EVENT Report

年齢・国籍を問わず挑戦するプロジェクトを世界に放つ
駅直上の新拠点『SHIBUYA QWS』に見た可能性

11月1日に開業したSHIBUYA QWS(渋谷キューズ)。開業当日は「QWS OPENING DAY」と題し、企画構想の段階から関わってきたメンバーのほか、アカデミア、ビジネス、クリエイティブなど領域を超えたパートナーが集まり、トークセッションを開催しました。

イベントの後半には、「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を推進する公募プログラム『QWSチャレンジ』の一期生として採択されたメンバーのお披露目も。老若男女が集った盛大なオープニングイベントの模様をお届けします。

テキスト:野本 纏花
写真:コムラマイ
編集:loftwork.com 編集部

“渋谷から世界へ”のカギを握るのは多様性

まずスペシャルセッション第一弾には、株式会社ロフトワーク 代表取締役 林 千晶、DOMMUNE代表 宇川 直宏さん、Scrum Ventures 創業者兼ジェネラルパートナー 宮田 拓弥さん、SHIBUYA QWS ディレクター 野村 幸雄さんが登壇。「QWSが目指す、これまでとこれから」について、語り合いました。

今回の来場者が座る席を見渡し、「若い人と普通の人と年齢が高い人が本当に混ざり合っていて、すごくスクランブルな感じがして良いよね。QWSの企画書には『年齢を問わない』と書いてきたけれど、今日ここに来て、本当に問わないんだなと。」と笑顔を見せる林に対し、宇川さんは次のように応えます。

「渋谷から世界に問うのに、年齢は問わないのは、すごく良い。問うたり、問わなかったりするのは、重要。イノベーションと言われるものは、時に“芽を刈り取る行為”にもなりかねないから。だからこそ、ここではポストイノベーショニズムの概念を打ち出していかないといけない。

グラスルーツ(草の根活動)という言葉があるけれど、根っこと種(シーズ)をいかに融合して新しい世界観を打ち出していくのか。つまり、60代とか70代とか、地に足をつけて根を生やしている方々の普遍的な意識と、どこに埋めても芽を出す可能性を秘めた、若者のユニークな意識と。

『根っこと種の融合がいかに生まれるか』というのがQWSの本当の意味での[問い]になってくると思いますね。」

シリコンバレーでシード期のスタートアップ投資をしている宮田さんは、

「アメリカには大学発のテクノロジー系スタートアップはたくさんあるけれど、実はチームラボのようなアートとテクノロジーとの連携は、日本のほうが強いと思っているんですよね。テクノロジー単体で今からシリコンバレーを超えるのは、そう簡単じゃないから、アートやキャラクター、KAWAII文化などは、もっと前面に押し出していったほうが良いと思います」

と語り、渋谷から世界へ挑むQWSに秘められた可能性を説きました。

『QWSチャレンジ』採択プロジェクトの一部をご紹介

“渋谷から世界へ”というワクワク感を共有した後は、「未知の価値に挑戦するプロジェクト」を推進する公募プログラム『QWSチャレンジ』の一期生として採択されたメンバーのお披露目です。公募によって採択されたチームは、QWSのプロジェクトスペースが無料で利用可能となります。イベントでは、33エントリーの中から選ばれた11のプロジェクトのメンバーが、それぞれ1分間のピッチをしました。

採択されたプロジェクトのチームメンバーは20代〜90代と幅広く、高齢者問題に切り込むものや社会のあり方に疑問を呈するものなど、多種多様な切り口で渋谷から世界へ挑戦する[問い]が投げかけられました。

「超情報化が生み出す鏡像世界『ミラーワールド』では、どんな価値が生まれるんだろう?」という[問い]を投げかけた「Towards the Mirror World」は、東京5大学が連携するQWSらしさが垣間見れるアカデミックなプロジェクト。ARやVRが実現する鏡像世界「ミラーワールド」において、私たちの身体や心がどのように変容するのか。行動経済学実験やコンピューターシミュレーション実験によって明らかにしていきます。
「父親が自分の子供の未来に対してできることは何か?」という[問い]を投げかけた「Hacking Papa Project」。パパとして日常や様々な経験から生まれる課題感をきっかけに、世の中の親子の課題解決にチャレンジしていくプロジェクトです。

