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事例で解説!体験を軸につくる
「これからのコーポレートサイト設計」

企業を最も身近に知ることのできるメディア、コーポレートサイト。会社概要の照会、ブランディングや問い合わせ対応、リクルート、投資家とのエンゲージメントなど、様々な役割を担うコーポレートサイトにおいて、企業はどのようなユーザー体験を実現すべきなのでしょうか。

2018年11月20日、ロフトワークでは、株式会社フレームワークスソフトウェアとビッグローブ株式会社とセミナーを共催。三社の事例を交えながら、単なるデザインの差し替えにとどまらないサイト設計のプロセスを解説するとともに、描いたユーザー体験を実現するための基盤のあり方に迫りました。

Webサイトを考えることは、ビジネスモデルを考えること

ロフトワークでプロデューサーを務める濱田真一は、Webサイト設計の変遷に触れ、「2012年頃までは、Webサイト内の導線に目が向けられてましたが、今は複数の顧客接点に対し、Webサイトはどうあるべきかを考えるようになっています」と説明。

株式会社ロフトワーク プロデューサー 濱田 真一

また、あるべき姿を実現するための手法はさまざまですが、重要なのは、手法そのものではなく、課題やリソース状況などに応じて、最適な道筋、関係性を見つけて設計に落とし込んでいくことです。

「つまり、Webサイトを考えるということは、ビジネスモデルを考えることでもあります」と言う濱田は、ロフトワークが担当した2つのサイトリニューアル事例を紹介。Webサイトをさまざまな顧客接点のひとつとして位置付けるべきだと強調しました。

「こうしたアプローチを実現するために、近年のWeb制作プロジェクトでは、要件定義や設計・デザインに入る前に、トレンドリサーチや、仮説検証、インタビュー、ペルソナの作成、コミュニケーション計画といったプロセスがより重要度を増しています。」と濱田。最後に、昨今のWebサイト制作プロジェクトのプロセスを紹介しました。

「誰のために、何のために作るのか?」から考える体験設計

続いて、ロフトワークのクリエイティブディレクター 木島千加子が、顧客体験を軸にしたWebサイト設計・プロジェクトデザインについて、事例を交えながら解説。「誰に、何を、なぜ伝えたいか。これを明確した上でプロジェクトを進めることが重要」として、新規Webサイト構築と既存Webサイト改善という異なる2つの事例を紹介しました。

株式会社ロフトワーク クリエイティブディレクター 木島 千加子

事例1:ターゲットが明確でない新規Webサイトの構築(ある新設大学)

新規に大学を設立するタイミングに合わせて構築したWebサイト。新設=具体的なユーザー像が定まらない、想定ユーザー(受験生)にコンタクトを取りづらいという課題に対し、2つのリサーチでユーザー体験を含めたWebサイトのコンセプトを定めていきました。

<デスクトップリサーチ>
無理にペルソナやユーザー像を作っても信憑性に欠けるため、一般的な学校サイトにおいてユーザーが求める体験をリサーチ。メニューやサイト構造など、類似する大学のデザインのトレンドも調査し、傾向をまとめています。

<ステークホルダーへのインタビュー>
大学設立の経緯や理念について、学長や理事長を含めた関係者にインタビュー。ヒアリング結果をポイントごとに整理し、どのようにWebサイトに落として行くべきか策定しました。

「Webサイトのコンセプトや方向性を定めるにはコミュニケーションが欠かせません」と語る木島は、対話の中にヒントがあるとして次のように説明します。

「たとえば、インタビュー中に、Webメディアにしたら活発な印象を与えられそう・・・という意見が出たとします。その際に、Webメディアと大学サイトは違いますと、切り返すのではなく、なぜそう思ったのか、どういうサイトを目指したいのかを丁寧にヒアリングし、本質的に求めているもの、描いている理想の姿を聞き出すことができます。」

「大学のWebサイトとして必要な一般的な情報に加え、設立に携わった関係者の想いを丁寧にヒアリングしWebサイトのコンセプトを定めた結果、Web公開後のコンテンツの拡張ビジョンや、実際のサイト構造を設計する際にも、ブレることなく進められた」と振り返ります。

事例2:リニューアル後2年運用したWebサイト改善

リニューアルから2年が経過した大学のWebサイト。使いにくい点などを闇雲に修正するのはなく、 運用上の課題を含めて、定量/定性の両面の調査から、Webサイトの現状を把握。改善点を明らかにしました。

<定量調査>
Google Analytics等のアクセス解析ツールを使い、リニューアル前後におけるサイト変化を数値で評価。さらに検索キーワードなどの統計情報から、当該大学に対するユーザーの関心をリサーチ。どのような興味・関心を元に流入しているのかを調査し、今後のコンテンツ企画の示唆を得ました。

<定性調査>
リニューアルしたWebサイトを閲覧して入学したユーザー(在学中の1,2年生)を複数のセグメントに分けリクルーティングし、実際に受験時にどのような状況で、Webサイトを含めた大学の広報ツールにタッチし、入学に至ったかをヒアリング。結果はレポートにまとめ、受験生におけるWebサイト内外の体験を改めて整理しました。

「特定の問題だけを修正するのではなく、リニューアルをしっかりと評価し、その上でやりたいこと、やるべきことを整理することが重要です。より良いユーザー体験の提供のためには、ユーザーが接触する媒体といった手段ではなく、広報全体のトータルの戦略から何をどのように訴求するか設計し、Webや紙媒体やイベント等の手段に落とすことで何をアップデートするべきか定めることができます。」と木島。

