeコラボ事例
・ものづくり教育の成功ポイント
16:30~16:40
休憩
16:40~17:20
「Case2:[企業向け]ビジネスに革新を起すものづくりプロセス」
・イノベーションとものづくりの関係
・先端企業が取組んでいるプロダクト開発
・プロセスの考え方と設計
17:20~17:50
パネルディスカッション
17:50~18:00
休憩、FabCafeへ移動
18:00~19:30
FabCafe見学&作品紹介
・デジタルツールと利用法
・ゲストからの作品紹介
・相談会

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