QWSだからこそ生まれるプロジェクトの価値

そしてスペシャルセッション第二弾として、『QWSチャレンジ』の採択者である株式会社ロフトワーク 代表取締役 林 千晶、株式会社スマイルズ 代表取締役社長 遠山 正道さん、東京大学生産技術研究所 教授 野城 智也さん、 慶應義塾大学大学院 メディアデザイン研究科 教授の南澤 孝太さん、NPO法人 ETIC. 代表理事 宮城 治男さん、SHIBUYA QWS ディレクター 野村 幸雄さんが登壇し、プロジェクトに対する想いを語り合いました。

南澤さん:今回の応募プロジェクトを見ていると、すごくダイバーシティのあるものが集まっていたと思います。みなさんのイチオシのプロジェクトをご紹介いただけますか。

遠山さん:私は「Hacking Papa Project」を選びました。話を聞いてみると、とにかく面白い。何が面白いかって、みんなキラキラしながら「パパが自分の子どもにしてあげられることは何だろう?」といろいろなアイデアを出しているんですね。普通、ビジネスにつなげようとするはずなんだけど、その雰囲気が全然伝わって来ない。だからと言って、アートというわけでもないし、趣味と言われるとしっくり来ない。じゃあこれは何だろう?というのが、まさに[問い]。どこに向かうかわかっていないからこそ、可能性があって面白いと思いました。

林:QWSで出会う、ビジネスとかサイエンスとかアートといった何か他の力に引っ張られてみても良いのかもしれないね。でも娘の立場からすると、「お父さん、ちょっとやめてよ!」という父娘特有の温度差もあったりして。女の子向けの工学玩具の開発に取り組んでいる「STEMee」と連携すると良いかもしれない。

南澤さん:今回採択された中には母親のコミュニティもあるし、プロジェクト同士のコラボレーションが生まれたら素敵ですよね。宮城さんは、いかがですか?

宮城さん:私は「渋谷に宇宙人を誘致するには?」という[問い]を投げかけた「Alien in Shibuya」を選びました。「宇宙人」という、常識も言語も全く異なる地球外の生命体が過ごしやすい環境を整えることで、渋谷のバリアフリーの基準を作ろう、というプロジェクトです。

プロジェクトメンバーの彼女たちとディスカッションしていて気付かされたのが、「我々は“家族はこうでなきゃいけない”と昭和の家族観をノスタルジックに持っているけれど、宇宙人の視点で考えると、それって当たり前ではないんじゃないか」という発想に切り替えられるんですよね。この常識という枠を外してくれる視点が“宇宙人”だし、渋谷の面白さになるのではないかと思ったんです。

南澤さん:極端に振っちゃうことで、フルスクラッチで考えられると。宇宙人からしたら、ちょっとした地球人の個体差なんて、ないようなもんでしょうからね。「俺、1000年生きてるし。地球人の5歳も95歳も、同じ子どもだよね」という話になるのかも。

野城さん:世の中にはいろいろな制約があるけれど、QWSでは良い意味で乱暴なことができる。ここでチャレンジをする人たちには、その乱暴さを忘れないでもらいたいですね。

宮城さん:QWSでチャレンジする[問い]は、お上や企業が仕方なくやるのではなく、個人の想いや遊び心からスタートしている。それこそがこの場の面白さですよね。この場に座ってみると、スクランブル交差点がすぐ後ろにあって、ここにいると世界の真ん中にいる感じがする。外の世界とシームレスで、自分が中心にいる感じを持てるんですよ。

自分たちが創り出すものにこだわりを持つことも大事だけれど、乱暴に仕掛けて渋谷という街や世界を巻き込んでいける場所として、これ以上のものはないと思います。

遠山さん:確かに。これからはプロジェクトの時代だと思うんですね。産業の時代は役割分担だったけれど、今は個人が集まって映画を作るような感覚で、プロジェクトをベースに人が集まって、“作っては解散して”というのを積み重ねていく時代だと思う。だからこそ乱暴なチャレンジができると思うので、これからのQWSが楽しみですね。

南澤さん:そうですね。今後いろいろな人たちがQWSのコミュニティに入って、活動が広がっていくと思うので、まずは3ヶ月後、第1期生のプロジェクトがどう進化しているのか、乞うご期待ですね。ぜひみなさんでこれからQWSを盛り上げていきましょう!

 

この後は、グラスを片手に、来場者のみなさんと乾杯です。OZONE雨宮優さんのDJで盛り上がりました。今日の出会いの中から、どんな新たな[問い]が生まれたのでしょうか。これからのQWSの展開から、目が離せません。

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