最後に、2つの事例に共通するポイントを、「想像や憶測でデザインやコンセプトを決めるのではなく、事実をベースに組み立てること」としセッションを締めくくりました。

乗り換え事例で解説、CMS選定の留意点

体験を軸にした具体的なWebサイトでの事例紹介に続き、登壇したフレームワークスソフトウェアの代表取締役 桝室氏は、WebRelease2について、「商用CMSとして様々な業界で満遍なく利用されていることを紹介。近年の導入事例の多くが乗り換え需要だ」と説明しました。

株式会社フレームワークスソフトウェア 代表取締役 桝室 裕史氏

さらに、乗り換える理由について大きく4つに分類し、具体的に解説。

乗り換える理由

  • セキュリティの強化
  • 開発失敗リスクの回避
  • 特定ベンダーの囲い込みから脱却したい
  • CMSのメンテナンス費を削減したい

セキュリティの強化
例えば動的にコンテンツを生成するCMSの場合、コンテンツを管理するCMS自体にも外部からアクセスが可能であり、悪意のある第三者から攻撃を受ける可能性があります。一方静的にコンテンツを生成するWebRelase2の場合、CMS自体は、物理的にWebサーバから隔離された環境にあり不正侵入される可能性がなくなります。

開発失敗のリスク回避
CMS自体をゼロから開発する場合、開発仕様に制約がなくなるため、非常に自由度の高い設計・開発が可能です。一方で、なんでもできる弊害として、要件定義が長期化しやすく、どうしても機能過多になりがちです。完成されたパッケージであるWebRelase2は製品自体の開発は一切不要。インストールするだけで、Webサイト制作の準備は整います。

特定ベンダーの囲い込みからの脱却
Web制作会社やSIerが独自に開発したCMSの場合、CMSの導入後、制作や開発を外部に委託できません。結果的に特定ベンダーに囲い込まれ、導入後のコスト高要因にもなります。これに対しWebRelase2は様々な制作やインフラのパートナーと協働しているため、ベンダーロックインせず、リニューアルや開発のパートナーを常にフラットに選定できます。

CMSのメンテナンス費を削減
オープンソースCMSの場合、導入時のライセンスコストは不要です。しかしパッチやバージョンアップのたびに、プラグインの動作確認や場合によっては追加開発が必要になることも。1回のコストは少額でも年に複数回実施されるバージョンアップに合わせていくと、実はメンテナンス費用が高くなるケースも発生します。中長期的なコスト計画に立脚するとパッチ適用の費用が少額で抑えられ、互換性も担保されたWebRelase2の方がコストは削減することが可能なのです。

最後に桝室氏はWebリニューアル時にチェックしたいCMS選定基準について、乗り換え需要に沿って6つ紹介。「選定に迷った時は、様々なCMS経験のある制作経験のあるパートナーへの相談をお勧めします。」とセッションを締めくくりました。

事例でわかる! プロジェクトリニューアル成功の勘所

桝室氏に続き登壇したビッグローブ小山氏は、「スピードxコストパフォーマンスの追求」掲げてして実施したダイハツ工業株式会社の企業情報サイトのリニューアル事例を紹介。

ビッグローブ株式会社 法人事業本部 マネージャー 小山 悟氏

企業情報と商品情報が一つのドメイン配下で運営されていた体制の見直しからスタートしたリニューアルプロジェクト。目指すべきサイトのコンセプトとして、運営者向け、利用者向けと2つを設定しました。

サイト閲覧者向けリニューアルコンセプト
「必要とされる情報を素早く、端的に提供する」

  • シンプルなデザイン
  • スマートフォン対応
  • 検索性の向上
  • コンテンツの拡充

サイト運用者向けリニューアルコンセプト
「スピードとコストパフォーマンスの追及」

  • CMS活用による、内製化促進
  • サイト更新スピードの向上

異なる2者に対するコンセプトを掲げて実施されたリニューアルはまずグローバルサイトへ、CMSを導入し、その後企業情報サイトへと導入する二段階の導入プロセスを取りました。

CMS自体が本当に、要件にあったものかを運用主体である社内で検証し、納得してから本格的な導入を進めていったと言います。「WebRelease2のライセンスは、管理するWebサイト増えたり、ユーザーを追加したりしても、追加コストが発生しない点も、スモールスタートの成立に一躍をかった」と小山氏は振り返ります。

さらにCMS活用による内製化を促進するために、「専用テンプレート」「汎用テンプレート」を組み合わせたCMS設計を行い、シンプルな操作性ながらも様々なタイプの記事ページの作成に対応していきます。

リニューアル前は全てのコンテンツを外注で対応していたWebサイトの更新は、社内で更新が完結できるようになり、サイト運用プロセスは大幅に簡略化されスピードアップ、同時に運用コストの削減も実現しているとリニューアル成功の要因を分析しました。

最後に、小山氏はWebサイトのリニューアルには「完成重視から持続性重視へ」のパラダイムシフトが起きていると言及。

「リニューアル直後がもっとバリューが高く、その後は陳腐化していく傾向があったが、リニューアル後を新たなスタートと捉え、ユーザーの要望や、最新技術やトレンドも導入しつながら、持続していくプラットフォームを整える形が増えてきている」と解説。一つの基盤でなんでも機能を賄うのではなく、ニーズに応じて拡張していくことで、様々な変更に柔軟に対応できる重要性を強調し、セッションを締めくくりました。

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